天穂のサクナヒメ(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『天穂のサクナヒメ』とは、同人ゲームサークル「えーでるわいす」が制作し、マーベラスから発売されたアクションRPG。PS4、Nintendo Switch、PC版が発売されている。戦神であり豊穣神でもある主人公・サクナヒメが鬼の蔓延る島「ヒノエ島」で稲作に従事しながら鬼を退治し、島の秘密を解き明かしていく物語。ゲームは稲作とアクションの2つのパートに分かれて進行する。稲作パートの本格的な作りこみから「農林水産省のHPが攻略wikiになる」と話題になった。

サクナヒメが西の砦に攻め入ると、その奥には立派な城が建っていた。タケリビが建造した砦にはなかったものだ。その最上階には、天浮橋で会った石丸が座っていた。鬼を束ねていたのは、やはり石丸だったのだ。
サクナヒメも田右衛門も子どもたちも皆殺すと言い切った石丸は、鬼の姿に変じてサクナヒメに戦いを挑む。しかし力の差は歴然、サクナヒメは石丸に勝利を収めた。
命は助けてやるから立ち去れと言うサクナヒメに、石丸は何故か勝ち誇る。その瞬間、轟音と共に大地が揺れ始めた。外を見ると、南の火山が真っ赤に火を噴いている。
石丸が言った。「悪神大龍のお目覚めだ!」。大龍はタケリビに殺されてはおらず、ヒノエ島の地中に潜んで雌伏の時を過ごしていたのだ。島に辿りついたばかりの石丸は、恨みと怒りに突き動かされるばかりの自分と同じものを大龍に感じ取り、その配下となることと引き換えに鬼の力を手に入れたのだった。タケリビから受けた傷を癒した大龍が目覚めただけで火山が火を噴いた。飛び立つときにはこの島などひとたまりもなく吹き飛んでしまうだろう。
高笑いして去っていく石丸を追おうとするサクナヒメを、タマ爺が押しとどめた。鬼の力を失った人間がこのヒノエ島で生きていけるはずもない。死にたくなければ、峠にいるサクナヒメたちを頼るしかないのだ。

大龍と戦うには

母トヨハナから受け継いだ、サクナヒメの羽衣。対価を支払えば世界を超えるほどの力を持っている。

石丸を倒し、砦を落としたサクナヒメは、峠に帰る道中、たくさん米を作って強くなった今の自分ならば大龍に勝てるかとタマ爺に問う。
タマ爺は、サクナヒメは心身ともに成長し、いまや都の神々の中でも指折りの力を手に入れた、と請け合う。しかし、かつてのタケリビには遠く及ばない。復活した大龍は昔よりさらに強くなっている。せめてタケリビとトヨハナが戻ってくれれば勝機はあろうが、サクナヒメひとりではとても無理だという。
いつかの夕食の席で、タマ爺がトヨハナの羽衣の話をしたことがあった。羽衣は本当の名を「異世渡りの領巾(いせわたりのひれ)」といい、相応の対価を支払ってその真の力を発揮すれば、あるいは大龍に対抗できるかもしれない。誰が何の目的でどのように作ったのかもわからない羽衣の真価を発揮したとき、何が起こるかはわからない。
そしてタマ爺は、自分を溶かして打ち直し、サクナヒメの武器となる農具としてほしいと嘆願した。タマ爺は神剣「星魂剣(ほしだまのつるぎ)」といい、その力を備えた農具ならば大龍の鱗も貫いてみせると言う。
しかし、星魂剣はタケリビが大龍を倒した際に刀身が砕け、今では柄の部分しか残っていない。溶かして打ち延ばし、他の鉄を足して農具として生まれ変われば、剣に宿った精霊であるタマ爺は消えてしまう。
タマ爺は生まれてすぐに両親がいなくなってしまったサクナヒメをひとりで育てた、いわば育ての親だ。そのタマ爺を贄になどできないと言うサクナヒメに、タマ爺はタケリビと共に数多の戦を駆け抜け、その娘の武器となれるならば剣としてこの上ない本望だと言う。
サクナヒメはそんなタマ爺を泣いて拒絶する。そこまでして勝てる見込みがどれほどあるかわからない。皆死んでしまうかもしれない。きんたがいつも言っているように、死んでしまえば元も子もない。二度とこの話はするな、とタマ爺に命じるサクナヒメ。
噴火の灰が混じった雨が降り出した。

