ユージュアル・サスペクツ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ユージュアル・サスペクツ』とは1995年にアメリカで製作されたサスペンス映画。
巧妙に練られた脚本と、思ってもみないどんでん返しのエンディングが大きな話題となり大ヒットとなる。
カルフォルニア州サンペドロで麻薬密輸船の爆破事件が起こる。謎に包まれたこの事件を、生存者である手足が不自由な男、ヴァーバルが捜査官に語って聞かせる。その事件には闇社会では伝説となっている人物、カイザー・ソゼが深く関わっていた。謎の人物カイザー・ソゼの正体を暴くうちに、事件の全貌が徐々に明らかになっていく。

面通しの様子

事件関係者に容疑者の顔を見せて、容疑者が真犯人であるかどうかを確認する警察の捜査方法。
ニューヨークのトラックハイジャック事件では、犯人の顔は判明せず、声だけが証拠であった。
そのため犯人が発した「キ-をよこせ。チンポ野郎!マザーファッカー!」というセリフを事件関係者に聞かせたが、犯人は特定できなかった。
この面通しのシーンがポスターに使われるなど、この映画を象徴する場面となっている。

『ユージュアル・サスペクツ』の名‌言・‌名‌セ‌リ‌フ‌/‌名‌シー‌ン・‌名‌場‌面

ヴァーバル「レディース」

エメラルドを巡って一触即発のマスナマス(左)とトッド(右)

エメラルド奪った後、マクナマスがフェンスターと二人でレッドフットに渡すと提案する。
持ち逃げされると危惧したトッドは「お前ら2人でカルフォルニアにハネムーン。おれたちは?」と不満をぶつけた。
一触即発の2人をキートンは凄みのある声で制す。リーダーであるキートンに諭され2人は落ち着いたが、まだ顔を近づけにらみ合っている。
そこでヴァーバルが「レディース」と声を掛けると、マクナマスが吹き出し、場が一気に和む。
今にもキスしそうな距離でにらみ合っていたマクナマスとトッドの様子に、ハネムーンという言葉にかけてからかった言葉だが、ヴァーバルの機転の早さとキートンのカリスマ性を感じさせるシーン。

フェンスターの埋葬

フェンスターを埋葬するシーン

カイザー・ソゼの存在に恐怖を感じたフェンスターは仲間に黙って逃げ出してしまう。
しかしソゼに殺され、海辺で遺体となって発見される。
マクナマスは5年間フェンスターと一緒に仕事をしてきた。そんな相棒をマクナマスは砂に埋めようとする。
短い期間とはいえ仲間となったフェンスターの非業の死を目にしたキートンはコバヤシに激しい怒りを抱き、フェンスターの埋葬に手を貸す。
犯罪者とは言え、義理堅いキートンの心情と怒りが入り混じったシーン。

ヴァーバル「なぜ役立たずでバカなおれに?」

刑事の前で迫真の演技をするヴァーバル

ソゼの正体がキートンで、なぜ自分だけを生き残らせたのかと、ヴァーバルはデビッド問いかける。
「なぜ役立たずでバカなおれに?」と泣きながら話すヴァーバルに「お前が役立たずのバカだからさ」とデビッドは答えた。
その言葉にショックを受け、号泣しながら今回の一連の事件を指図したのはキートンだとヴァーバルは証言する。
その哀れな姿と証言で、カイザー・ソゼの正体はキートンであるとデビットは確信した。
迫真の演技を披露したヴァーバル。
人の心を操るヴァーバルの巧みさを感じさせるシーン。

『ユージュアル・サスペクツ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

お騒がせ俳優ケヴィン・スペイシー

数々の大ヒット映画に出演し、映画『アメリカン・ビューティー』(1999)ではアカデミー主演男優賞を獲得したケヴィン・スペイシー。
しかし2017年10月、スペイシーにセクシャルハラスメントを受けたと俳優のアンソニー・ラップが告発。その後多くの男性たちが同様の告発をする。
結婚歴は一度もなく、生活については全く明かさなかったため、以前からゲイではないかという噂が絶えなかった。
本人はゲイ疑惑を否定していたが、アンソニー・ラップの告発をきっかけにゲイであることを公表。
「セクハラ告発から注目をそらすための巧妙な策だ」という批判が関係者から上がり、主演ドラマや映画の降板が相次いだ。

