約束のネバーランド(約ネバ)のラートリー家まとめ
『約束のネバーランド』とは、白井カイウ(原作)、出水ぽすか(作画)による日本の漫画作品である。
エマは孤児院で幸せに暮らしていた。しかし、ある時、自分たちがいるのは孤児院ではなく、鬼の食料となる人間を育てる『農園』である事を知る。エマは仲間と共に農園を脱走し、人間の世界を目指す。ラートリー家は鬼と人間の間に立つ『門番』『調停役』の役割を持つ一族である。
ラートリー家とは
鬼の王家よりも上位の存在である『鬼の頂点』と『約束』を結んだのがラートリー家である。
かつて人間と鬼は長い間、争いを続けてきた。しかし、争いに疲れたラートリー家の人間が鬼の頂点との間で『食用となる人間を差し出す代わりに、鬼と人間の世界を分ける』という約束を結んだ。それにより、人間と鬼との争いは終結した。しかし、鬼の頂点はラートリー家の人間が未来永劫、人間と鬼の世界の間に立つ『門番』『調停役』になる事を言い渡した。
こうしてラートリー家の一族は永遠に鬼と食用児に関わることになった。
ジェイムズ・ラートリー / ウィリアム・ミネルヴァ
35代目のラートリー家の当主。ピーター・ラートリーは弟である。
ユリウス・ラートリーが書き残していたメモを読み、ラートリー家が戦友を裏切り、食用児を生み出した事を知る。その後、平和に暮らしている人間がそのままの生活を続けられるように『門番』『調停役』という自身の職務を放り出すことはしなかったが、理不尽な運命を課せられている食用児たちに選択肢を与える為、農園に運び込まれる本に細工し、安全なシェルターや集落、人間の世界へ続くエレベーターの場所などの情報を記した。エマたちはこの本の細工に気付き、農園から脱出した。『ウィリアム・ミネルヴァ』とは食用児たちにメッセージを伝える時に使用していた偽名である。
ジェイムズは食用児たちが望む未来を手に入れる事を望んでいる。その為、自身では『約束』を反故にする気は無いが、食用児たちがそれを望むのならば、それを止める気はないと明言している。また、秘密裏に人間の世界に渡る事を望むのであれば、支援者を向かわせてそれを手助けすると話していた。
脱走児の希望の光であったが、弟のピーターにより裏切られ、命を狙われることになる。その時に、ジェイムズが脱走児のために用意した集落『ゴールディ・ポンド』にある電話に裏切られた事や、自身の本名などを知らせる肉声を残している。その後、ピーターの命令により粛清された。ジェイムズは「『すまない』と伝えてくれ。」と弟への言葉を残した。
死亡したと思われていたノーマンは、ジェイムズ、ミネルヴァの名を使って食用児たちを救っていた。
ピーター・ラートリー
ラートリー家の36代目当主。ジェイムズ・ラートリーは実の兄である。
世界の平和を守る為、食用児を何としても人間の世界に渡らせないようにしている。当初は食用児に味方するジェイムズを許容していたが、人間の世界へ通じるエレベーターがある集落『ゴールディ・ポンド』が完成した時に見逃せなくなり、ジェイムズを裏切った。そして部下に命じてジェイムズを殺害させた。部下からジェイムズを殺したという報告を受けたが、死体が見つかっておらず、くまなく死体を捜索するように命じた。そしてゴールディ・ポンドの存在を鬼たちに知らせた事により、そこは鬼が人間を狩る猟場になった。ゴールディ・ポンドのエレベーターは現在では使えなくなっている。
ゴールディ・ポンドの鬼たちがエマたちにより全滅させられたことにより、脱走児がいることに気付き、部下のアンドリューを送り込んで抹殺しようとした。しかし、脱走児の多くは逃亡を果たした。
