精霊の守り人(守り人シリーズ)のネタバレ解説・考察まとめ

『精霊の守り人』とは、上橋菜穂子原作の異世界のファンタジーである守り人シリーズのアニメ化作品。
2007年4月~9月にNHK-BS2の衛星アニメ劇場枠で全26話構成で放送された。
100年に一度卵を産む水の精霊に卵を産みつけられた新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムとチャグムを守るよう母妃に託された女用心棒バルサ。皇子の命を狙うヨゴ皇国。卵を狙う異世界の生物。二人の過酷で困難に満ちた旅が始まる。

世界観

『サグ』と『ナユグ』

この物語の世界には、人々が生活するこちら側の世界である『サグ』と普通の人では見ることもかなわない、あちら側の世界『ナユグ』がある。
この二つの世界は時に重なり、時に離れたりしながらも同時平行的に存在しお互いに影響しあっており無関係の存在ではない。この世界で生きる呪術師はあちら側の世界ナユグを見たり、ナユグの住人と会話をしたりできる。

この物語は、100年に一度ナユグの生き物である『水の精霊』が寿命をむかえる時にサグの生物に次代の『卵』を産み付けることで始まる。水の精霊は本来、サグに水の恵みをもたらす。もし精霊の卵が無事孵化しなければサグは大かんばつをむかえてしまうのだ。しかし、人々は本来の歴史を忘却し、水の精霊を『水妖』と呼び大かんばつをもたらす存在だと思っていた。そんな水の精霊の卵がよりにもよって新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムの体内に産み付けられてしまったのである。

新ヨゴ皇国

先住民族ヤクーの住む地に、200年ほど前に南方にあるヨゴ皇国から王位継承権争いを忌み、新しい国土を求めて渡ってきた聖祖トルガルがヤクー人たちからの願いを聞き届けヤクー人を苦しめる化け物『水妖』を倒した、という体裁で歴史を作り、その優位性をもってヤクー人から支配権と土地を奪い樹立したヨゴ人による新国家。
200年後の現在、ヨゴ人とヤクー人は混血が進み、純粋なるヤクー人は山奥などわずかにしか存在しなくなっている。

カンバル王国

新ヨゴ皇国の北方、青霧山脈を越えた先にある国。バルサやジグロの祖国。
国土の大半は山地で、土地はやせほそりほそぼそと酪農などをして人々は暮らしている。
カンバル王を中心として9つの氏族からもっとも精強な武人によってなる『王の槍』が王直属の側近として仕えている。

『精霊の守り人』のあらすじ・ストーリー

「女用心棒バルサ」

新ヨゴ皇国にやってきた短槍使いの女用心棒バルサ。
橋に差し掛かった時、皇族を乗せた牛車の牛が暴れて皇子が川に投げ出されてしまい、バルサは咄嗟に救出に向かう。

皇子を抱えたその時、不可思議な力がバルサと皇子を包み込んだ。不可思議な力に守られ、バルサは無事に皇子を救出した。
その後、バルサに皇族の使いがやってくる。遣わしたのは皇子の母、二の妃だった。命を救った礼にと豪勢な食事によって歓待を受ける。

夜分、寝入りかけたところに、なんと二の妃自身が皇子を伴って忍んでやってきた。

皇子の名はチャグム。チャグムは得体の知れぬ存在にとり憑かれ、その話を聞きつけた父帝はそれを「水妖」と予想した。水妖の出現は世界に大干ばつを起こすと言われており、国家の安寧を脅かすとして、チャグムは既に幾度か命を狙われることになった。先の牛車の謎の暴走も事故を装った帝からの暗殺で、逃れるためには行方をくらますしかなかった。

そこで腕利きと評判のバルサを見込んで、二の妃はチャグムを連れて逃げてほしい、という。
バルサはやむをえない、と二の妃の願いを聞き入れた。そしてただちにチャグムの住まいである二の宮に火をかけさせて、帝の目をくらませ逃走を開始する。

「逃げる者・追う者」

チャグムを連れて脱出するバルサ。バルサは仲間のトーヤとサヤの家に身を隠し、旅立ちの準備を始める。

一方、若き英才にして将来を期待される星読博士シュガは、聖導師と話す。聖導師は女用心棒がチャグムを連れて逃れたであろう事を知っていた。
聖導師はチャグムを密かに奪回するため、帝と聖導師しか存在を知らない影の実行部隊「狩人」をバルサに差し向けるのだった。

夜分、出立するバルサとチャグム。しかし、そんな二人に狩人がせまる。
チャグムを先に逃がし、4人もの狩人に囲まれながらも奮戦するバルサ。狩人の刀を腹部に受けながらも渾身の力で反撃、昏倒させ森に逃げ込む。

