約束のネバーランド(約ネバ)の鬼まとめ
『約束のネバーランド』とは、白井カイウ(原作)、出水ぽすか(作画)による日本の漫画作品である。
エマは孤児院でママや他の孤児たちと一緒に楽しく過ごしていた。ある日、コニーという孤児が里子に出されることとなった。エマはコニーが忘れていった人形を届けようとするが、そこで目にしたのは死亡したコニーと鬼だった。エマは孤児院が鬼の食料である人間を育てる農園だったことを知る。エマ達は安住の地を求めて脱走する。鬼の中でも社会が形成され、様々な鬼が登場する。
先代のバイヨン卿。一年半ほど前から失踪していたが、『秘密の猟場』にて人間を狩っていた。
1000年前に鬼と約束を交わして、鬼との調停役となったラートリー家の子孫である『ピーター・ラートリー』と関係を持っており、生きた人間を仕入れている。その人間を『ゴールディ・ポンド』にある自身の庭に放ち、逃げまとう人間を放った。それが『秘密の猟場』である。そこで貴族の鬼たちと共に人間狩りを楽しんでいる。
鬼の中でも一際人間を狩ることを楽しんでいたが、1000年前に人間が約束を交わしたことで人間を狩る事ができなくなった。800年前にはバイヨン卿は人間を狩るどころか、24の農園に投資し、12の農園を管理、6つの農園の責任者となった。それから安定した人肉の供給が行われるが、それらの肉を喰ってもバイヨン卿は味を感じることができなかった。そこでピーター・ラートリーから人間を仕入れ、狩りを始めた。そうして食べた肉の味は格別で、涙を流すほどだった。それから3ヶ月に一度のペースで借りを行なっていたが、徐々にそのペースは上がっていった。そんな時にピーター・ラートリーからゴールディ・ポンドに食用児の集落があることを聞かされる。そして、ゴールディ・ポンドに『秘密の猟場』が作られた。
エマたちが『秘密の猟場』に来たことで、食用児たちが反乱を起こし、バイヨン卿はそれに対応することになるが、その戦いを楽しんでいた。
バイヨン卿には常に手下である2匹の鬼がついているが、食用児のザックとぺぺにより殺されてしまう。しかし、バイヨン卿はその2人を返り討ちにする。そしてナイジェルとジリアンという食用児と戦闘する。バイヨン卿は頭が回り、食用児たちが知り得るはずのない鬼の殺し方を知っていたことで首謀者が背後にいることに気付く。そして食用児に逃げられたフリをして、本拠地に案内させた。しかし、それはバイヨン卿を殺すための罠であり、狭い通路でバイヨン卿は奇襲にあう。そこでは獲物の槍を振り回すことができずに、銃により致命傷を負う。そんな中、バイヨン卿は本当の狩りができたことで喜びを感じていた。そして最後の力を振り絞ってオリバーという食用児に重傷を与えて死亡した。
レウウィス大公
『秘密の猟場』で狩りを行っていた鬼。パルウゥスという猿のような鬼を肩に乗せている。バイヨン卿(先代)に親しげな口を聞いているが、バイヨン卿の息子である。兄はバイヨン卿(当代)である。
圧倒的な強者であり、『グローリー=ベル(農園の一つ)』の脱走者たちのユウゴとルーカス以外を殺害した。戦闘を心から楽しんでおり、グローリー=ベルの一同と戦う際には、鬼の殺し方を教え、10分間手を出さない上に仮面を外していた。グローリー=ベルの人間と戦って以降、本気で自身を倒そうとする人間に出会えず、不満を募らせている。そんな時、躊躇なく鬼の目に斧を振り下ろすエマに出会い、エマに執着するようになる。
1000年以上生きた鬼であり、人間と鬼が争っていた時にも登場している。その時は後に鬼と約束を交わすことになるユリウス・ラートリーの前に現れ、彼の一団の殆どを殺害し、「月が綺麗だねぇ。」と楽しそうに笑った。それを見たユリウスは「もう疲れた。帰りたい!!うんざりだ!!民のため?兵のため?どうでもいい。私がつかれたんだ。じき終わる?それはいつだ全て幻想綺麗事。勝ち目の見えている今こそが好機ではないのか。終わらせるんだ!今!私が!」と考え、取引すべく鬼の王への面会を申し出た。
