フライト・ゲーム(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『フライト・ゲーム』とは、2014年に公開されたアメリカのサスペンスアクション映画である。航空保安官としての任務でニューヨーク発ロンドン行きの飛行機に搭乗したビルは、何者かから機内で20分後に人を殺すというメッセージを携帯電話に受信する。ビルは周囲の協力を得ながら事件解決に向けて動くが、徐々に彼自身がハイジャック犯なのではないかと周囲から疑われてしまう。監督はジャウマ・コレット=セラが務め、主演したリーアム・ニーソンとは2度目のタッグとなった。共演はジュリアン・ムーアら。

『フライト・ゲーム』の概要

『フライト・ゲーム』とは、2014年に公開されたアメリカ映画で、飛行機を舞台にしたサスペンスアクション映画である。

監督はアクション映画に定評のあるジャウマ・コレット=セラ。製作は『ダイ・ハード』シリーズなどアクション大作を世に送り出したジョエル・シルヴァー。音楽は『ボヘミアン・ラプソディ』の音楽と編集を手掛けたジョン・オットマン。

航空保安官のビルを演じたのは『96時間』シリーズのリーアム・ニーソン。ビルに協力する乗客ジェンを演じたのは『アリスのままで』のジュリアン・ムーア。

監督のジャウマ・コレット=セラと主演したリーアム・ニーソンは『アンノウン』に続き、『フライト・ゲーム』で2度目のタッグを組むことになった。彼らは以降も、『ラン・オールナイト』、『トレイン・ミッション』でもタッグを組んでいる。

航空保安官のビルは、任務で搭乗したアクアランティック10便内で見知らぬアドレスから「指定の口座に送金しなければ20分ごとに人を殺す」とメッセージを受信する。客室乗務員や乗客の協力を得て犯人探しを始めるビルだったが、徐々に自分がハイジャック犯ではないかと周囲から疑われ始める。

約150人の乗客の中から犯人を探していくサスペンスに、狭いトイレ内や通路でのアクション要素が加わった本作は、原題が『Non-Stop』であることからも分かるように、ノンストップで107分を駆け抜けていく。

『フライト・ゲーム』のあらすじ・ストーリー

飛行機に搭乗したビル

車で空港に到着した航空保安官のビルは、駐車場に停めた車内で酒を飲んでいた。出発時間が近づき搭乗口まで向かうが、酒のせいか意識はぼんやりしており、同じ便に搭乗する男性に行き先を聞かれても無視してしまった。少しずつ意識がはっきりしてきたビルは、飛行機に乗るのを怖がる少女ベッカへ励ましの言葉をかけて一緒に飛行機へ乗り込んだ。ビルが座るのはビジネスクラスの通路側。窓側にはザックという男性が座っていたが、手違いで通路側を予約してしまった女性ジェンがお願いしてザックと席を代わってもらうのだった。

ニューヨーク発ロンドン行きのアクアランティック10便はこれから約6時間のフライトを予定。離陸が苦手なビルは、娘のオリヴィアからもらった魔法のリボンを手に巻いて気を紛らわせるのだった。飛行機が離陸すると、ビルは隣に座ったジェンと世間話をして、体を休めることにする。

殺人予告のメッセージ

ビルはトイレに向かうと、機内に持ち込んだビニールテープで火災報知器を目張りし、煙を感知しないようにしてからタバコを吸い始める。そしてビルが一服を終えて席に戻ると、携帯電話に見知らぬアドレスからのメッセージを受信した。そのメッセージには、「1億5千万ドルを指定した口座に送金しないと20分ごとに誰かを殺す」と書かれていた。

トイレで隠れてタバコを吸っていることまで知られていたことから、ビルは顔見知りで、同じ便に乗り合わせたもう1人の航空保安官ハモンドに疑いの目を向ける。ビルはハモンドを客室乗務員の待機場所に呼び出して携帯電話をチェックするもハモンドの仕業ではなかった。

これが脅迫であれば緊急着陸しなければならなくなるため、ビルとハモンドはデヴィッド機長へ事情を説明する。そして、ビルは国土安全保障省(以下、略称のTSA)に連絡を取り、乗客名簿の調査を依頼するも、調査には30分が必要で、近くに緊急着陸できる空港もないと言われてしまう。

