ウルトラマニアック(吉住渉)のネタバレ解説・考察まとめ

『ウルトラマニアック』とは吉住渉による少女漫画。ジャンルはマジカル学園コメディ。集英社『りぼん』で連載され、テレビアニメ化もされた。魔法王国から留学してきた魔女っ子佐倉仁菜(さくら にな)と、彼女に翻弄されるクールな女子中学生立石亜由(たていし あゆ)の友情と恋を描く。作品の特徴として、魔法を使用する際に、マジックパソコンなどの未来的な道具が頻繁に登場する。この他、主要人物の人柄や、魅力的なキャラクターの登場、また切ない恋愛要素もあり、読者からの人気を集めた。

『ウルトラマニアック』の概要

『ウルトラマニアック』とは、マジカル学園コメディの少女漫画。また、それを原作とした同名のテレビアニメである。作者は、アニメ化、実写映画化された『ママレード・ボーイ』の原作者でも知られる漫画家の吉住渉。
『りぼん』(集英社)にて、2000年12月号から2002年12月号にかけて連載された。単行本は全5巻、文庫本は全3巻が刊行されている。また、2003年には原作を元に全26話のアニメが制作され、アニマックスで放送された。アニメ版には原作には登場していないオリジナルキャラクターも複数登場しており、DVDや再放送の際には作画が修正されている箇所がいくつかある。

中学生の立石亜由(たていし あゆ)は、クールな雰囲気で後輩の女子生徒に絶大な人気を誇っている。しかし実は密かに好意を寄せている架地哲士(かじ てつし)に気に入られたくて、彼好みの女性を必死に演じているだけだった。そんな彼女のクラスに、転校生の佐倉仁菜(さくら にな)が転校してくる。実は仁菜は魔法王国から人間界へやって来た魔女だった。亜由は彼女の落とし物を拾ったことがきっかけで、仁菜の秘密を知るも、2人は仲良くなる。仁菜は大好きな亜由を手助けしようと魔法を使うが、いつも失敗ばかりを繰り返し、亜由は仁菜に翻弄されっ放しの毎日を送ることとなる。
主人公の亜由は、普通に恋する女子中学生。それに対し、仁菜は自分が魔女だと名乗る普通じゃない女の子。そんな2人の掛け合いが楽しいコメディタッチに描かれているほか、切ない恋愛模様も展開しており、読者を飽きさせない魅力的な作品となっている。

『ウルトラマニアック』のあらすじ・ストーリー

亜由と仁菜の出会い

立石亜由(右)と仲良くなった転校生の佐倉仁菜(左)

クールな主人公・立石亜由(たていし あゆ)は、「クールビューティー」で後輩から大人気の中学生。しかし実の性格はクールではなく、密かに思いを寄せる架地哲士(かじ てつし)に気に入れられたくて、彼好みの女性を演じているだけだった。
そんな彼女の前に、泣きながら歩いている女生徒が通りかかる。その女生徒は先週転校してきた佐倉仁菜(さくら にな)といい、亜由はいじめかと思い仁菜に話しかける。
仁菜はどうやら大事なものを落としたらしく本気で悩んでいたが、亜由は中庭で行われた授業の際に、仁菜が荷物を広げていたことを思い出す。
亜由の記憶は当たっており、そこで電子辞書のようなものを見つけ、仁菜に渡す。亜由から落とし物を受け取り感謝をする仁菜は、それ以降亜由を気に入り、何かと亜由の行動を観察するようになった。

