ハンサムな彼女(吉住渉)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ハンサムな彼女』とは、吉住渉によって描かれた恋愛少女漫画。1988年から1992年に集英社「りぼん」に掲載された。また、1992年にはポニーキャニオンからOVAが発売されている。吉住渉の代表作の1つである。女優である萩原未央は、あるドラマ撮影で熊谷一哉に出会う。芸能界という特殊な環境のなかで、10代の少年少女が夢と恋愛の狭間で葛藤しながら想いを深め合う青春ラブストーリーだ。

『ハンサムな彼女』の概要

『ハンサムな彼女』とは、吉住渉によって描かれた恋愛少女漫画である。集英社の「りぼん」にて1988年11月号から1992年1月号まで連載され、りぼんマスコットコミックスでは全9巻が発刊された。また、集英社文庫では全5巻が発刊された人気作である。1992年にポニーキャニオンよりOVA化されて発売された。
14歳の新人若手女優である萩原未央(はぎわらみお)は、スペシャルドラマへの出演が決まる。そこで、ドラマの共同演出を務めることとなった熊谷一哉(くまがいいちや)と出会う。一哉は有名監督の父親を持ち、同年代でありながら映画監督を目指していた。初対面で演技を酷評された未央は嫌な奴だと感じる。しかし、一哉の映画への真っ直ぐな想いを知り、次第に心惹かれていく。一哉もまた女優としての未央に魅力を感じ、自主制作映画のヒロインに抜擢する。
芸能界にスポットを当てた本作は、未央の親友である人気アイドル沢木彩(さわきあや)や大人気若手バンドなど様々な顔ぶれが登場する。また舞台は日本に留まらず、ハリウッドにまで及ぶ。芸能界という特殊な環境で、未央と一哉はそれぞれに経験を重ねる。純粋な10代の恋愛をしながらも、自分達を取り囲む大人社会に翻弄されるのだ。少女漫画の王道ストーリーの中に、芸能界ならではの展開が練り込まれた魅力的な漫画と言える。

『ハンサムな彼女』のあらすじ・ストーリー

一哉との出会い

若手女優として活躍する14歳の萩原未央(はぎわらみお)は、スペシャルドラマへの出演が決まる。主演は未央の親友であり人気アイドルの沢木彩(さわきあや)で、未央は彩の敵役に抜擢された。主人公の恋人役は人気俳優の森本輝臣(もりもとてるおみ)がキャスティングされる。輝臣は未央の隣人であり、2歳年上の幼馴染でもあった。未央は輝臣に片想いをしており、共演を密かに喜んでいた。そんな時、未央はこの撮影で、有名監督の父親を持ち共同演出を任された熊谷一哉(くまがいいちや)に出会う。初対面にも関わらず、一哉から演技力を磨くようにと指摘された未央は、彼を嫌な奴だと感じるのだった。
撮影が進む中、未央は初めてのキスシーンを迎える。ファーストキスは好きな人がいいと願う未央は、輝臣に告白をするが振られてしまう。輝臣は、彩に想いを抱いていたのだ。落ち込む未央であったが、心を入れ替えて女優業に専念する。その中で、一流の映画監督になるという夢を叶えるために、まっすぐ突き進む一哉を見て未央は心惹かれるようになる。

無事にドラマの撮影が終わり、未央の下に新たな話が舞い込む。ハリウッドの有名監督アーサー・クライトンから新作のヒロインに抜擢されたのだ。しかしそれは、一哉をロスに連れ帰るために利用されたものだった。アーサーは、一哉を役者として作品に出演するよう説得してほしいと未央に頼み込む。未央は一哉にその話を伝えた。後日、未央も出席するアーサー監督の新作映画制作記念パーティに招待された一哉は、「萩原未央はこの映画に出ません。彼女の映画デビュー作を撮るのは、このおれだからです」と発表して未央を連れ去った。驚く未央に、一哉は自身の夢を話す。それは、過去の有名ハリウッド女優のようなとびきりハンサムな女の子を主演に、同年代の仲間のみでとびきり面白い映画を作るというものであった。一哉の映画への熱い想いを知った未央は、アーサーに出演辞退を伝えに行く。アーサーは快く承諾した。そして未央は、一哉と共に初めての映画撮影に取り組むこととなる。

