砂時計(漫画・テレビ・映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『砂時計』は、漫画家・芦原妃名子による少女漫画、およびそれを原作としたドラマ、映画である。単行本全10巻、文庫全5巻からなる。主に本編は8巻までで、9・10巻はオムニバス集になっている。
両親の離婚により、島根に引っ越してきた主人公・杏と、島根で育った大悟の切ない14年間の大恋愛を描いた少女漫画。舞台は主に島根と東京で、遠距離恋愛を経て、再度2人は再会し結ばれることになる。
ドラマ化・小説・映画化され、様々な形で作品に触れることができる。島根の方言が印象的で、方言ブームに火をつけた。
17歳夏。桜が散って夏になっても杏のもとに大悟からに電話はかかってこなかった。杏は自分が重いのが原因と感じ、大悟は杏を大事にしたかったのに自分が傷つけたことが許せないでいた。悩む杏の電話から朝ちゃんが大悟に勝手に電話をかけてしまう。それを取った大悟に「ごめん 会いたい」と伝えると、「今からすぐ行く」と大悟。しかし、杏は「あたしが行く」と言い島根に向かう。大悟に猛アタック中の椎香が大悟に手作りの料理を届けに来た時、杏を迎えに走る大悟とすれ違う。椎香のアタックに「ほかの女にぐらついちょー余裕なんか全然ない」と告げる大悟。椎香も食い下がり、杏のことを忘れられる日まで待つと伝えるが、大悟は忘れることはないと伝え、杏のもとへ向かった。出雲空港で落ち合う2人。謝る杏に「もっとしっかりする」と抱きしめ、再度思いを通じ合わせる2人だった。
月島家の真実
大悟のことを幸せにできるのか不安に思う杏。島根に戻ってきた杏は、「椎香が杏のいない隙に大悟に猛アタックしていた」という噂を聞く。その頃藤は、月島家の真実について聞かされた。本当は不倫相手の子は藤でなく椎香だったと。藤は様子が椎香の様子がおかしいと感じていたが、このことが原因だったのかと合点がいく。杏もそのことを知り、椎香に会いに行くと、ユリの花の中で眠る椎香。椎香は眠っているだけだったが、杏のトラウマがフラッシュバックする。倒れてしまった杏は、自分の闇の深さにうなされ、大悟を幸せにできないと思った。大悟が倒れた杏を迎えに行くと、「大悟別れよう」と杏の口から出た言葉に驚きを隠せない大悟。杏は大悟を自分のトラウマが闇に引きずっていく気がした。椎香の眠る姿を見て、母の自殺を思い出し”大悟には疲れてほしくない、疲れたら人間ああなってしまう”と考えたのだ。大悟には幸せになってほしい、杏の願いは昔から1つだけだった。
初恋の終わり
半年後、17歳冬。杏と別れた大悟は、中学の同級生・楢崎歩と再会する。”教師になりたい”という夢を持つ大悟。成績は良くなかったが、その夢を応援してくれた楢崎。それから一緒に勉強をすることになる。大悟のことを忘れられない杏に、藤は「2度目3度目があるから『初恋』っつーんだよ!!1度で終わらすな!!」と自分もいることをアピールする。藤の意外な1面を見た杏は驚くが心を揺さぶられ始める。18歳の夏、杏は藤と交際を始める。
杏の覚悟
藤と付き合い始めた杏。藤と一緒にいると温かい気持ちになる、今度こそうまく好きになりたい、そう願う杏。藤とも安定してきた矢先に「大悟が楢崎歩と付き合っている」という噂が耳に入る。それを聞いた杏はショックが隠せない。自分だって藤と付き合っているけれど、大悟は自分の知らない人と幸せになってほしかった。思い描いた想像と違う大悟の未来に、自分の中の消えない大悟の影に動揺する杏。藤と向き合うと決めた以上、大悟のことは忘れると決め、大悟がくれた砂時計を藤の前で海に捨てる。しかし、藤と一夜を過ごした後、杏は砂時計を探しに行ってしまう。沖に打ち上げられた砂時計をぎゅっと握りしめる杏を藤は見ていた。それを見た藤は、杏の砂時計を取り上げ、再び海に投げようとする。杏はそれを必死に止め、「大悟のかわりにはなれねえよ」と藤に言わせてしまった。藤を利用してでも寂しい気持ちから抜け出したかったのだった。
一方、大悟も「杏が藤と付き合っている」ことを知る。実は、大悟は楢崎とは付き合っていなかった。大悟もまた、消せない杏の影に苦しんでいた。だが、そんな大悟に楢崎が、自分を利用して杏を忘れるように言い、2人は付き合い始めた。