そんななか、亜由が所属するテニス部で男子と女子の対立があり、コートの使用面を賭けて勝負をすることが決定した。女子代表は満場一致で亜由となり、男子代表は辻合宏貴(つじあい ひろき)という生徒になった。
2年でレギュラーの実力を持つ辻合には敵いっこないと落ち込む亜由に、仁菜は笑顔で話しかけ、人気のいない中庭へ誘導する。
そこで仁菜は、自分の正体は「魔法王国(マジックキングダム)」からやってきた魔法少女だということを打ち明ける。仁菜は魔法を使う為に必要な携帯用魔法パソコンを落としてしまうが、それを探し見つけ出してくれた亜由に、仁菜は魔法でお礼がしたいと申し出る。
突然の話に固まる亜由。スルーしようとするも、仁菜の熱意に負けてしまい「試合に勝ちたいから、運動能力をアップする魔法でもかけてほしいと」渋々頼むことにした。仁菜は喜んで了承し、早速亜由に魔法をかける。
するとその魔法は、亜由を男子の身体へ変化させてしまった。混乱する亜由に、仁菜は「運動能力だけを上げる魔法は難しいけど、身体が男になれば自然と運動能力もアップするでしょ」と笑顔を見せる。
これでは男女対決にはならず、本人とすら思われないことに落胆した亜由だが、他の生徒達には自分は彼女のハトコだと苦し紛れの言い訳を立て、辻合との勝負になんとかこぎ着ける。
しかし圧倒的な力の差で試合は亜由の全敗となり、呆気なく終了してしまう。その後、辻合は上手く男子部と女子部の仲裁に入る。試合に勝った辻合の言うことだからと、両者とも彼の言い分に納得しコートの使用面も公平になり、テニス部は平和を取り戻した。その光景を見た亜由は、さすが架地の親友の辻合だと尊敬の念を抱く。

役目が終わったので、亜由は仁菜に魔法を解いてもらおうと思ったのだが、仁菜の魔法がへなちょこすぎるため、結局元の姿に戻れたのはそれから2時間後だった。
亜由が仁菜に振り回される日はこうして始まったのだった。

仁菜の好きな人

仁菜は大好きな亜由の役に立ちたくて、さまざまな魔法に挑戦する。しかし亜由が痴漢を撃退してと明言しているのに、仁菜は不特定多数の異性に電流が流れるようなドジをする。また恋する亜由のためを思って、架地に恋愛感情を芽生えさせる魔法を用意したが、誤ってその魔法を辻合にかけてしまうなど、仁菜の魔法は毎回的外れの結果を招いていた。

ある日、仁菜と亜由は架地が料理部の女子達から手作りクッキーをもらう光景を目にする。
いつも通りモテる架地を見て、彼には好きな人がいるという噂を聞いてはいたが、全く見当がつかないと切なそうにぼやく亜由。そこで仁菜は、この際架地の好きな人を魔法で聞きだそうと提案し、「このチョコを架地くんに食べさせて『好きな人だれ?』って聞けばいいんだよ」と、自白剤のような魔法入りのチョコを亜由に渡す。
放課後、教室で亜由と架地が先生から頼まれた雑用をこなしていた。2人きりの今がチャンスだと、亜由は勇気を出して架地にチョコを差し出し、ドキドキしながら食べるところを凝視していた。その視線に気がついた架地が、亜由の口にチョコを放り込み「じーっと見てるんだもん。あれじゃ悪くてもらえないよ」と笑う。
思わず飲み込んでしまった亜由は慌てて教室を出る。入れ違いに、教室へ亜由の様子を見に来た仁菜は、架地が料理部の女子達からもらったクッキーを袋に入れゴミ箱へ捨てる瞬間を目撃する。
まさかの光景に立ち尽くす仁菜。そうこうしているうちに、教室を出ようとする架地と鉢合わせしてしまう。気まずいながらも、何故クッキーを捨てたのか尋ねるが、架地は悪びれる様子もなく「顔も名前も知らない奴からもらったものなんか食えるか、キモい」と言い捨てた。普段の架地とは予想もつかない返答に戸惑う仁菜に、架地はゆっくりと近づき「他言したらただじゃおかないよ」と脅迫して口封じを図る。
翌日、仁菜は亜由に架地の本性を目撃したことを知らせるが、冗談を言ってると思われ真面目に相手をしてもらえなかった。
この日は学校へ仁菜の飼い猫のリオが遊びに来ていたので、一緒に帰宅しようとパソコンでサーチし居場所を特定する。すると、架地と一緒にいることが判明し、腹黒い架地に大事なペットが何かされるのではないかと危惧した仁菜は、急いでリオの居る校舎裏へと急ぐ。校舎裏へ着くとリオは架地にクッキーを貰い上機嫌で懐いており、少し安心したが仁菜は変わらず架地のことを警戒した。
しかしよく話すと、架地はただ好青年を演じているだけで特別悪い人ではないことが分かった。そして、好きな人はすごく大事にするという架地の優しい笑顔に、仁菜は心を動かされ、彼を好きになってしまった。

