純情ロマンチカ(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『純情ロマンチカ』とは累計発行部数が1,500万部を突破している「BL(ボーイズラブ)コミック」であり、中村春菊の代表作である。2008年にはアニメ化もされ、DVDやグッズ、ドラマCD、ゲームが発売されるなど、その充実ぶりはファンを沸かせた。主人公の「高橋美咲(たかはしみさき)」が難関大学受験のため、兄である「高橋孝浩(たかはしたかひろ)」の親友の「宇佐見秋彦(うさみあきひこ)」に家庭教師をしてもらうところから物語は展開されていく。

『純情ロマンチカ』の概要

『純情ロマンチカ』とは、中村春菊により2002年より『CIEL TresTres』にて掲載され、2014年8月に『Emerald』に移籍した、「BL(ボーイズラブ)」作品である。累計発行部数は1500万部を突破しており、人気の高さが伺える。2008年から放映されたアニメは3期まであり、声優陣は櫻井孝宏や下野紘、神谷浩史など豪華なキャストが揃っている。また、2012年にはOVA『純情ロマンチカ 16』が、コミックス第16巻プレミアムアニメDVDに収録された。
主題が『純情〇〇』形式のシリーズ作品となっており、『純情エゴイスト』や『純情テロリスト』など、『純情ロマンチカ』にも登場する人物たちが織りなすストーリーがそれぞれ収録されている。また藤崎都と中村春菊との合作小説『純愛〇〇』シリーズも角川ルビー文庫より刊行されるなど、とても期待値と注目度の高い作品となっている。恋愛の切なさや葛藤を、ギャグを交えながら展開していく様は、視聴者や愛読者から高い支持を受け、BL作品の中での評価も高い。
主人公の「高橋美咲(たかはしみさき)」は大学受験の勉強のために兄である「高橋孝浩(たかはしたかひろ)」から親友の「宇佐見秋彦(うさみあきひこ)」に家庭教師をしてもらうことになる。最初の秋彦への印象は良くなかったが、接することで自分の中に気持ちの変化が生まれていくことに気づく美咲。そんなある日、孝浩の誕生日会で事件が起き、それを機に美咲と秋彦の距離は縮まっていく。男同士の恋愛に悩みながらも、加速していく想いに美咲は戸惑うも、秋彦は優しく受け入れていく。恋人同士になり、安定するかと思われた2人の関係は、秋彦の家族との接触や、様々な人物との関わりにより変わっていく。他の収録作品である『純情エゴイスト』や『純情テロリスト』などの登場人物が関わるシーンもあり、そこも見どころである。

『純情ロマンチカ』のあらすじ・ストーリー

純情ロマンチカ

主人公の「高橋美咲(たかはしみさき)」は8歳の頃両親を亡くした。その美咲を養い育てていく為に、兄の「高橋孝浩(たかはしたかひろ)」は行きたかった大学進学をを辞め、就職することを決意する。そのことに美咲は申し訳なさを感じながら育った。そして美咲は高校生になり、進路を決める段階で「同じ学部なら…」と兄の行きたがっていた難関大学を受験することを決意。だが模試の結果はCやD判定ばかりであった。そんな中、苦手意識を持っていた兄の親友である「宇佐見秋彦(うさみあきひこ)(愛称ウサギ)」がひょんなことから家庭教師をしてくれることとなる。「旧財閥宇佐見グループの次男」「帰国子女で、T大学法学部ストレート合格、主席卒業」「都内一等地5LSDKのマンション最上階に1人暮らし」というベタベタな肩書きを持つ「直森賞最年少受賞、超ウレウレ小説家」の秋彦の家に兄の手料理(家庭教師代)を持ち、通うことになった。初めて行った日に偶然、秋彦が書いた小説の横に「秋川弥生」という別のペンネームで書かれた怪しげな小説があることに気づく。その内容はいかがわしく、登場人物に秋彦と兄の名前を見つけた美咲は、秋彦に対し、「兄に対する不純な気持ちを持っている」と軽蔑を含んだ感情を覚える。だが、秋彦と接していくうちにそんな気持ちは解け、兄に対して片思いし続けている秋彦に対して不憫ささえ感じるようになる。秋彦のおかげで模試の判定が上がっていく中、美咲は秋彦に対して特別な感情が芽生えていくことに気づいていく。
ある日、美咲と秋彦は孝浩の誕生日を一緒に祝うことにする。そこに孝浩が1人の女性を連れてきて「結婚する事にした」と告げる。笑顔で祝う秋彦に「ウサギに一番先に紹介したかった」と言う兄に腹を立てた美咲は秋彦を連れて外に出た。大泣きする美咲を見て、秋彦も感情を抑えきれず涙し、抱きしめ合う。
後に恋人関係になるも、秋彦の家族のことや、男性同士の恋愛に2人の悩みが尽きることはない。その度に話し合い、理解を深め、求め合うことで2人の距離は縮まっていく。