大悟と藤
お盆の時期に実家に帰った藤。図書館で勉強している大悟に偶然出会う。大悟は藤に「大事にしてやって」と杏のことを頼む。そして「杏の『1番』はオレじゃない 『母親』だ」と言う。大悟はあれから何度も杏を傷つけないシュミレーションをしたという。しかしどうしても12歳の冬、杏の母の自殺にたどり着いてしまうことからそう感じたと。藤はそれを踏まえて”杏の何番目でもいいから”と付き合い続けることを決めた。しかし杏は気づいていた。砂時計を捨てられなかった日から、藤が自分に触れないことに。そんなときに父と楓が付き合っていて、楓が妊娠までしていることを知る。「結婚しなよ」と杏は2人に結婚をすすめるが、楓は杏の母・美和子の影におびえていた。そんな楓を説得し、父の再婚が決まった。父でさえ母を「過去」に変えていくのに、どうして自分は前に進めないのか、葛藤する杏。
強くなりたい
冬になり、杏のもとに届いた椎香からの手紙。そこには、「カナダへの留学を決めた」ことが書かれていた。「強くなりたい 大事な人を傷つけずにすむようなそんな人間に」椎香の言葉に杏は涙が止まらなかった。母の影にいつまでも縛られて、大悟のことが忘れられない、藤のことも大事にできない自分に辟易した杏は藤と別れることを決めた。願いは1つだけだった、「大悟とずっと一緒にいたい」。でも今大悟には付き合っている人がいるのだ。結局杏は独りだった。
20歳・冬
父と楓が再婚し、異母妹・千衣が生まれた。杏は短大2年生になり、4人で暮らしている。
杏は藤と合コンで再会し、従妹・茉利子と付き合っていることを知った。また自分だけが過去にとらわれているとあせりを覚える杏に、成人式の同窓会で大悟と話をするように勧める藤。藤の勧めで同窓会の参加を決め、大悟に正直な気持ちを打ち明けることにした杏。琴が浜で「どんな結果が待っていても大悟の手を放すんじゃなかった」。そう言う杏に「後悔しとらん」ときっぱり線を引く大悟。1人で前に進めと大悟に言われた杏は、強くなる、2度とみっともなく泣かないと心に誓って琴が浜を後にした。
佐倉圭一郎との出会い
大悟の記憶を封じ込め、あれから6年がたった。杏は佐倉圭一郎というエリート商社マンに惹かれ始める。彼が海外に赴任すると知って落ち込む杏に佐倉は「結婚しない?」とプロポーズ。彼は母が料理しない家庭で育ち、杏の料理上手なところや強いところに惹かれたという。婚約が決まった折に、佐倉の元カノが家に来て”一方的に切られて振られた”のだと言った。前々からそういう佐倉の性格が気になっていた杏は佐倉に注意する。お互いの持論がぶつかり、杏は大悟のことを思い出し、「『強さ』は…『優しさ』の上にあると思う」。その言葉に佐倉が怒り、婚姻届けを目の前で破り捨てる。
母の影
婚約破棄になり、仕事に戻った杏。徐々に杏に陰りが見え始める。会社に行くのが億劫になった、頭痛が止まらない、めまいがする。内科にかかると「心療内科に行ってください。がんばり過ぎです」と言われる。母の影に杏は押しつぶされそうになる。病院から飛び出した杏は、砂時計を落としてしまう。横になって砂を落とさなくなった砂時計を見て思った「おかあさんがいなくなった冬から生きてる感じがしない 時間が止まってる」。突発的に島根の仁摩サンドミュージアムへ行くために、寝台列車に飛び乗った。寝台列車は豪雨のために「岡山駅」にとまってしまった。この町のどこかで大悟が小学校の教師をやっている。
大悟のかけら
ちょっとした出来心で大悟の働く小学校に来た杏。「北村大悟先生」を知る生徒に出会い、大悟がもうすぐ結婚することを知る。大悟が幸せならと杏はその子に砂時計を託した。杏は当初の予定だった仁摩サンドミュージアムに向かうが、休館日でそばの琴が浜に足を運ぶ。裸足で海岸を1人で歩いているといろいろなことが思い出された。思い出にふけっていると、足にガラスが刺さり、意識がもうろうとしてくる。手首もガラスで切っていた、「死にたくない」そう思ったが、目の前が真っ暗になってしまった。
目が覚めると、おばあちゃんがいて生きていたのだと安堵する杏、大悟は生きる理由だった。そんな大悟の幸せを祈ることしかできなかった。