狩人の一人、ジンは木に隠れていたチャグムをたやすく捕獲した。ジンがチャグムに刃を突き立てようとしたその時、最後の力を振り絞り駆けつけたバルサがジンを打ち倒し、チャグムを救出する。しかし道端に倒れたバルサはチャグムに、薬師で生計をたてるタンダに救援を求めるよう息も切れ切れに言う。

チャグムはバルサの身を案じ必死に駆け、タンダの家、山小屋にたどりつく。

「トロガイの文」

バルサがタンダによって手当てを受けている頃、タンダの師匠にして稀代の呪術師トロガイはあちらの世界「ナユグ」の住人と接触、世界の異変の原因が「卵」にあると知る。そして、トロガイを狙っていた狩人2人の意識を奪うと、世界の異変を知らせるべく聖導師に文を送る。
聖導師も、世界に起こりつつある異変を知らせるトロガイの文を軽視できず、新ヨゴ皇国建国の偉人大聖導師ナナイの遺した碑文解読の命をシュガに下す。

バルサの治療中、はじめて空腹というものを知ったチャグムが食事をとっていた時、トロガイがタンダの山小屋に入ってきた。

ある程度は状況を知っていたトロガイ。チャグムの中に宿っているのが「精霊の卵」であることを山小屋にいる一同に教える。それは、こちらの世界「サグ」では水妖と呼ばれあちらの世界「ナユグ」では「ニュンガ・ロ・イム」と呼ばれ、先住民ヤクーの民が「水の精霊」と呼ぶ存在が100年に一度産み付けるものだった。そして、その卵を産み付けられたものを「ナユグ」では「精霊の守り人」と呼んでいた。

朝、見た目を変えるべく髪を切り、平民になりきるチャグム。

一方、狩人達はバルサなら青霧山脈を越えるはずと見当をつけ、狩人のモンとゼンが追う。そして、やがてついにバルサの姿をとらえた。
まさにその時、巨大な狼がバルサ達をくわえ、毒霧に包まれた谷底に落ちていった。

「乾の相」

大きな狼にくわえられたのはトロガイの策であり、バルサとチャグムは無事に脱出していた。
バルサは逃亡をいったん中止し、新ヨゴ皇国の下町である扇ノ下に潜伏することを決める。そして、チャグムと二人で暮らすために、水車小屋を家として借りる。

一方、ヨゴ皇国ではチャグムの葬儀が進められていた。チャグム死亡によって水妖の危険から脱し「乾の相」と呼ばれる大旱魃の危険は去ったとシュガは判断される。そして碑文解読の任を解かれ、シュガは自身の無力とチャグム喪失に悲嘆した。

バルサとチャグムは新しい生活を始める。民衆の暮らしぶりに改めて驚くチャグム。
また、本来の星読みの仕事に戻ったシュガは、消え去ったはずの「乾の相」が天文観測から依然として読み取れることを発見する。

「乾の相」の状況を探るべく扇ノ下にやってきたシュガは、偶然にもタンダと出会う。そしてそこで地質調査を行い、魚の様子や野菜の育ち具合などを調べ、生き物達の姿からやはり大旱魃が迫っていることに危機感を募らせる。

「結び目」

「結び目」それは、こちらの世界「サグ」とあちらの世界「ナユグ」が強く結びつく境目。その結び目で「ナユグ」の住人、水の民から真実を聞き出し、建国正史の間違いを理解した呪術師トロガイ。チャグムに産み付けられた卵は水妖ではなく、水の恵みをもたらす「ナユグ」の水の生物の卵だったのだ。

星読博士のシュガも、大聖導師ナナイの残した碑文を無断で読み進めるうちに建国正史の捏造に気がつく。チャグム生存を信じる彼は、もしチャグムに産み付けられた卵が恵みをもたらす存在なら、いまだ消えない「乾の相」はチャグムの生死が関わっているのではないかと予想する。

一方、「ナユグ」の住人「火の民」に追われ命からがら結び目から帰還したトロガイは、チャグムに知りえた知識を伝える。

「夭折」

トロガイはチャグムを外出させた後、バルサとタンダに「卵食い・ラ・ルンガ」の存在を明かす。ラ・ルンガは、精霊の卵を食う存在であることだけはわかるのだが、それ以上のことは水の民から聞き出せなかった。
そして、卵が孵る地は「宴の地」。その時は春分。時期がくれば卵そのものがそれを知らせる、という。

更に詳しい情報を探るべく、先住民ヤクーが住むトウミ村に出立することが決まった。

一方、シュガは碑文をさらに読み進め、チャグム生存の手ごたえを見つける。そのことを真っ先に第一皇子サグムに伝えようとするが、もともと体が弱かったサグムは、すでに体力も気力も限界を迎えていた。
サグムはチャグムに詫び、静かにそのはかない命を閉じたのだった。