壊滅

壊滅した峠。アシグモは傷を負いながらも人間たちを避難させた。

サクナヒメが灰混じりの雨の中を峠に戻ると、全てがなくなっていた。ゆいの機織り小屋も、きんたの鍛冶小屋も、かいまるの家畜小屋も、納屋も、家も、全てが燃えてなくなっていた。そこに、傷を負ったアシグモが現れる。鬼が大挙して峠に押し寄せ、田右衛門たちは逃がしたので無事であるが、家や田んぼは守れなかったと言う。
田右衛門たちは、僅かな家財道具や食料と共に近くの洞穴に避難していた。アシグモ以外には怪我もなく無事だった。
峠に匿われていた兎鬼が、傷も癒えないうちから峠の外に出ようとしたことが何度かあったという。あの鬼が手引きして、峠に鬼たちを呼んでしまったに違いなかった。
家もなく、家財はほとんど失われ、灰混じりの雨で土も駄目になってしまっている。これまで築いてきたすべてを失い、皆が失意の底にあった。また一からやり直せると田右衛門だけは前向きになろうとするが、きんたが黙らせてしまう。
田んぼが火山灰に汚染され、サクナヒメの豊穣の力が失われた。
サクナヒメはひとり、洞を離れ、何日も島をさまよい、気が付けば舟が隠してある浜辺の洞にいた。いつだったか、島に来たばかりの頃、彼岸花から作ったテクサリ団子を夕食に出され、「こんなに頑張ったのに何もよくなっていない」と言って家を飛び出したときも、同じ場所に来たのだった。自分では大きく変わった気でいたのに、同じような理由で同じ場所に逃げてきた自分の小ささを感じるサクナヒメ。その傍らには、あのときと同じように舟がある。
天候は晴れ、波も穏やかだ。漕ぎ出せば、都とまではいかずとも、別の島に辿りつくかもしれない。サクナヒメがいなくなれば、田右衛門たちはこの島では生きていけないだろう。サクナヒメが都に帰れば、サクナヒメとタマ爺は助かるが、大龍が攻めてくるという緊急時に、カムヒツキが人間たちの面倒まで見てくれるとは思えない。都に恭順しないアシグモや河童たちに至っては、都に入れてすらもらえないだろう。
サクナヒメはヒノエ島の日々を愛し、共に暮らす者たちを愛している。それらを守ることができるのは、またそれを願うのは、サクナヒメの他にはいないのだ。
島を守ると決意したサクナヒメが傍らの舟を壊そうとしたとき、洞に侵入してきた大きな船が浜に乗り上げた。舟は粉々になった。
船に乗っていたのは約束通り島に遊びに来た親友、ココロワヒメだった。

出直し団子

空の椀を掲げて再出発の号令をかけるサクナヒメ。都にいた頃とは見違えるほど逞しくなった。

サクナヒメがココロワヒメを連れて峠に戻ると、田右衛門たちが揃って出迎えてくれた。その背後には、つぎはぎの家と納屋が建っている。
サクナヒメがいなくなった後、人間たちは話し合い、もう一度やり直そうと結論付けた。そして仮の住まいを作って、サクナヒメの帰りを待っていたのだった。見るからに素人仕事で、壁は隙間だらけ、部屋はひとつしかなく、屋根も粗末で雨が降れば雨漏りは避けられない。それでも笑ってやり直そうとする人間たちは、サクナヒメたち神にとってこの上なく頼もしく、眩しく映るのだった。
その夜、夕食に出されたのは、ヒノエ島に来たばかりのサクナヒメが家を飛び出すきっかけとなったテクサリ団子だった。サクナヒメはテクサリ団子を「出直し団子」と呼び、皆で空の椀を掲げて再起の決意を固めるのだった。