利用された女、イーディ

カイザー・ソゼことヴァーバルはキートンを操るために、彼のパートナーであるイーディをとことん利用した。
キートンがイーディを深く愛していることを知り、人質にしてアルゼンチンの麻薬密輸船を襲撃せざるを得ない状況を作り上げる。
また襲撃後はイーディの頭を銃で撃ち抜き殺してしまう。
このあまりにも非情なやり口は、カイザー・ソゼつまりキートンの仕業とデビットは確信する。
己の目的のためには一般市民の命さえ簡単に奪ってしまうカイザー・ソゼの残虐性と鉄の意志が伺える。

カイザー・ソゼは左利き

左手で銃を撃つカイザー・ソゼ

ヴァーバルの証言を映像化したシーンでは、カイザー・ソゼは左利きであり、左手で銃を扱う男であった。
つまり左手足が不自由なヴァーバルがカイザー・ソゼであり得るはずがないと思わせる作戦だ。
そんな細かな設定さえ計算に入れ、計画を練ったヴァーバルの緻密性が伺える。

『ユージュアル・サスペクツ』の主題歌・挿入歌

音楽を担当したジョン・オットマンは編集技師・映画監督としても活躍している作曲家。
ブライアン・シンガー監督と再びタッグを組んだ映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)では作曲と編集を担当し、第91回アカデミー賞にて編集賞を受賞している。
『ユージュアル・サスペクツ』のサウンドトラックが発売された当初、CDジャーナルに掲載されたレビューでは「新鋭ジョン・オットマンのスコアはミステリアスで、ドスが効いていて、どこか屈折していて、かと思えば,時折ロマンティックだったりもする。新人とは思えぬ風格を漂わせているところがスゴイ。」と評されている。

メインテーマ:ジョン・オットマン「メイン・テーマ」

kyusu3
kyusu3
@kyusu3

Related Articles関連記事

ボーダーライン(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

ボーダーライン(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ボーダーライン』とは2015年に製作された犯罪・サスペンス・アクション・ドラマを扱ったアメリカ映画である。現場で活躍するFBIの女性捜査官がメキシコの麻薬カルテル撲滅のために組織されたチームにスカウトされ、アメリカとメキシコを股にかけた麻薬戦争の実情を目の当たりにするという話である。監督は『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴが務め、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のエミリー・ブラント、『トラフィック』のベニチオ・デル・トロらが出演した。

Read Article

ベイビー・ドライバー(Baby Driver)のネタバレ解説・考察まとめ

ベイビー・ドライバー(Baby Driver)のネタバレ解説・考察まとめ

『ベイビー・ドライバー』とは2017年にアメリカ合衆国で公開されたアクション映画である。主人公ベイビーが音楽を聴く事で驚くべきドライビングテクニックを発揮し、逃がし屋として活躍する姿を描いた作品。更にアクションだけではなく、一目惚れした彼女との初々しい恋愛をも描いている。監督はエドガー・ライト、主演はアンセル・エルゴートが務めた。 映像と音楽が完璧にシンクロするという今までになかった爽快アクション映画。

Read Article

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』とは2018年のアメリカのアクション映画で、2015年に製作された『ボーダーライン』のスピンオフである。前作同様にメキシコの麻薬カルテルをテーマにしている。メキシコの麻薬カルテル内に混乱を引き起こすことを国防長官から命ぜられたCIAのマットは暗殺者のアレハンドロを雇い作戦を決行するが、敵の攻撃を受けたことから想定外の事態へ陥ってしまう。監督はステファノ・ソッリマが務め、キャストはベニチオ・デル・トロやジョシュ・ブローリンが前作から続投した。

