大雪海のカイナ(アニメ・漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『大雪海のカイナ』とは、弐瓶勉(東亜重工)原作のテレビアニメ作品である。拡がり続ける「雪海」により大地が消えかけた異世界を舞台に、天膜に住む少年カイナと地上の少女リリハの冒険を描く。独自の世界観と美麗なビジュアルが特徴である。カイナとリリハが軌道樹と呼ばれる巨木や古代兵器「建設者」などの謎に迫りつつ、滅びかけた世界を変える物語が始まっていく。細谷佳正、高橋李依、坂本真綾など豪華な声優陣が出演している。アニメ終了後ほどなくして劇場版『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』が公開された。

『大雪海のカイナ』の概要

『大雪海のカイナ』とは、2023年にフジテレビの「+Ultra」枠で放送されたオリジナルテレビアニメ作品である。漫画とのメディアミックスもされている。漫画版『大雪海のカイナ』はアニメに準拠した内容で、弐瓶勉(東亜重工)原作、武本糸会作画で2022年から『月刊少年シリウス』で連載。
原作は『シドニアの騎士』や『BLAME!』などのSF漫画で知られる弐瓶勉で、ポリゴン・ピクチュアズがアニメーション制作を担当した。同年10月には劇場版『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』が公開される。劇場版は『大雪海のカイナ』の完結編として制作され、地表を覆った大雪原から救いの水源となる大軌道樹に向かうカイナとリリハの冒険を描いている。独裁国家プラナトの軍隊と戦いながら、失われた文字を読み解き、滅びゆく世界の謎に迫っていく。監督は安藤裕章、脚本は村井さだゆき。新たにプラナトの最高指導者ビョウザン役で花江夏樹が声優として演じている。
物語は、地表を覆った大雪原から逃げるように人々が巨樹「軌道樹」の上に「天膜」と呼ばれる居住空間を作って暮らす世界が舞台。天膜に住む少年カイナは、地上から昇ってきたアトランドの王女リリハと出会い、彼女に同行することになる。カイナは初めて地上の雪海に降り、そこでアトランドと対立するバルギアという国との戦争に巻き込まれてしまう。カイナとリリハは、古代の謎や軌道樹の秘密に触れながら、雪海の世界を変える冒険を繰り広げる。
作品の特徴としては、弐瓶勉の独特な世界観とデザイン、ポリゴン・ピクチュアズの高度なCG技術、澤野弘之や馬瀬みさきなどの豪華な音楽スタッフが挙げられる。また、登場人物の声優には細谷佳正や坂本真綾などの実力派を起用。作品の魅力としては、雪海という美しくも厳しい世界で繰り広げられるカイナとリリハの成長と絆、アトランドとバルギアの対立と和解、軌道樹の謎などが挙げられよう。作品は、日本だけでなく海外でも高い評価を受け、CrunchyrollやAmazon Prime Videoなどの配信サービスで視聴可能である。作品の略称としては、「大雪海」や「カイナ」などが使われることが多い。また、作品の題名は、2016年に発売されたRPGゲーム『いけにえと雪のセツナ』と似ているが、関連性はない。ただし、両作品ともに雪の世界を舞台にしていることや、主人公の名前がカイナとセツナという響きの似たものであることなど、共通点も見られる。