ゴールディ・ポンドの猟場でエマ達と遭遇する。普通の狩りに飽きていたレウウィスは、エマ達が本気で自身を殺そうとしている事に喜び執着するようになる。そして、より楽しい戦いをするために、食用児のモニカとジェイクを殺害し、生き残ったテオに自身の名前をエマへ伝えさせる。
レウウィス対峙したエマは、レウウィスが以前ユウゴたちに提案した『10分間手を出さない』というゲームを持ちかける。それは仲間が集まるのを待つための提案だった。レウウィスはエマの目的が時間稼ぎだと知りながら、その提案を受ける。そして10分後に仲間が集まらない場合はエマが自身を相手することを告げ、満面の笑みを浮かべる。それから10分が経とうとする頃、エマは「密漁場の主でありバイヨン亡き今、これ以上無駄に血を流す意味はない。戦わずに終わりにできたら私はこの先仲間を死なせずに済むし、あなたも死なずに済む。」と話した。しかしレウウィスは「愚問だエマ。私が何のために待ったと思っている。私は君を狩り殺したい。そして君に、君たちに狩り殺されるなら本望なのだよ。」と返した。
10分が経過し、エマは仕掛けていた機関銃でレウウィスを四方八方から銃撃する。しかし、レウウィスはその殆どの銃弾を掴んでしまった。エマの援軍は予定していたよりはるかに少ない人数しかいなかったが、エマはレウウィスの動きを読んで動きを止め、仮面を破るべく特殊弾を放つ。しかしレウウィスは片手でそれを弾いてしまう。レウウィスはエマへ迫るが、そこへレイとユウゴが応援に現れ、レウウィスの仮面を割った。だが、それでもレウウィスは圧倒的な力を見せるが、エマたちはその中でレウウィスに再生可能回数があることを突き止める。最後はエマを爪で貫きながらも、エマが持っていた閃光弾で視界を閉ざされ、一斉放火を受けて死亡した。死ぬ間際、レウウィスは「やはり人間は良い」と考えていた。
だが、実はレウウィスは王族の中に稀に生まれる核を2つ持つ鬼であり、ゴールディ・ポンドでの戦いでは死んでいなかった。
女王と五摂家の死後、五摂家の家臣団が政権を握ろうとする。家臣団が邪血を持つムジカとソンジュを国家転覆を企てた国賊として処刑しようとした時、レウウィスが突如姿を現す。レウウィスは家臣団達を睨みつけ「王族(わたし)の留守に随分と偉くなったものだな。五摂家の家来衆(イヌ)如きが。」と吐き捨てた。そして「久しぶりだねぇソンジュ」と話し、ソンジュを斬って血を採った。集まっていた民衆達を振り返ったレウウィスは「恐れることはない。邪血は断じて病毒などではない。あれは我が姉レグラヴァリマの出任せだ。寧ろ邪血とは鬼にとって奇跡の血。その血を一口でも飲めばその者は以降人間を食わずとも退化を免れる。だが700年前、女王らはこの血を病毒と偽り、この血を持つ者達に国賊の汚名を着せ虐殺した。全ては己らが欲と支配のため。農園による民への絶対支配に“邪血“の力が不都合だからだ。かつて“邪血“はその血を広く与え、民を救おうとして殺された。そして今も同じ咎でまた私欲の政権に殺されようとしている。滑稽也。“邪血“を殺す?この二人は賊どころか民を救わんとした英雄なのだぞ。」と話した。
ソンジュが「兄上…なぜ…」と意図を問うと、レウウィスは「らしくはないだろうね。だが政治を押し付けていた相手は全員世を去った。とはいえ調停者(にんげん)の言いなりでは見過ごせまい。この支配も限界だ。あとはまぁ…なんとなく…だね。」と答える。その時、レウウィスはエマ達の姿を思い浮かべていた。そしてレウウィスは「処刑は中止だ!国賊、現政権幹部を直ちに捕らえよ!」と叫び、家臣団達は捕らえられる事になった。
そして、レウウィスは現政権を解体する事、全ての民に邪血を分配する事、全ての農園を廃止する事を国民に告げた。人肉を食べられなくなる事に国民が動揺すると、レウウィスは「農園などない方がよい。農園などつくったためにこの支配が続いた。人肉の供給如何で諸君らの生死・知能水準を握られる支配統制が。」と説得した。それを聞いた国民は人肉を食べられなくなる事を悔やみながらも、農園の廃止に賛成した。
