アンモナイトの目覚め(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『アンモナイトの目覚め』とはイギリス・オーストラリア・アメリカ合衆国のドラマ映画。監督は『ゴッズ・オウン・カントリー』で注目を浴びたフランシス・リー。ケイト・ウィンスレット演じる人嫌いの古生物学者メアリーとシアーシャ・ローナン演じる裕福な化石収集家の妻シャーロットが出会い、次第に惹かれ合うヒューマンドラマである。身分も境遇も異なる正反対の二人が化石を通して繋がり合う。メアリーとシャーロットの痛みや孤独が繊細に描かれている。
日本では2021年に劇場公開され、ヒットとなった。

音楽会での一幕。やはり打ち解けられないメアリーは、外に出てたばこを吸って自分を落ち着かせる。そして演奏が始まるといったときにも後ろの席に座る。そこでうまく上流階級に溶け込み先頭の席で談笑するシャーロットを見て、彼女は耐えられなくなる。自分とは違う人間であることをまざまざと見せつけられ、溌剌として楽しげな様子の彼女を見て嫉妬の感情がわき上がった。居所が悪くなり、帰ってしまう。このときの二人の位置関係は、心理的な距離感を表している。

この場面はセリフが無い。しかし、メアリーが嫉妬を自覚し、その感情を抑えつけようとする様子がひしひしと伝わってくる。

メアリーに部屋を用意するシャーロット

物語の終盤、シャーロットはメアリーをロンドンの自宅に招き、彼女に部屋をプレゼントする。これならずっと一緒にいることができるし、研究もここで続ければ良いと言う。しかしメアリーは自由な研究者であり、かごの中の鳥にはなれない。だまし討ちに遭った気分になったメアリーは怒って出て行ってしまう。かつて夫からされてきた束縛や抑圧を無意識にメアリーに対してしてしまっているのは、彼女ににとってこの方法しか知らなかったからだ。

束縛する側は自分が抑圧をしていることに無自覚だということが分かる。両者にとっての幸せの認識の違いが際立つ場面だ。

化石を隔てて見つめ合うメアリーとシャーロット

メアリーが大英博物館を訪れると、自分の発掘したイクチオサウルスの化石展示にシャーロットがいた。互いのこれからに対する認識の違いが際立って別れた後でまた再開した二人。イクチオサウルスの化石を隔てて何を思うのか、その後の二人の行く末を想像させるシーンとなる。

『アンモナイトの目覚め』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

メアリー・アニングは実在の人物

彼女は1779年5月21日生まれのライム・レジス出身。貧しい家庭で育ったが父親の教えで化石発掘に触れ、13歳の時にイクチオサウルスの全身化石を世界で初めて発見。貧しい家庭を支えるため、その後も化石発掘を続ける。様々な化石を発掘するも、女性かつ労働者階級であるが故に論文発表も学会入会も認められなかった。
生涯独身だったが、彼女が同性愛者であるという記述はない。

ボディダブル無しでの撮影

ボディダブルとは、出演者本人ではなく替え玉が演じること。『アンモナイトの目覚め』の撮影ではボディダブルが一切無く、メアリーが岩場に登るシーンや化石発掘の作業、シャーロットがピアノを弾くシーンやレースを編む所まで、すべて本人が演じているという。

役作りのために新しい技術や技能を学ぶことはよくあるけど、まさか化石採集を習うとは思わなかった。今ではあなたをライム・レジスに連れて行って指南できる腕前よ! ごく基本的な手法だけどね。ボディダブルを使わず撮影するために、技能の習得は重要だった。メアリーにとっては体に染み込んでいる作業だしね。専門家の指導を受けながら、来る日も来る日も、海岸で化石が入っていそうな石を打ち砕いたわ。

出典: www.moviecollection.jp

『アンモナイトの目覚め』誕生のきっかけは監督の恋人の誕生日

『アンモナイトの目覚め』が誕生したのは、フランシ・リー監督の恋人の誕生日がきっかけだった。監督は当時の恋人に誕生日プレゼントを渡すため、彼の好きな鉱物や化石を探していたという。その情報集めの際に度々目にした名前が、本作でモデルにしたメアリー・アニングだった。監督は彼女の人物像を知り、強く興味を惹かれる。そして彼女にスポットライトを当てた。

『アンモナイトの目覚め』の主題歌・挿入歌

音楽:ダスティン・オハロラン

『アンモナイトの目覚め』には主題歌が無く、エンドロールは潮騒の音が流れる。

全編を通して静かな本作のサウンドデザイナーを担当したのがジョニー・バーンである。彼は『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2018年)、『哀れなるものたち』(2023年)、『関心領域』(2023年)などの音響を担当している。

音楽を担当したのがダスティン・オハロランである。彼は2016年に『LION/ライオン~25年目のただいま~』(2016年)でアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、放送映画批評家協会賞、英国アカデミー賞などにノミネートされている実績の持ち主。他にも数々の映画やドラマの音楽を担当。

またサウンドデザイナーのジョニー・バーンと共に、リーは自然の音を使ってサウンドスケープを作成した。風は丁寧にデザインし、鳥のさえずりを適切な場所に加えた。火の音は心を落ち着かせ、背景には一貫して海の音が流れる。すべてが、この厳しい、残酷な世界を強調する音だった。質感を作りながら雰囲気を築き上げていくという手法だ。いわば海や波の音は、「コーラス」の役割を果たし、物語の根幹にある深い感情と対を成している。

出典: gaga.ne.jp

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