『大雪海のカイナ』のあらすじ・ストーリー

天膜の少年と雪海の少女

カイナは、軌道樹の上にある天膜の村で暮らしており、その村でただ1人の若者でもあった。天膜の村は、雪に覆われた地上とは隔絶された世界で、住人たちは軌道樹の恵みに感謝しながら平和に暮らしていた。カイナが天膜に群がる虫を狩りとり、それを食糧にすることで、村の生活は維持されていたのだ。カイナのいる以外の村は残っていなく、住人のほとんどは高齢で、天膜の上の世界は存亡の危機に瀕してもいた。
リリハは、地上の国アトランドの王女であった。アトランドは、雪海と呼ばれる広大な雪原に囲まれた小さな国で、水はあるものの枯れつつあるのだった。リリハは、水源を探すために、伝説に残る水を無限に生み出せる「賢者」の存在を信じていた。「賢者」を探す旅に出たリリハは、その道中で周囲をうろいつていたバルギア軍に見つかり、追い詰められてしまう。ついて来てくれた隊長のジャルジがリリハの盾となって戦死するも、浮遊虫と呼ばれる空中に浮かぶ虫に取りつけたゴンドラ(バスケット)に乗り込むことに成功し、天膜へと昇ってくる。そこで、カイナと出会うことになる。村に案内されたリリハは、最初村の変わり者である看板じいをその風貌から「賢者」と勘違いし、感極まって自分が「アトランド王女リリハ、賢者を探して」と自己紹介するが、看板じいは驚くばかり。
カイナとリリハは、最初は互いに警戒しながらも、次第に打ち解けていく。カイナは、リリハに軌道樹の上にある天膜の村を案内し、リリハは、カイナに地上の世界のことを教える。村の人々はリリハを歓迎し、新しい服である厳しい環境でも活動可能な気密服を作るよう取り計らう。しかし、リリハが探していた「賢者」は、どこにも実在していなかったことを知り、落胆した。カイナはみんなから集められた道具と、看板じいから渡された樹を削る道具「樹皮削り」を使ってリリハとともに下界へと降りていくことになる。途中、暗くなった頃合いを見て野営をするが、そこで2人はカイナの両親のことなどを話し込み親睦を深め合う。しかし、雪海へと降りたところでアトランドの敵国バルギアの襲撃を受ける。バルギアは水源となる軌道樹を持たない艦を駆使する移動国家で、アトランドの水を欲しがっていたため、リリハを人質にとって降伏を迫るつもりだった。

リリハの救出

雪海に飛び込み、バルギア軍から逃げるカイナとリリハだったが、敵に捕まってしまう。アトランドの親衛隊長オリノガは兵とともに王女を探していたが、彼女が捕まったのを見ると単身バルギア艦へ乗り込んだ。軍を率いていた敵将のアメロテと一騎打ちをするが、まるで歯が立たない。するとリリハは気丈にもカイナを雪海に突き飛ばし、捕まりながらも「カイナを連れて逃げて」とオリノガに言った。オリノガは生まれて初めての戦闘でどうすることもできないカイナだけを回収して、アトランドに逃げ帰る。一方、アメロテに捕まり、対峙したリリハは戦争を終わらせるために「『賢者』にお会いできた」と嘘をつく。しかしアメロテに疑われ、そのことを信じ込ませようと一緒に降りてきたカイナのことを、「あの方は賢者様のお弟子様です」と告げるものの、すぐに現実主義者のアメロテに一蹴されてしまうのだった。
バルギアはリリハとアトランドを交換条件にしようとしていた。アトランドの王ハレソラは娘一人のために国を失うのは忍びないとリリハを助けないことを決断する。それに反発するリリハの弟ヤオナは、カイナの部屋に忍び込んで彼とともに姉の救出へと向かう。2人は雪海の中に伸びる軌道樹の根を伝って交渉の場へと赴くが、遅れてしまい、リリハは雪が降る夜に檻に入れられ吊るされた上に晒されてしまう。提督のハンダーギルが戻ってきて痺れを切らして艦を出航させたのがチャンスとなり、カイナとヤオナは艦に乗り移ってリリハを助け出した。潜んだ艦はそのまま帰国し、3人はバルギアへと運ばれていく。

脱出と漂流

バルギアは移動要塞であった。艦の荷物に隠れたままバルギアに辿り着いたカイナたちは、脱出しようとしていたところ少年少女の盗賊団「ドクロ兄弟団」に遭遇し、リリハの首飾りと、みんなの荷物を盗まれてしまった。途方に暮れていると敵国アトランドの王女を処刑するという情報が耳に入る。首飾りを盗んだ少女が代わりに処刑されようとしているのだ。誘き出すための罠だと知りつつ、リリハは自ら名乗り出る。少女が釈放されるのを見たリリハはカイナが助けてくれるのを信じて雪海に飛び込こむ。少女は盗賊団の男の妹だったこともあり、カイナがリリハを助けると一団の隠れ家に匿まってくれる。彼らはバルギアに滅ぼされた国から連れてこられ、彼らのような者に回ってくる、虫などから搾った本物じゃない水を飲まされて辛い思いをしていた。カイナの、全く枯れていない大軌道樹の話に興味を持つが、兵士たちが探しにやってくる。盗賊団はカイナたちを信頼し、作った舟を差し出す。それでやっと脱出を果たすのだった。一行は互いを励まし合いながらアトランドを目指して航行する。