レウウィスは鬼達に新王になる事を望まれるが、「私は旧時代の体制側だ。女王らの施政を見て見ぬフリをしてきた罪もある。私は王には相応しくない。新しい世界には新しい王だ。」と言って拒否し、新王にムジカを推挙した。
ルーチェ
貴族階級の鬼であり、秘密の猟場で人間を狩って楽しんでいた。長さが違う腕を持っている。
レウウィス大公のような拘りは無く、人間を狩るという行為自体を楽しんでいた。家柄のせいなのか、子供のように理不尽で、残虐な性格をしている。一方で体力や力がなく、頭も良くない。秘密の猟場にいる鬼の中で一番弱いとされている。
父親は五摂家のドッザ卿である。
幼い3人の人間を前にして、「みぃつけた。10秒あげるよ。3人の中から1人選ぶんだ。僕に追われ狩られるのは誰なのか。決まったらあとの二人は逃げていいよ。けがをした君?それとも僕の従者にけがさせた君?それとも仲間を置き去りにして一人隠れているそこの君?」と提案していた。それを見ていたレウウィス大公は「若いな。どうせ3匹とも狩り殺すつもりだろうに。」と言っていた。エマに仮面を割られたことで、エマに恨みを抱いていた。
最後は食用児たちの囮につられて、手下の鬼を殺され、その後、仮面を剥ぎ取られて眉間に銃撃を浴びて死亡した。死の間際には「ボクを殺したらボクのパパが…」と情けないセリフを口にした。
ノウス
貴族階級の鬼であり、秘密の猟場で人間を狩って楽しんでいた。ノウマという容姿が瓜二つの鬼とペアになって行動する。男の鬼で、ノウマのことを大事に思っているようである。
槍を武器として使用する。その破壊力は凄まじく、樹をいとも容易く切断する。さらに人間の気配を感じ取ることができ、優れた反射神経で銃弾をも躱す身体能力を持っている。五摂家のノウム卿の兄妹である。
成人の食用児や特上肉であるエマの存在を知り、他の鬼を差し置いて喰おうとした。
ノウマが死亡すると雄叫びをあげて悲しんだ。そしてノウマの肉体を捕食する。それによってさらに強くなった。
しかし、援軍に来たユウゴが気配を消して狙撃を行い、その弾を避けられずに死亡した。
ノウマ
貴族階級の鬼であり、秘密の猟場で人間を狩って楽しんでいた。ノウスとペアになって行動する。女の鬼で、ノウスのことを大事に思っているようである。
ノウスと同じく、パワー、スピード、反射能力、人間の気配を感じる能力に長けており、銃が通用しない。
しかし、ソーニャという食用児を捕まえた時に興奮し、その隙をついた狙撃により急所を撃ち抜かれた。その後、ノウスにより喰われた。
ノウスと同じく、五摂家のノウム卿の兄妹である。
女王
レグラヴァリマ
王族の鬼で、五摂家よりも位が高い。
ノーマンたちにより農園が襲撃された時、反逆者の存在を許そうとせず、五摂家の面々にそれらを討伐するように命じた。これにより、大きな軍隊が結成されることとなった。
プライドが高く、何においても一番である事を望む。レグラヴァリマは当時、実権を握っていた父親を殺して喰らい、女王となった。農園を設立して以来、最高の肉だとされたノーマンを『鬼の頂点』に渡さず、自身で喰らおうとしていた。ノーマンがG・Fからラムダ農園に移されたのは、女王がノーマンを喰おうと考えたからである。後にソンジュの姉である事を明かした。
高い戦闘能力を有している。武力に秀でていたドッザはギーランの家来に殺害されてしまったが、レグラヴァリマはその家来を易々と殺害した。レグラヴァリマの爪は伸縮し、鬼を簡単に両断することができる。
王族の中には稀に核を複数持つ鬼が生まれるらしく、レグラヴァリマは2つの核を持つ。ノーマンたちによって核の一つを潰された後は、喰った鬼の記憶や力を自在に扱える力を得ている。