後日、魔法王国から3年の教室へ桐島由多(きりしま ゆた)が転入してきた。魔法王国ではトラブルメーカーのユタは、亜由を一目みて気に入り、彼女に何かとちょっかいを出す。当然亜由は、好きな人がいるからときっぱり断るが、そのことを知った仁菜は彼女の邪魔をしないでとユタに目くじらを立てた。
その後、学校の廊下で、架地と広田明穂(ひろた あきほ)が会話をしていた。架地の好きな人は亜由ではないかと明穂から質問されており、それを否定している姿を仁菜とユタは物陰から目撃する。ユタは亜由が失恋した可能性が高いので、そこにつけこめば亜由と付き合えるかもしれないと考える。仁菜は亜由に言って欲しくないとユタに頼むが、その代わり人間界を案内すると称して亜由とのデートを取り持てと交換条件を出される。
仁菜の強いお願いから、ユタと2人で出かけることを承諾した亜由。さまざまな観光地を巡っているうちに、ユタは魔法を頻発し、店員を困らせたり子供を泣かせたりと、人の気持ちを弄んだ。亜由はユタの頬をひっぱたき、仁菜の方が立派な魔法使いだと厳しく叱る。ふざけすぎたと反省したユタは、今日の御礼とお詫びだと、亜由にインスタントカメラを渡す。そのカメラには魔法がかかっており、誰かの写真を撮ると自分ではなく好きな人が写ると説明し、試しに亜由を撮ると架地の写真が出来上がった。したがって、これで架地を撮影すれば、彼の好きな人がわかるとユタは教えてくれた。

次の日、早速架地を撮影しようと行動する亜由の元へ、様子を伺いにユタがやってきた。思わずユタにシャッターを切ると、仁菜の写真が出来上がった。これ以上誤魔化せないと観念したユタは密かに仁菜を好きでいることを告白する。しかし、想いを伝えて気まずくなるくらいなら仲の良い幼馴染みでいたいと、切ない表情を浮かべる。ユタなりにやりきれない気持ちを抱えていることを知った亜由は、片思いの辛さを自分に重ねた。
肝心な架地の姿がどこを探しても見つからず、彼のクラスメイトに尋ねると、架地は今日休みで学校に来ていないことを知る。
肩を落としながら亜由は仁菜が待っている図書館へ行くと、彼女は小さな寝息を立てていた。そこで亜由は、案外ユタを想っているかもしれないと仁菜をこっそり撮影する。出来上がった写真には、予想外の人物である架地が写し出され、亜由は複雑な心境になる。

