スウィンダラーズ(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『スウィンダラーズ』とは、2018年に日本で公開された韓国映画である。監督はチャン・チャンウォン。「夜霧」という詐欺師を父に持つファン・ジソンは、父が稀代の詐欺師チャン・ドゥチルのせいで死んだことを知る。一方、検事のパク・ヒスは贈賄の隠ぺいのためドゥチルの行方を追っていた。ジソンとパクの利害が一致し2人は手を組むことになるが、そこには数々の巧妙な駆け引きが隠されていた。この作品は韓国で実際に起きた詐欺事件を元にした、権力やプライド、家族愛が複雑に絡み合ったサスペンス・アクション映画となっている。

『スウィンダラーズ』の概要

『スウィンダラーズ』とは、2017年11月22日に韓国で公開されたサスペンス・アクション映画である。「チェ・スト事件」「JU事件」とも言われる、実際に起きた韓国史上最大のマルチ商法詐欺事件をモチーフにしている。監督はチャン・チャンウォン。主演はヒョン・ビンで、その脇をユ・ジテ、パク・ソンウン、ペ・ソンウなど豪華俳優陣が固める。韓国での観客動員数は400万人を超え、日本では2018年7月7日に公開されている。
「夜霧」という詐欺師を父に持つファン・ジソンは、父が最後の仕事で稀代の詐欺師と言われるチャン・ドゥチルに関わったために命を落としたことを知る。一方検事のパク・ヒスは、上司や政治家の指示で国外逃亡したドゥチルの行方を追っていた。ドゥチルに復讐したいジソンと出世のためにドゥチルを捕まえたいパクは、互いの利害が一致したため手を組むことになる。しかし2人の間には巧妙に仕組まれた罠が張り巡らされており、騙し騙され合いの展開が続く。この作品は、大切な人を失ったために復讐に燃える心や権力への固執など、様々な人々の思惑が入り混じっていく様子を描いた物語となっている。

『スウィンダラーズ』のあらすじ・ストーリー

稀代の詐欺師チャン・ドゥチル

2008年の韓国では、チャン・ドゥチルという稀代の大詐欺師により多くの善良な市民のお金が騙し取られるという事件が起こった。その被害者のうちの一人、テドンという青年は伯父や母からの責めにあい、ビルの窓から投身自殺をする。この事件の被害者の数は約3万人、自殺者も10人出ていた。

ある商店街の一角にある事務所で「夜霧」という通称で呼ばれる詐欺師、ファン・ユソクがチャン・ドゥチルの偽造パスポートを作成していた。そこに息子のファン・ジソンがやってきて、詐欺業を引退したユソクがまた仕事をしていることを咎める。しかしユソクは「これで最後だ」と言って、一人偽造パスポートの受け渡しに向かう。そしてその翌朝、ユソクは廃倉庫で首吊り死体として発見される。ユソクは他殺の痕跡はなく自殺として処理され、ジソンはたった一人の肉親を失ってしまったのだった。

その後ドゥチルが死亡した、と警察から発表される。しかし死亡の公式発表後も目撃情報があり、死亡説はドゥチルの情報操作で本当は国外逃亡したのではないかと言われていた。ジソンは父がドゥチルに殺されたに違いないと、その敵を討つべくドゥチルの痕跡を探して世界各国を飛び回る。

8年後

8年後、ソウル中央地検の主席検事、パク・ヒスはドゥチルから賄賂を受け取ったとされる人物たちを逮捕していた。パクはドゥチルとの間に賄賂の授受があった人物のリストをもとに捜査を行っていたが、実はそのリストは完全なものではなかった。そして本来のリストをドゥチルの部下だったイ・ガンソクという男が持っているということを検事総長のイ・ジョンソクから聞く。パクはさらなる出世のために、そして検事総長は自らの保身のため、何としてもそのリストを手に入れようとする。

パクは自らが非合法に手を組んでいる詐欺グループの3人、コ・ソクトン、キム課長、チュンジャと共にガンソクのもとに向かう。しかしガンソクの手元には贈賄のリストはなかった。しかもガンソクは、チェ・チャンシクという老人を騙すつもりが反対に騙されてしまったと訴える。このチャンシクの正体が、「詐欺師だけを騙す詐欺師」のファン・ジソンだということが判明する。

詐欺師と検事のタッグ

パクはジソンと大規模なカーチェイスを繰り広げ、ついにジソンを捕まえる。そしてパクはジソンからドゥチルがタイで生きていることを聞き、「捕まえよう、チャン・ドゥチルを。目的は一緒だ」と持ちかける。それに対しジソンは自分がドゥチルを殺すことを条件に、その提案を飲むのだった。

韓国のハンミン党という政党のトップであるソン・ヨンジェが、大統領選に出馬表明をした。その夜のヨンジェやその側近たちの集まりの中には、パクの姿もあった。実はドゥチルを国外に逃がしたのはヨンジェたちで、今になって騒ぎを起こし始めたドゥチルを厄介に思い、パクにドゥチルを消すことを命じたのだ。パクは陰で「あんなクズどもが国を動かしているとは」と毒づく。

ジソンたちはドゥチルにたどり着くため、ガンソクに接近する。ジソンはカジノ経営やマネーロンダリングを生業にする企業の社長に化け、ガンソクに不動産の不正取引のパートナーを探している、と持ちかける。まんまと引っかかったガンソクがドゥチルに金の無心をすると、ドゥチルの右腕であるクァク・スンゴンがやってくることになった。

