ハッピーピープル(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ハッピーピープル』とは、釋英勝によって描かれた青年漫画。1983年から1992年頃まで集英社『週刊ヤングジャンプ』にて、1993年から1994年まで集英社『月刊ベアーズクラブ』にて連載された。1997年には映画化され、VHSビデオ化もされている。少年犯罪やストーカー、詐欺や人身売買などの人間の闇を色濃く描いている反面、心温まるストーリーも何話か含まれている。人間社会が抱える様々な問題を皮肉なストーリーと独特なイラストで描いた、1話完結の短編集である。

ヒラ巡査の藤井(ふじい)は、見回り中に割れたブランド物のサングラスを見つける。サングラスを調べてみると、特定の人物の犯罪行為が映し出されることが分かった。藤井は出世のためにサングラスの力を使い、次々と手柄を立てて有名人になる。しかし昇格筆記試験に落ちてしまい、自暴自棄となる。そこで、テレビ局に特ダネを与える代わりに500万円の謝礼をもらう約束をさせる。そして、サングラスで見た火災現場を伝えた。しかし、サングラスを落としたことに気付き、現場付近へと戻ってしまう。藤井の姿を目撃したテレビ関係者により、大勢の死者がでた事件の容疑者として捕まった。道端に落ちたサングラスには、死刑確定と書かれた新聞紙が映し出されていた。

フィーバー

ある家族の話である。パチンコ好きの夫に説得され、幼い子供を連れて母親はパチンコ店を訪れる。そこから母親はパチンコにハマり、買い物帰りや平日の午前中など、子供を連れてパチンコへ行っては少しずつ稼いでいった。ある夜、夫婦は子供を連れてパチンコ店へと向かう。両親が台に向かい合っている間、子供は他所の子供と一緒に駐車場で遊んでいた。野良猫を追い掛けて車の下に潜り込んだ時、子供に気付かず発進した車により轢き殺されてしまう。騒ぎを聞きつけた夫婦は、子供の亡骸を抱きかかえて泣いた。1年後、夫婦は子供の墓参りをした帰りにパチンコ店の前を通りかかる。2人は台へと向かい合い、出てくる大量の玉を嬉しそうに箱に入れるのだった。

ベルリンの壁

週刊誌の記者である一志(いちし)は、カーレースの中継を同僚たちと観ていた。冗談で「事故れ!」と指さすと、偶然にもレース場で大事故が発生する。皆に揶揄される中、一抹の不安が残る。昔からサイコロの目を転がすと、思った通りの目が出るようなことが多々あったのだ。翌日、一志はプロ野球選手の引退試合の取材へと向かう。会場全体がホームランを期待する中、「1球目は空振りをしろ!」と念じてみる。結果はホームランとなり、一志は安堵する。帰社後、同僚たちはスプーン曲げの生中継を観ていた。テレビの能力者に言われるがまま、皆「曲がれ」と念じると、見事にスプーンが曲がった。そして一志は気付く。皆の期待や願いが同時に1つになると、実現することが出来るのだ。その数日後、東ドイツのベルリンの壁が壊されたというニュースが入った。

千秋楽

膝の怪我で連敗している家城山(いえきやま)は、相撲協会から呼び出される。協会は、全戦全勝の東京乃海(とうきょうのうみ)を無敗で横綱にするために、家城山に対戦相手となり負けるように指示する。家城山は反対しつつも、まともに対戦しても勝てるはずはないのだと諭される。家城山は自身の価値を証明させるため、徹底的に東京乃海を研究して猛特訓した。試合本番、家城山は膝の痛みを堪えながら東京乃海に勝つ。相撲協会は判定を覆そうとするが、家城山の親方により阻止される。家城山の予期せぬ勝利に会場は歓声に包まれる。親方は足を引きずる家城山を支えながら、「足が治ったら、今日のような根性で横綱になって協会をみかえしてやれ」と伝えて笑顔で共に退場した。

ガチャ

大学生の中西(なかにし)は、バイトに明け暮れて遂に大金を手にする。その時、ドアがノックされて女性の声が聞こえた。開けると新聞の勧誘にきた男女2人組であった。2人は押し売りで、難癖をつけて無理矢理に部屋へと侵入してくる。縛り付けられた中西だが、大金を見つけられて抵抗する。男は中西を痛めつけ、女は金を漁る。すると、ドアがノックされてテレビの受信料の集金屋がやって来る。2人は集金屋を殺してしまい、カバンの中のお金を漁った。自分も殺されてしまうと思った中西は、隙をみて2人に抵抗する。そして命からがら男女を倒し、警察へと電話を掛ける。するとドアがノックされ、「すいません毎朝新聞ですけど、おたく今どこの新聞とられてます?」と声がした。

至福の刻

青山(あおやま)という男は、山中である花見つけて家に持ち帰る。その花をすり潰し、ミルクや餌に混ぜて、ゲージに入った猫達に食べさせた。猫は5分もしない内に泡を吹いて死んだ。高校時代にいじめられていた青山は、元クラスメイト達への復讐のために同窓会を開いて、毒物で殺そうと計画していた。同窓会当日、青山は毒入りのビールを全員に配る。しかし、あと少しのところで警察がやって来て取り押さえられた。猫の死臭が原因で、青山の住むアパートの住人が通報したのだ。捕まった青山は、いじめが原因で右目の視力を失ったことを警察に訴える。しかし同級生たちは、「いじめはなかった」「悪ふざけ」と答えるのみで、誰も加害者意識はない。青山は留置所内で、再び復讐を試みることを誓うのだった。

