ギヴンの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『ギヴン』とは、ロックバンドメンバーの恋愛を題材とした、キヅナツキによる漫画作品。巧みなギター技術を持つ高校生の上ノ山立夏は、ある日学校で弦の切れたギターを持った佐藤真冬に出会う。立夏が真冬のギターを修復すると、真冬は立夏にギターを教えて欲しいと頼む。初めは断っていた立夏だが、真冬の美しい歌声を聴き、自身のバンドに誘う。そして、2人は少しずつ恋心を抱き始める。真剣に音楽と向き合う人の熱を持った言葉や、恋愛がもたらす幸せや哀しみを表すセリフなど、人の感情を大きく揺さぶる名言が数多く登場する。

恋について、「恋というものは、柔らかく、もっと甘やかで、優しいものだと思っていた。それは体のいい妄想だったと、初恋で知る。人を好きになることは、肉を切り裂かれるような暴力だ」と語る秋彦。これは、現在同居中の天才ヴァイオリニスト、村田雨月(むらた うげつ)との恋愛模様を表した言葉である。常に冷静で、取り乱すことなどない秋彦だが、人知れず苦みを多く含んだ恋愛をしていることがわかる。

「俺おかしいですか?」「全然」

真冬への恋心をはっきりと自覚した立夏。自分の気持ちを上手く整理できない立夏は、練習に集中ができずにいた。立夏の様子がおかしいと、何かを察した秋彦は、2人きりになって悩みのタネを聞き出そうとする。秋彦はまさかとは思いつつ、「真冬と何かあったか?」と問うと、立夏は赤面して明らかに動揺する。予想外の反応に、いつもクールな秋彦も驚きを隠せずにいた。そして、「もう手を出したのか?奥手だと思ってたのに」と、早くも勘違いをし始めた秋彦。なんでそんなことを聞くのかと立夏が慌てると、「今自分がどんな面しているか知ってるか!」と叫び、立夏がどんな顔をしているのか恐る恐る聞くと「俺は真冬が好きだっていう面です」と答える。その言葉に、思わずその場に倒れ込んでしまう立夏。
恋心を自覚したはいいが、「男なのに真冬に恋心を抱いている自分はおかしいのでは?」と立夏は悩んでいた。「俺おかしいですか?」と悩みを打ち明けると、「全然。何がおかしいんだ?」と秋彦は即座に否定した。そして、自分も男性を好きになった経験があるとカミングアウトし、「安心しろ」とアドバイスを送る。同性を好きになってしまったことに思い悩んでいた立夏の気持ちが、秋彦によって少し救われた瞬間だった。

「ささくれてた昔の俺をバンドに誘ってくれてありがとう」

優しい笑顔を見せる秋彦

本番直前に、ライブハウスのスタッフと打合せをしようとする春樹を、秋彦が呼び止める。先ほど立夏と真冬の喧嘩でバンド内に不穏な空気が流れたが、春樹の言葉で落ち着いたことを含め、秋彦は改めて春樹に感謝を伝える。そして、「ささくれてた昔の俺をバンドに誘ってくれてありがとう」と優しい笑顔を見せるのだった。元々、バンドメンバーと上手くいっていない立夏とやさぐれていた秋彦に、春樹が声をかけたことで始まったバンド。バンド結成の立役者やバンドのピンチの救世主など、重要なポジションを担っており、メンバーからの信頼が厚い理由がよくわかる。

「お前、俺のこと好きなくせに逃げんの」

雨月が新しい恋人を部屋に連れ込んでいる現場に遭遇し、激しい喧嘩をした秋彦。雨月の家以外に帰るあてもないので、春樹に連絡をするが、春樹とも揉め事が起きる。そして、「お前、俺のこと好きなくせに逃げんの」と強引に春樹に襲いかかる。やけになっている秋彦と断り切れない春樹は、互いに苦しさを抱えながら一晩を過ごしたのだった。

「要らないならなんで俺の未練を許す。俺の未練に同情するなら、なんで俺を捨てようとする。つかまえたい。逃げたい。あきらめたい。あきらめきれない。触りたい。苦しい」

秋彦と雨月は、形上別れているにも関わらず、定期的に衝突が起きる。それを機に、雨月は一緒にいるのをやめようと秋彦を促すが、結局秋彦が離れて行かないことを許容する。だが、雨月への想いを断ち切れないでいる秋彦は、「要らないならなんで俺の未練を許す。俺の未練に同情するなら、なんで俺を捨てようとする。つかまえたい。逃げたい。あきらめたい。あきらめきれない。触りたい。苦しい」と悲痛な想いを抱える。普段はクールな秋彦だったが、雨月のことになると心をかき乱されるほど、雨月への愛は深い。

