アキバ冥途戦争(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『アキバ冥途戦争』とは、2022年に「Cygames」と「P.A.WORKS」が製作したブラックコメディ美少女アニメである。
舞台は1999年の東京、秋葉原(通称・アキバ)。メイドに憧れて田舎から上京してきた「和平なごみ」は、念願かなってメイド喫茶「とんとことん」のメイドになる。ごく普通のいわゆる「萌え」なメイドに憧れていたなごみ。しかし、ふたを開けてみれば、金と暴力と醜い争いの毎日だった。とんとことんのメイドたちは秋葉原を変革させるために奮闘する。
2023年9月に舞台化が決定。

『アキバ冥途戦争』の概要

『アキバ冥途戦争』とは2022年10月から12月にかけてTOKYOMX他で放送されたテレビアニメである。制作はCygamesとPAWORKS。ディザービジュアルでのキャッチコピーは「萌えと暴力について」である。増井壮一を監督に、シリーズ構成を比企能博、キャラクターデザイン・総作画監督を仁井学、音楽を池頼広がそれぞれ担当している。
本作は1999年の東京秋葉原を舞台にしており、メイド喫茶のメイド達がはばをきかせている(実際は1999年当時、メイド喫茶はまだ存在していない)。
表向きは客をもてなし萌えを提供するメイドたちだが、その実態は金と暴力と抗争にまみれた世界だった。2023年9月に舞台化が決定している。

時は1999年の秋葉原。メイドに憧れて田舎から上京してきた「和平なごみ(わひらなごみ)」はメイド喫茶とんとことんの門を叩く。35歳の刑務所上がりの女「万年嵐子(まんねんらんこ)」と共に、なごみは念願のメイドになった。
そんな折、とんとことんが所属する「ケダモノランドグループ」本部より、「取り立て屋」がとんとことんにやってくる。
「おひねりちゃん(けだものらんどへの上納金)を納める期限が過ぎている。今すぐ払え」と催促しに来たのだ。店長は土下座して払えない旨を必死に訴える。しびれを切らした取り立て屋は、店長にある提案を持ち掛ける。「チュキチュキつきちゃんの一件を新人メイドのなごみにやらせれば上納金の期限を待つ」と言うのだ。
追い詰められた店長は仕方なく、なごみと嵐子に手紙を託し、ライバル店であるチュキチュキつきちゃんへ向かわせた。それはチュキチュキつきちゃんへの宣戦布告であり、襲撃(かちこみ)だった。
絶体絶命のピンチに思われたが、万年嵐子の活躍によりチュキチュキつきちゃんは壊滅した。そこにはなごみが思い描いていた萌え萌えキュンキュンなメイドの姿はなく血で血を洗う醜い争いが横行している。

この作品はけだものらんどグループ最下位のとんとことんが、アキバのメイド世界を引っ掻きまわし、変革をもたらそうと奮闘するお話である。オタク文化のメイドとヤクザ・任侠物を掛け合わせたような作品でバイオレンスな表現も多い。そのため当たり前のように毎回人が死んでいく。主人公・和平なごみは大切な人の悲劇的な死を目の当たりにしたことで、メイド世界の悪しき風習に終止符を打とうと決意する。そして最後には暴力も醜い争いもない平和なアキバを実現させるのだった。

『アキバ冥途戦争』のあらすじ・ストーリー

とんとことんの新人メイド・和平なごみ

1999年東京秋葉原。田舎から上京してきた「和平なごみ(わひらなごみ)」はメイド喫茶「とんとことん」で念願だったメイドとして住み込みで働くことになった。35歳の刑務所あがりの新人メイド「万年嵐子(まんねんらんこ)」やクズの「店長(てんちょう)」、パンダの「御徒町(おかちまち)」など一癖も二癖もある個性的な面々に囲まれて、なごみのメイド人生は幕を開ける。