騙し騙され合い

スンゴンからドゥチルにたどり着くため、チュンジャが美人局(つつもたせ)としてスンゴンに近づく。そしてチュンジャからの情報によりスンゴンとドゥチルが仁川(いんちょん)の料理屋で落ち合うことがわかった。その頃パクは、ジソンの父が「夜霧」だということを知る。かつて夜霧をドゥチル亡命のために利用し、口封じに殺すよう指示したのはパクだった。一方、ジソンも検察に出入りしているチェ記者から、パクがドゥチルの贈賄リストを探しているということを聞く。

仁川の料理屋では、スンゴンとドゥチルの密会を部屋の外からジソンとソクトンが監視していた。スンゴンに取り付けられた盗聴器から、スンゴンが300億円の有価証券を預かったことを知る。そしてドゥチルはその300億円を含めた3000億円を現金化する予定でいることも判明した。しかしドゥチルたちを捉えるには状況が悪く、ジソンたちは撤退する。そしてジソンは「チャン・ドゥチルに協力したやつは許さない」と言い、パクに今あるものだけでも贈賄リストを渡すように詰め寄るのだった。

スンゴンがジソンの偽会社に300億の有価証券を現金化するよう、依頼に来た。その交渉がうまくいったため、ジソンはパクから不完全ではあるものの贈賄リストを受け取る。そしてジソンは独断で検事総長や政治家たちの名前が載ったリストをマスコミに流し、世間は大騒ぎになった。自分の保身しか考えずに責任追及してくるヨンジェたちに憤りを覚えたパクは、「私腹を肥やすのはやめて、自分の責務を果たせよ。立場を守りたいのならな」と怒りをあらわにした。

パクはさらに、ジソンがチャンシクに化けてガンソクに接触し、金で「贈賄リストを持っている」とデマを流すように依頼していたことを知る。騙されたことに腹を立てたパクはジソンに詰め寄り、ドゥチルを殺して本来の贈賄リストも手に入れるように言う。チュンジャとキム課長は、ひそかにジソンに逃げるように忠告する。しかしパクは出世のために何としてもドゥチルの首と贈賄リストが必要で、ジソンにドゥチルを始末するよう脅迫するのだった。

廃倉庫におびき出されたドゥチルだったが、実はその正体がジソンだということがわかる。8年前の詐欺事件について調査するうちに、ジソンは父を殺すよう指示したのがパクだと突き止め、標的を変更していたのだ。さらにスンゴンは妻を、ソクトンはテドンという友人をそれぞれ8年前の詐欺事件で亡くしており、二人はその復讐にジソンに手を貸していたのだ。

ジソンが自分を陥れるため用意周到に周囲を固めていたことを知ったパクは、「詐欺師を一人殺したくらいで騒ぎ立てるな。俺一人のせいだと?ソン・ヨンジェとイ・ジョンソクが保身のためにやった。やつらが牛耳っている限り表沙汰にはならない」と怒りをあらわにする。しかしパクらの企みは世に知られるところとなり、今回の一連の詐欺に関わった全員が逮捕されることとなった。しかしジソンたちは目的を達成することができ、晴れ晴れとした表情だった。

ジソンが服役を終えて父の事務所に帰ってきた。懐かしい表情で事務所の中を進むと、スンゴン、ソクトン、チュンジャ、キム課長がやってくる。突然のことで戸惑うジソンだったが、ソクトンが「お前が計画をたてろ」と、今度はドゥチルを標的にすることを提案する。それを聞いたジソンは皆の顔を見渡し、ワクワクした表情を見せるのだった。

『スウィンダラーズ』の登場人物・キャラクター

ジソンとその家族

ファン・ジソン(演:ヒョン・ビン)

「詐欺師だけを騙す詐欺師」と、詐欺業界では有名な詐欺師。巧妙で考え抜かれた計画でターゲットを騙し続けて陥れる。父は「夜霧」と呼ばれる詐欺師のファン・ユソクで、稀代の詐欺師チャン・ドゥチル絡みの仕事で殺されてしまう。父の復讐を果たすため、ドゥチルを追って世界各国を渡り歩く。しかしその過程で復讐すべき相手がパクであることがわかり、ソクドンやスンゴンと密かに結託してパクを追い詰めていく。変装が得意で、特殊メイクで外見を変え、声までも変えてターゲットを騙す。

ファン・ユソク(演:チョン・ジニョン)

「夜霧」と呼ばれる詐欺師。2008年には詐欺から足を洗っていたが、パクに強引に仕事を引き受けさせられる。最後の仕事はドゥチルの国外逃亡用のパスポートの偽造で、偽造パスポートを受け渡したところでパクに始末されてしまう。息子であるジソンに「疑いを拭ってやれば確信に変わる」「一度目は騙したほうが悪いが、二度目は騙された方が悪い」などの言葉を遺す。

パク検事とその周辺の人物

パク・ヒス(演:ユ・ジテ)

ソウル中央地検の主席検事。2008年のドゥチルの詐欺事件で、ドゥチルの担当検事だった。上昇志向の強い性格で、常に目上の人物に取り入り出世を目論んでいる。最終的には議員の座を狙っている様子。検事総長のイ・ジョンソク、国会議員のソン・ヨンジェらからドゥチルの国外逃亡の手助けを命じられ、ユソクを利用してドゥチルを逃がした。さらにジョンソクやヨンジェの保身のため、成り行きで協力することになったジソンとドゥチルの贈賄リストを探す。

コ・ソクドン(演:ペ・ソンウ)

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