『儀祭(ティファリ)』の最中にギーランによる襲撃を受ける。五摂家の面々が殺されていく中、レグラヴァリマはギーランの手下を返り討ちにした。しかし、レグラヴァリマの強さを知っていたギーランの家臣たちは、自爆してレグラヴァリマに粘着性の糸のようなものを纏わせて動きを止めることが目的だった。動きを封じられたレグラヴァリマはギーランにより仮面を叩き壊され、急所に剣を突きつけられるが、一瞬にしてギーランを細切れにしてみせた。
そしてギーランたちの執念を褒め称えながらも「義が勝つとは限らぬのよ。いや そも うぬら既に義からズレておる。罪なき幼子まで手をかけて、かつてのうぬらならば絶対にゆるすまい。それで義とは笑わせる。700年でよう濁ったのぅ。憎悪にドップリ。今の汚れたうぬは私は好きだよ。」と嘲笑い、ギーランの眼を踏み潰して殺害した。
女王はギーランを喰おうとするが、その時、ノーマンの部下であるザジ、シスロ、バーバラが現れて攻撃を仕掛ける。鬼は、再生や身体強化などをする際、多大なエネルギーを消耗する。その為、人肉などを食べて補給する必要があった。ノーマンはその弱点をつき、息つく暇もなく女王を攻め立てる事をザジたちに命じていた。
ザジが攻撃に徹し、他の二人は防御に徹して女王の攻撃を防いでいた。連携してくる人間たちに苦戦する女王だったが、バーバラに狙いを定めて一瞬のうちに胸を突き刺した。それを見たザジは激情に駆られ、女王に特攻する。女王は笑顔でザジを返り討ちにしようとするが、その時、身体に異変をきたす。ノーマンは鬼を強制的に退化させる薬を開発しており、ザジたちの武器にはそれが塗布されていた。女王はその薬のせいで爪を伸ばすこともできなくなっていた。女王は襲いかかるザジに反撃して、ザジの仮面を切り裂く。しかし、シスロに腕を絡め取られ、ザジの刃を急所に受けた。
倒れた女王の前にノーマンが姿を現す。ノーマンの姿を見た女王は、この襲撃がノーマンが企んだことだと確信する。女王は「ずっとおまえを食いたかった。誰にも渡さぬ!お前は私の人肉なのだ!」と叫ぶが、ノーマンに「我ら誰一人もはや鬼の食料ではない」と否定され、トドメを刺された。
女王は死んだかと思われたが、核を壊された状態で起き上がってノーマンを襲う。シスロは自分の足を犠牲にしながらもノーマンを守る。女王は四方八方に自身の肉を飛散させ、周囲に散乱していた多数の鬼の死骸を喰い始め、巨大化する。その体表には、今まで食べた人間や鬼の顔が張り付いていた。そして巨大な鬼の体にヒビが入り、中から顔のパーツがない女王が姿を現した。
女王は「あなうれしや。揃うておる。目を覚ましたら目の前に。最上級GF第3飼育場特上3匹。うれしや。あやつの言う通り、お前たちは皆生きていた。赦そう。我が都への攻撃も、我が臣下達への攻撃も、妾への攻撃も、Λの食用児も、GFの脱走者も、皆、妾の手に戻る。皆、妾が食らうのだ。」と言うと同時に、ザジの元へ一瞬で移動してザジを喰おうとする。ザシは咄嗟に剣で女王を両断するが、一瞬で再生してザジを吹き飛ばして行動不能にした。エマとレイは銃で攻撃しようとするが、女王が放つ圧倒的なプレッシャーに恐怖して動くことができなかった。女王がエマを喰おうと手を伸ばした時、ムジカとソンジュが現れ危機を救う。ムジカとソンジュを見た女王は「誰かと思えば…ソンジュお前が肉に肩入れとは…。これまたどういう風の吹き回しだ。まぁよい。邪血の始末と脱走者の奪還、今日1日で片がつく。吉日だ。」と述べた。対するムジカとソンジュも今日で全てを終わらせるつもりで、ソンジュは女王を殺すことを宣言する。女王は「殺す?お前が?私を?げに愚かな弟よ。」と言う。
ソンジュは核がある腹を両断するが、女王の体は粘着性のある糸のようになっており、女王はソンジュの槍を絡め取った。そして女王はソンジュに槍を投げ、ソンジュの左腕を切断した。そして女王は「確かに我が核は今腹にある。だがそれがなんだ。それを知るとて何も変わらぬ。何もできぬ、何もさせぬ。若く王族の端くれたるお前であろうとも、他の何者であろうと。げに爽快。これぞ力!圧倒的力だ!ソンジュ、お前には解るまい。思わず笑みが溢れる全能感!ただ蘇っただけではない。生まれ変わった!力漲り、五体冴え渡り、食うた者の記憶・力・全てまで我が物として引き出せる。解るまい。私は今その境地に至ったのだ!これが選ばれし者の感知する世界。世界は全て妾の物なのだ。全て命は妾の糧。臣下も、民も、反逆者も、家畜も、親兄弟も全て!妾は誰より食うて、誰より強い!」と優越感に浸った。そしてムジカに襲い掛かるが、ムジカが動じなかった事で爪を止めた。