その後、ノーマンたちはいくつかの農園を潰していく。ピーターはノーマンの仕業だと知っていたが、それを鬼に知らせるとラートリー家の人間が食用児に加担している事が露見するというリスクがあった。ノーマンはそれを見越してピーターが手出しをできないと踏んでいたが、ピーターは全てを女王に明かした。そして鬼の頂点に献上されるはずのエマたちを女王に差し出す事を条件に、鬼の軍勢を貸すように頼んだ。女王はもしエマたちの肉を献上できなければピーターを喰らうと言って軍勢を貸し与えた。ピーターは鬼や自身の手下を率いて、ノーマンたちのアジトを襲撃し、子供たちを捕らえた。しかし、特上の肉であるエマたちがいないことに気づく。その時、女王や貴族の鬼たちが死亡したという事、その場に食用児の姿があった事を知らされる。知らせを聞いたピーターは、鬼社会を掌握する事を目論み、四大農園と五摂家の家臣が政治を取り仕切るように操作した。そして邪血の力を持つ鬼たちを処刑するように仕組んだ。そして捕らえた食用児たちをエマたちが育ったグレイス=フィールド(GF)へと移し、救助に来るであろうエマたちを待ち受けた。ピーターを迎え入れたのは、エマたちを育てたイザベラであった。
エマたちが脱走した後、イザベラは処刑される事を覚悟していた。しかし、イザベラは処刑されるどころか、『飼育監長(グランマ)』へと任命された。鬼たちはイザベラと前グランマを天秤にかけた結果、圧倒的な飼育成績を残したイザベラを選んだのだった。エマたちが脱走した事で吹っ切れていたイザベラは、これからも人間を飼育しなければならない事に呆然としていた。そんなイザベラの前にピーターが現れる。ピーターは「迷いますか?『やっと抜け出せると思ったのに』『自由になれると思ったのに』『もう十分』『これじゃ元の地獄に逆戻り』『私はグランマになどなりたくない』」と言ってイザベラの気持ちを言い当てた。そして「本当に十分ですか?あなたはまだ全てを知らないのに。欲しかった未来もまだ何一つ手にしていないのに。知りたくありませんか?なぜ食べられる人間と、そうでない人間が存在するのか。抜け出したくありませんか?今度こそこの地獄から!運命から!あなたは今、死の押し付け合いに疲れているだけです。だから舞台を降りて自ら死んで終わりにしようとしている。でもね、死は救いではない。自由への道では決してない。僕が本当の救いを君にあげる。連れ出してあげる。君がこの手をとってその頭脳を僕たちのために役立ててくれるなら。その数字も、胸のチップも消して、君を真の自由に。」と話した。それを聞いたイザベラはピーターたちに助力する事を決めた。
ピーターは邪血の力を得た鬼たちが粛清され、ムジカとソンジュの処刑もすぐに行われるとGFで報告を受けた。これで農園のシステムを脅かすのは、エマたちだけとなった。ピーターは捕らえた食用児たちの前に笑顔で現れ「よかったね。生きていたよ。“ノーマン”、“エマ”、“レイ”、他にも何人も君達の家族。“生きている”どころか元気いっぱい。王都を襲って女王達まで殺してしまったよ。いやぁビックリ。まさかまさか、アハハハハハ。」と言って笑った。そして次の瞬間、食用児の一人であるナットの指を折った。ピーターは態度が激変し「嘘を吐いたね。君は僕に嘘を吐いた!いけしゃあしゃあと、悪い子だ!嘘を吐いてはいけませんってママは教えてくれなかったのかな!?」と叫んだ。怯える子供達を落ち着かせる為にナットは強がりを言うが、ピーターは折れた指を踏みつけて悲鳴を上げさせた。そして「大丈夫。もはや多少の損傷は気にしない。品質体裁重視の貴族連中は君達の仲間が全員殺してしまったからね。さぁ、そろそろわかってくれたよね?もう嘘はナシだ。次は正直に僕の質問に答えるんだ。お前達は既に“約束”を結んだのか?」と食用児達に質問した。ピーターはジェミマという食用児にナイフを突きつけ「今度は答えを間違うなよ?」と笑顔で告げた。