ココロワヒメの知恵

灰に汚染された田んぼの状況を分析するココロワヒメ。

まずはサクナヒメの力の源でもある田んぼを再生することになるが、灰の混じった雨に侵され、土はべとべとになっている。土を入れ替えたとしても、長年かけて育ててきた良質な土に戻るわけではない。
サクナヒメが落ち込んでいると、ココロワヒメが知恵を出す。土がべとついているということは、灰が雨に溶けていたということだ。ならば、田んぼに大量の水を入れて土を起こしてやれば、重い土は水に沈み、軽い灰は水に混ざって水路に流してしまえるかもしれない。
ココロワヒメの言う通りに水を入れて田んぼを起こしてみると、完ぺきとはいかないがかなり土の状態が良くなった。喜ぶサクナヒメに、ココロワヒメも満足そうだ。
そもそも、ヤナトは火山の多い国だ。人里に近い山でも、一昔前に噴火したなどという話はざらにある。どの土地でも灰を被ったことがあるのなら、なぜ作物の育ちがよいところとそうではないところに分かれるのか。この疑問から解決策を探るため、ココロワヒメは都に戻って資料を探すことに決める。

蘇った鬼たち

ヨモツホムスビの力で蘇った大蝦蟇。

新たにヒノエ島での生活をはじめたサクナヒメのもとに、アシグモが島の異変を報告する。アシグモ族の黄泉神が森の周辺に現れ、河童たちが怯えていると言う。黄泉神の元凶は、サクナヒメが火山で退治したはずの「黄泉火産霊(ヨモツホムスビ)」。大龍に匹敵すると言われるほど強大な自然神は、一度倒した程度では完全に滅することができなかったのだった。
サクナヒメが森を調べに行くと、かつて退治したはずの大蝦蟇が現れる。ヨモツホムスビと同じ炎をまとった大蝦蟇は、ヨモツホムスビの力で黄泉神として蘇ったのだ。田んぼを汚染されて力の落ちてしまったサクナヒメだが、なんとか大蝦蟇を退治する。すると、何か光るものが大蝦蟇の亡骸から現れ、どこかへ飛び去っていった。