ユタと亜由が出かけているところをクラスメイトに見られてしまい、2人は付き合っているのではないかとクラスメイトから噂される。その噂が架地の耳にも入り、仁菜を呼び出し真相を尋ねる。
架地の落ち着かない様子を見た仁菜は、架地の好きな人は亜由ではないかと聞くと、架地は照れながら頷いた。自分が好青年を演じているのも、何気なく亜由が言っていた言葉を覚えていたからだと明かす。また、以前、明穂に聞かれた際に正直に答えなかったのは、自分の恋を妨害されたくないという思いがあったためだった。亜由の恋が実ると嬉しくなった仁菜は、早く亜由に告白するように架地の背中を押した。
その後、仁菜が気を利かせて、教室に2人きりになった架地と亜由。架地は真っ直ぐ亜由を見つめて告白をする。突然の告白に嬉しさがこみ上げた亜由だが、その脳裏に仁菜が浮かぶ。仁菜の好きな人も架地だと思うと胸がしめつけられ、知らずに傷つけていたのかと思うと、彼への返事は首を振ることしかできなかった。
落ち込んだ架地から、亜由に振られたと報告を受けた仁菜は、まだ教室に残っている亜由の元へと急ぐ。亜由に振った理由を聞くと、以前写真に出てきた人物が架地だったため、仁菜に遠慮して架地を振ってしまったと答える。
仁菜は大慌てで、自分が架地を好きだと言う気持ちは自覚がなく、亜由の気持ちがうつってしまったせいだと説明をする。そして亜由の幸せを必死で願う仁菜からの後押しもあって、亜由は再び架地に会いに行く。自分の気持ちを正直に伝え、亜由と架地はついにカップルとなった。
仁菜は、教室でシャボン玉に離れた場所を映す魔法を使い、上手くいった亜由と架地の様子を見てホッとしていた。その反面、少しだけ悲しい気持ちになり、涙をこぼした。

仁菜と辻合

ある日、仁菜の忘れ物を飼い猫のリオが届けに来る。学校へ来ても怪しまれないように魔法で人間の姿にしていたので、仁菜がリオに解除魔法をかける。猫の姿に戻ったリオは足早に去って行った。その一連のやりとりを辻合が目撃しており、後日、仁菜へ説明するように迫る。仁菜は何とか誤魔化そうとしたが、辻合の追求が厳しく、自分が魔女であることなど全部喋ってしまった。
それから辻合は仁菜に頼んで、飼い猫を人間にしてもらったり、瞬間移動の魔法を体験したりと楽しんでいた。初めは仁菜の魔法に興味を持った辻合だが、それがきっかけで仁菜の素直で優しい内面を好きになっていった。一方仁菜は、魔法が失敗しても笑って励ましてくれる辻合に惹かれていくようになる。
ユタの方にも仲村紗也香(なかむら さやか)という同級生の彼女ができた。アイスドールという異名を持つ彼女だが、実際亜由が喋ってみるととても健気で良い子なのがわかり、ユタに素敵な彼女ができてよかったと喜んでいた。
しかし紗也香は、亜由が架地の彼女だと知った上で、彼にキスをしようとしたり、仁菜を大事にするユタを怒ってみたりなど、不可解な行動を取っていく。

そんななか、亜由が持ち物をよく紛失してしまうことが増えていた。同じ頃、仁菜の方に差出人不明の嫌がらせの手紙が届く。その中に「魔法王国へ帰れ」と書かれた手紙も届き、手紙の差出人は、仁菜が魔法関係者である事実を知っていることを示していた。
秀英中に魔法王国から教師としてやってきたユタの姉である桐島美斗(きりしま みと)も加わり、仁菜、亜由、辻合で犯人捜しを行う。そこでミトはマジカルフォンという道具を取り出す。マジカルフォンは、現在だけではなく過去や未来も撮影できるもので、手紙が入っていた日時の靴箱を撮影すれば犯人が分かると説明する。しばらくして画面に、1人の女子生徒が仁菜の靴箱に手紙を忍ばせる姿が映る。その彼女は亜由のファンである料理部の女子生徒だったことが判明した。
次の日、亜由が女子生徒を呼び出し事情を聞く。女子生徒は亜由の持ち物をこっそり持ち帰っていることや、仁菜への嫉妬から手紙を出したことを泣きながら謝罪した。そして亜由が2通目に出した魔法王国の件を尋ねると、女子生徒はきょとんとしながら、自分が出した手紙は2通だけで、そのような手紙は出していないと首を振った。仁菜が受け取った手紙は3通あり、あと1通は別人が出したことになる。それは他に秘密を知ってる人物がいることになるため、また新たに犯人を捜す必要が出てきた。
その夜、亜由が帰宅すると鞄の中に手紙が入っていたことに気付く。恐る恐る手紙を開くと『異端者に手を貸す裏切者 秘密を守りたければ 今夜7時ひとりで体育館に来い』と書かれていた。
仁菜の秘密を守るため、そして皆に迷惑をかけないよう亜由は1人で体育館へ向かう。