ムジカは女王に「あなたはなぜ、そんなにもひもじく飢えているの?」と問う。そして「足りていると感じることさえできたなら別の未来もあったでしょうに。際限のない欲望に囚われて、神への敬意も忘れ、世界(いのち)を貪り、結果、自らを破滅に導いてきたのだとあなたは気づいていないのよ。」と続けた。女王はそれに対し「欲望は美徳だ。欲ゆえに皆求め、欲ゆえに皆動く。欲は全てを動かす力だ。果てなき欲は果てなき力。神?敬意?命?私は誰にも謙らぬ。生まれた時から周りと違った。私は誰より特別なのだ。妾に恐るるものなど何もない!妾が破滅?笑わせる。」と返した。そしてムジカに襲いかかるが、その時、女王の細胞が爆発した。女王は喰らった者の力を扱えたのではなく、過剰摂取により消化しきれてなかっただけだった。そして女王にこれまで喰らった者たちの意識と記憶が流れ込んだ。女王は「私は…私は誰だ。」と呟いて死亡した。
原初信仰の信者
ムジカ
エマたちがグレイス=フィールド農園から逃げ出した後に遭遇した少女の鬼。ソンジュという鬼と共に旅をしている。
『原初信仰』という宗教を信仰している。ソンジュは宗教上の理由で人肉を食べないが、ムジカはただの一度も人間を食べこともないし、食べる必要がない。
グレイス=フィールドから逃げ出して追っ手に追われていたエマたちを助けた。そして別れ際に鬼の頂点がいる『七つの壁』を目指すようにアドバイスした。
後に『邪血の少女』であることが発覚する。
鬼は捕食したものの遺伝子によって、容姿や知能が変化する。鬼が知性を得たのは人間を食べたからである。知性を得た鬼は、人間を食べなければその知力を維持することができず、野良鬼のようになって退化してしまう。しかし『邪血の少女』だけは例外で、人間を食べずとも退化することがない超特異体質を持っている。さらに『邪血の少女』の血を飲んだ鬼は、『邪血の少女』と同じ体質を手に入れることができる。
立場のない鬼には重宝される存在だが、ムジカは一筋縄ではいかない状況に置かれている。
貴族階級の鬼たちは人肉を斡旋することで、位が低い鬼達をコントロールしている。しかし『邪血の少女』が存在することで人肉が不要となり、社会的地位が脅かされてしまう。それ故、貴族階級の鬼たちは700年前に『邪血の少女』たちを殺して喰ったのだった。
一方でノーマンは貴族階級の鬼たちを滅ぼすことで人肉が行き渡らないようにし、鬼を知性のない生物にすることを計画していた。しかし、『邪血の少女』はその計画を根本から覆す存在となる。
これらの理由からムジカは貴族階級の鬼、ノーマン一派、どちらからも命を狙われることとなる。
ムジカはノーマンが差し向けた刺客に狙われるが、その刺客が発作を起こした時に必死に助けようとした。争いはそれにより止まり、ムジカは刺客と行動を共にしていたギルダから、ノーマンが鬼を虐殺しようとしていること、戦争が起きそうなことを聞く。ギルダは争いを止めるために『邪血の少女』であるムジカに力を貸すように頼み、ムジカは争いを止めるために王都へ向かう。
王都は鬼が野生化して暴走していたが、ムジカの血の力によって落ち着きを取り戻す。
そしてムジカとソンジュは城へ向かい、女王と対峙する。「邪血の始末と脱走者の奪還、今日一日で片がつく。」と言う女王に対し、ムジカは逃げ回った700年を思い返し「終わりにしましょう。」と女王に告げた。
