ハッピーピープル(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ハッピーピープル』とは、釋英勝によって描かれた青年漫画。1983年から1992年頃まで集英社『週刊ヤングジャンプ』にて、1993年から1994年まで集英社『月刊ベアーズクラブ』にて連載された。1997年には映画化され、VHSビデオ化もされている。少年犯罪やストーカー、詐欺や人身売買などの人間の闇を色濃く描いている反面、心温まるストーリーも何話か含まれている。人間社会が抱える様々な問題を皮肉なストーリーと独特なイラストで描いた、1話完結の短編集である。

角南(すなみ)という男子学生は、不良生徒からのいじめを苦に自殺を図る。しかし不良生徒に見つかり、暴行を受けて頭を強打し、気が触れてしまう。友人の大内(おおうち)は呼び出され、今後は角南の代わりになるよう命令される。角南は一時的なショックと診断されるも、心配な大内は同行する。不良生徒を追う角南は、別行動を取った1人にボーガン向けて襲い掛かる。実は、狂った振りをして殺そうとしていたのであった。角南を止めようとした大内は、撃ち殺される。角南はボーガンを握りしめ、「本当に狂ってるのはオレがやられてるのを見て見ぬふりをしたり、いじめをしてよろこんでいるおまえらだ」と笑みを浮かべて学校へと向かった。

ゴールドラッシュ

道で倒れている老人を発見した青年は、彼を病院へと運ぶ。礼金を期待する友人達は青年を引き連れて、老人のいる病院へと向かい、大企業の社長であることを知る。友人たちは前祝いとして、青年の財布を持って買い出しへと向かった。残された青年が公園のベンチで寝そべっていると、病院から抜け出した老人が現れる。老人は青年を殺そうとするが、すんでのところで警察に取り押さえられた。経営不振から精神を病んだ老人は、前日にホームレスを殺害しており、道中で寝込んでいたのだ。その頃、何も知らない友人たちは「人に親切にしといて損はないものね」と買い物を楽しんでいた。

Unhappy Young Manの冒険!!

予備校生の古田秀樹(ふるた ひでき)は、パチンコにハマっていた。当たりが出ずに腹を立てる秀樹は、自分の周りの物が破裂していくのに気づく。まさかと思い、吠えてくる犬に怒りをぶつけると犬の頭が破裂した。自身の能力を確信した秀樹は、片想いの女の子の家へと向かう。彼女の恋人を殺した後、「彼氏がいなくなったら僕と交際してくれませんか?」と告白するも「タイプじゃないの」と振られ、秀樹は女の子を殺してしまう。秀樹は後悔するが、翌日には気を取り直してパチンコへと向かう。自分のミスで当たりが出なかったことに腹を立て、破裂しようと歪みだす顔を必死に押さえた。

Unhappy Young Man 2か月後の冒険!!

2か月後、元の顔に戻った秀樹は競馬場へと向かう。賭けに失敗した秀樹はまたもや自身に腹を立て、顔が歪んで怪我をした。心配した母親が駆け付けるも、治療費の未納と競馬場にいたことがバレてしまう。母親に怒られた秀樹は、母親も破裂させてしまいそうになるがなんとか怒りを抑える。懲りずに再び競馬場を訪れた秀樹は、うまく怒りをコントロールして邪魔な馬を殺して大金を手に入れる。しかし、全額を賭けた目当ての馬が転倒して破産する。秀樹は度重なる失敗に自身を呪い、再び顔が歪み始める。病院を訪れた秀樹だったが、ひょっとこのような形になった顔はもう元には戻らなかった。

ドリームテレビ

友人と電車に乗っていた青年は、通り過ぎる景色の中に殺害現場を目撃する。2人は殺人事件の目撃者としてメディアに引っ張りだことなる。時の人となった2人は、カメラに向かってVサインをするなど調子に乗っていた。夜、2人は容疑者と似た不審な男に襲われる。警察に助けを求めるも、まったく信用されない。偶然出くわしたテレビ局に事実を話すと、容疑者を捕まえる映像を撮ることを提案される。2人は躊躇したが、成功すれば更なる有名人になれると持ち上げられて承認する。しかし襲い掛かってきた男は麻薬中毒者で、テレビに映る2人を観て殺しに来ただけであった。2人はテレビに出たことを後悔するも、この事件のことで再びメディアに囲まれ「母さん見てる♡」と笑顔でVサインをした。

先生僕ですよ

ある研究医の男は、実験用のモルモットにいつも残虐な扱いをしていた。仮眠をとるため、1人別室へと移った男は夢を見る。実験台に乗せられた男は、研究医に扮したモルモットに解剖されそうになる。その研究医は、先程男が麻酔を入れずに腹を切ったモルモットであった。同僚に起こされ、事なきを得た男であったが再び強い眠気に襲われる。そして夢の中へと舞い戻り、麻酔なしで全身の解剖をされてしまう。男の叫び声を聞いた同僚が駆け付けると、男は全身解剖されたような状態で死んでいた。男は自殺と鑑定され、残った研究医たちは変わらず研究を続けていた。すると治療室のドアが開き、「おい、またモルモットが逃げているぞ」とモルモットが顔を出した。