手紙の犯人

謎の手紙に呼び出された亜由は、夜の体育館でいきなりボールの攻撃を受けその場で失神してしまう。それは紗也香の魔法による仕業だった。
同じ頃、仁菜は辻合と一緒に嫌がらせの手紙を出した犯人を推理していた。辻合が消去法で関係ないと思われる人物を消していき、最後に残った1人は紗也香だった。紗也香は仁菜が女子生徒から受け取った嫌がらせの手紙に便乗し、自分の正体がバレないようにして手紙を出していた。心配になった仁菜は、パソコンで亜由の居場所をサーチし、辻合とリオ、ユタと共に体育館へ出向く。
そこで、紗也香が今は亡き母親が魔法王国出身者であること、父親は普通の人間のためハーフであることを告白する。さらに、幼少期に魔法が使えることが原因で、嘘つき呼ばわりをされて友人を失ったりしたことなど、紗也香の辛い過去が明らかにされた。
そして仁菜に対して嫌がらせをしていたのは、仁菜が自分と同じように魔法を使えるのに亜由という親友もでき、充実した学校生活を過ごしていたのが許せないという憤りを感じていたからだ。
また、紗也香はユタに対して告白したのは仁菜たちに近づくためだったことも判明した。
仁菜は同じ魔法使いとしてこれから仲良くしようと申し出るが、理不尽な怒りが収まらない紗也香は乱暴な魔法で仁菜や亜由などに攻撃を続ける。心優しい仁菜は紗也香に対して反撃しようとしなかったが、紗也香の魔法の攻撃がリオに命中してしまった際に冷静さを失ってしまい、莫大な攻撃魔法を仕掛ける。慌てた辻合が仁菜を制止、ユタは咄嗟に紗也香を庇った。行き場を失った仁菜の攻撃魔法は、空へと上がり、体育館の屋根を溶かしてしまうほどの威力を見せつけた。

次の日、ユタは紗也香を屋上へと呼び出す。ユタは魔法王国に掛け合い、紗也香の母親の実家の住所を手に入れていた。そして自分と一緒に母親の家族に会いに行こうと紗也香に提案する。生まれてから1度も魔法王国に立ち入ったことがなく、母親の家族のことも知らないでいた紗也香は、ユタの発言に驚きを隠せないでいた。散々ひどいことをした自分なのに、それでも親切にしてくれるユタを前に感極まって涙を流す紗也香。
ユタは「ほっとけないんだ。おれ世話のやけるタイプが好みみたいだから」と優しく笑う。その言葉に紗也香は心からの御礼を伝えた。