女王はノーマン達によって核を潰されていた。しかし、女王は王族に稀に生まれる核を2つ持つ鬼だった。女王は周囲の鬼全てを喰らい、その記憶と力を使えるようになっていた。女王は「世界は全て妾の物なのだ。全て命は妾の糧。臣下も、民も、反逆者も、家畜も、親兄弟も全て!妾は誰より食うて、誰より強い!」と言ってムジカに襲いかかった。しかしムジカは一歩も動じなかった。そんなムジカに女王は攻撃を止める。ムジカは「あなたはなぜ、そんなにもひもじく飢えているの?」「足りていると感じることさえできたなら別の未来もあったでしょうに。際限のない欲望に囚われて、神への敬意も忘れ、世界(いのち)を貪り、結果、自らを破滅に導いてきたのだとあなたは気づいていないのよ。」と言った。 その時、女王の細胞が爆発した。女王は喰らった鬼の力が使えるのではなく、過剰摂取により消化できずに喰らった鬼たちが顕在化していただけであった。
ムジカは生まれた時から何を食べても形質が変わらず、人間を食べずとも退化しなかった。ムジカは『奇跡の子』として崇められた。それからムジカは人肉の代用として鬼に狙われたり、飢えた鬼の村を救ってきた。しかし、邪血の血を持つ者は貴族階級の鬼によって全て殺害され、ムジカ一人だけになった。ムジカは700年に渡って逃げ続けた。そしてその内にムジカは自分が生きている意味が分からなくなっていた。しかし、エマたちに会ったことで自分の生まれてきた意味を理解していた。
ムジカは「私は我ら種(おに)を変えるために生まれてきたんだ。そして今こそ鬼世界は変わる時なのよ。」と女王に言った。そして「あなたは食べた命に食い潰される。さようなら。レグラヴァリマ女王陛下。」と告げた。女王は喰らった鬼たちの意識と記憶が流れ込み、死亡していた。
その後、食用児が人間の世界に渡る事を拒むピーター・ラートリーが、子供達が残るアジトへ向かっていることが明らかになり、エマたちはアジトへ帰ることになる。鬼社会は貴族たちが全て死んだ為に崩壊の危機にあった。ムジカはソンジュと一緒に鬼社会を立て直そうと考えた。
ムジカたちは『寺院』へと向かった。寺院はかつては神の声を伝え、代々の王を任命し、政治を助けていた。そして民の心の支えでもあった。『約束』が交わされて以降は力を失っていったが、今でも民の中には敬意が存在していた。寺院の中に存在する『大僧正』と『四賢者』と呼ばれる鬼は特に敬意を持たれていた。大僧正と四賢者は人間を食べずに1000年もの間祈りを捧げていた。今ではミイラのようになっていたが、大僧正たちは死んでおらず、仮死状態になっていた。ムジカとソンジュは大僧正に血を与えて起こし、王にして騒動を鎮めようとした。
目を覚ました大僧正は事の経緯を聞き、王になる事を了承した。しかしムジカとソンジュは、ピーター・ラートリーの企みにより貴族たちを殺し、城下に破壊と混乱を招いた張本人にされていた。ムジカたちに助けられた鬼たちがそれに異を唱えるが、ムジカとソンジュから血を貰った者は「有害な血に汚染されている」と言われ、檻に入れられて処刑されることになった。それによりムジカたちを助けようとする鬼はいなくなってしまった。
その後、ムジカたちは自分たちを捕らえようとする鬼から逃げるが、大僧正の蘇生に血を使いすぎて疲れていたことから、捕縛されてしまう。
その後、ムジカとソンジュの処刑が執行される。だが、そこに突如としてソンジュの兄であるレウウィス大公が現れる。レウウィスはソンジュの血を口にし、邪血が毒どころか、鬼を救う血である事を話した。さらに王族や五摂家の鬼が一般の鬼を支配する為に邪血を殺していた事を明かし、現政権を握っている鬼たちを捕えるように命じた。それによりムジカとソンジュは救われた。
レウウィスは政権を握っている五摂家家臣団と四大農園責任者を逮捕させ、現政権を解体する事、全ての民に邪血を分配する事、全ての農園を廃止する事を国民に告げた。そしてレウウィスはムジカを新王に推挙する。大僧正や国民はムジカが王になる事に賛成した。ムジカは「私が王になる。できるかしら。いいえ、やるのよ。私やるわエマ。皆でつくるのよ。新しい鬼世界を。」という思いを胸に、王になる事を承諾した。
ソンジュ
ムジカと旅する男の鬼。槍を得物としている。