ハモンドの秘密

時間のないビルは、客室乗務員のナンシーと隣の席に座ったジェンに自身が航空保安官であることを名乗って協力を依頼する。ビルがメッセージのやり取りをしている間、パソコンや携帯電話の操作をしている乗客がいないかをナンシーとジェンに監視カメラでチェックさせるのだった。

ハモンドが携帯電話を頻繁に操作し、席を立ったのを監視カメラ越しに見たビルはハモンドを追いかける。ハモンドがトイレに入ってドアを閉めようとすると、ビルも強引に入り込んだ。トイレに入るなりハモンドはビルに「金が要るんだ」と言い始める。ビルが自分の携帯電話の通知音に気を取られると、ハモンドはビルに殴り掛かってきた。ビルはハモンドの後方に回り首を絞めて押さえ込もうとしたが、ハモンドは任務で携帯していた銃を手に取ってビルに向けてくる。このままでは撃たれてしまうと感じたビルはハモンドの首の骨を仕方なくへし折るのだった。

トイレを出たビルは、他の乗客がハモンドの死体があるトイレに入って来ないようにプレートを「使用中」にしてデヴィッド機長のところへ向かった。デヴィッド機長によると、TSAが調べた口座の名義がビル自身のものであるとのことだった。さらに、TSAのマレニックという男がワシントンからこの件の捜査を指揮することになり、機内での捜査権を失ったビルはデヴィッド機長に航空保安官のバッジと銃を渡すのだった。

ビルはハモンドの携帯電話を確認すると、ビルにメッセージを送ってきたのと同一と思われる人物からハモンドへメッセージが来ていたのだ。「鞄の中身を知っているぞ」というメッセージを見たビルは、荷物棚からハモンドの鞄を持ち出しハモンドの死体のあるトイレに向かった。トイレで鞄を開けるとそこには大きな袋に入ったコカインがあったのだ。これにより、1億5千万ドルの送金先が自分名義の口座で、トイレにはハモンドの死体とコカインがある状況になってしまった。自分がハイジャック犯だと疑われると感じたビルは、客室乗務員のナンシーにハモンドの死体を見せて状況を説明し、再び協力を依頼することにする。

ビルによる無断捜査と最初の被害者

ビルは乗客全員に航空保安官であることを名乗り、先程ナンシーとジェンが監視カメラでチェックした乗客への検査をデヴィッド機長に無許可で始める。ナンシーは同僚のグウェンと協力して、乗客全員に両手を前の席の上に乗せるように呼び掛けた。ビルは機内を歩き回り、ビルの後方に座るマリアン、医師のナジール、弁護士のウィーラー、ニューヨーク市警のライリー、素行の悪いトラヴィスらの身体検査や携帯電話のメッセージ履歴の確認を行った。

するとビルの携帯電話に「ゲームはやめにしないか」というメッセージが入った。辺りを見回したビルは、飛行機に乗る前にビルに行き先を聞いてきたボーウェンという男を捕まえる。TSAのマレニックに連絡して彼の身元を調べさせるも、「ボーウェンはロンドンで教師をやっている男だから問題ない」と言われてしまう。電話を切ったビルはボーウェンに「なぜ行き先を聞いてきたのか」と問いただすと、「知らない男から100ドルでビルに行き先を聞くように言われた」と白状する。ビルはボーウェンを連れて機内を歩きながらその男を探し始めた。

ボーウェンを連れて回っていると、次の被害者の出る時間が迫ってきたため、ビルはボーウェンの手をビニールテープで縛り、銃を手に取った。タイムリミットになるその時、機体は急降下してビルは天井に激突して床にたたきつけられた。何とか立ち上がったビルは、操縦室から客室乗務員を呼び出すコール音が鳴ったため、ナンシーと共に操縦室に向かう。操縦室に入ると泡を吹いて倒れるデヴィッド機長をカイル副操縦士が抱えていたのだ。ビルは医師のナジールを操縦室に呼んで診てもらうがもう手遅れであるとのことだった。その操縦室でビルはデヴィッド機長によって回収されたバッジと銃を取り戻した。

2人目の被害者

ビルが自分の席に戻ると、そこではザックが座って隣のジェンと話をしていた。ザックがプログラマーだと知ったビルは、犯人の携帯電話がメッセージを受信した際に着信音の出る仕組みを作るように指示する。ザックがその仕組みを作っている間、ビルはビジネスクラスの乗客を後方のエコノミークラスの席に移動させてすべての乗客を一度に見られる状況にしようとする。状況が分からず不安に感じた乗客たちが徐々に騒ぎ始めたため、ビルは1年間飛行機代を無料にするから協力してくれと言って何とか騒ぎを収めるのだった。