石丸と田右衛門

田右衛門が石丸を取り押さえたとき、かいまるが入ってきてしまう。田右衛門が取り上げたものは、よく見ると刃物ではなく鑿(のみ)のようだ。

サクナヒメが留守にしている峠を、石丸が訪ねてきた。田右衛門は戦おうとするアシグモを制止し、石丸を家に上げる。米を炊いて出した田右衛門に、石丸はあくまで敵意と怒りを隠さない。それは目的が食い違うためなどではなく、もはやただの妄執でしかなかった。茶碗を払いのけた石丸に、田右衛門はもう戦の真似事などやめろと言う。田右衛門は石丸の嘗めてきた辛酸を全く知らないわけではないし、その心が穏やかだった時があることも知っている。鬼の力を失った今なら、石丸は人に戻れる。それを聞いた石丸は隠し持っていた武器で田右衛門に襲い掛かる。
しかし、鬼の力を失い、飢えた石丸は田右衛門より弱くなっていた。たちまち取り押さえられた石丸は、はやく殺せと田右衛門に吐き捨てる。そうすれば田右衛門の百姓の真似事は終わり、武士は武士に、百姓は百姓に戻る、と。
そのとき、家にかいまるが入ってきてしまう。石丸は田右衛門を押しのけ、かいまるを人質にとる。戦も飢えもないこの島でわざわざ争う必要などないと言う田右衛門に、石丸は聞く耳を持たず、泣き叫ぶかいまるを抱えて家を出ていこうとする。そのとき、かいまるがぴたりと泣き止み、石丸が突然恐慌する。「離せ!」と叫んでかいまるを捨て置き、石丸は逃げていった。後に残されたかいまるは気を失ってぴくりとも動かない。
アシグモの報せを聞いたサクナヒメが慌てて峠に戻ると、かいまるは既に意識を取り戻し、けろりとしていた。手当てをしたミルテは、病で意識を失ったのではなく、心が離れたように見えた、と語る。ミルテは医療の知識を持った宣教師だが、霊媒師ではない。だが強くそう感じた、とミルテは断言する。その様子を見ていたココロワヒメが、これらの異変の説明をはじめた。この峠の人間たちは、人から神へと変わろうとしているのだという。
かつて、サクナヒメの母トヨハナは、頂の世に長くとどまることで人から神となった。それと同じことが起ころうとしているのだ。既に、各々の資質に応じた変化が起こりつつあった。きんたは鉄を打つ槌が光って見え、ゆいは機織り機が歌っているように聞こえる。そういうときはいつもよりよいものができるのだという。ミルテは、医学では説明のつかない病状を感じ取ることができる。獣と心を通わせることのできるかいまるは、強い恐怖を覚えた拍子にそれを与えた石丸と心を繋げてしまい、石丸にかいまるの恐怖が伝わったために今回の騒動が起きたのだと考えられた。
田右衛門だけはこれといった変化はないようだったが、峠の人間たちは神にも等しい力を持ちつつある。それでも日々の生活が大きく変わるという事はなく、島での生活を始めた頃と同様、慣れていく他ないのだった。

田んぼを復活させるには

カムヒツキに命じられた創世樹の手入れは、アブラムシ退治。「花咲かサクナ」というミニゲームになっており、成績に応じて様々な報酬がもらえる。

灰を被った田んぼの土を回復させるため、都で調べ物をしていたココロワヒメが島にやってきた。頂の世と麓の世、合わせて数万もの火山を調べ切ったココロワヒメの頭脳に、サクナヒメは感心しきりだ。
ヤナトは火山の多い国で、灰を被ったことのない土地はないに等しい。そして、灰による害は火山に近いほど多く、遠いほど小さい。遠方に灰が届くほどの規模の噴火は頻度が低いためだ。稲作に向いているとされる土地は、火山から離れている場所に集中している。稲作に向いた土地はたまにしか灰を被らず、たまに被った灰の害は、長い時を経てなくなっていく。その長い時の流れを、神の力によって引き起こしてやればよい。
「うつろいの粉」という、サクナヒメが肥料を作る際に混ぜる材料がある。これを混ぜると発酵時間をおかずに肥料が完成するのだが、その粉のもととなる「うつろいの玉」という品があり、こちらは大きな力を持つためカムヒツキの許しがなければ手に入れることができないものだ。それはカムヒツキの体であり、都を作る創世樹の枝先に成る実だ。さっそく都のカムヒツキに謁見し、サクナヒメはうつろいの玉を使わせてほしいと頼み込む。米の質をあげるために使わせてほしい、というサクナヒメの言い分をカムヒツキは大いに面白がり、創世樹の手入れと引き換えにうつろいの玉をサクナヒメに与えた。
サクナヒメはうつろいの玉を砕いて肥料に混ぜ、田んぼに撒いた。すると田んぼの時間だけが大きく過ぎ、灰の害はすっかりなくなった。こうして、サクナヒメはココロワヒメの知恵を借り、田んぼの土を復活させることに成功したのだった。

機織り小屋、鍛冶小屋、家畜小屋の再建

牛の前後に棘のついた筒をつけて、歩行に合わせて回るようにした鋤。ココロワヒメときんたの合作だ。

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