その後、エマたちが食用児たちを取り戻す為にGFへと侵入してくる。エマたちは食用児たちを助け出す事に成功するが、ピーターはエマたちを侵入させて閉じ込める事が目的だった。既に出入り口は鬼によって封鎖されており、ピーターは勝ち誇る。しかし、エマたちは在庫保管室に立てこもり、GFを占拠する事を宣言する。
それからエマたちは鬼との戦闘を始めた。鬼たちは兵を集めた上に部屋を封鎖してエマたちを追い詰める。だがその時、ノーマンの部下のヴィンセントたちがGFの制御室のシステムをジャックする。カメラの視覚、扉の開閉、敵の通信の妨害が可能となった食用児たちは鬼を圧倒する。その後、エマたちはカメラの映像によりピーターが地下1階にいる事を割り出し、地下へ向かう。しかし、そこにピーターはいなかった。その時、ピーターの声が鳴り響く。ピーターは「ラムダ壊滅に女王・五摂家皆殺し、王政崩壊、GFへの侵入も上手くやったな。食用児にしては上出来だ。だが僕はそこにはいない。映像は差し替え。僕達の方が一手早かったね。」と話した。エマたちはピーターの配下の人間に取り囲まれており、ピーターは「君達の負けだよ。」と告げた。ピーターはさらにソンジュとムジカの処刑が間もなく行われる事、邪血で助けた民衆たちを全て殺した事、ラートリー家の指導の下に政権が動いている事を話した。そして「礼を言おう。君達のおかげで世界は変わる。図らずも僕の望む未来にね。」と勝ち誇った。
ヴィンセントはGFのシステムにパスコードをかけていた。ピーターはパスコードを言わせようとするが、ヴィンセントは頑なに言おうとしなかった。ピーターはヴィンセントを銃で撃ち、「僕は食用児の父、創造主なんだぞ。農園がなかったら、ラートリー家がいなかったら、家畜(おまえたち)は生まれてすらこなかったんだぞ。なのに農園に、我々に刃向かい、逃げ出し、挙句破壊しようとする。なんて愚かで不敬なんだ。反抗期にはもううんざりだ!もういい。所詮は不良品だ。全員殺せ。」と話した。その時、別行動をしていた食用児のオリバー達が現れ、ピーターたちを制圧した。
ピーターがエマたちの前で跪かされる中、イザベラが部下を携えて現れる。ピーターは笑みを浮かべるが、次の瞬間、イザベラたちの銃はピーターへと向けられた。イザベラはピーターに服従しても未来がない事を知っており、エマたちに力を貸す事を決めていた。
ピーターはそこにいる全員から銃を向けられる事となり、自身が敗北する事を信じられず雄叫びを上げた。そして一瞬の隙をついて銃を奪い取り、逃走を始めた。
ピーターは鬼たちに電話をかけ援軍に来るように命じた。しかし、GFに入る橋が落とされており援軍は不可能だと鬼たちは答える。それを聞いたピーターは「わかっている!つべこべ言わず鳥でも蝙蝠でも食って飛んでこいよ!」と叫んで電話を切った。ピーターはどこに逃げてもイザベラの部下に追い詰められた。彼女たちの心臓に埋め込まれたチップで殺そうと画策するピーターだったが、システムが復旧しなければ何もする事ができなかった。その時、ピーターの電話が鳴る。その電話は王都を牛耳っていた鬼たちが鎮圧されたという知らせだった。王都でムジカとソンジュが処刑されそうになっていた時、そこにレウウィス大公(女王の弟で、ソンジュの兄。エマたちと戦い、死亡したと思われていた)が現れ、邪血が鬼を救う奇跡の血だと証明し、政権を握っている鬼を捕らえていた。