飛行機が突然旋回し始めたのを確認したビルは副操縦士のカイルに事情を聞きに行く。カイルはTSAから北へ向かうように命令されていたのだった。ビルは後方に集めた乗客に両手を挙げさせた状態のまま、ザックの完成させたメッセージを犯人に送信する。しばらくして携帯電話の着信音が鳴り始めた。着信した携帯電話を持っていたのは先程検査をした弁護士のウィーラーだった。ビルは「自分の携帯電話ではない」と言うウィーラーを客室乗務員の待機場所へ連れていく。ビルが事情を聞き出そうとしていると、突然ウィーラーも泡を吹いてその場に倒れた。再び医師のナジールに診てもらうがウィーラーもデヴィッド機長同様、助からなかった。席に戻ったナジールはライリーに状況説明を求められてデヴィッド機長やウィーラーが死んだことを教える。すると、ライリーはビルがハイジャック犯で、乗客を1人ずつ殺しているのではないかと疑い始める。

ビルはトイレに入って再び煙草を吸い始めた。タバコの煙がある方向に流れていくのに気が付いたビルは、ティッシュが備え付けられている場所を無理やりこじ開ける。すると、そこには操縦室と繋がる小さな穴が開いていた。さらにトイレのごみ箱から薬物を入れていたと思われる容器も見つかり、デヴィッド機長はトイレから毒殺されたのではないかと疑う。

ビルはわざわざ窓側に座りたいと言って自分の隣の席に座り込んできたジェンに疑いの目を向ける。ジェンはかつて心臓を患っており、いつか死ぬなら飛行機に乗る際に窓側に座って外を眺めたいと思っていただけだったのだ。疑いの目を向けられたことでジェンは不快感を露わにするも、ビルがその場にあった酒を勧めてくれたことで気分を落ち着かせる。

仕掛けられた爆弾と疑われたビル

ウィーラーが持っていた携帯電話を調べていると、あたかもビルが犯行声明を出したかのようなメッセージがどこかへ自動で送信され、30分のタイマーが表示されてしまった。爆弾のタイマーだと思ったビルはジェンと協力して乗客の鞄の中身を調べ始める。

ビルは機内に爆弾があることを知らせようとTSAのマレニックに連絡するも、先程自動送信されたメッセージを受信したTSAはビルをハイジャック犯だと思っていた。さらに、ビルは機内と機外の気圧差が少なくなる8000フィートまで高度を下げるように要求するも、地上への危険があるため8000フィートまで下がって来たら撃墜するとまで言われてしまう。

機内のテレビでは、当機のハイジャック犯がビルであるというニュースが流れていた。さらに、ビルが8歳の娘をがんで亡くし、妻と離婚して精神的に不安定な状態だったことまで報道されていた。

ビルはコカインが入っていた袋の奥に爆弾が隠されているのを発見する。ビルがトイレから出てくると、ビルをハイジャック犯だと思っているライリーらが襲い掛かる。抵抗するビルだったが、ライリーら複数人の男たちによって取り押さえられ、ボーウェンには銃を奪われてしまった。ここでビルはトイレに爆弾があること、娘を亡くしてからアルコール依存症になったこと、乗客の命を助けたいと思っていることをぶちまけ自分がハイジャック犯でないことを訴える。

ビルの訴えを聞いた乗客らはビルを信じて開放する。爆破まで20分を切ってしまい、爆弾を解体することも飛行機から投げ捨てることもできない。ビルは最悪の事態を想定して、爆弾を飛行機の最後方に置き、その爆弾に荷物を重ねて爆発による被害を最小限にしようとする。また、ライリーを信頼できると考えたビルは万が一の場合に備えてハモンドの銃をライリーに手渡した。

飛行機の周囲には2機の戦闘機がやって来ていた。戦闘機のパイロットからカイルに高度を維持するように命令が下っていたが、ビルは「16分後に爆発するからそれまでに8000フィートまで降下してくれ」とカイルに強く要望した。客室乗務員の指示で乗客は爆弾から離れた前方の席へ移り始める。怯えてなかなか移動しようとしないベッカに、ビルは亡くした娘からもらった魔法のリボンを渡して何とか移動させるのだった。