「プライヴェート藍」の制作開始

一哉の自主制作映画「プライヴェート藍」に出演することを決めた未央は、仲間たちを紹介してもらう。一哉の親友でカメラ担当の可児収(かにおさむ)は、このために地元関西から転校してきていた。一哉の脚本は大手グループ企業SOMYの御曹司沖田優一(おきたゆういち)の目に留まり、製作費もまとまって本格的に制作開始となる。沖田は宣伝のため、人気アイドルである彩の新曲をテーマソングに起用する。上述の映画制作記念パーティーでの脱走劇をきっかけに、未央と彩は互いに一哉を好きであることを伝えあっていた。彩は3年前に別れた元恋人一哉への想いを吹っ切れないでいたのだ。こうして、未央と彩はそれぞれの想いを抱えて、映画制作に携わることとなった。
収は未央が一哉へ抱く想いに気付きながらも、彼女を振り向かせようと口説く。しかし未央の気持ちは揺らがなかった。一方の彩は、新曲のプロモーションビデオの撮影後に一哉に忘れられない想いを告げる。一哉は気持ちに応えられずに謝るだけだった。その後一哉は、映画宣伝のための写真集の撮影に行っていた未央に会いに行く。一哉との再会を待ち望んでいた未央は、予想外の再会に想いが溢れて涙してしまう。未央は気持ちを抑えられずに告白をするが、映画制作に専念したかった一哉は、彼女の想いも断ってしまう。失恋からなかなか立ち直ることが出来ずにいた未央は、一哉のことを忘れるために収と交際を始めた。
収と過ごす時間は楽しく、未央は少しずつ心の傷が癒されていく。その頃、沖田の紹介で「自主映画界のプリンセス」と呼ばれる実力を持つ菊池理花(きくちりか)が、演出の手伝いとして映画制作に参加する。未央は、理花と一哉が映画について楽しそうに話す姿を見てショックを受ける。その様子を見ていた収は、未央の一哉への想いの強さに気付き自ら別れを告げた。そんな中、沖田はSOMYの上層部から時間と労力を掛け過ぎていると指摘され、制作中止に陥ってしまう。沖田は上層部の意見を変えられないとしながらも、なんとか公開はさせると一哉に約束する。一哉は撮り残したアクションシーンを完成させるため、自らスタントすることを決める。しかし撮影当日、スタントで使うバイクのブレーキが故障し、一哉は5か所の骨折をする大怪我を負った。責任を感じたSOMYは制作再開を認める。九死に一生を得た一哉は、死を実感したことで未央を振ったことを後悔していたことに気付く。そしてお見舞いに来た未央に想いを 告げ、2人は晴れて恋人同士となった。
その後、「プライヴェート藍」は無事に公開されて大好評となる。

新たな一歩

ある日、アーサーが再び一哉に会いに来日する。アーサーは一哉の第2作目の話を聞き、撮影の勉強も兼ねて自身のSF超大作への主演を一哉に持ち掛けた。役者をやりたくないと思っている一哉だったが、ハリウッドの最新技術を見る機会を逃したくないと考え、出演を承諾する。未央は数カ月アメリカへと旅立つ一哉に寂しさを見せるが、夢のためと受け止めた。

一哉が旅立ち元気のない未央を見かねた彩は、TRAFFIC JAM(とらふぃっくじゃむ)という新人バンドのリハーサル見学に誘う。初めて彼らを見た未央は驚いた。ボーカルの松木聖(まつきしょう)が一哉にそっくりだったのだ。リハーサル後、聖は未央に自身の電話番号が書かれた紙を渡す。未央は戸惑いながらも連絡はせずにいた。しかし後日、聖とバンドメンバーである本間しのぶ(ほんましのぶ)が、未央の通う学校へと転入してくる。それ以来、何かと迫って来る聖に未央は悩むようになった。聖からライブに招待された未央は、終了後楽屋を訪れて一哉以外は考えられないと本音を伝える。話を聞いた聖は怒り、全ては一哉への復讐であったことを打ち明けた。実はアーサーの最新作に聖がキャスティングされていたのだが、一哉が承諾したことにより降ろされたのだった。その後、聖はしのぶに諭され、未央に謝罪をした。

その頃、一哉は過密な撮影スケジュールに追われていた。一哉は、現場でカメラ助手をしているキース・キャンベルと知り合う。キースはアーサーの息子で、一哉のように監督になることを目指していた。キースは自身の映画仲間に一哉を紹介し、仲間に引き入れようと考える。そして一哉に、日本の家族や友人、恋人も捨ててアメリカで一緒に組もうと誘う。一哉はハリウッドで映画の勉強をすることに憧れを抱いていたが、未央と離れたくない気持ちと葛藤する。その数日後、仕事の撮影でハリウッドへ来ていた未央は一哉に会い行き、2人は休みをもらって楽しく過ごした。翌日一哉が仕事の合間、未央はキースから一哉を仲間にしたいという話を聞く。自分の存在が一哉の夢の妨げになっていると知った未央は、帰国の間際、一方的に一哉に別れを告げて走り去る。突然の別れに困惑する一哉は、未央を追いかけるも姿を見失い、十分な話し合いも出来ぬまま彼女は一哉の下を去った。

