わたしは真悟(楳図かずお)のネタバレ解説・考察まとめ

『わたしは真悟』とは、楳図かずおによる漫画。1982年から1986年まで『ビッグコミックスピリッツ』誌上にて連載された。恐怖漫画の第一人者楳図かずおが、来るべき近未来を描いた長編SF作品であり、連載終了後もラジオドラマ化やミュージカル化されるなどの大ヒットを記録した。また、楳図かずおの1980年代の代表作としても知られている。ともに小学6年生である近藤悟と山本真鈴の淡い初恋と、2人の行動の影響で自我を持つに至った産業用ロボットを中心にしてストーリーが展開される。

1982年にクマタ機械工作で製造された産業ロボット。豊工業には2台リースされており、マリリン・モンローの写真が貼られた機械が「モンロー」と呼ばれ、ヴィヴィアン・リーの写真が貼られた方は「リー」と呼ばれた。モンローは悟の父親によってティーチングを行われたが、彼はモンローの影響で失業することになる。また、悟と真鈴の幼い逢瀬にも利用されており、2人が様々な情報を打ち込んだことが後にモンローが真悟として意識を持つきっかけとなった。

マル

人間の幼児の姿になった真悟は、あらゆる意識と繋がっていくことで短期間に進化を遂げている。最初は四角い目玉だったが、進化の過程で三角の目玉になった。そして、全てを知った真悟は丸い目玉となり「マルになった」と呟き、まるで全知全能の神の如き能力を発揮して奇跡を起こしていくこととなる。

『わたしは真悟』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

謎のメッセージ「奇跡は誰にでも一度おきる だがおきたことには誰も気がつかない」

『わたしは真悟』第1話表紙

『わたしは真悟』の第1話には、「奇跡は誰にでも一度はおきる だがおきたことには誰も気がつかない」という文章が添えられている。同作品の大いなる謎として知られているが、「奇跡」とは真悟が自分の両親と位置付けた悟と真鈴のために起こした行動であり、2人とも真悟の存在と行動には気づかずに大人になっていったのではないかという考察が多くのファンの間でなされた。ちなみに、コミックスによっては「奇跡」が「奇蹟」に変更された版もある。

真鈴「もう子供の時のわたし達には会えないわ!!」

暴風雨の中で悟の前で涙を流す真鈴

父親がイギリスへ行くことで悟との別れを余儀なくされた真鈴は、自分の子供時代が終わることをひどく恐れていた。そして、悟の前で「もう子供の時のわたし達には会えないわ!!」と泣きながら言った。その結果、2人はすぐに結婚して子供をもうけようとする。『わたしは真悟』という作品における「子供でいること」への拘りが表れた名言として知られている。

東京タワーのてっぺんに登った悟と真鈴

東京タワーのてっぺんから飛び移ろうとする近藤悟(左)と山本真鈴(右)

『わたしは真悟』のエピソードの中でも、最もファンの印象に残っていると言われているのが、悟と真鈴が東京タワーのてっぺんから飛び移ったシーンである。このシーンは、子供を作る方法を知らない2人がモンローに作り方を尋ねて、「333ノテッペンカラトビウツレ」というメッセージを独自に解釈したことで誕生した。『ヘルタースケルター』で知られる漫画家の岡崎京子は、同シーンの衝撃について繰り返し言及している。また、このシーンをプリントしたTシャツなどのグッズ化が行われた。

真鈴を救った真悟

真鈴と強引に結婚しようとするロビンに立ち向かう真悟

世界中のあらゆる存在と繋がって「マルになった」真悟は、躊躇うことなくロビンの魔の手から母親の真鈴を救った。その結果、ロビンは死亡し、能力を使い果たした真悟も退行が始まっていく。しかしながら、皮肉にも真鈴は自身が生み出した真悟の存在に気づかず、更にその瞬間に子供の時代を終えてしまうこととなる。『わたしは真悟』のクライマックスシーンの1つであり、以降真鈴は物語に登場しない。

『わたしは真悟』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

印象的な表紙

わたしは真悟02 楳図かずお アートフォトポスター A4サイズ 絹目写真

『わたしは真悟』が『ビッグコミックスピリッツ』に連載された当時、表紙のアートワークが話題を呼んだ。悟と真鈴と思しき少年少女が描かれた回や、無機質な機械群が描かれた回が多く、Tシャツやポスターなどのグッズになるほどの人気を獲得している。

玄人受けする作品

『わたしは真悟』ビッグコミックス版1巻表紙

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@yudai1004

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