碑文を読み進め、チャグム生存の確信を決定的なものにすべく、シュガは青霧山脈にきた。そんなシュガを狩人が追ってきて、刀を突きつける。
シュガの碑文解読は聖導師の許可を得ない行動であり、聖導師は狩人を派遣したのだ。チャグム生存を固く信じるシュガの話を聞いた狩人のモンは、率先して降雨によって毒の晴れた谷底に降り、チャグムの生存を確信する。

皇宮に戻ったシュガは帝と聖導師の前で堂々と建国正史の誤りを指摘する。事態の深刻を理解した帝はチャグム捜索の全権をシュガに託す。そしてシュガは狩人を用いてチャグム探索を開始する。
そして、真っ先に目をつけられたのが、すでに狩人に顔を覚えられていたバルサの仲間トーヤとサヤだった。狩人はトーヤとサヤに巧みに取り入り情報をかき集める。

バルサ達のもとへ道具を届けに出るトーヤを、狩人達は尾行を開始する。
出立の準備に下町である扇ノ下にでるバルサとチャグム。チャグムが一人歩いていた時、皇宮に帰ろうとするシュガと遭遇する。

以前とは状況が変わったことや帝の誤解が解けたこと、そしてサグムがすでに死亡してしまったことをチャグムに明かしてしまう。チャグムは激しく動揺する。しかしバルサはシュガを昏倒させ、後で説明するから、とチャグムを急き立てタンダと二人で先にトウミ村へと出立させる。

一方、トーヤはバルサとチャグムの隠れ家である水車小屋を訪れたが、既に狩人の探索の手が伸びていたことを知り水車小屋に火を放つ。
バルサは火事をみて異変に気づいて狩人の存在を知り、その場を離れる。

「いにしえの村」

トーヤのおかげで狩人から逃れたバルサは、チャグム、タンダ、トロガイと合流しトウミ村を目指す。
そして狩人達はバルサ達の行動の裏にヤクー人の関わりに気づき、徐々にバルサ達の捜索の糸を手繰ってゆく。

トウミ村へとやってきたバルサ達は、早速「精霊の守り人」の知識を尋ね、タンダは村の伝承を受け継ぐ語り部を探す。その古き伝承を聞いていたのが若いニムカだった。ニムカは伝承を語る。

「精霊の守り人」は「春の等しき日」がくると、たった一人「宴の地」へと出立した。そして「シグ・サルア」という花の咲き乱れる大きな泉について、そこで卵を孵す準備に入る。しかし異世界「ナユグ」の生物「ラ・ルンガ」が、人には見ることも触ることもできない牙をもって、精霊の守り人を真っ二つに引き裂いてしまったという。

自身を待ち受ける過酷な運命を知り、激しく動揺しチャグムは気を失う。
そのチャグムの様子をいぶかるトウミ村村長ソウヤやニムカにバルサは、この子こそ、精霊の守り人なのだと告げる。

ニムカから、チャグムは自身を待つ過酷な運命を知ってしまった。ニムカもまた、チャグムにショックを与えてしまったことを悔い、解決法を探る。
一方、自身の運命から背を向け逃げ出そうとするチャグムを、責任を感じるニムカは手助けする。

バルサはチャグムの勝手な行動を責める。それと同時に、皆で力を出し合ってチャグムも卵も命にかけても守るから信じろ、と誓うのだった。
また同じ頃、シュガと狩人達もバルサ達を追ってトウミ村にまで迫っていた。

「狩穴へ」

シュガ達の前にトロガイとタンダが現れた。シュガは二の后の依頼でチャグムに宿った水妖の謎を解こうとトロガイに文を送ったこともあり、宮中における唯一のトロガイの理解者でもあった。

トロガイは、皇宮の奥深くにいようと万の軍勢をもっていようと、ラ・ルンガというあちらの世界「ナユグ」の生物からは、チャグムを守りきれないことを説明する。新ヨゴ皇国には初代聖導師の遺した碑文があり、その碑文解読に解決の糸口があるとシュガは言う。

両者の会談は、来るべき時「春の等しき日」に「宴の地」での合流となることでとりあえずは話がついた。

そして、一刻の猶予もないことを知ったシュガは、ただちにガカイのもとを訪れた。ガカイは第一皇子サグムの傳役(教育係)だったが、皇子死亡により任を解かれ意気消沈していた。シュガは碑文解読を率先して行うことができるのはガカイしかいない、と説得に当たる。そして、ガカイもまた、シュガの熱誠に突き動かされたのだった。

一方、春の等しき日がくるまで過ごすべく、以前からバルサらが冬篭りをするために使われていた「狩穴」にやってきたバルサ達。早速、食料を集めたり薪を集めたりとチャグムを鍛えるべく、バルサは準備にいそしむのだった。チャグムのあかぎれに傷む手に薬を塗るバルサは、かつて自分も子供の頃に育ての親であるジグロに同じことをしてもらっていたと言う。そして、チャグムに自身の過去を語り始めるのだった。

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