宮本武蔵(バガボンド)の徹底解説・考察まとめ

宮本武蔵(みやもとむさし)とは、井上雄彦の漫画『バガボンド』の主人公。本名は、新免武蔵(しんめんたけぞう)。親の愛情を知らずに育つ。自我が強いために周囲との争いが絶えず、幼少の頃から孤独と隣り合わせで生きてきた。体格に恵まれており、獣のような殺気を漂わせている。関ヶ原の合戦に参加するが敗北を喫し、帰路で人を多数斬ったところを沢庵宗彭(たくあんそうほう)に捕縛された。この出会いを機に剣の道に目覚め、天下無双を目指すことになる。その途上で多くの人物との出会いや戦を経て、人間として大きく成長していく。

土を耕す武蔵。

数歩歩けるまでに回復した武蔵に、沢庵が提案する。「柳生宗矩の下で社会を学んではどうだ?」
そんな問いに、俺と柳生宗矩、どっちが強いか。という考えが浮かぶ。
初期の武蔵なら、真っ先に戦いを挑み、天下無双を追っていただろう。

武蔵は、「強さを求めることへの執着はまだ残っているが、今なら我執を我執として捉え、切り離し、冷静に見れる」
これは、成長なのか。それとも満足してしまったのか。
沢庵は、「それは成長だ。むき出しの刀を持ち歩いては、出会うものすべてが敵になる」と言った。

牢に居る武蔵の元に、京都所司代、板倉勝重が訪れ、天下無双とはなにかと問う。
武蔵は「ただの言葉、陽炎のように、近づいたら、消えてなくなった。そのことに気づくまで、22年かかった」と言う。
この先、最強を目指し、人を切り続けることの先にあるもの。それは、殺し合いの螺旋であることに気づいた武蔵は、陽炎のような天下無双を追うことをやめ、剣術のみを極めることを望む。

武蔵は、小倉の小川細川家、細川忠興から受けた、剣術師範の誘いを断り、再び流浪の旅に出る。
そこで、幼くして、親を亡くした伊織という少年に出会い、伊織の暮らす村で共に過ごすことになる。
村は自給自足の生活。米、野菜を育て、山菜を取り生活する。だが、嵐、イナゴなどの天災により、生活が苦しくなる村人たち。
ついには死人まで出てしまう。
武蔵も自ら、見よう見まねで畑を耕し、米を作ろうとするも、一長一短でできることではなく、小さな希望が見えては、自然という大きな力の前に潰される。

万策尽きた武蔵は、村人たちを救うため、小川細川家から要請されていた剣術師範になる話を受け入れ、代わりに村に食料を運ばせるのであった。
そして武蔵は、伊織と共に小倉へ向かう。

宮本武蔵の関連人物・キャラクター

おつう

おつう。

武蔵、又八の幼馴染。又八の許嫁を約束されていたが、それを拒否し、武蔵を追うようになる。
武蔵が、関ヶ原で敗北した帰り道、極限状態で残党狩りから逃げていたが、おつうを目にしたことで緊張の糸が切れ、沢庵に捕獲されたり、
おつうの夢を見た後から剣術に隙が生まれたりと、武蔵にとっておつうは心を開き、緊張を緩めてしまう人物。

本位田又八(ほんいでんまたはち)

武蔵と共に戦から帰る本位田又八。

武蔵と同じ宮本村出身で、幼少期から切磋琢磨してきた仲。
武蔵を戦に誘い、刀を握るきっかけを作った。
他人の印可目録を悪用し、本人になりすまして贅沢をするなど、次第に剣を握らなくなる。
武蔵が重傷を負った、吉岡清十郎、吉岡伝七郎、吉岡一門の戦いの後には、瀕死の武蔵を助けているが、武蔵は、又八だとは気づいていない。
弱く、姑息な生き方をする自分を恥じていて、武蔵とは対照的なキャラクター。

沢庵宗彭(たくあんそうほう)

穏やかな表情の沢庵。

新免武蔵が宮本武蔵として生きるきっかけを作った人物。
日ごろから武蔵を気にかけていて、哲学的で内面に響く言葉を何度も武蔵に投げかけている。
関が原での戦いの後、自分の犯した罪の重さから「殺してくれ」と懇願する武蔵に「闇を知らぬものに光もまたない。闇を抱えて生きろ」と諭した。
武蔵の存在を肯定してやり、天下無双の旅へと送り出す。

武蔵に影響を与えた沢庵の言葉

「お前に触れたら切れそうだ。刃物のように神経を尖らせ、人を寄せ付けないのは、人が怖いからだ。お前はこの村で一番弱い」
宮本村にて、武蔵を木に吊るし上げてる場面。武蔵の荒々しさが前面に出ている頃に投げかけた言葉。この時は武蔵に響く様子はないが、後に出会う胤栄にもにじみ出る殺気について指摘されている。
うって変わり、吉岡一派70人との切り合いの後、「強さを求めることへの執着はまだ残っているが、今なら我執を我執として捉え、切り離し、冷静に見れる」と言う武蔵に対して、
「刀は鞘に収めるもの、どんなに切れる刀も鞘がなくては、むき出しのままでは、出会うものみんな敵になる。それは成長だ」と以前掛けた言葉とは意味合いが真逆なことからも武蔵の成長が分かる。
方向性の決まった武蔵は、天下無双より、剣術のみを極めることを望むことになる。

胤舜に敗北した後、山で負けを見つめなおす武蔵の脳裏に浮かぶ言葉。
「一枚の葉にとらわれては木は見えん。一本の木にとらわれては森は見えん。どこにも心を留めず、見るともなく全体を見る。それがどうやら見るということだ」
そして武蔵と胤舜の再戦が、まさにこの言葉の通りだ。
武蔵は、頭上に垂れ下がった蜘蛛や、胤舜の後ろの生い茂った草、意外と長いまつげにまで目が届くようになっている。

「強い人は皆優しい」
剣術においての強さを求める武蔵に言った言葉。強い人と言うのは人を傷つけずに、相手を思いやる気持ちを持っている人を指すということを伝えている。

新免無二斎(しんめんむにさい)

武蔵の前に立ちはだかる新免無二斎。

武蔵の実の父で、天下無双への執着心が尋常ではない人物。
自身の地位を脅かすものを放ってはおかず、武蔵も命を狙われた事がある。
攻撃と防御を同時に成せる十手術を使いこなし、武蔵の二刀流へと受け継がれている。

吉岡清十郎(よしおかせいじゅうろう)

京最強の吉岡清十郎。

吉岡道場の当主で、京最強の剣術の持ち主。吉岡道場に乗り込んできた武蔵の額に切り傷をつけた人物。
自由奔放な性格をしているが、陰で吉岡を守ろうと、危険な人物を暗殺していた。
その標的だった武蔵に殺された。武蔵を切り合いにより強くした人物の一人。

吉岡伝七郎(よしおかでんしちろう)

吉岡清十郎の弟。吉岡道場に乗り込んできた武蔵に、1年間の修業期間を与え、成長した武蔵に完敗する。
愚直な性格で、道場の者たちに慕われ、信頼されていた。

宝蔵院初代・胤栄(ほうぞういんしょだい・いんえい)

武蔵と会話する胤栄。

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