エトルリア王立魔法学校からのスカウト

辻合に告白され付き合うことになった仁菜。しかし紗也香からは、仁菜はいずれ魔法王国へ帰ってしまうため辻合と結ばれるべきではないと苦言を述べられ、さらに自分に辻合を譲って欲しいと要求される。実は紗也香が仁菜にこのような言い方をしたのは、ユタの好きな人が仁菜だと思い込んでおり、自分に親切にしてくれたユタに幸せになってほしいという気持ちがあったのだ。
そのことを仁菜から相談を受けた亜由は、紗也香を説得しようと次の日屋上へ彼女を呼び出す。
紗也香の気持ちを見透かしていた亜由からは、仁菜と辻合を引き離したとしても彼女はユタのところへはいかないと断言する。加えて、ユタを想っている紗也香自身の気持ちはどうなるのかと尋ねた。
自分の気持ちを犠牲にしても、ユタの力になりたいと呟く紗也香の言葉に、魔法で姿を消していたユタが呆れながら姿を現す。紗也香の説得にはユタが必要と判断し、あらかじめ亜由が呼んでいたのだ。亜由との会話の中で、ユタへの本心を打ち明けたことに気まずくなる紗也香。そんな彼女の本心を知ったユタは「仁菜のことはもういいんだよ。今は紗也香がいるから」と心から紗也香を想っていることを真剣に彼女に伝える。その真摯な気持ちが紗也香に届き、2人はキスをする。紗也香とユタはさらに強い絆で結ばれることになった。
その後、亜由から事の経緯を説明され納得した仁菜だが、紗也香の言った魔法王国へ帰った後のことを考えては落ち込んでいた。
そんな矢先、ミトと三上先生のカップル誕生の場に遭遇する。人間と付き合うことに躊躇しなかったかと仁菜が問うとミトは「今すきでいっしょにいたいんだもん。それでいいでしょ」と素直に答える。さらに帰宅後、ホームスティ先のパパからは「ほんとに好きならなんとかなる」という、それぞれ2人の心強い言葉に、悩んでいた仁菜の背中は大きく押され、自分も辻合を好きでいる気持ちに正直になろうと前向きになった。

次の日、仁菜が帰宅すると母から客人を案内される。その客人はエトルリア王立魔法学校の教官ラキ・ハーロウと名乗り、仁菜が留学前に受けた潜在能力テストの結果から類いまれなる才能を見出し、是非我が校へ入学してほしいと要望する。エトルリア王立魔法学校は一流の魔法使いが通う学校であるため、魔法でさらなる高みを目指したい仁菜にはとても有り難い話で、胸をときめかせる。
しかしエトルリア王立魔法学校は魔法王国にあり、加えて全寮制のため、亜由達とは卒業までの期間離れてしまうことを意味していた。
悩みに悩んだ結果、夢が叶うチャンスだと自分に言い聞かせ、仁菜はエトルリア王立魔法学校へ行くことを決意する。

後日、亜由と架地、仁菜と辻合で遊園地デートへ出かける。家を出る前、エトルリア王立魔法学校へのスカウトの話を一時的に忘れる魔法を自分でかけた仁菜は、デートを目一杯楽しむことができた。
だが、亜由と2人きりになった途端魔法が解け、同時にラキの言葉も思い出してしまった仁菜は「帰りたくないよ」と泣き崩れる。亜由はとりあえず架地の携帯電話に電話をかけ、仁菜の具合が悪くなったと誤魔化し、瞬間移動の魔法で帰宅する。
少し落ち着きを取り戻した仁菜は亜由に事情を説明する。話を聞いた亜由は寂しさも感じながらも、仁菜の夢が実現することを心から喜んでいた。
その後、仁菜の様子を知りたいと辻合から亜由の携帯電話に連絡が入る。泣かないように我慢していた仁菜だが、辻合の声を聞いた途端に涙があふれてしまい、彼にはどうしてもエトルリアのことを言い出せなかった。