グレイス=フィールドから逃げ出した際に追っ手が放たれ、エマたちを庇って一人囮となって逃げていたレイの前に現れて、レイを助けた。
『原初信仰』という宗教を信仰しており、宗教上の理由から人肉を食べない。エマやレイに狩りや植物の知識など、鬼の世界での生き方を教えた。エマたちとは穏便に別れたが、その後『原初信仰』は『人を喰わない』宗教ではなく、『養殖された人間を喰わない』だったことが分かり、今でも人肉を欲していることが分かった。エマたちを助けたのは、人間と鬼が交わした約束を壊してくれる可能性があるからだった。エマたちを生かすために、エマたちにを狙っている追っ手を殲滅した。
ムジカが『邪血の少女』だと分かり、ソンジュが人間を食べていないにも関わらずに退化していないのはムジカの血の力であることが明らかになる。ノーマンたちは、人間を喰わなければ知性を失う鬼の特性を利用して、農園を潰して鬼を無力化しようとしていた。その計画のためには、『邪血の少女』であるムジカの存在が邪魔であり、ノーマンはムジカとソンジュの元に刺客を差し向ける。刺客たちはムジカたちを見つけて強襲するが、ソンジュは一瞬でその刺客の背後をとり、笑みを浮かべた。ソンジュは追跡者を返り討ちにするために、わざと痕跡を残してノーマンの手下たちに追跡させていた。ノーマンの手下たちは構わずに攻撃を仕掛けるが、ソンジュにより一瞬で気絶させられる。それでも刺客は攻撃を続けようとするが、発作が起きて戦いが止まる。その時、ノーマンの仲間たちと一緒に来ていたギルダから、戦争が起きそうなこと、ノーマンが鬼を虐殺しようとしていることを聞く。ムジカはその争いを止める事を決意し、ソンジュはムジカとともに王都へ向かう。
王都はノーマンが放った毒で、鬼たちが野生化して暴走していた。ソンジュはムジカやギルダ達と共に鬼の暴走を止めようとする。ソンジュは自らの腕を引きちぎって暴走している鬼に喰わせることで邪血の血が効くのか確かめた。
邪血の血で一般の鬼を助けた後、ムジカとソンジュは城へ向かう。そこでエマを喰おうとしている女王の姿を見つけ、攻撃を仕掛ける。そしてソンジュは女王を殺し、全てを終わらせる事を告げる。その時、ソンジュが女王の弟だという事を明らかにした。
幼少の頃、ソンジュは一人の人間を狩った。ソンジュはその人間が瀕死ながらも、まだ生き続けようとしているのを目にする。するとソンジュが先生と呼ぶ鬼が「それが命。命を狩るということでございます。」と言った。そして「我々は皆、生きとし生けるもの全て神がつくりし尊き命。命を狩り合い、命を繋いでいる。そして狩りは"借り"。全て命は借り物。贈られたものではない。全て神から借りているものにすぎないのです。だから敬意を払いなさい。自分の命にも、他の全ての命にも。驕らず分け合いなさい。そしてそれゆえに自分で神より借りて、神に返すのです。これは我らの守るべき道理。これが我ら永久の繁栄への道理。」と続けた。
ソンジュはその教えを守ってきたが、王族は自らの欲によりその道理を歪め、農園を作って邪血を占領しようとした。それ故にソンジュはムジカを連れて逃げ出していたのだった。
ソンジュと女王は戦いを始める。女王はノーマンたちによって核を潰されていたが、それでも死んでいなかった。女王は王族の中に稀に現れる核を二つ持つ鬼であった。女王は周囲に散乱していた死んだ鬼を喰らい、その記憶や力を我が物としていた。ソンジュはその女王に追い詰められる。しかし、戦いの途中で女王に異変が起きる。女王は喰らった者の力を自在に扱えるのではなく、過剰摂取で喰らった者の人格が表面化しているだけであった。女王は喰らった者たちの記憶と人格が一度に流れ込み、自身が誰なのかわからなくなって死亡した。
