スウィンダラーズ(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『スウィンダラーズ』とは、2018年に日本で公開された韓国映画である。監督はチャン・チャンウォン。「夜霧」という詐欺師を父に持つファン・ジソンは、父が稀代の詐欺師チャン・ドゥチルのせいで死んだことを知る。一方、検事のパク・ヒスは贈賄の隠ぺいのためドゥチルの行方を追っていた。ジソンとパクの利害が一致し2人は手を組むことになるが、そこには数々の巧妙な駆け引きが隠されていた。この作品は韓国で実際に起きた詐欺事件を元にした、権力やプライド、家族愛が複雑に絡み合ったサスペンス・アクション映画となっている。

自分たちの保身しか考えていない政治家たちに、パクが放ったセリフ。検事のパクは、常日頃から自身の出世のために上司や政治家からの汚い仕事の依頼を請け負ってきた。その一つがドゥチルの国外逃亡や贈賄の隠ぺいである。しかし仕事の報酬でパクがジソンに渡した贈賄リストがマスコミにより公開されると、検事総長やハンミン党のヨンジェたちが騒ぎ出し、理不尽にパクを責め立てる。以前から政治家たちに対して「あんなクズどもが国を動かしているとは」と思っていたパクはこれまでの鬱憤を爆発させ、「私腹を肥やすのはやめて、自分の責務を果たせよ。立場を守りたいのならな」と言い放ち、「お前たちの尻ぬぐいをしてやっているのは誰なんだ」と言わんばかりの剣幕で政治家たちを黙らせたのだった。

終盤での大どんでん返し

実はジソンの協力者だったソクトン

物語の終盤で、一気に3人の人物がパクを騙していたことが判明する。父をパクに始末されたジソン、8年前の詐欺事件で大切な人を失ったスンゴンとソクトンの3人は真相を知り、ドゥチルやパクに恨みを持つようになった。パクに復讐を果たす為にジソンがドゥチルを演じ、スンゴンとソクトンが秘密裏に彼に協力していたのだ。パクを騙すためだけに、1年以上も前から罠が仕掛けられていた。また、ジソンに協力するスンゴンとソクトンの2人がジソンと敵対する関係にいたため、観客もこの2人がジソンの仲間だとは予想していなかっただろう。物語内の数々の伏線が一気に回収され、観客を驚かせる場面となった。

新たな仲間と新たな仕事へ

ドゥチルへの復讐に気持ちを新たにするジソン(中央)たち

パクを捕まえるという悲願を達成し、次なる標的をドゥチルに定めたジソン達。しかしパクとともにジソン達も逮捕されたため、ドゥチルへの復讐には時間が必要だった。スンゴン、ソクトン、チュンジャとキム課長は、最後に出所することになっていたジソンを待ち、ドゥチルに対する復讐へと誘う。そしてこれまで皆を引っ張ってきたジソンこそ計画立案者にふさわしいとして、ソクトンは「お前が計画をたてろ」とジソンに言う。ジソンは皆が自分を待っていてくれたことを喜び、父が殺される原因となったドゥチルへの復讐を誓い、新たな一歩を踏み出すのだった。

『スウィンダラーズ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

実際の事件を元に壮大なスケールで描かれた作品

『スウィンダラーズ』の作中でチャン・ドゥチルの詐欺について報じられているところ

『スウィンダラーズ』は、実際に韓国で起きたマルチ商法詐欺事件をモデルに制作された。その詐欺事件の被害者が数万人に及ぶことや、警察によって首謀者が死亡したとされていたにも関わらず、警察関係者等が首謀者の逃亡に手を貸していたことなど、実際の事件内容が数多く反映されている。しかし実際の事件と『スウィンダラーズ』で違うのは、詐欺事件の犯人側や警察・検察が逆に騙され嵌められるという点である。韓国では史上最大の詐欺事件としてかなり有名だっただけあって、パクらが騙されて捕まるというストーリーは観客たちにとって爽快だったに違いない。

ヒョン・ビンの『スウィンダラーズ』への愛情

ジソンを熱演するヒョン・ビン

主人公のジソンを演じたヒョン・ビンは、『スウィンダラーズ』という作品に対して「作品の持っているどんでん返しに魅力を感じ、ファン・ジソンというキャラクターにも魅力を感じた」とインタビューで語っている。ヒョン・ビンはかねてより「映画」というものは観客のストレスを解消したり、何も考えず作品を楽しむ時間を提供できる役割を持つ、と考えていた。そのため観客をあっと驚かせ気分爽快にさせる『スウィンダラーズ』は、ヒョン・ビンの持つ考えによく合った作品だったのだ。さらにこの作品は「大どんでん返し」がストーリーの肝であるため、ヒョン・ビンは「広報するのが大変。すべてスポ(ネタバレ)になる」と言いつつ、早く観客を驚かせたいといった雰囲気でインタビューに答えていた。ヒョン・ビンの『スウィンダラーズ』に真摯に向き合う姿勢は、撮影現場の様子からも見て取れる。ヒョン・ビンは『スウィンダラーズ』を撮影する前の2011年に兵役で海兵隊に入隊したが、除隊後8年間は予備軍訓練といって数回訓練を受ける必要がある。本作品の撮影中にも予備軍訓練があり、ヒョン・ビンは映画の撮影をこなしつつソウル市内の訓練場で訓練に励む姿がみられたという。

メンバーの活躍を励みに掴み取った役

チュンジャは美人局を得意とする詐欺師なため、その役を演じる女優は「抜群の美貌」を持っている必要があった。その点チュンジャを演じたアイドルグループAFTERSCHOOLのメンバーであるナナは、「世界一の美女」というタイトルを持つだけあって申し分のない女優だった。しかし本人は外見だけでチュンジャを演じることに満足せず、「内面も美しく維持するために努力しています」とインタビューで答えた。また、同じAFTERSCHOOLのメンバーが次々演技に挑戦していくのを見て、いつも羨ましがっていたという。そのため演技のレッスンを受けて多くのオーディションにも挑戦していたが、なかなか実を結ばなかった。しかしナナはオーディションに落ちるたびにより集中して勉強し、演技のことを真剣に考えるようになった。そうしてようやく、『スウィンダラーズ』でナナの魅力を存分に発揮できる役をつかむことができたのだ。

『スウィンダラーズ』の主題歌・挿入歌

挿入歌:パン・ジュンソク「달리는 지성」

『スウィンダラーズ』の挿入曲である「달리는 지성」は、『スウィンダラーズ』オリジナルサウンドトラックに収録されており、主役のファン・ジソンを体現するかのような楽曲となっている。タイトルの日本語訳は「走る知性」で、ジソンがその知性を武器に周りを騙していく様子が感じられる。また、この楽曲は物語序盤やジソンが仕掛けたどんでん返しが判明する場面に使われており、観客をワクワクさせたり気分爽快にさせる役割を担っている。「달리는 지성」を制作したのは音楽監督のパン・ジュンソクだが、2022年3月26日に惜しまれつつも持病により亡くなっている。

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@9bedono78

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