ドロン

高校生の久(ひさし)と親友のドロンは、幼い頃からの友人であった。ある日の帰り道、買った自販機のジュースに農薬が入っており、久は入院する。退院後、ドロンと立ち寄ったファミレスの飲み物からも農薬が検出された。警察はドロンを疑うが、久のポケットから園芸用の農薬が見つかり、さらには自殺願望が書かれた日記も見つかる。久は無意識に自殺しようとしているのではないかと自信を失うが、全てはドロンが仕組んだものであった。真相が明らかになり、ドロンは警察に逮捕される。過去に一度だけ万引きをしたという事実を唯一知る久に、「ドロン」と呼ばれるたびに蔑まれているように感じていたのだ。久はショックを受けるが、「彼に伝えて下さい。彼が僕の悪口を言ったやつになぐりかかってくれたこと、一生忘れないって」と刑事に頼んだ。

僕の人生チイパッパ

東大出身の中村(なかむら)は、学歴を妬む課長から毎日のようにパワハラを受けていた。そのストレスで腹痛に悩まされ、無理に参加させられた接待で血を吐いてしまう。病院での検査により、末期の胃がんであることが判明した。絶望する中村は病院を飛び出して街中を歩いていると、課長に出会う。全ての要因である課長に殴りかかろうとするが、返り討ちにあってしまう。どうせ死ぬのだからと自暴自棄になった中村は、課長の後をつけて鈍器で殴り殺した。翌日、入院した中村の身に奇跡が起こる。末期であったはずの癌が、消え去ったのだ。医者は「大きなストレスがとれた」と言い、家族は喜んだ。その時、外からパトカーのサイレンが聞こえた。

いつかある日に

ある公園で、幼い少女が気絶して倒れているのが発見される。その傍らには、腹部を損傷して死んだ飼い犬が横たわっていた。急患やってきた少女を処置していた医者は、内視鏡で腹部に大量の蜂が潜んでいることに気付く。急いで昆虫学者の川島教授(かわしまきょうじゅ)を呼び出して確認してもらう。そして、環境破壊の過程で餌を失った蜂が、人を餌として繁殖し始めたことに気付く。川島は、いつかこうなるのではと危惧していたのだ。そうこうしているうちに、少女の腹部を喰い破り、大量の蜂が出てくる。処置室にいた医者や看護師は次々と襲われ、為す術がない。何もしらない病院関係者は、少女の容態を確認しに処置室へと入ってくる。そして蜂達は外の世界へと、新たな餌を求めて飛び立っていった。

とかげのしっぽ

ある百貨店で勤続25年となる店長は、重役候補にまで上り詰めていた。重役の椅子を手に入れるまで、何事も起きない事を祈っていたが、バイトの少女を誘拐した身代金事件が起きる。少女は、北家城(きたいえき)という社員の恋人であった。北家城は少女を救うため、店長に要求の1億円を支払うように懇願する。しかし、店長は少女の命より会社のお金を優先する。警察の力を借りてなんとかお金を用意するも、犯人の指定時刻を過ぎたために少女は殺されてしまった。北家城は、保身に走って少女を見殺しにした店長を恨む。後日、今度は店長を誘拐した犯人から身代金の要求がくる。前回の事件以降、店長代理となっていた北家城は、犯人の要求をのまずに電話を切った。

青いリンゴ

バス停に両親と並んでいた大学生の青年は、居酒屋から出て来た男女5名の少年たちに遭遇する。女性に絡む少年たちに注意したことがきっかけで、青年の両親は暴行を受けて死亡する。少年たちは逮捕されるも、少年法の適用により保護観察のみで釈放される。全く反省していない少年たちを恨み、青年は怒りに我を忘れて殺害しようとする。保護観察中なのを無視してバーで酒を飲む4名を見つけ、青年はガソリンを撒いて3人を殺害する。残った1人を連れて、もう1人の家へと向かったところで警察に止められてします。青年は3人を殺した罪で、死刑となった。生き残った少年2人は、少年法の陰で変わらず悪事を行い続けるのだった。

諸君 楽して儲けヨー

フリーターのスズキは、お金が貯まらない現状に不満を持っていた。その時、ラジオから聞こえた結婚詐欺による保険金殺人の事件が耳に入る。スズキは同様の方法で金を手に入れようと決めた。そして、結婚相談所で出会った望月(もちづき)という女性と結婚する。良い関係を築き、一度は真面目に暮らそうと考えるも、だらしがない望月に嫌気が指して毒殺を試みる。スズキは彼女の好きなケーキを購入し、毒を仕込む。しかし、望月の入れてくれたコーヒーを一口飲むと、震えと汗が止まらなくなる。実は、望月も遊ぶ金欲しさに保険金殺人を決行したのであった。望月は死にゆくスズキを見ながら、ショートケーキを口へと運んだ。

ハッピーコイン

扇木コウ
扇木コウ
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