家族という名の電車

銀行強盗による立てこもり事件が発生し、警察官の相模(さがみ)は現場に駆け付ける。既に人質は数人殺されており、射殺命令を待つ。しかし、犯人は息子の正昭(まさあき)であった。相模は現場を降ろされるが、その間も容赦なく人質を殺害していく正昭の責任を取るため、変装をして現場へと乗り込む。父親であることに気付いた正昭は、自らが引き起こした状況に恐怖し助けを乞う。相模は息子との過去を思い出すも、正昭を射殺した。駆け付けた刑事たちに「私は息子が嫌いでした…」と過去を語る。そして「それなのに…涙が出るんですよ…」と顔を歪めて涙を流し続けた。

声が聞こえる…

外科医の中村は、真面目であると言われ続けて窮屈な人生を送っていた。休憩時間、やけになった中村は立ち寄ったコンビニで万引をし、店員ともみ合いの末に大怪我をさせてしまう。皮肉なことに、店員は救急患者として中村の下に運ばれる。ショックで一時的に視力を失っていたが、中村の声を聞いて「あいつの声だ…」と囁く。中村は焦り、店員を死なせようとするも、良心にさいなまれて刑事に自白する。必死の処置で店員の視力が回復するが、中村を見た瞬間に首に掴みかかる。店員はそのまま死に至り、中村も窒息死してしまった。

蜘蛛

飢餓の続いていたある時代、1カ月続いた長雨で生き物たちは苦しんでいた。坊主が庭に出ると、1羽の蝶が女郎蜘蛛(じょろうぐも)の巣にかかった。忍び寄る蜘蛛を見て、坊主は咄嗟に蝶を逃がす。すると「お待ちよ、お坊さん」と声がした。その声は女郎蜘蛛で、1カ月ぶりの餌を逃がされたことを恨んでいた。そこに百舌鳥がやって来て、蜘蛛を捕まえ飛び去る。坊主は苦悩するも、蜘蛛を助けずに見過ごした。すると瘦せた子供が、野犬に襲われ逃げてくる。坊主はすかさず子供を助ける。「子供はかわいいから助ける気になったのかい」と蜘蛛の声が聞こえる。苦悶する坊主に犬が襲い掛かる。しかし通りかかった男が犬を叩き殺した。子供の安否を聞く坊主に、男は「そこにはさっきからえらくでかい女郎蜘蛛がいるだけだよ」と答える。坊主はずっと蜘蛛の幻覚を見ていたのだった。

リスはベッドで夢を見る

サラリーマンの東山(ひがしやま)は毎日、満員電車で通勤をして楽しくもない仕事をすることにうんざりしていた。帰宅途中、高級車に乗った男に声を掛けられる。それは中学時代の同級生白山(はくさん)だった。中卒でありながら、運送会社の社長となっていた。事業拡大のためにパートナーにならないか、と東山は誘われるが断る。しかし心のどこかで、社会の歯車から逃れて、自由な働き方をしたいと悩んでいた。後日、東山は白山に引き受けることを告げる。しかしそのすぐ後、白山の運送会社のトラックが事故を起こして倒産危機に陥った。東山は、また毎日同じような日々を送ることになったが、前よりも辛く感じることはなくなった。

I Love 日本

大学生の山田(やまだ)は、友人藤井(ふじい)の家を訪れ、不思議な機材や名簿リストを見つける。自宅に戻ると自分の名を名乗る見知らぬ男が住んでいた。警察に話すも、誰も話を信じてくれず、家族すら違う人間に入れ替わっていた。山田は怪しい男達に捕まり、藤井が集英国(しゅうえいこく)の人間だと知る。彼らは密かに日本人と入れ替わり、日本を乗っ取ろうとしていた。山田は拉致されそうになるが、集英国人の活動を探る男に救われる。男と共に陰謀を暴こうと証拠を探すが、待ち伏せしていた男達に捕まり殺されそうになる。しかし撃たれそうになる山田を庇って、藤井が撃たれた。そこに警察が現れて、男達は捕まる。山田は死にゆく藤井を抱きかかえて「友達に国籍なんか関係あるかバカヤロー」と泣き叫んだ。

スクープ

悪徳商法で世間を騒がせた社長宅に、騙された男が現れてマスコミが集まっていた。男は窓を叩き割り、隠れていた社長をマスコミの目の前で殺害する。シャッター音が鳴り響く現場の最前列に、週刊誌のカメラマン渡辺(わたなべ)がいた。彼の写真のお陰で、週刊誌は売り上げを伸ばした。その日から、渡辺あてに「スクープをやる」と謎の人物から日時指定の電話が入る。渡辺が指定された場所に待機していると必ず事件が起きた。不気味に感じる渡辺は、日に日に幻覚を見るようになる。そしてカメラマンを辞めることを決めたある日、車に轢かれて死んでしまう。渡辺のカメラの最後の写真には、事故の瞬間が納められていた。そして車の運転席には、殺された社長の顔が写っていた。

処女的興奮!

扇木コウ
扇木コウ
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