虐殺器官(Project Itoh)のネタバレ解説・考察まとめ

『虐殺器官』とは、作家・伊藤計劃(いとう けいかく)による小説、およびそれを原作とした漫画・アニメ映画の事である。ジャンルはSF。実在する国・ボスニア・ヘルツェゴビナの首都であるサラエボが、テロによりクレーターとなったIF世界観の現代が舞台となっている。アメリカの特殊部隊に所属する主人公・クラヴィスが、世界各地でテロを起こす虐殺の王・ジョン・ポールを捕獲するまでの様を描く。SFのプロが選ぶ「ベストSF2007」の国内篇と「ゼロ年代SFベスト」国内篇で第1位を獲得した、日本SF界を代表する作品。

交通事故で亡くなったクラヴィスの母。本名は不明である。クラヴィスが幼い頃に夫が銃で自殺をした為、それ以降クラヴィスを一人で育ててきた。事故に遭遇後は即死したわけではなく、脳死状態となり、クラヴィス自身の選択によって生命維持装置を止められて亡くなった。その時の出来事は、クラヴィスの心に影を落としている。また亡くなった後は、度々クラヴィスの夢に出てくるようになる。人の姿をしている場合もあれば、焼け焦げた姿で出てくる事もある。

『虐殺器官』の用語

アメリカ情報軍特殊検索群i分遣隊

アメリカ情報軍特殊検索群i分遣隊の1人として、要人(ひげの男)暗殺の特殊任務中のクラヴィス(兵装姿の男)。

アメリカ全軍の特殊部隊の一つ。クラヴィスが所属する部隊の名称である。略称は「i分遣隊」。小説内に登場する架空の軍隊・情報軍(インフォメーションズ)所属の部隊で、唯一の要人暗殺実行部隊でもある。諜報活動を行う事もあり、小説内では「スパイと特殊部隊のハイブリッド」といった説明がされている。

国防総省(ペンタゴン)

アメリカ国防総省 本部庁舎。

アメリカの国防総省のこと。実在する行政機関であり、アメリカの陸・海・空・宇宙軍と海兵隊の5つを傘下に収めている。『虐殺器官』では、ここに情報軍も加わる。 『虐殺器官』内の設定として、機関内には各所に保安ゲートが設置されている。テロ対策の生体認証をクリアした者のみが、機関内に入れる。会議エリアでは、アメリカ以外にも世界中のあらゆる問題に対する議論がされている。

PMF(ぴーえむえふ)

民間軍事請負企業の略称。正式名は「Private Military Firms」。国連平和維持活動を請け負うという軍事プレゼンスのもと、米軍などの国家軍が対処できない対テロ戦争や後進国での内戦・虐殺地帯の情報収集や重要犯罪者の逮捕、紛争地への物資の輸送や供給といった、戦争に関する細々とした業務を請け負っている。なお、全ての業務はそれぞれ別々の企業が行っており、作中にはこれらの企業の一つとして、ユージーン&クルップス社(通称:Eの字)という名の企業が登場する。

オルタナ(別称:副現実)

瞳を覆っている緑の液体がオルタナ。

架空のウェアラブルコンピュータの略称。正式名は「Alternative Reality」(オルタネイティブ リアリティ)。小説内では「現実を覆う副現実」とも書かれている。コンタクトレンズのような作りになっており、網膜に貼り付ける事で、視覚上にさまざまな情報を映し出す事ができる。通常はコンタクト型であるが、クラヴィスが所属するi分遣隊では、戦闘中に目から外れてしまわないよう、ナノマシン技術を用いて作られた点滴タイプのものが使われている。

痛覚マスキング

痛覚マスキングが使用された状態で、特殊任務をこなすi分遣隊のメンバー。痛覚マスキングの効果で痛覚を感じなくなっている。

作中に登場する、架空の軍事用麻酔技術の一種。脳内の痛覚を司る部分を遮断する事で、痛覚を感じない体にできる。戦闘時にどんな状態になったとしても、冷静な判断が下せるように使用されている。ただし感じないだけで、痛覚そのものは認識できているとのこと。戦闘時に負傷した際は、その認識を用いて傷の手当てを行う事が可能。i分遣隊のような特殊部隊のみならず、PMFのような民間企業でも取り扱われている。

戦闘適応感情調整

戦闘適応感情調整を施された状態で、武器を構えるクラヴィス。

作中に登場する架空の感情操作であり、脳医学的措置。戦場が兵士に及ぼす、心理的障害の発生率を軽減する為の措置である。カウンセリングと特殊な薬物投与を用いて感情を操作する。先進国の軍隊にて取り入れられている措置であり、戦地入りする前に必ず行われている。

フライングシーウィード

i分遣隊所有の侵入航空機の名。ステルス性を意識した結果、黒く巨大な長方形のような形となった為、その見た目から「空飛ぶ海苔(フライングシーウィード)」と呼ばれている。地上部隊の爆破支援用のスマート爆弾や脱出用のミニガンが備わった有人飛行も可能な無人ヘリが詰まれている。元々は戦略爆撃機であった。爆弾槽であったスペースは、侵入鞘(イントルード・ポッド)の貨物室として使用されている。

侵入鞘(イントルード・ポッド)

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