獣の奏者エリン(ラノベ・漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『獣の奏者 エリン』とは、2009年1月から12月にかけてNHK教育で放映されたアニメ。架空の王国を舞台に、決して人に慣れないとされる獣と心を通わせることができる少女エリンが、国家の思惑に巻き込まれながらも生命の神秘を探究する姿が描かれた。原作は2006年に講談社より刊行された上橋菜穂子による小説『獣の奏者』。青い鳥文庫、講談社文庫からそれぞれ文庫化もされており、シリーズ累計部数は200万部を超えている。シリウスKCにて武本糸会により漫画化もされており、メディアミックスも盛んに行われている。

『獣の奏者エリン』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ソヨン「エリン、生きて、生きのびて、幸せにおなりなさい」

〈闘蛇の裁き〉に処せられる際に、ソヨンが娘の幸せを願った言葉。
ソヨンは自分を助けにきたエリンを見て感動するものの、自分はもう助からないと悟っていた。せめて娘だけでも生き延びてほしいという強い想いから、ソヨンは「エリン、生きて、生きのびて、幸せにおなりなさい」と言って掟を破り〈操者ノ技〉を使ってエリンを救った。

エリン「この世に生きるものが、なぜ、このように在るのかを知りたいのです」

カザルム学舎の〈入舎ノ試し〉で課された作文で、エリンが書いた一文。
作文の題は「なぜ獣ノ医術師になりたいのか」であり、この作文に書いた「この世に生きるものが、なぜ、このように在るのかを知りたいのです」という想いがその後王獣と心を通わせることになるエリンの思考や行動の軸となっていく。
教導師長のエサルは、「優秀な学童はたくさん見てきたが、エリンが書いたこの作文には驚かされた」と語っている。

セィミヤ「遠いものだからこそ、異なるもの同士だからこそ、互いに手を伸ばさなねば始まらない」

〈降臨の野〉で、戦場に取り残されたエリンをリランが救出した場面に遭遇した際、シュナンの「自分たちもエリンとリランのような強い絆を結べるだろうか」という問いかけに対し、セィミヤは「遠いものだからこそ、異なるもの同士だからこそ、互いに手を伸ばさなねば始まらない」と返答した。
生物の種を超えたエリンとリランの親子のような関係性を目の当たりにしたことで、セィミヤはシュナンとの婚姻を受け入れ、平和な国づくりのために力を合わせることを決意する。

『獣の奏者エリン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

アケ村のシーンはほとんどがアニメオリジナル

アニメのエピソード1〜7では、アケ村でのエリンとソヨンの幸せな暮らし、そしてソヨンが処刑されエリンがアケ村を去るところまでが描かれている。
エリンの日常を描くエピソードでは、闘蛇の幼獣の脱走や幼獣の卵泥棒の脱走などのトラブルに際するエリンの立ち回りを描くことで、エリンの知的好奇心の強さや聡明さを印象付けている。
しかしこれらのシーンはほとんどがアニメオリジナルであり、原作小説では開始直後から〈牙〉の大量死が発生している。

ワンシーンのイメージから生まれた物語

原作小説である『獣の奏者』は、全4巻(『I 闘蛇編』『II 王獣編』『III 探求編』『IV 完結編』)と外伝(『刹那』)で構成されている。
作者・上橋菜穂子は、自身は心の中に浮かんだワンシーンから発想を膨らませて物語を紡いでいくタイプの作家であると語っており、本作も「孤高の獣に向かって竪琴を奏でる少女」のイメージが心に浮かんだところから執筆が始まっている。ふと手に取った養蜂に関する本からもインスピレーションを受け、生命の不思議に心震わすエリンの人物像が浮かび上がってきたと言う。
しかし当初は『闘蛇編』『王獣編』の2作で『獣の奏者』の物語は完結したとされており、作者自身も、『闘蛇編』『王獣編』が物語の全てであり、「綺麗に閉じられた球体のような物語」として、続編があるとは考えもしていなかった。
しかし、読者からは続編を望む声が多く寄せられ、また自身もアニメ制作に携わる中で、前作では描ききれなかった謎に迫る物語を描きたいという思いが生まれ、『探求編』と『完結編』、『獣の奏者 外伝 刹那』が執筆された。

エリンの親友・ユーヤンのモデルは著者の友人

エリンのカザルム学舎における親友・ユーヤンにはモデルとなる人物が存在しており、それは著者の親友である。
彼女が関西出身であったことからユーヤンの話す訛りの強いリョザ語は関西弁で表現されることになった。また、ユーヤンという名前もその親友の愛称からとられている。

エリンが命を落とす原作のラスト

原作小説の5冊(『I 闘蛇編』『II 王獣編』『III 探求編』『IV 完結編』)と外伝(『刹那』)のうち、アニメ化されたのは前半の2巻分(『I 闘蛇編』『II 王獣編』)のみである。
『III 探求編』『IV 完結編』では、『II 王獣編』の11年後、母親となったエリンが再び起きた〈牙〉の大量死の調査を命じられたことをきっかけに、時代の奔流に巻き込まれていく様子が描かれている。『IV 完結編』の最後では、闘蛇と王獣を使った戦争で大混乱が起きる。エリンは神話の通り音無し笛を吹くことで両軍の闘蛇と王獣の動きを止め、事態を収集させる。その際にリランは墜落死、その亡骸に足を挟まれたことでエリン自身も4日後に命を落とす。
外伝『刹那』には、ジェシが生まれるまでの日々をイアルの視点から描いた「刹那」、エサルの若き日の恋を描いた「秘め事」、幼いジェシが乳離れをするまでを描いた「はじめての…」の3編が収録されている。

『獣の奏者エリン』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):スキマスイッチ「雫」(1話 - 14話、16話 - 30話、総集編1話 - 10話)

スキマスイッチによる楽曲だが、アニメシリーズ後半では元ちとせが歌唱している。

OP(オープニング):元ちとせ「雫」(31話 - 34話、36話 - 50話)

スキマスイッチによる同曲を、31話以降は元ちとせが担当している。
元ちとせが歌った際には、「僕らを優しく〜」という歌詞が「二人を優しく〜」に変更されている。

ED(エンディング):cossami「After the rain」(1話 - 29話、総集編1話 - 6話)

白丁花
白丁花
@littlemy090

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