リトル・ダンサー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『リトル・ダンサー』(原題『Billy Elliot』)は2000年にイギリスで公開されたヒューマン・ドラマ映画。スティーブン・ダルドリー監督のデビュー作である。舞台は1984年イギリスの炭鉱町ダラム。父の趣味であるボクシングを習っていた少年は、ある日バレエ教室に出会う。町は炭鉱不況の最中で、父と兄は炭鉱ストライキに参加していた。「男がバレエなんか。」と反対されながらも、少年はますます夢中になる。プロのバレエダンサーを目指す少年と家族と町の人々の物語。

1926年設立。ロイヤル・バレ団およびバーミンガム・ロイヤル・バレエ団のために優れたバレエダンサーを養成する。世界的に有名なダンサーや振付家を輩出する名門校である。ビリーはウィルキンソン先生のすすめで、入学のオーディションを受ける。

白鳥の湖

練習でうまく行かずウィルキンソン先生(画像右)に当たってしまうビリー(画像左)。この帰り道に「白鳥の湖」を初めて聴く。

チャイコフスキーが初めて発表したバレエ音楽。1877年に初演されて以降多くの振付師が改訂版を創作している。「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」と共に「3大バレエ」と呼ばれている。ビリーは、ウィルキンソン先生と船で移動中に初めて聴き「いい音楽だ」と言う。ストーリーを教えてもらうと、はじめはつまらなそうと言っていたが、話を聞いていくうちに興味を持ち始める。14年後、25歳のビリーは「白鳥の湖」で王子役として踊る。

『リトル・ダンサー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ビリーのダンスシーン

ストレスを発散するかのようにタップダンスをするビリー(画像右)と寄り添うマイケル(画像左)

劇中、ビリーが踊るシーンは計6回。喜びや怒りなどビリーの感情はダンスで表現されており、他にも父に認めてもらう時のダンス、オーディションでのダンスなどがある。特に1回目のオーディションを逃して兄と先生が口論した後、The Jam の「Town Called Malice」に合わせて踊るシーンは、言葉にならない声を上げて憤りを感じている様子がよく伝わる。そのシーンではタップダンスを披露しており、最後は音楽も消えて靴の音だけが響く演出が効いている。それ以外にも印象的なのがオープニング。ベッドの上を飛び跳ねるビリーからは身体能力の高さがうかがえる。ビリー演じるジェイミー・ベルは、母・祖母・叔母・姉妹がダンサーであり、その影響で6歳からバレエを始める。後のインタビューでジェイミー・ベルが語った内容から、自身とビリーに重なる部分があったため作品中の情熱的なダンスを生み出せたことが伺える。

「ある大会で女の子がリズムをはずしまくってタップダンスをするのを見て、僕ならもっと上手にできるよっていったらママが教室に通わせてくれたんだ。でも慣れるまではすごく練習しなくちゃいけないし、学校では、女がやることだって言われた。だから男らしくサッカーの練習に出てから、内緒でダンス教室に通っていたんだ。」

出典: www.tv-tokyo.co.jp

父「ビリーのためだ!才能を伸ばしてやるんだ」「俺たちに未来が?おしまいだ。だがビリーには未来がある」

これまで頑なにバレエを否定してきた父だったが、ビリーのダンスを目の当たりにして、その才能に衝撃を受ける。そして、自分の主義に反してでも息子の夢を応援すると決意し、スト破りに踏み出す。それを見たトニーは必死で止めるが「ビリーの夢を叶えてやりたい」と跳ね除ける。「今までやってきたことが水の泡だ」と言うトニーに対して、父は泣きながら「ビリーのためだ!才能を伸ばしてやるんだ」「俺たちに未来が?おしまいだ。だがビリーには未来がある」と言う。炭鉱夫としてしか生きていくしかない2人の葛藤と、未来あるビリーのために行動しようとするきっかけとなった、家族愛溢れるシーン。

ビリー「さあ…いい気分です。最初は体が硬いけど踊りだすと何もかも忘れてすべてが消えます。何もかも。自分が変わって体の中に炎が…。宙を飛んでる気分になります。鳥のように電気のように。そう…電気のように」

ロイヤル・バレエ学校のオーディションで、上手く踊れなかったと落ち込むビリー。最後に「踊っているときはどんな気持ちが?」と質問され「さあ…いい気分です。最初は体が硬いけど踊りだすと何もかも忘れてすべてが消えます。何もかも。自分が変わって体の中に炎が…。宙を飛んでる気分になります。鳥のように電気のように。そう…電気のように」と答える。自分が抱く感情を踊りで表現していること、踊ることが楽しいという純粋な気持ちが感じられるセリフである。

家族愛

合格に喜び抱き合うビリー(画像上)と父(画像下)

妻の死とストライキでイライラしている父、消極的な父の姿とストライキで同じくイライラしているトニー、さらにビリーがバレエをしていると知り反対する父と兄により、家庭内は険悪なムードで中盤まで進む。しかし、ビリーの才能を目の当たりにした父が信念を曲げてビリーのために行動を起こし、そんな父を見てトニーもサポートをするようになる。家族が一丸となってビリーのオーディションをむかえ、結果を待つ姿は、家族の絆を感じることができる。合格が分かり、母のお墓に行ったビリーと父は、喜びと安心の表情で抱き合い、心の底から笑い合う。ビリーが旅立つ時、おばあちゃんは無言で強く抱きしめて送り出し、バス停まで見送る父はビリーを高く抱き上げて強く抱きしめる。同じくバス停まで見送りに来たトニーは、座席についたビリーを笑わせた後「寂しい」と声をかける。言葉少なな家族だが、それぞれの行動に愛を感じとることができる。家族であってもそれぞれに辛い状況があり、すれ違いが起きる。しかし、どんな状況でも支え合い乗り越えていく姿に心温まるシーンである。

14年後のビリー

25歳になったビリー(演:アダム・クーパー)

14年後、25歳になったビリーは「白鳥の湖」で主役を演じており、その公演には父や兄だけでなく、マイケルもやって来る。皆、ビリーの晴れ舞台に興奮を隠せない様子で、彼の登場を待つ。舞台袖でスタンバイしているビリーは家族が来ていることを聞いて少し微笑むと、表情を引き締めて舞台へと向かう。ビリーが舞う姿を映しながら、映画は幕を下ろす。

『リトル・ダンサー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

不自然にデビーがいなくなるカット

ビリー(画像右)と話しながら警備隊の盾を棒でなぞるデビー(画像左)。この後が問題のシーン。

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