ようやく見つけた犯人

TSAのマッカレンからの連絡で、ビルが犯人であることを示す映像がネットにアップロードされていることを知ったビルは、自分のことを撮影していたエルリッヒという男のスマートフォンをチェックする。するとその動画はビルがボーウェンを連れて回っているところが映されていた。その動画を繰り返し確認すると、後に泡を吹いて死ぬことになるウィーラーにボーウェンが触れているところが映っていた。ボーウェンはウィーラーのポケットに携帯電話を忍ばせて、同時に毒薬も仕込んでいたのだった。

ビルに気付かれたと察したボーウェンはライリーから銃を奪い取り、ライリーに銃を向けた。ボーウェンは銃を撃ったが、ビルが銃弾を抜いていたため銃弾は発射されなかった。ビルが銃弾は自分の席にあると言うと、ボーウェンから銃を奪い返したライリーは銃弾を取りに走った。ライリーに銃を奪われたボーウェンは飛行機後方へ逃げる。ライリーがビルの席で弾を探していると、弾を持っていたのはザックだった。ザックはライリーから銃を奪い取り装填するとライリーの肩に向けて発砲した。ビルがその銃声で振り返ったところ、隠れていたボーウェンに襲われ銃を奪われてしまう。これにより犯人はボーウェンとザックであると判明した。

ボーウェンは犯行の動機を語り始める。ボーウェンは父をアメリカ同時多発テロで亡くし、軍隊に入って参加した戦争では戦う目的を見失ってしまった。アメリカにはどこにも安全な場所はなく嘘にまみれている。航空保安官をハイジャックの犯人に仕立て上げることでアメリカの嘘を暴くことが目的だったのだ。そこで、このまま死んでもいいと考えるボーウェンと、生きて金を貰いたいザックが対立をし始める。ビルが「生きたいのなら爆弾を解除しろ」とザックに言って携帯電話を渡すとボーウェンはザックを撃ったのだ。

爆発まで1分を切ったところで、カイルはビルの要望通り8000フィートに向けて急降下を開始する。急降下により機内は一時的に無重力状態に。ボーウェンは天井に直撃したが、事前にシートベルトを手に巻いていたビルはその場に留まることができた。ザックが落とした銃が宙に浮いてビルの近くに来たのを確認すると、ビルはその銃を手に取って発砲し、ボーウェンを殺すことに成功するのだった。さらに、機内が無重力状態から脱したところで、撃たれて倒れていたザックが起き上がり、ナイフでビルに襲い掛かってくる。ビルはザックを飛行機の後方に投げ飛ばすと、飛行機の前方に向って走り出した。

爆破と緊急着陸

カウントダウンをしていたタイマーが0になり、飛行機後方で爆弾は爆発。ビルは爆風で飛行機前方に吹き飛ばされた。さらに、爆発によって機体の側面にまで穴が開いてしまった。ベッカが座席ごと外に飛ばされそうになっているのを見たビルとジェンはベッカのシートベルトを外し、魔法のリボンをしたベッカの手を必死に掴み続けた。カイルは機体に大きな損傷を抱えながらも何とか操縦し、アイスランドの空港に胴体着陸することに成功する。

着陸時に死者を出さずに済み、客室乗務員の指示で乗客は速やかに飛行機から降りることができた。テレビではビルがハイジャック犯ではなく犯人を捕まえたヒーローとして報道され、ビルをハイジャック犯だと決めつけて話を聞かなかったマレニックは電話でビルに謝った。ビルは空港で一人になったジェンと笑顔で話すのだった。

『フライト・ゲーム』の登場人物・キャラクター

主人公

ビル・マークス(演:リーアム・ニーソン)

日本語吹替:石塚運昇

ニューヨーク市警で警官として働いていたが、解雇されてからは航空保安官として働いている。また、娘のオリヴィアは8歳の時にガンで亡くなり、妻とも離婚したことで精神的に不安定になりアルコール依存症に苦しんでいる。アクアランティック10便には航空保安官の任務で搭乗し、ビジネスクラスの乗客を装っている。ヘビースモーカーであり、機内のトイレで火災報知機に目張りをしてまでタバコを吸うほどである。携帯電話に見知らぬアドレスから殺人予告のメッセージを受信したことで犯人探しを始めることになるが、徐々に乗客やデヴィッド機長から自身がハイジャック犯ではないかと疑いの目を向けられる。

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