純情エゴイスト

ロマンチカ編から遡ること6年前、同じT大学に通う幼馴染の宇佐見秋彦に想いを寄せていた「上條弘樹(かみじょうひろき)」は、叶わないと知りつつ、強引な手段で振り向かせようとした結果、秋彦を傷つけてしまい自責の念にかられていた。それでも気持ちが消えることはなく、秋彦と距離を取る。ベンチで泣いていた上條の前に偶然通りかかった「草間野分(くさまのわき)」はその泣き顔に恋をし、手を掴むと、広場でお酒を飲んでいる社長たちの宴会に無理矢理混ぜ、気持ちを落ち着けてあげようとする。撫でられた手の感触が秋彦と重なり、少し動揺した自分に焦る上條だった。その帰り道、野分は上條の家までしつこく着いていき、「勉強を教えてほしい」と申し出る。だが「無理だ」と断られると野分は上條の家の鍵を奪い逃走し、上条は唖然とする。次の日、目覚めると野分が目の前にいることに驚いたが、朝飯に釣られ、それを許す。
野分は台風の日に養護施設の前に置き去りにされていたことからその名前がついた。中学校を卒業した後から働いていたが、福祉関係の大学に行きたいと強く思うようになり、その前の大検(大学入学資格検定)を取るための勉強をしなくてはいけなかった。野分は上條に勉強を見てくれるように再度頼み、それを引き受けた上條は自分の大学の勉強の合間に見ることにする。距離が近づくにつれて、なんでも直球で素直な表現をする野分に心惹かれていく。
時が過ぎ、上條の家に連絡が取れなくなったことを心配した秋彦が来る。それに嫉妬した野分は拒否するように扉を閉め、上條に告白をし、そのまま流されるように体を重ねる。惹かれあっているのは確実だが、関係性は曖昧なまま時を重ねていた。
プライドの高い上條だったが、ある日大泣きしながら野分に告白し、それを受け止めた野分と改めて恋人同士となる。同棲も開始し、お互いに忙しいながらも時間を作り、仲を深めていく。

純情テロリスト

「宮城庸(みやぎよう)」は唐突に「高槻忍(たかつきしのぶ)」に呼び出され、「好きなんだけど」「運命なんだ」と告げられる。庸の歳は35、忍は18歳。親子ほどの歳の差があり、最初は全く相手にしていなかった。少し経ち、学部長の娘であり、宮城の元嫁である「高槻理沙子(たかつきりさこ)」が彼氏を連れて家に戻ってくるのを弟である忍が嫌がったということで、学部長から宮城に2週間ほど忍を預かってくれないかと相談がくる。告白をされていた事実はあったが、学部長の頼みでもあり断りきれず、宮城は渋々承諾する。ズカズカと土足で人の心の中に踏み込んできたり、ストレートに想いをぶつけてくる忍に苛立ち、意地悪をするがその反応が返って忍の本気度を証明してしまう。そのまま一緒にはいれないと判断し、宮城は家を出るのであった。
宮城にはかつて恩師であり、想い人である「先生」がいた。両想いだったその人は病気に侵されており、亡くなってしまう。当時まだ若かった宮城は、忍と同じように、相手に直球に想いを伝えていた。それが大人になるにつれて感情を隠すのが上手くなり、人間関係も上辺で当たり障りなくするのがいいと思い、それに準じた行動をとるようになっていた。当時の自分と忍を重ね、「若い」と思いつつもその心は掻き乱されていく。
そんな時家に帰る用事ができ、忍と出会してしまい言い合いになる。忍は「諦めてやるから俺を抱いてみろ」と言い出し、行為をしようとするも上手くいかず、「ごめんなさい」と一言告げるとそのまま家を出てしまう。今まで一緒にいる時は宮城の傍にいることを優先し、うるさいほど存在感を表していた忍がいなくなったことで心にモヤが広がっていくのを感じる宮城だったが、不意な学部長からの電話に家を飛び出す。忍は自分の気持ちを押し殺し、そのままオーストラリアに留学しようとしていたのだ。宮城は自分が何をしているのか、どうしてこんなに焦っているのかわからなかったが、決心したように忍の前に立つと「お前を好きになってみたいと思った」と告げる。
先生を裏切ることになるのではという考えが暫く抜けなかった宮城だったが、忍と関わっていくことで徐々に気持ちが前向きになっていることを感じ、忍もそんな宮城に感情を暴走させることは少なくなり、想いをさらに強めていくのだった。