2人の行く末

帰国した未央は、彩にアメリカでの出来事を打ち明け、一哉への想いを心に留めて自分を磨くと決心する。その頃、一哉は「夢も未央も諦めない」という意志をキースに告げ、映画仲間に加わる話を断りアメリカを去る。帰国後、一哉はその足で未央に会いに行き、もう離れないと固く誓い合った。

CDを出すことになった未央は、歌の先生であり一哉の従兄の佐野亮平(さのりょうへい)に出会う。亮平は、未央がドラマで共演している天才子役佐野晃平(さのこうへい)の父親であった。幼くして母親を亡くした晃平は、未央を新しいお母さんにしたいと亮平にお願いする。一方一哉は、第2作目の制作を進める中で、SOMYの沖田から売り出し中の新人アイドル竹内みちる(たけうちみちる)を主役にしてほしいと頼まれる。未央を主役にするつもりの一哉だったが、沖田の立場を考慮して竹内を起用することにする。これを知った未央は自身が選ばれなかったことに落ち込むものの仕事と割り切り、一哉とのデートの約束で気を取り直した。
しかしデート当日、未央は一緒に撮影をしていた晃平が体調を崩したため、佐野宅へ同行して晃平を看病することになる。一哉はデートの約束を反故にされた上に、夜まで亮平もいる佐野宅にいた未央の警戒心の無さに怒って喧嘩となる。喧嘩したまま数日が過ぎ、一哉は2作目のクランクインとなる。しかし何度撮り直しても、一哉は竹内の演技に納得がいかない。未央を主演に考えた脚本であるからこそ、一哉は未央と同じ演技を竹内に求めてしまっていたのだ。一哉は2作目の監督を降りることを決め、その足で未央の元へと向かい仲直りをした。

後日、未央と一哉はデートをしていた。アーサーの新作で一哉主演の映画を観た後、未央は誕生日プレゼントに指輪を受け取る。2人はいつか薬指に本物をはめることを約束し、仲良く街を歩いていった。

『ハンサムな彼女』の登場人物・キャラクター

主要人物

萩原未央(はぎわらみお)

CV:玉川紗己子
人気若手女優であるが、素顔は14歳の普通の少女。悪役を演じがちだが、クールな見た目に反して素直で明るい性格の持ち主。未央の初恋の相手である人気俳優の輝臣と一緒にいる時にスカウトされ、女優業を始める。しかし輝臣は未央の親友に想いを寄せていることを知り、失恋する。その時に出会った一哉に、自主制作映画への主演に誘われて次第に恋に落ちていく。仕事とプライベートの狭間で、一度は一哉に振られるものの紆余曲折を経て恋人関係となる。

熊谷一哉(くまがいいちや)

CV:関俊彦
映画監督を目指す少年。アメリカ帰りの帰国子女。有名監督の父親を持ち、親の七光りと言われていた。しかし、未央出演のスペシャルドラマで実力を示し、自主制作映画の公開までこぎつけた。元女優である母親譲りのルックスと存在感で、役者としても活躍するが本人はあまりやりたくない。同年代の仲間と共に、ハンサムな女の子をヒロインとしたとびきり面白い映画を作ることが夢であった。テレビに映る未央を観て、ヒロインにすることを心に決める。いつからか未央に恋心を抱くようになるが、映画制作に集中したい一心で無意識に想いを押し殺していた。

沢木彩(さわきあや)

CV:笠原弘子
トップアイドルで本名は木村彩子(きむらあやこ)。未央の親友。友達想いで素直な性格。未央の恋のライバルでもあるが、お互いに尊重して励まし合える良い関係を築いている。元恋人一哉への想いを捨てられないでいたが、正直な気持ちを伝えて振られたことで吹っ切れる。その間も思い続けてくれた輝臣に気持ちが傾き、恋人となる。その後は一哉と未央の関係を、影ながら応援する。

「プライヴェート藍」制作メンバー

萩原礼央(はぎわられお)

vtomotomov513
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@vtomotomov513

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