そんな折、バンダナ姿にリュックを背負った、いかにもオタクな風貌の男が店を訪れた。店内に不穏な空気がたちこめる。
実はこのオタク風の男はとんとことんが所属するけだものらんどグループの「取り立て屋」だった。取り立て屋は店長に詰め寄る。「おひねりちゃんを納める期限を過ぎている。今すぐ払え」と言うのだ。おひねりちゃんとはいわゆる上納金のことだ。とんとことんはグループでも最底辺で落ちこぼれの店だった。売上が振るわず、上納金を納める余裕がないのが実情だった。
上納金の支払い期限を待ってもらう条件として、ライバル店「チュキチュキつきちゃん」の一件を任されることになったなごみ。万年嵐子もこれに同行することになった。
店長は「おつかい」と称し、なごみに手紙を託す。なごみはただの「おつかい」としか思っていないが、他の面々は状況を察しているらしく空気が重い。

チュキチュキつきちゃんに赴いた先で、なごみはチュキチュキつきちゃん店長に手紙を渡す。それを読んだチュキチュキつきちゃんの店長は激怒し、なごみは訳もわからず平手打ちをくらってしまう。
手紙はチュキチュキつきちゃんへ宣戦布告を伝えるものだった。
チュキチュキつきちゃんの店長から何度も平手打ちされるなごみ。一触即発の中、嵐子の銃弾が引き金となり、銃撃戦が始まる。嵐子となごみは店を飛び出す。なおも追ってくるチュキチュキつきちゃんのメイドたちを嵐子は華麗な銃さばきで撃ち殺していった。
そして、チュキチュキつきちゃんの武装メイドたちを一掃し、とんとことんに帰還したなごみと嵐子だったが、あまりの出来事になごみは放心状態でショックを隠せなかった。

「赤い超新星・愛美」率いるメイドリアンと「ねるら」の死

アキバの二大勢力だった「けだものらんど」と「メイドリアン」の両グループは和解し、メイドリアンはけだものらんどに吸収合併されることになった。
しかし、メイドリアンをかつて牛耳っていた「赤い超新星」こと「愛美(まなみ)・スーパーノヴァ・山岸(やまぎし)」が刑務所から出所してきたことで、状況が一変する。
穏健派の現メイドリアン代表の意向を真っ向から否定する。

愛美は先代のころからメイドリアングループ切手の武闘派・タカ派として知られた実力者である。その上、身一つでシマの拡大に貢献した功労者だ。だからこそメイドリアンのシマを荒らすとんとことんが許せなかった。チュキチュキつきちゃんを潰されたにもかかわらず、傍観を決め込むメイドリアン幹部に激高する。そして、チュキチュキつきちゃんを潰したとんとことんに復讐を誓い、密かにとんとことんの壊滅を模索していた。

「ねるら」はなごみの親友でありメイドリアングループ傘下の「侵略カフェですとろん」に所属するメイドだ。
ねるらは愛美が娑婆へ出てきたことでグループ同士の抗争が激化することを危惧した。メイドリアンの情報がほしいとんとことんは、その情報をねるらから得ることを画策する。
兄弟の契りならぬ、「姉妹の契り」をラーメンの盃で交わし、ねるらとなごみは「姉妹」になった。こうしてねるらはとんとことんのスパイとして情報を横流しすることになった。

そんな折、ねるらは、愛美がとんとことんを襲撃するという情報を掴んだ。早速、なごみにとんとことんの危機を知らせる。
しかし、ねるらのスパイ行動は愛美には筒抜けだった。間もなくして、ねるらはグループの裏切り者としてメイドリアンから追われる身となる。
その後、ねるらは密かに路地裏でなごみと嵐子に再会する。しかし、その密談の場に愛美が部下のメイドを引き連れてやってきた。ねるらはこれが最後になると覚悟していた。絶体絶命のねるらは懐から単刀を取り出し、愛美と刺し違えようとするが、愛美の銃弾に倒れる。間もなく、ねるらはなごみの膝の上で息を引き取った。
ねるらを失ったショックでなごみは行方をくらました。ねるらを失ったショックは大きく、メイドの道を捨てて、新たに忍者として忍者カフェで働いていた。