ピーターは「僕が敗けた!敗北した!」と絶望した。その時、エマがピーターに銃を突きつける。ピーターは「こいつだ…。エマさえ殺せば“約束”はご破算。食用児の未来もブチ壊しだ!」とエマの殺害を画策した。しかし、エマはそんなピーターに対して「あなたを殺すつもりはない。私達はあなたと話をしに来たの。不可侵不干渉。私達はラートリー家に如何なる報復も攻撃もしない。だから食用児の自由を認めてほしい。」と話した。食用児の中にはエマの考えに反し「許せない!」と声をあげる者もいた。エマはそれに同意しながらも「でも“殺して解決”で終わらせたくない。憎んだり、恨んだり、恐れたり、そんなのもう嫌だ!私達は笑っていたいのに、自由になりたいのに、そのためにずっと闘ってきたのに、運命や境遇だけじゃない、憎しみや恐怖からも、私達はもう何からも囚われたくない。」と話した。それを聞いた食用児達はエマの意見を尊重する事にした。
エマ達の目的はあくまで勝利と対話であり、エマ達は鬼を一匹も殺していなかった。
エマは「鬼達も生きるために食べているだけ。ママ達も生きるために子供達を鬼達に差し出すしかなかっただけ。初代ユリウス・ラートリーもあれ以上戦争で死ぬ人を見たくなかっただけ。私達だって他の命を殺して生きているし、ママ達やユリウスの恐怖や苦しみも他人事じゃない。それを“弱さ”だって責めることなんて私にはできない。考えてみたの。もし鬼が人間を食べる生き物じゃなかったら…人間と友達になってくれるかな。もし私がラートリー家に生まれたら食用児に何かできたかな。もしあなたがGFに生まれたら友達になれたのかな。立場が違うから、争って貶めて憎み合って。でもそれぞれの立場を差し引いたら…そうやって考えたら本当は皆、憎み合わなくてもいいんじゃないかな。あなただってあなたの正義で二世界を守ってきたんでしょう?私は食用児で、あなたが私達にしたことは絶対許せない。でも、ラートリー家が食用児を犠牲にして1000年守られた人達がいる。“世界を守る”“兄よりも世界”あなたにしか解らない苦しみだってあった筈。生まれた時から運命を背負わされているのは、あなたも同じなんだよ。自由になろう。私達は皆囚われている。鬼も、人も…そう調停者も食用児も。でも世界は変わる。もう変えられる。変わろう。1000年の苦しみを今終わらせよう。一緒に生きよう。ピーター・ラートリー!」とピーターに呼びかけた。
エマの言葉を聞いたピーターは子供の頃を思い出していた。
ピーターは兄の事を慕っており、兄を支えていくのが使命だと思っていた。ある日ジェイムズはユリウスが書き残した懺悔のメモを読み真実を知った。それからジェイムズは自身の使命と罪悪感の中で葛藤するようになった。一方でユリウスのメモを読んだピーターは嬉しそうに「ユリウスは何も悪くない。僕らは世界を守る一族なのです。私情を排し世界を救った!英断です。大切な戦友を裏切ってまで世界を救ったのです。それでこそ英雄。崇高な使命を賜りし一族。すばらしい!ラートリーはこうでなければ。」と話した。しかしジェイムズは「“崇高な使命”…。確かに私もそう思っていた…。でも違う。これは“罰”だよ。そして“呪い”だったんだピーター。」と話し、それから食用児を逃がそうとした。その後、ピーターは葛藤の末にジェイムズを粛清した。「『すまない』と伝えてくれ。」というジェイムズの遺言を聞いたピーターは、泣き叫んで使命を全うする事を決意した。
「一緒に生きよう。」とエマから言われたピーターは「僕は正しいことをした。大好きな兄さんを殺してまで“使命”を、世界を守ったんだ。それが“呪い”?ただの“罰”だった!?違う違う嘘だ!一族の1000年は無意味じゃない!兄さんは運命に抗おうとしていたの?自由になりたかったの?僕を自由にさせたかったの?」と葛藤した。そしてピーターは悲しそうに笑った。