アトランドとバルギアの戦争

カイナたちが寝込んだことで漂流してしまうが、カイナとヤオナがリリハを助けに行って偶然辿り着いた場所にまた再び出られて、近くにアトランドを見つけ戻ることが叶った。彼らはリリハを助けに行く途中でカイナが文字を見たことを思い出したのをきっかけに、アトランドの地下で飾られていた旗が大軌道樹への地図になっている事実を発見する。それと一緒にあった、ものを浮かせることができる浮遊棒とバルギアの造船技術があればそこへと行けると確信する。旗を手に王の元へ向かうが、どうしてもアトランドの水が欲しいバルギアが戦争を仕掛けてきた。ハンダーギルが操る古代兵器「建設者」によって小国は街の住居部がいっぺんに破壊されるなど、甚大な被害を被ってしまう。3人は「建設者」の街への攻撃で、リリハとカイナ・ヤオナの2人に分断される。戦争で「建設者」の攻撃を受けた時に、リリハが首飾りに願いを込めて「賢者様、本当にいたのなら…」と呟いた。すると首飾りが光だし、神出鬼没で主にリリハに見えていたヒカリが現れ、雪海に消えると守り神であるオオノボリが現れる。何かしてくれると希望を抱いたのも束の間、「建設者」によってオオノボリは消されてしまった。ヤオナはリリハと合流する前に出会った負傷者の国民を避難させるために、ともに行動していたカイナをリリハの元へと行かせ、1人で運ぼうとする。リリハは戦争を止めるために旗を父である国王に届けようとしていたが、行く最中に崩壊で閉じ込められていた侍女を助けるため、燃えていた炎を消そうとして旗を犠牲にしてしまった。なおも国王の元へ向かうリリハだったが、「建設者」の攻撃に巻き込まれてしまう。そこへカイナが現れ、リリハの元へ駆けつけた。なおも迫り来る「建設者」だったが、カイナはリリハを守るように前へ進み出て「樹皮削り」を使う。つまみを最大にすると、レーザーの出力が桁違いに増し、「建設者」は壊れ、倒すことに成功したのであった。「建設者」を倒された衝撃で狼狽えるハンターギル。雪海馬に乗り機会をうかがっていたオリノガにここぞとばかりに、銃で頭を撃たれ、息絶えたのだった。アメロテが白旗をあげ、アトランドとバルギアは停戦にこぎつける。カイナの案内で多くの人を救える水を蓄えた大軌道樹を目指し、一行は旅を続けるのであった。

『大雪海のカイナ』の登場人物・キャラクター

天膜の住人

カイナ

CV:細谷佳正
天膜に住む青年で、主人公。雪海にも人がいると信じている。虫を食べるのを厭わない。カラビナやエイト環を使いこなし、運動能力は高い。両親はともに亡くなっている。リリハとの出会いをきっかけに、下界(雪海)へ降りる。文字などの概念を知らない純真無垢な性格。リリハは、賢者を探しに天膜に昇ってきたと言うが、カイナは賢者という言葉も知らなかった。リリハに惹かれて彼女とともに軌道樹を降り、初めて地上の雪海にたどり着く。そこで、アトランドと対立するバルギアという国の存在や、人間同士で殺し合うという現実を目の当たりにする。カイナは、戦争の理由や意味を理解できず、ただリリハを助けたいという気持ちで行動する。リリハが奪われると、リリハの弟・ヤオナとともに交渉場に乗り込み、取り返す。「樹皮削り」を使い、バルギアの古代兵器「建設者」を倒し、アトランドとバルギアの戦争を止める。その後、カイナはリリハたちとともに、大軌道樹への旅を目指す。

看板じい

真ん中の白い髭を生やした人物が看板じい。

CV:千葉繁
天膜の村に住む看板を研究して生活する老人。文字を読める最後の1人に読み方を教わり、その知識をカイナにも教えていた。リリハに最初賢者と間違わられる。雪海に興味を持つカイナの心情を慮り、他の村人との話合いののち、快く彼とリリハを送り出す。

大おば

CV:鈴木れい子
天膜の村に住む老い先長くない者の1人で、女性陣では1番の歳かさ。カイナの将来を心配している。

中ばば

CV:橘U子
天膜の村に住む老い先長くない者の1人。カイナの将来を心配している。

中じじ

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