その後、愛美は多数の部下を引き連れ、とんとことんを襲撃する。とんとことんは懸命に応戦するも多勢に無勢で、劣勢に追い込まれる。嵐子は腹をくくり特攻し、そのすきに皆に逃げるように提案する。その時、エレベーターから煙玉が飛んできた。とんとことんメンバーのピンチに忍者になったなごみが駆けつけたのだ。なごみは身につけた忍者スキルで敵を倒していく。
なごみの奇襲により、とんとことん側の形勢は逆転し、愛美を返り討ちにした。
なごみは愛美を追いかけ、公園で再び対峙する。なごみと愛美のタイマン勝負である。
そこで愛美はタイマン勝負に破れ、満身創痍でメイドリアン本部に逃げ帰る。しかし、愛美にはもうどこにも居場所はなかった。愛美はメイドリアン幹部らによって蜂の巣になり、命を落とす。
こうしてアキバのメイドの一時代が幕を下ろした。

嵐子の死

とんとことんはケダモノランドグループから絶縁された。現アキバのメイド世界を牛耳る、ケダモノランド代表「凪(なぎ)」及びケダモノランドグループから絶縁をくらうということは、店の終わりを意味していた。
ケダモノランドグループのとんとことんに対する処遇はどんどんひどくなる一方で、とんとことんをひいきにしている客を拷問の上、殺す事態にまで至っている。とんとことんに関わればどんな制裁を受けるかわからないとなれば自然と客足は遠のいていった。しまいには他店舗のメイドがとんとことんに乗り込み営業妨害をし始める始末。ゾーヤは他店のメイドの素行に我慢ならず、手を出そうとするが嵐子はそれを止めた。

嵐子はとんとことんが絶縁になっているのは自分のせいだととんとことんのメンバーに打ち明ける。そして、嵐子は昔話をする。
1960年代。「美千代(みちよ)」というメイドがアキバで圧倒的な力を誇っていた。今、とんとことんがある場所にはかつて美千代が開いた店「侍女茶店」があった。そこで嵐子と凪は働いており、姉妹の契りを交わした仲だった。先輩である凪を慕う嵐子。しかし、店の方針をめぐって嵐子と凪は対立した。

嵐子は「凪が自分への恨みから絶縁にしたのだろう。だから明日、けじめをつけてくる」と話す。「皆を巻き込みたくない」とたった一人でケダモノランドグループ本部へ乗り込もうというのだ。なごみは反対するが、他の面々はそうするしか生きる道はないとして誰も止めようとはしなかった。嵐子は皆を守ろうと必死だった。
死ぬ覚悟がなければ嵐子の足手まといになってしまう。しかし、みんなでとんとことんに帰ってくると覚悟を決め、とんとことん一丸となってケダモノランドグループ本部へ乗り込もうということになった。
とんとことん一行は手始めに凪直系のメイド喫茶「ギラギライオン」を襲撃し、ギラギライオンの店長を人質に取り、立てこもった。
すぐにその知らせは凪の耳にも入る。凪は「構わず殺せ」とグループ配下のメイドたちに命令を下す。ギラギライオンの店はケダモノランドグループのメイドたちに包囲され、人質がいるにもかかわらず容赦なく銃弾の雨を浴びせられた。この場をゆめちやしーぽん、ゾーヤ、店長に任せて嵐子となごみはケダモノランドグループに乗り込む。