エトルリアへ出発する仁菜

仁菜のエトルリア入学への決意とそれにともなう魔法王国への帰国問題を知ったユタは、仁菜を校舎裏へ呼び出す。魔法王国では舞い上がった仁菜の両親が噂を広めており、ユタの耳にも入ったのだと言う。
ユタは辻合と両想いになれた仁菜の気持ちを汲み、エトルリア入学に反対したが、それよりも魔法を上達させたい仁菜の決意が固いことを痛感する。その一連のやりとりをユタが紗也香に話していると、辻合が現われ詳細を聞かせて欲しいと詰め寄った。
事実を知った辻合は、仁菜を呼び出し、大事な話を黙っていたことを叱った。仁菜は辻合を悲しませたくなかったと泣き出してしまう。さらに出発まで10日しかないことを聞かされ驚いた辻合は、明日2人で一緒に過ごそうと提案する。
仁菜と辻合は学校をサボり、2人で仁菜の瞬間移動の魔法を使い、さまざまな場所へ立ち寄る。少し魔法を失敗する時もあったが、一緒にいられたらどこでもいいと、仁菜と辻合は心からデートを楽しんでいた。
日が暮れ、1日が終わろうとする時、仁菜は辻合に「行くなって言ってよ、そしたら仁菜行かないよ」と涙ながらに訴える。辻合は少し驚いたが、すぐに仁菜のことを思って、「言えないよ…そんなこと」と切ない表情を浮かべた。

別れが辛くなると誰の見送りも断って、1人旅立ちを決意する仁菜。
テニスの試合の休憩中に辻合と亜由が会話をしているところへ、瞬間移動の魔法を使った仁菜がこっそり現われる。最後に辻合と亜由に会いに来た仁菜は、笑顔で別れを言い、そのまま本当に消えてしまった。
亜由はその後の試合に集中出来ず敗北となったが、辻合は仁菜の頑張る姿を想い、逆転勝利を収めていた。

1ヶ月後、本屋で立ち読みしている辻合の元へ、マジックパソコンで居場所をリサーチした仁菜が現われる。驚きを隠せない辻合に、外泊許可をもらって人間界へやってきたと説する仁菜。卒業まで一切会えないと思い込んでいた辻合は、本屋で人目を気にすることなく仁菜を抱きしめ、また彼女に会えた幸せに浸っていた。
それから仁菜達は亜由と架地にも会いに行き、久々の再会を喜ぶ4人の姿で幕を閉じた。

番外編

仁菜がエトルリア王立魔法学校に入学してから3年が経過した。順調に卒業試験もクリアした仁菜は、人間界へ戻ってこれることになった。その報告を受けて亜由と辻合、ユタ、紗也香はとても喜び、仁菜との再会を心待ちにしていた。

次の日の午前中、亜由の家に仁菜が訪れた。午後から仁菜のホストファミリーの家に皆で集まる予定だったので、嬉しさを感じながらも疑問を抱く亜由に、「早く亜由ちゃんに会いたかった」と笑顔を見せる仁菜。その言葉を嬉しく思い、集合時間になるまで2人で出かけることになった。
出かけた先で仁菜は服装を自由に替えたり、立ち寄った店でケーキのメニューを変更したりなど、ことあるごとに魔法を躊躇なく使っていく。その後架地と辻合も呼び出し、時を止める魔法までも見せつけた。
亜由は、魔法が上達したのは理解できたが、以前の仁菜は周囲に迷惑をかける魔法は使っていなかったと声を張り上げる。亜由の指摘を受けた仁菜は落胆した表情を浮かべる。そして自分が優秀なためエトルリア王立魔法学校に残らないかと打診されていることを告げ、人間界に戻るのはやめると仁菜はハッキリと言い捨てた。そんな彼女を見て辻合は「誰だお前。偽物だろ」と口を開き、その言葉を仁菜は否定するも、動揺を隠せずにいた。
すると後ろから本物の仁菜が現われ、偽物だった仁菜はテスという少年の姿に戻った。テスはエトルリア王立魔法学校から来た少年で、元々彼も落ちこぼれの問題児だったこともあり、自分と気持ちを重ねた仁菜が在学中可愛がっていた生徒だった。
亜由達は驚いたが、すぐに事情を聞こうとテスに詰め寄る。テスは泣き出し、仁菜とエトルリア王立魔法学校でずっと一緒にいたかったからイタズラをしたと告白する。さらにテスは、成績優秀でこの先もエトルリア王立魔法学校に残れる才能があるのに、人間界を選んだ仁菜をどうしても引き留めたかったのだと言う。
落ち込むテスは、「エトルリアにも時々遊びに行くからね」という仁菜の言葉に慰められ、1人エトルリア王立魔法学校へ戻って行った。