ピーターは「殺せばいいのに共に生きようなど…馬鹿共め。そんなだから食い物にされるんだお前達は。鬼などまだ可愛いものだぞ。鬼が食用児にしてきたことなんて、人間は人間同士ではるか昔から繰り返してきている。そう…人間は人間を食わないのにだ。どこへでも行け。好きにしろ。お前達の勝ちだ。だが一つ覚えておけ。人間の世界も変わらない。なぜなら鬼は人間の鏡だから。やれるものならやってみろ。見物だ。人間の世界で食用児がどこまでできるのか。」と告げた後、ナイフを取り出して首を斬った。意識が遠のく中、ピーターはエマ達が必死に自身を助けようとするの見て、「なぜ助ける…。なぜそんな顔をする。もういい、もう充分だ。お前達がつくる新しい世界は僕には眩しすぎる。僕は…。」という想いを抱いた。その時、『鬼の頂点』が現れる(誰にも見えていない)。鬼の頂点は「おもっていたより ながくたのしめたよ。1000年間ご苦労様。」と話してピーターに腕を伸ばした。そしてピーターは息を引き取った。
ユリウス・ラートリー
鬼の頂点との間で『約束』を結んだ張本人。何代目かは不明だがラートリー家の当主である。
部下や仲間と共に鬼との戦いに明け暮れ、ユリウスは人間よりもはるかに強い鬼との戦いに疲弊していた。ユリウスは鬼に数人の人間を差し出すことを考えつく。その人間を増やせば鬼の食糧問題は解決し、互いに戦う必要もなくなると判断したためだった。しかし仲間たちは、一度鬼に人間を渡せば幾度となく要求される恐れがある事、何よりも一部の人間を犠牲にする事、を良しとしなかった。ユリウスも考えを改めて人類の完全勝利の為に戦う事を決意した。しかしその数日後、ユリウスは戦場で強大な力を持つ鬼『レウウィス大公』と遭遇した。レウウィス大公はユリウスが率いていた軍勢を一瞬で虐殺した。ユリウスはその凄惨な光景を目にして絶望し「もう疲れた。帰りたい!!うんざりだ!!民のため?兵のため?どうでもいい。私がつかれたんだ。じき終わる?それはいつだ全て幻想綺麗事。勝ち目の見えている今こそが好機ではないのか。終わらせるんだ!今!私が!」という思いが爆発した。ユリウスはレウウィス大公に鬼の王と取り引きがしたいと申し出た。
ユリウスは仲間の元に一人で戻って来た。ユリウスは再び仲間たちに鬼との和平を提案した。しかし、仲間たちの考えは変わらなかった。
ユリウスはそれでも食い下がらず「だが一度差し出せばそれで終われる。ただ一度きりで奴らとの関わりを永久に絶てる方法があるのだ。この先何万何千と兵や民を失うより良いだろう。私はもう…犠牲は懲り懲りなのだ。たった一晩…たった一晩で壊滅した。片や差し出す犠牲は一度きり。それで全てに片がつくのだ。こうでもしなければこの泥沼の殺し合いは終わらない。終わらせなければ…人類のために。後少しでもなくいつかでもなく今ここで。私達が!たしかに苦しい選択ではあるが…これは建設的妥協。必要な代価なんだよ。頼む皆この案をのんでくれ。」と訴えた。しかし、それでも仲間たちの意見は変わらなかった。ユリウスは戦いを止めようとしない仲間たちを見て「やめろやめろ…!ちがう!!綺麗事にも幻想にももううんざりだ。仲間のために見ず知らずの連中を切り捨てて何が悪い。私は正しいことをしているんだ。私は…。」と絶望した。仲間の一人はそんなユリウスを見て「じゃあ君はなぜそんなにも苦しそうなんだユリウス。君も本当は切り捨てたくないんだろう。君は誰よりも民を思い兵を思い真っ直ぐで優しい。だからこそ人一倍に責任を感じ一人自らを追い込んでしまっている。でも誰より望んでいたのは君じゃないか。人類全ての平和を。妥協なき勝利を。」と諭した。