代表室がある最上階へと向かう最中、エレベーターからぞろぞろとメイドたちが湧いて出てきた。そして、メイドたちは嵐子となごみを代表室まで案内する。
凪と対面し、まずはなごみがお萌え様を返上し、詫びた。すかさず凪はなごみの頭に空き瓶を叩きつける。凪は「なにしに来た」と嵐子に問う。嵐子は「絶縁の取り消しをおねがいに伺いました」と答える。「自分を殺しに来たのではないのか」という凪の問いに、嵐子は「うずこ(凪)を殺せない」と答える。凪もできれば嵐子を殺したくないという思いだった。そして「幹部の席を用意している」とも語る。しかし、「けじめをつけろ」と嵐子にとんとことんのメンバーを皆殺しにするよう迫る。いつまでも美千代にこだわるあまり嵐子はとんとことんを必死で守ろうとしている、と凪は踏んでいた。だからその気持ちに終止符を打ち、これからは凪とケダモノランドグループを守るように要求した。凪は「自分につけばアキバでの地位も身の安全も約束される、なんでも望み通りだ」と嵐子の心を揺さぶる。だが、嵐子はそれを断った。
なぜ嵐子がそこまでとんとことんを守ろうとするのか、凪にはわからなかった。嵐子は「とんとことんでの生活が楽しい」と語る。凪はそれをあざ笑い、なごみにハーフツインテを詰めるように迫る。なごみはそれを了承し、日本刀を手にする。
凪はさらに嵐子に、「嵐子がとんとことんにこだわるのはなごみにほだされたのか」と問う。なごみという存在が嵐子に影響を与えていると踏んだのだ。
「なごみさんは美智代さんに似ています」と答える嵐子。その刹那、凪はなごみのハーフツインテの片方を切り、なごみの首元に刃をあてがう。「力を持たぬメイドに意味はない。美智代さんのいうとおりにしていたら、今頃皆やられていた。お前もそれがわかっていたからメイドを殺してきたのだろう?」と、何かを守るには圧倒的な力(暴力)が必要だと語る。
凪かなごみか二者択一を迫られた嵐子は、凪に銃口を向ける。しかし、「嵐子にとって凪はたった一人の姉妹だから」となごみはそれを止めた。凪を撃たなければなごみが死ぬが、嵐子は選べない。凪もなごみも嵐子にとっては大切な家族だから、選べるわけがなかった。嵐子は自分の命をもって償わせてほしいと懇願する。「とんとことんは自分にとって家なのだ」と涙ながらに土下座までした。凪は嵐子の言葉で、かつて自分も侍女茶館を本当の家のように感じていたことを回顧する。そして、今までの十倍おひねりちゃんを上納することを条件に、絶縁状を白紙に戻した。
こうしてケダモノランドグループととんとことんの一件はひとまず終息しようとしていた。
後日、とある露天商で新しい髪留めを選ぶ嵐子となごみの姿があった。凪との一件でなごみのヘアゴムが壊れたためである。なごみにプレゼントするためのヘアピンを購入しようとしたその時、嵐子は背後から刺されてしまう。血を吐き倒れる嵐子に駆け寄るなごみ。「メイドになりたいです。かわいいメイドに…もっとみんなと…」と言って嵐子は息を引き取った。

なごみの下剋上

嵐子を刺し殺したのはかつてメイドリアングループのチュキチュキつきちゃんに所属していたメイドだった。メイドリアングループはケダモノランドグループに吸収合併され、ウーパールーパーとして生まれ変わったのだが、このメイドはいまだに納得がいかなかった。そして、チュキチュキつきちゃんをつぶしたとんとことんを憎み、その報復として勝手にやったことだった。凪は「何が楽しいメイド喫茶だ」とつぶやき、このメイドを許し、なんの処遇も与えず自由にした。
これをきっかけに凪はとんとことんとの戦争を決意した。

嵐子が殺されたことで、なごみはダークサイドに落ちた。黒いサングラスと黒いメイド服に身をつつみ、嵐子を殺したメイドを探し、他店のメイドを銃で脅す。
なごみはうずこ(凪)のことや凪の居所について教えてほしいとラーメン屋の店主に問い詰める。ラーメン屋の店主は知らぬ存ぜぬを決め込んでいたが、ある昔話を始める。

20数年前。美千代と言うメイドがうずこという孤児を拾ってきた。そのころ美千代は武闘派メイドとしてアキバで名をはせており、後継者としてうずこを育てようとしていた。美千代が変わったのは、嵐子が入店した頃だった。「嵐子の純粋さが美千代を変えたのだろう」とラーメン屋の店主は語る。美千代は侍女茶店を「暴力に頼らないメイド喫茶」にするべく方針転換した。しかし、うずこはそれを受け入れられなかった。
侍女茶店の店長・美千代を殺すよう御徒町に指示した人物はうずこだった。「美千代も嵐子も失った今、うずこに帰る場所はない。だから凪の居場所も存在しないのではないか」とラーメン屋の店主は話した。「誰よりも孤独を怖れるから力を求める。その力のせいで孤独になる。愚かなケダモノさ」、そう言ってラーメン屋店主は凪の生きざまを嘆いた。