Read Article

ボヘミアン・ラプソディ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

ボヘミアン・ラプソディ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ボヘミアン・ラプソディ』とは2018年11月に日本で公開された、「クイーン」のボーカルで、類まれなる歌声と才能を持ったフレディ・マーキュリーの半生を描いた伝記映画である。イギリスとアメリカの共同制作。ブライアン・メイとロジャー・テイラーが音楽総指揮を手がけ「Bohemian Rhapsody」「We Will Rock You」など名曲の誕生秘話、クイーンとフレディ・マーキュリーの栄光とその影を描く。20世紀最大のチャリティーコンサート「ライヴ・エイド」での伝説のステージが蘇る。

Read Article

ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』とは1997年に製作されたアメリカ映画で、1993年に製作された『ジュラシックパーク』の続編である。イスラ・ヌブラル島で起きた事件から4年、その島とは異なるサイトB呼ばれる場所で恐竜の存在が確認された。新たに社長になったハモンドの甥のルドローはサイトBにいる恐竜を捕獲し、サンディエゴに新たな「ジュラシックパーク」を建設しようとしていた。マルコムたちがその計画を止めようとするも捕獲は成功し、サンディエゴへと運ばれるがそこで悲劇が再び起こってしまう。

Read Article

セブン(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

セブン(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

1995年のアメリカ映画。監督はデヴィッド・フィンチャー。 舞台は犯罪がはびこるアメリカの大都会。キリスト教の「七つの大罪」に沿って人を殺していく猟奇殺人犯を、退職間近の老刑事サマセット(モーガン・フリーマン)と、血気盛んな若手刑事ミルズ(ブラッド・ピット)が追っていく。 独創的な映像センスと、人間の暗部を描いた脚本が魅力のサイコサスペンス。

Read Article

ヘレディタリー/継承(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

ヘレディタリー/継承(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ヘレディタリー/継承』とは、2018年に公開されたアメリカのホラー映画である。監督のアリ・アスターは本作が長編映画デビュー作である。主演のアニー役をトニ・コレットが務めた。サンダンス映画祭で「ホラー常識を覆した最高傑作」「現代ホラーの頂点」と批評家から最高の評価を受けた。家長である祖母エレンの死をきっかけにグラハム家に奇妙な出来事が頻発し、家族が崩壊していく。緻密に張り巡らされた恐怖の伏線。タイトルの「継承」の意味がわかったときには、逃れられない仕組まれた最悪の運命に恐怖する。製作はA24。

Read Article

アメリカン・ビューティー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

アメリカン・ビューティー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『アメリカン・ビューティー』とは、サム・メンデスによる1999年のアメリカ映画。中年男性レスター・バーナム(ケヴィン・スペイシー)が、家庭や仕事に不満を抱えながらも娘の同級生である美しい少女に惹かれる姿を描く。家庭崩壊と中年危機をテーマに、アメリカ郊外の虚飾を皮肉る内容が特徴。独特の映像美とブラックコメディ要素を交え、1999年アカデミー賞で作品賞を含む5部門を受賞。人間の欲望や本質に迫るドラマとして高い評価を受けた。

Read Article

覚悟して見て!トラウマレベルの名作・問題作洋画まとめ【セブン、ムカデ人間など】

覚悟して見て!トラウマレベルの名作・問題作洋画まとめ【セブン、ムカデ人間など】

衝撃の結末やグロテスクな描写が大きな話題となった洋画の中で、特に注目の名作・問題作をまとめました。ストーリーが秀逸なサスペンス「セブン」や、発想も描写も衝撃的すぎるホラー「ムカデ人間」、歌手ビョーク主演の感動作「ダンサー・イン・ザ・ダーク」など、様々なジャンルからおすすめ作品を選定。見どころなどを交え、作品の魅力を徹底的に紹介していきます。

Read Article

映画の悪役まとめ!『セブン』のジョン・ドゥなど殴りたいほど腹が立つキャラクターを紹介!

映画の悪役まとめ!『セブン』のジョン・ドゥなど殴りたいほど腹が立つキャラクターを紹介!

殴りたいほど腹が立つ映画の悪役キャラクターをまとめました。『セブン』でケヴィン・スペイシーが演じたジョン・ドゥや、ケヴィン・ベーコンが演じた『インビジブル』のセバスチャンなど、感情移入が全くできない嫌な登場人物・キャラクターたちの腹が立つポイントや映画を見た人の感想を紹介していきます。

Read Article

目次 - Contents