純情ミステイク

「朝比奈薫(あさひなかをる)」は幼い頃に「井坂龍一郎(いさかりゅういちろう)」の家に世話係としてやってきた。薫が井坂の家に来た理由は、薫の父親の会社が倒産し、一家心中しようとしていたところを井坂の父親に助けられ、そのまま朝比奈家の面倒を井坂の父親が見ることになった為である。井坂はそんな薫のことを「守ってやらなきゃ」と思うも、いつも守るつもりがお世話されているような状態だった。薫のことをいつの間にか好きになっていたことに気づくも笑顔1つ見せてもらえず、井坂は怒られてばかりの日々。薫が笑顔を見せる時、それはいつも朝比奈家を救ってくれた井坂の父親に向けられていた。
時は経ち、井坂が丸川書店へ入社する頃になっても関係性は変わらず、会社でも主人とお世話係の関係は継続していた。いつも傍にいるのに、薫が見ているのは相変わらず井坂の父親。家族を救ってくれたことに対しての尊敬と忠誠を誓う姿勢を薫は見せていたのだが、それが井坂にはわからず、自分の気持ちが伝わっていないと感じる。井坂は薫に対して強がって見せたり、喧嘩を売ってみたりと気を引こうとするがうまくいかない。「小説家になる!」と井坂が言っても小説1本も書くわけでもなく、そんな姿勢を井坂は薫に怒られてばかりだ。「自分には見せない優しい顔を、父親には見せる」という井坂のモヤモヤもあり、すれ違っていく2人。その上、当時高校生だった秋彦が内緒で書いていた小説を井坂がたまたま読み、その文才に圧倒され打ちのめされてしまう。薫のことや、秋彦の文才のことなど、井坂は欲しい物全てが掌から零れ落ちていくような感覚に悩み、劣等感や、寂しさなどで次第に落ち込んでいく。一方、薫も井坂を想っていたが、まさか井坂からも想われているとは知らず、井坂のために離れることを選択する。井坂は薫を追いかけ、互いに今まで言わなかった気持ちや感情を吐露することができ、そこで初めて2人の関係性が新たに始まっていくことになる。恋人関係になったり、同棲したりもするが、薫の「お世話係」としての癖は中々抜けず、ヤキモキする井坂であった。

純情センチメント

「伊集院響(いじゅういんきょう)」は『ゲテモノ料理人 ザ☆漢』の作者であり、人気漫画家である。原稿の締め切りが迫るたびに極度のネガティブ思考に陥っているが、その際に『ザ☆漢』を愛読している美咲に慰められる機会があり、そこから美咲に好意を抱く。だが美咲に言い寄るも失恋してしまう。
「柳瀬優(やなせゆう)」は伊集院の漫画のアシスタントであり、『ザ☆漢』のファンでもある。累計売上1,000万部を誇る人気漫画家の「吉川千春(よしかわちはる)」に好意を寄せていたが、犬猿の仲である「羽鳥芳雪(はとりよしゆき)」と恋仲であることが発覚し、失恋する。
お互いに失恋を経験し、乗り越えていく2人。柳瀬は天然な伊集院に翻弄されつつも惹かれていき、伊集院もその気持ちに応え、受け入れていく。

『純情ロマンチカ』の主な登場人物・キャラクター

純情ロマンチカ

高橋美咲(たかはしみさき)

CV:櫻井孝宏、伊瀬茉莉也(幼少期)
ロマンチカ編の主人公。秋彦とは恋人同士。手先が器用で料理上手。伊集院が描く、大人気漫画『ゲテモノ料理人 ザ☆漢』の大ファンである。
8歳の時に両親を事故で亡くし、人を「送り出す」ということに不安を感じたり、兄と2人で支え合って生きてきた為、周囲からの気遣いを苦手とする傾向がある。
明るく元気でお人好しな性格のせいか、よく秋彦に振り回され、様々な人から知らない間に好意を持たれる。
秋彦が「秋川弥生」の名前で出している如何わしい小説の新作原稿を読んでは抗議している。

宇佐見秋彦 (うさみあきひこ) / 秋川弥生 (あきかわやよい)

CV:花田光、佐藤利奈(幼少期)
ロマンチカ編の準主人公で、愛称はウサギ。
旧財閥宇佐見グループの次男で、10歳までイギリスで育った帰国子女。T大学法学部をストレート合格、そして主席卒業し、直森賞・菊川賞・国際文学芸術賞大賞を受賞した大人気作家でもある。上條とは実家が向かい同士の幼馴染で、同い年である。
親族からは事実上の嫡男として期待されていたが、父親は異母兄である「宇佐見春彦(うさみはるひこ)」しか可愛がらず、母親の「宇佐見夏子(うさみなつこ)」も家から出て行くなど家庭の不和が目立ち、家を出た。
美咲の兄である孝浩に10年間片想いをしていたが、彼の婚約を聞かされ失恋。その際、美咲に救ってもらい恋人同士になった。
生活能力は皆無で、家事をほとんど美咲に任せている。強引でマイペースだが、一途でとても繊細な性格をしている。
「秋川弥生」というペンネームで執筆しているBL小説は、趣味と実益を兼ねていると断言している。

高橋孝浩(たかはしたかひろ)

CV:谷山紀章
美咲より10歳上の兄。両親の死後、美咲を引き取り、働きながら1人で育てた。その際にM大進学を諦めており、それが美咲がM大を目指したキッカケにもなっている。
秋彦とは高校時代からの親友であり、秋彦の自分に対する恋愛感情には全く気づかないまま結婚した。

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