するとユリウスは「そうか…どうあっても考えを変えてはくれないんだね…。残念だ…。本当に…残念だよ。」と話した。その瞬間、鬼たちがユリウスの背後から現れた。ユリウスは既に鬼たちとの間で『約束』を結んでいた。ユリウスの仲間たちは鬼たちに捕らえられ、最初の食用人類となった。
ユリウスが仲間たちを鬼に売る前、ユリウスは鬼の王族よりも上の存在である『鬼の頂点』の前に連れて行かれた。
ユリウスは数人の人間を差し出す事を条件に、鬼と人間の世界を分けるように願った。鬼の頂点はそれをあっさりと了承したが、見返りを求めた。ユリウスは自分の命さえも差し出してもいいと思っていたが、鬼の頂点が求めたのは、ユリウスの一族が『約束』を2つの種族が破らないように監視する『門番』『調停役』としての役割を引き受けることだった。
鬼の頂点は「ししそんそんこのうんめいのうずのなか。にげられない。すてたともだちからもうんめいからも。君も平和の礎になるんだよ。」とユリウスに向かって言った。ユリウスの顔は絶望で歪んでいた。
アンドリュー
ピーター・ラートリーの部下。褐色の肌でメガネを着用しているのが特徴。指をリズムよく叩く癖がある。
ピーターから脱走した食用児の抹殺を命じられる。その後、エマたちを追跡するが、ジェイムズ・ラートリーの支援者たちによる工作により、エマたちを見つけることができなかった。ピーターは食用児だけではなく支援者の抹殺もアンドリューに命じた。その後、アンドリューはエマたちが農園に残してきた子供であるフィルの元へ出向き、エマたちの情報を聞き出した。そして、支援者たちを全て抹殺した。
その後、エマたちが鬼の頂点がいる『七つの壁』についての情報を揃えた時に、エマたちが拠点としていたシェルターの場所を探し出し、部下を率いて食用児たちの殲滅に乗り出す。
食用児たちはアンドリューの襲撃に気付き、逃走しようとするが、アンドリューたちによって二人の食用児が殺害されてしまう。食用児たちは、年長のルーカスとユウゴがアンドリューたちの足止めをしてその間に逃げ出そうとする。アンドリューはユウゴたちを追い詰めるが、ユウゴたちは可燃ガスに引火させてアンドリューたちを道連れにしようとする。それによりアンドリューの部下は死亡するが、アンドリューはかろうじて一命をとりとめた。アンドリューは瀕死の重傷を負ったが、それでもエマたちの追跡を続行する。
エマたちに追いついたアンドリューは食用児の一人であるアリシアを人質にとり、エマたちに跪くように命令する。エマは銃をとってアンドリューに狙いを定めるが、エマには人間を殺すことができないとアンドリューは確信していた。しかし、食用児の一人であるオリバーがアンドリューの肩と腕を撃ち抜いた。それによりアリシアは助かったが、アンドリューは近くにいた食用児のドミニクを踏み殺そうとする。その時、野良鬼がアンドリューに襲いかかって喰い殺した。
ミネルヴァの支援者
ジェイムズ・ラートリーの協力者で、脱走した食用児たちを援助する存在。
ピーター・ラートリーがジェイムズを裏切った時点で、多くの支援者がピーターに捕らえられて処刑された。
エマたちが拠点にしていたシェルターにモールス信号を送り、ピーター・ラートリーの情報を教え、時が来ればエマたちを助けに行く事を伝えた。食用児たちを始末しようとしているアンドリューたちを誘導してエマたちの所在地をつかませなかった。しかし、その事によりエマたちに協力する自分たちの存在が明らかになり、アンドリューに命を狙われる。それから全ての支援者が殺害された。
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