「ここに置いてといてくれてありがとう」

雨月と別れ、結局行く当てのない秋彦を住まわせてあげる春樹。2人の共同生活が始まる。夏の夜、ベランダから花火が見ながら、秋彦は雨月とのことを少しだけ話す。春樹は、「めっちゃ好きじゃん」と秋彦の雨月への気持ちについて感想を漏らすと、「好きだったよ。でももう苦しい」と秋彦は寂しそうな表情を見せる。いつもそつなくこなす秋彦の意外な一面を知り、また自分と同じ気持ちでいることを知り、「初めて秋彦と対等になったような気がした」と思う。「ここに置いてといてくれてありがとう」「どういたしまして」と、2人の仲は少しずつ修復されていった。

「今、音楽が春樹といて、想像以上に楽しい。その事実に打ちのめされていた」

深夜の3時まで練習にふけり、終電を逃した2人は歩いて帰宅する。お酒を片手に、虫を捕まえて楽しく帰路に就く。その時間を、秋彦は「今、音楽が春樹といて、想像以上に楽しい。その事実に打ちのめされていた」と思う。雨月といた頃は、雨月と対等でいたいという気持ちから必死にヴァイオリンを弾いていた。苦しみの伴う音楽が長かったせいで、春樹との温かく優しい時間が秋彦の心を癒していく。

「4人全員天才じゃバンドできねえよ」

秋彦と喧嘩をした後の練習にて、春樹は演奏に集中できず、ひとり不格好な演奏になってしまった。立夏に指摘されても謝るだけで、練習が終わると春樹はすぐに帰って行った。今日の演奏を振り返って、立夏のギターはかっこよく、真冬の歌は表現力が上がっていき、秋彦は当たり前のように何でもこなしており、自分以外の全員の音がきらきらして聴こえ、自分ばかりが必死で、みじめで辛いと涙目になる。するとそこに秋彦が追いつき、春樹は「俺って必要なくない?他の連中みたいに天才でもないし、今日だって全然音合わなかった」と弱音を吐き捨てる。秋彦は、「音合わなかったって、そりゃお前がした向いてるからだろ。上向かないと音ずれる。せめて俺の方見ろ」と注意し、「バンドはソロアーティストと違うだろ。4人全員天才じゃバンドできねえよ。誰かが天才を支えなきゃならないし。お前は必要だって、俺結構ずっと言ってるよな」と伝える。秋彦との衝突が原因で不調だったが、その不調から救いの手を差し伸べてくれたのも秋彦だった。春樹は珍しく怒っていたのだが、秋彦のいつもの優しさに触れ、嫌いになれずにいた。

「ああ、音楽が好きだ」

フェスの出場をかけた予選の演奏中、秋彦は真冬の歌声に感動を隠せずにいた。そして、雨月の演奏を初めて聴いた時に同じ震えを感じていたことを思い出した。雨月に見合う人になりたくて必死に音楽を続けていたが、気づけば音楽が苦しくなっていた。あんなに好きだったのに、嫌になってしまっていた音楽だったが、真冬の歌声や春樹との日常によって「ああ、音楽が好きだ」と改めて再認識する。雨月との痛々しい恋愛で傷ついていた秋彦の心が、少しずつ癒えていく。

「俺が生き方を変えたのは!お前に見合う男になりたかったからだ」 「好きです。俺と付き合ってください」

カウントダウンフェスの予選に落ちてしまったギヴン。それから数日後、秋彦は春樹の家を出て、音楽に一層打ち込むようになった。そしてある日、ヴァイオリンコンクールに出場し、いつもと違った雰囲気で真剣にヴァイオリンを奏でる。真冬に誘われてコンクールを見に来た春樹は、生き方を変えようと想えるほど大切な人ができたのだと勘違いし、コンクール会場をあとにする。すると秋彦が息を切らして追いかけてきた。そして、「俺が生き方を変えたのは!お前に見合う男になりたかったからだ」と暴露する。そして、赤面させながら「好きです。俺と付き合ってください」と秋彦が告白する。秋彦の想い人がまさか自分だと思わず、驚きを隠せない春樹だったが、秋彦の告白を嬉しそうに受け入れる。紆余曲折あり、一時は叶わないとも思えた春樹と秋彦の恋だったが、ようやく2人の想いが通じ合った感動的なシーンである。

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雨の日の和解

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