後日、テスから謝罪のメールが届いたと仁菜が亜由に伝える。事が一件落着し、2人は心からの笑顔を見せる。そしてこれから待っているであろう楽しい毎日に、期待で胸を膨らませていた。

『ウルトラマニアック』の登場人物・キャラクター

主要人物

立石亜由 (たていし あゆ)

CV:堀江由衣(アニメ版)/雪乃五月(OVA版)

本作の主人公。秀英中学校テニス部に所属する中学2年生の女子生徒。実際は抜けているところもあるが、本当は憧れの架地哲士(かじ てつし)に気に入られたくて、彼が好みだと言っていたクールビューティーを装う。後輩女子から絶大な人気を集めている。
ある日偶然仁菜の秘密を知ったことから、彼女の失敗魔法によってトラブルに巻き込まれ苦労が絶えない日常を送ることとなる。物語中盤で架地に告白され、恋人同士になる。

佐倉仁菜(さくら にな) / ニナ・サクレイル

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@rosumochi6

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うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEレジェンドスター(うたプリ第4期)のネタバレ解説・考察まとめ

うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEレジェンドスター(うたプリ第4期)のネタバレ解説・考察まとめ

『うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレジェンドスター』とは、恋愛アドベンチャーゲーム『うたの☆プリンスさまっ♪』を原作としたアニメ作品である。国際的なスポーツの祭典「SSS(トリプルエス)」のオープニングアーティストの座をかけて決戦ライブをすることになったST☆RISH、QUARTET NIGHT、HE★VENSの3グループが、決戦に向けてそれぞれのグループが絆を深めながら成長していくストーリーが描かれる。ST☆RISHとHE★VENSのライバル関係が今作の見どころとなっている。

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ぐるなびにて連載のエッセイ漫画【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】をご存知ですか?

ぐるなびにて連載のエッセイ漫画【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】をご存知ですか?

田中圭一先生と言えば、漫画界の巨匠・手塚治虫先生の絵柄で下ネタギャグな作風を確立したパイオニア。その田中先生が現在webサイト「ぐるなび」にて、漫画家ご本人とそのご家族にまつわる“食”にスポットを当てたエッセイ漫画を連載しており、これが大変おもしろい!ですのでこちらでは、田中先生の作品を通して、ご自身も漫画家や他分野で活躍されているご家族も紹介させて頂きます。

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【グッドモーニング・コール】懐かしい!20代向け「りぼん」漫画まとめ【赤ずきんチャチャ】

【グッドモーニング・コール】懐かしい!20代向け「りぼん」漫画まとめ【赤ずきんチャチャ】

少女漫画誌として有名な『りぼん』。これまで連載されてきた作品の中には、ドラマ化やアニメ化されたものもたくさんあります。今回はその中から、主に20代の方が「懐かしい!」と感じるであろう「りぼん漫画」を集めました。これを読んで、ぜひ青春時代のあの頃のトキメキを思い出してください。

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【フルーツバスケット】まだ終わってなかった!続編がある面白い少女漫画まとめ【ママレード・ボーイ】

【フルーツバスケット】まだ終わってなかった!続編がある面白い少女漫画まとめ【ママレード・ボーイ】

『フルーツバスケット』や『ママレード・ボーイ』など、世の中の女性たちがみんな夢中になった少女漫画の数々。連載が終わってしまった時には、なんだか自分の半身が失われてしまったほどの寂しさを感じた方も多いのではないでしょうか。そんなあなたに朗報!なんと、かつての人気少女漫画に続編が登場しているのです。あの頃子どもだった主人公たちも立派に成長して、なんだか感慨深いですね。

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