その後、食用事を人間の世界へ渡らせないようにしているピーター・ラートリーが、子供達が残っているアジトへ大軍を率いて向かっていることが知らされ、エマ達は急いでアジトへ向かわなければならなくなった。女王と五摂家が消滅し、鬼の頂点と約束を結び直したことで鬼の世界は確実に変化を迎える。このままエマたちが鬼の頂点との約束を履行すれば、ソンジュが人間を喰らう機会がなくなる可能性があった。ソンジュはこのままエマたちを行かせていいのか自問自答する。そしてエマたちがアジトへ戻ろうとした時、ソンジュは「やはり…このままでは…」と考えた。その時、エマはソンジュに抱きついた。エマは「ソンジュもありがとう。この2年いろんなことがあったよ。いろんな鬼も見た。ほんの一部だけど。鬼について、自分達について、食べるってこと、命ってこと、命を奪うってこと、いっぱいいっぱい考えたよ。死についても考えた。家族を殺されるのは絶対嫌だし、食べられるのも絶対嫌。私自身、殺されるのも、食べられるのも絶対嫌だけど。想像したの。もし私が死んだら…もし私が死んだらね…ソンジュとムジカになら食べられてもいいって思った。鬼を殺したくないって思えたのは、あの時二人に出会えたから。今の私が在ってここまで来られたのは、二人に出会えて助けてもらえたから。ありがとう。本当にありがとうございました。」と告げた。
ソンジュはアジトへと戻るエマたちを見送った。ムジカが「いいの?人間もう食べられなくなるわよソンジュ。」と言うと、ソンジュは「あ〜〜〜!よかねぇよ!あ〜!俺の馬鹿野郎!」と言って頭を抱えた。
その後、ソンジュとムジカは貴族の鬼達がいなくなったことで崩壊の危機にある鬼社会を立て直そうとした。ソンジュは町の端へと追いやられている『寺院』へと向かった。寺院はかつては王を選出し、政治を助ける役割があった。しかし『約束』が結ばれた後は徐々に力をなくしていった。しかし、寺院の中の『大僧正』と『四賢者』という鬼は今でも鬼達から尊敬されていた。大僧正は幼きソンジュに鬼の道理を教えた鬼であった。ソンジュ達は大僧正を王にして混乱を収めようとしていた。大僧正は1000年もの間、何も食べることなく祈りを捧げており、ミイラのようになりつつも死んではおらず仮死状態になっていた。ソンジュとムジカは血を与えて大僧正を起こした。大僧正は事の経緯を聞き、王になることを了承した。
その時、街の方から騒がしい声が聞こえてきた。ソンジュ達がその方向へ目をやると、ある鬼が一般の鬼たちに『女王や五摂家の鬼が死んだこと』『事件を起こしたのがソンジュとムジカであること』を伝えていた。ソンジュたちはその対応の早さからピーター・ラートリーが裏で糸を引いている事を確信した。ソンジュたちに助けられた鬼がそれに異を唱えたが、その鬼はソンジュたちの有害な血を飲んだとして檻の中へ入れられ、処刑されることになった。それにより、ソンジュたちを助けようとする鬼たちはいなくなった。
ソンジュたちは自身を捕らえようとする鬼たちから逃げようとするが、大僧正を起こすために大量の血を消費していたことにより疲れ果てており、捕縛されてしまう。
その後、ソンジュとムジカは処刑されそうになる。その時、ソンジュの兄であるレウウィス大公が現れる。
レウウィスは「王族(わたし)の留守に随分と偉くなったものだな。五摂家の家来衆(イヌ)如きが。」と言って広場を鎮圧している鬼たちを睨みつけた。続けてレウウィスは「久しぶりだねぇソンジュ」と言ってソンジュを斬りつけて血を採ると、「諸君!見給え!これが邪血だ!これが病毒と恐れ、忌み嫌われた邪悪な血!」と言ってその血を飲んだ。そして「“邪血“を殺す?この二人は賊どころか民を救わんとした英雄なのだぞ。」と話しソンジュ達の無実を証明した。ソンジュが「兄上…なぜ…」と意図を問うと、レウウィスは「らしくはないだろうね。だが政治を押し付けていた相手は全員世を去った。とはいえ調停者(にんげん)の言いなりでは見過ごせまい。この支配も限界だ。あとはまぁ…なんとなく…だね。」と答える。そしてレウウィスが「処刑は中止だ!国賊、現政権幹部を直ちに捕らえよ!」と命じた為、政権を牛耳ろうとしていた鬼たちは捕らえられた。
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