邪馬台幻想記（漫画）のネタバレ解説・考察まとめ

『邪馬台幻想記』の概要

『邪馬台幻想記』（やまとげんそうき）とは、弥生時代の日本を舞台にした、矢吹健太朗による少年漫画。
1998年に読み切りが2本発表された後、『週刊少年ジャンプ』の1999年12号から29号に連載された。単行本は全2巻。

当時18歳だった矢吹の初の連載作品であり、結果として打ち切りにはなるも、アクションシーンの迫力や女性キャラクターのかわいらしさは高く評価されており、「打ち切りが惜しまれる作品」として知られる。矢吹にとって思い入れもあれば心残りもある作品であり、キャラクターのビジュアルや設定など、後の作品に本作の要素を活かしている。
2020年から連載が始まった『あやかしトライアングル』では、本作の設定の多くがほぼそのまま取り入れられており、「事実上の続編」もしくは「『邪馬台幻想記』と同じ世界観の物語」とする声も少なからず上がっている。

戦乱続く弥生時代の倭国（日本）。邪馬台国（やまたいこく）の先代女王ヒミコからその座を受け継いだ壱与（いよ）は、戦を無くすために倭国統一を目指していた。壱与を暗殺するために陰陽連（おんみょうれん）という組織に送り込まれた紫苑（しおん）は、彼女の高い志を知り、また「陰陽連こそ自分の父の仇である」ことを知り、邪馬台国側に寝返ってその力を振るう。

『邪馬台幻想記』のあらすじ・ストーリー

若き女王と暗殺者

「倭国」（わこく）と呼ばれる弥生時代の日本では、長く続く戦乱により多くの民が苦しんでいた。邪馬台国（やまたいこく）の先代女王ヒミコからその座を受け継いだ15歳の少女壱与（いよ）は、戦を無くすために倭国統一の夢を胸に抱く。
それを良しとしない謎の組織陰陽連（おんみょうれん）は、紫苑（しおん）という暗殺者を邪馬台国に送り込む。紫苑は父であり月代国の王でもあった蒼志（そうし）の仇を討つために暗殺者となった弱冠13歳の少年で、これまでにいくつもの国の長を討ち取り、倭国にその名を轟かせていた。

邪馬台国の警備を突破して壱与の下まで辿り着く紫苑だったが、彼女自身かなりの使い手だったこともあり暗殺に失敗。しかし壱与は紫苑を捕らえず、その力を倭国統一という自分の夢のために使う気はないかとスカウトする。
壱与の高い志を知り、また失敗した時に備えて待機していた暗殺者を通して「陰陽連こそ自分の父の仇である」ことを知った紫苑は、陰陽連に見切りをつける。これ以降、紫苑は「自分に新しい居場所と力を振るう意味を与えてくれた」と壱与に敬意を抱き、彼女の側で力を振るうようになる。

高天の都への旅路

倭国のどこかにある、古の秘術で隠された高天の都（たかまのみやこ）には、ここを制した者の願いを叶えるという「神威力」（かむいのちから）が眠っているとされていた。倭国を牛耳ることを目論む陰陽連はこの地を長年探し続けており、「陰陽連があれだけ探しているということは、高天の都の伝説も神威力の存在も本当のことなのだろう」と判断した壱与もここを目指していく。
壱与の護衛のレンザ、側役のナシメ、邪馬台国の武人ヤマジといった者たちと交流し、協力しながら紫苑は壱与と共に高天の都の手掛かりを探していく。一方、陰陽連は壱与の暗殺も諦めておらず、シュラや紅真（こうま）といった手練れの暗殺者がたびたび邪馬台国を襲撃。紫苑はこの撃退にも力を発揮し、少しずつ邪馬台国の人々から信用を得ていく。

やがて紫苑と壱与は、常世の森（とこよのもり）と呼ばれる未開の森へと赴く。この奥地には高天の都の民の末裔が暮らしているらしく、彼らから高天の都の情報を集めるのが目的だった。
不可思議な幻影によって味わわされる、己の過去のトラウマの前に苦しみながらも、2人は常世の森を進んでいく。物語はここで終わり、紫苑たちのその後がどうなったのかは不明である。

『邪馬台幻想記』の登場人物・キャラクター

主要人物

紫苑（しおん）

13歳の少年。月代国の王子だったが、父の蒼志が何者かに殺された後、自ら仇を取るため陰陽連の暗殺者となった。
壱与の高い志と、自身の仇が陰陽連だったことを知り、彼女と共に倭国統一のために歩み始める。

壱与（いよ）

15歳の少女。先代であるヒミコから、邪馬台国の女王の座を受け継いだ人物。天真爛漫な性格だが内面はかなり思慮深く、長く続く戦乱とそれにより苦しむ民を憂い倭国統一を志す。

邪馬台国

ヒミコ

邪馬台国の先代女王。巫女として優れた能力を持っていたとされるが、どのような人柄だったのかは不明。

レンザ

壱与の護衛。体術を得意とする。壱与に対しては女性として意識している節があるが、彼女には相手にされていない。

ナシメ

壱与の世話役の女性。女王でありながら奔放な性格の壱与には手を焼いている。

ヤマジ

邪馬台国の武人にして軍人。兵士たちを束ねる総隊長の地位にある。元陰陽連ということから紫苑を警戒するが、次第に彼の実力を認めて信頼していく。