間もなく凪らケダモノランドグループがとんとことんを攻めてくる。そう予感したなごみは、店のレジから売上金を奪い取り、それを武器に変えようとする。ゆめちはなごみを平手打ちして、落ち着くように促す。しかし、なごみはゆめちを平手打ちし返す。「なに落ち着いてるんだよ!あんたらメイドだろが!仲間やられたんだぞ!仲間殺されたらやり返しにいくのがメイドなんだろ!」と一蹴する。なごみは「一人でも多くのメイドたちを葬ってあの世で嵐子と笑うんだ」と言って、その怒りをあらわにした。
嵐子の死をきっかけになごみの心はすさんでいた。ねるらとの「いつまでも変わらないでいて」という約束を破り、なごみは拳銃を手に復讐の鬼と化す。
そんななごみを疎ましく思った他店のメイドたちは、なごみをリンチする。殴る蹴るの暴行を受けるなごみは激高した。
「こんなのがメイドなのかよ…脅したり殴ったり殺したりして楽しいか?!みんなを脅したりしてたのしいか?!メイドってなんなんだよ。なぁ、教えろよ!」となごみはメイドたちに問う。メイドたちはなごみが殴られすぎて頭がいかれてしまったのだと言って捨て置いた。
凪はとんとことんを潰すかと思いきや、それを許し、かと思えばまた戦争をふっかけ「とんとことんを襲撃しろ」との命令が下る。ケダモノランドグループの幹部たちも凪に振り回されるばかりで、その考えがわからなくなっていた。凪に対する不信感が少なからず広がっている。

なごみがとんとことんへ帰ってくると、とんとことんのメンバーが待っていた。「私たちも戦うよ」とゆめち達とんとことんはなごみと運命を共にすることを決めた。
なごみは最初、嵐子が苦手だった。だけど嵐子と一緒にやるメイドはすごく楽しかった。嵐子はとんとことんが家族だと言っていた。だから自分もとんとことんを守りたい。そうなごみは語った。
とんとことんはメンバーたちの意見は、「殺し合うしかない。わたしたちは所詮ケダモノ」ということだった。
「今のとんとことん、楽しいですか?ご主人様は萌え萌えしてますか?口角あがってますか?メイドだからできること、あるんじゃないでしょうか?」となごみはとんとことんメンバーたちに問う。
なごみは「メイド戦争」を仕掛けると宣言した。

警察への根回しも完了しないまま凪みずからとんとことんを襲撃するという。その意見に幹部たちは反対したが、凪は力でもって無理やりねじ伏せた。「私に従わないメイドは全員死ね」と容赦ない。
凪はグループの幹部総動員でとんとことんへ向かう。ラーメン屋の店主を撃ち殺し、とんとことんへ真正面から侵入する。いくつもの銃口がとんとことんメンバーに向けられる。
「おかえりなさいませ!豚小屋へ!」と、とんとことんのメンバーに動揺は見られず、決死の覚悟で凪たちを精一杯おもてなしする。
「お前らを殺しに来た」と言う凪に対し、なごみは「その前にとんとことんで萌え萌えしていきませんか?」と提案する。凪はその提案に乗り、26人分のドリンクとサービスを受けることになった。
非難轟々の中でもなごみは歌と踊りでもてなし、他のメンバーは場を盛り上げる。「ライブが終わったら皆殺しだ」という凪の目は本気だ。
なごみが歌って踊るそれは、かつて嵐子が36歳の誕生日イベントで踊っていた歌と踊りだった。凪らケダモノランドグループ幹部たちの罵声にも臆さず、なごみは歌って踊る。
凪はなごみの姿を嵐子に重ねていた。かつて侍女茶店で新人メイドとして働いていたころの嵐子と先輩の凪。凪はダンスのキレが悪いと嵐子を指導する。
それが気に入らない凪はなごみの腹に一発の銃弾を浴びせる。真っ赤なシミが白いメイド服を染める。しかし、なごみはひるまなかった。ダンスと歌をやめない。その姿にその場に居合わせた誰もが心を動かされ、オタゲーと愛の手で答える。
拍手するメイドたち。ギラギライオンの店長も拍手を送るが凪に撃ち殺される。「思いあがるなよ」と凪の機嫌はすこぶる悪い。
「いままでいろんなことがあった。怖いメイドが死ぬところも、大好きなメイドが死ぬところもたくさん見てきた。死んだメイドのために、と言って殺しあった。でも、それは楽しくない」となごみは諭す。
そして「なんでメイドさんがなぐったりするんですか?萌えに銃とかいらなくないですか?」となごみは凪に問う。それに対し凪は「引き金を引かなければ殺される。力がなければアキバでは生き残れない。メイドは奪うか奪われるかだ」と答えた。
「メイドはお給仕ですよ。私の尊敬するメイドさんが言っていました。とんとことんはいつでもご主人様のお家になりますブー」というなごみ言葉で凪は美千代との思い出がよみがえる。うずこが侍女茶店の扉を開けると美千代は「おかえりなさいませ」と出迎える。美智代の「今日からここがうずこの家だからね」と言う言葉は当時の凪にはうれしかった。
そんな思い出がふとよみがえる凪だったが「きれいごとをぬかすな。メイドはどこまで行っても独りだ」とにべもない。
なごみは「お嬢様。さみしいときはとんとことんにお帰りになってみてください。私たちが萌え萌えキュンキュンさせてみせますから!」とやさしく語り掛ける。
凪は「お前なんて美千代さんの足元にも及ばないクズメイドだ」と一蹴する。そして「お前は嵐子にそっくりなメイドだ」、とのたまう。
なごみは「それは光栄だ」といって笑う。「お嬢様?とんとことんは楽しめましたか?」と語り掛けるなごみに、凪は微笑む。
その刹那、凪はなごみに向けて発砲し、とんとことんメンバーの悲鳴があがる。そしてまた一発の銃声が響く。それは元チュキチュキつきちゃんのメイドが放った一発だった。銃弾は凪の脳天を貫いていた。とどめとばかりに御徒町が鋭くとがらせた竹を凪のどてっ腹めがけて投げつける。こうしてケダモノランド代表・凪は死んだ。