絶対幸せにする
あれから時は経ち、春。仁摩サンドミュージアムに行けなかった杏は、千衣を連れてもう1度行くことにした。そして実家へ帰ると、そこには大悟がいた。会うのは成人式の同窓会ぶり。「結婚おめでとう」杏が大悟に言うと、誤解だという。子供たちが勝手に言いふらしているだけなのだと。「やり直さんか?オレと」大悟が唐突に言うが杏は今更無理だと言い張る。しかし、大悟は1人で幸せだという自信がないのだと「幸せにしてよ」と、あの時あの子に渡した砂時計を渡された。現在と過去と未来がつながった瞬間。そばにいたら傷つけそうで一緒にいるのが怖かったあのころとは違う、強くなった杏は「まかせて」と一言。
2人は14年越しに恋を実らせ、結婚。稜君という子供も生まれた。
『砂時計』の登場人物・キャラクター
主人公
植草 杏(うえくさ あん)
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目次 - Contents
- 『砂時計』の概要
- 『砂時計』のあらすじ・ストーリー
- 杏と大悟の出会い
- 藤、椎香との出会い
- 母の自殺
- 杏の恋敵
- 父との再会
- 大悟との別れ
- 16歳・夏休み
- 藤と杏、大悟と椎香
- 藤の失踪
- 藤の発見
- 杏と大悟
- 月島家の真実
- 初恋の終わり
- 杏の覚悟
- 大悟と藤
- 強くなりたい
- 20歳・冬
- 佐倉圭一郎との出会い
- 母の影
- 大悟のかけら
- 絶対幸せにする
- 『砂時計』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- 植草 杏(うえくさ あん)
- 恋人
- 北村 大悟(きたむら だいご)
- 島根で出会う友達
- 月島 藤(つきしま ふじ)
- 月島 椎香(つきしま しいか)
- 杏の親族
- 植草 美和子(うえくさ みわこ)
- 水瀬 正弘(みなせ まさひろ)
- 植草 美佐代(うえくさ みさよ)
- 黒木 楓 / 水瀬 楓(くろき かえで / みなせ かえで)
- 水瀬 千衣(みなせ ちい)
- その他
- 朝田 リカ(あさだ りか)
- 平川 実茅子(ひらかわ みちこ)
- えだっち
- 園田 洋介(そのだ ようすけ)
- 楢崎 歩(ならさき あゆむ)
- 佐倉 圭一郎(さくら けいいちろう)
- 月島 茉利子(つきしま まりこ)
- 月島 志津代(つきしま しずよ)
- 高杉 恭一(たかすぎ きょういち)
- 北村 広子(きたむら ひろこ)
- 『砂時計』のドラマ概要
- 展開に関する漫画との相違点
- 登場人物と設定に関する漫画との相違点
- 『砂時計』の映画概要
- 登場人物と設定に関する漫画との相違点
- 『砂時計』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 大悟「大事に想っとった気持ちを消そうとすんな オレがずっと一緒におっちゃるけん」
- 藤「二度目三度目があるから『初恋』っつーんだよ!一度で終わらすな!!」
- 杏「物語に終わりは必ずくるけれど それでも君となら 『永遠』を信じてみたくなる」
- 朝ちゃん「知ってる?『恋愛船』の定員は、ジャスト2名だよ。余計なもん持ち込んだら、沈むよ」
- 杏「星の数ほど人はいて、毎日、数え切れないほどの人とすれ違うけど、こんなに優しい手はない、こんなにあたしを大事に想ってくれて、あんなに大事に想える人は、絶対どこにもいない」
- 杏の祖母「もしこの先、誰かと出会ったなら、その人のために苦もなく頑張れるかどうか考えなさい」
- 『砂時計』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 『砂時計』の舞台・ロケ地
- 仁摩サンドミュージアム
- 波根駅
- 琴が浜
- 大森町
- 『砂時計』は全10巻からなるが、本編は8巻で終わり、9・10巻はオムニバス集となっている。
- 作者も実際に「仁摩サンドミュージアム」に訪れている
- 『砂時計』の主題歌・挿入歌
- ドラマ版主題歌:柴咲コウ『ひと恋めぐり』
- 映画版主題歌:いきものがかり『帰りたくなったよ』