時は流れて2018年。36歳のメイドを目当てに古参のファンがとんとことんを訪れる。アキバのメイドは、昔は物騒だったが、今は暴力もなく平和だと語る古参ファンたち。なごみはアキバのメイドに変革をもたらし、暴力の追放を実現させていた。
出迎えたのは車イスにのったメイド姿のなごみだった。車いすにはかつての同僚のメイドたちの写真や姉妹だったねるらの写真がはられている。
「ようこそ」と出迎えるなごみの表情は明るい。

『アキバ冥途戦争』の登場人物・キャラクター

メイド喫茶「とんとことん」

和平なごみ(わひらなごみ)

CV:近藤玲奈
本作の主人公。メイドに憧れて上京し、秋葉原のメイド喫茶「とんとことん」にて住み込みで働いている。ごく普通の女の子で性格は温厚だが、時に情熱的な一面を持つ。失敗しても挫けない根性のある娘だがアキバメイドの実態に驚かされ、命がけの日々を送る。一時期、忍者カフェで働き、忍者スキルを習得している。
アキバから暴力をなくしたいという思想を掲げ、孤軍奮闘する。学生時代はソフトボール部に所属。

万年嵐子(まんねんらんこ)

CV:佐藤利奈
メイド喫茶「とんとことん」で働く35歳の新人メイド。なごみと同期。寡黙で喜怒哀楽も少ない。1985年では「侍女茶店」という店で働いていた。わけあって長い間刑務所に入所していたが、刑期を終え、アキバに戻ってきた。不器用で不愛想なためメイドとしての仕事は向いてないが、殴り合いや銃の撃ち合いでは他を圧倒し、極めて戦闘能力が高い。アキバファイトクラブでは軍隊あがりのロシア人メイド「ゾーヤ」を打ち負かし、抗争の際には二丁拳銃で敵を次々と撃ち殺す。

ゆめち

CV:田中美海
メイド喫茶「とんとことん」で働くツインテールメイド。店の一番人気でエース。客の前ではキュートな笑顔と愛嬌のある仕草や物言いは少々大げさでぶりっ子。店の誰よりもプロ意識が強い。彼女の接客をみた同業のメイドからは「人間をやめている」と言わしめるほど。その実、普段はクールな毒舌家である。パズルゲームが得意。ポーカー勝負の際は、敵のイカサマ好意を見破るなど洞察力や観察眼にも優れている。
本名は「柊木夢(ひいらぎゆめ)」。

しぃぽん

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