レスラー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『レスラー』とは2008年に公開された、心臓発作で引退を勧告された中年レスラーが自分の人生を見つめなおす、ヒューマンドラマ映画である。監督はダーレン・アロノフスキー、主演はミッキー・ロークである。嘗て人気のプロレスラーであったランディ(ミッキー・ローク)は、年老いてもプロレスを続けていたが心臓発作を起こしてしまう。しかし20年前に伝説の試合と言われたアヤトッラー(アーネスト・ミラー)との再戦に望むのであった。見どころはランディのプロレスにかける情熱と、リアルなプロレスシーンである。
ガンズ・アンド・ローゼズ
劇中キャシディとビールを飲みに行ったランディは、大好きな80年代の曲の話でキャシディと盛り上がる。
何人か好きなアーティストを挙げていくのだったが、特にランディが好きなのがガンズ・アンド・ローゼズである。
それを物語るように、ランディのステージ登場時のテーマ曲はガンズ・アンド・ローゼズの『 Sweet Child o' Mine』である。
因みにランディ役のミッキー・ロークがプロボクサーだった頃も登場曲として使用していた。
ガンズ・アンド・ローゼズとは、1980年代末からヒットを連発した、アメリカのロックバンドである。全米で4,200万枚、全世界で1億枚以上のアルバムセールスを記録した。
1990年代に入り、様々な問題が勃発し長い間停滞期が続いたものの、2000年代中頃に活発に活動を始めた。
本作は予算が少なかったこともあり、 ガンズ・アンド・ローゼズのボーカリストであるアクセル・ローズは無償で曲の使用を許可した。
ラム・ジャム
ラム・ジャムとはランディのプロレスで使う必殺技の名称である。
フィニッシュできめる技で、ダイビングヘッドバット、トップコーナーからのダブルのエルボードロップ、ダイビングボディプレスなど様々な説があるが、はっきりとした技の解説は出てこない。
因みにダイビングヘッドバットとは、仰向けにダウンした相手にダイブして頭突きをする技である。トップコーナーからのダブルのエルボードロップは、仰向けになっている相手目掛け、ダイブして両肘を相手に打ち付ける技である。ダイビングボディプレスとは、他の技同様、ダイブをして主に腹部から自身の体を浴びせる技である。これは重たい巨漢レスラーが自身の巨体を利用し使われる業だが、空中戦を得意とする軽量のレスラーも使用する。
『レスラー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
ランディ「よく聞け、彼女は百倍もセクシーなんだよ、お前の青臭い花嫁よりな」
ランディの馴染みのストリップクラブで、想いを寄せるキャシディが若い男たちに年齢の事で馬鹿にされていた。
それを聞いたランディが「よく聞け、彼女は百倍もセクシーなんだよ、お前の青臭い花嫁よりな」と言ったのである。
ランディは失礼な若い客たちを追っ払うのだが、追っ払った事で二百ドルがパーになりキャシディは怒る。しかしランディは笑顔で「俺の方が男前」と冗談を言い、キャシディは思わず笑ってしまうのだった。
ランディの男気と優しさが垣間見えるシーンである。そして冗談を言ってキャシディを笑わすユーモアがあり、キャシディもそんなランディをつい許してしまうのである。
ランディ「俺にとって痛いのは外の現実の方だ。もう誰も居ない。あそこが俺の居場所だ、行くよ」
ランディの心臓を心配し試合前にかけつけたキャシディは、ランディに心臓の具合を尋ねる。するとランディはキャシディに「俺にとって痛いのは外の現実の方だ。もう誰も居ない。あそこが俺の居場所だ、行くよ」と言うのだった。心臓発作を起こしてから、プロレスする事に関してドクターストップがかかるランディだが、リングで戦う事を決意した。命の危険にさらされながらも、自らの体や家族たちを犠牲にしながら続けてきたプロレスだけがランディの居場所である。ランディにとってプロレス以外の現実は、厳しいものであり辛いものであった。しかしプロレスは唯一孤独なランディを救うものであった。その後大歓声と共にファンたちに迎えられたランディは、マイクパフォーマンスでファンに感謝の気持ちを伝えている。落ち目で年老いた自分に辞めろという資格があるのはファンだけで、ファンが自分を突き動かす原動力となっていたのだ。ファンがいる限り戦い続ける決意の言葉でもある。
娘ステファニーと和解するシーン
プロレスだけに人生をかけて来たランディは、家族を犠牲にしてきた。愛する娘ステファニーとも疎遠状態であった。
心臓発作を起こしたことで、先も見えず不安になったランディは娘に会いに行く。
突然現れたランディに冷たい態度のステファニーだったが、ランディからのプレゼントをきっかけに徐々に心を開く。
懐かしい場所にステファニーを連れて来たランディは、今まで家族を蔑ろにしてきた事を涙ながらに謝罪する。ステファニーもランディの謝罪を受け入れ、和解する。
ランディはステファニーの手を取り、廃墟になった広いホールでダンスをするシーンである。そこにはプロレスラーとしてのランディの顔とは違った、父親のランディがいる。不器用ながらも父親にもう一度なろうとしている姿が垣間見えるシーンである。
『レスラー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
監督ダーレン・アロノフスキーが出した条件
元々低予算で作られた本作は、大物俳優を使う事で大幅な予算の増加が見込めたにもかかわらず、監督のダーレンは頑としてミッキー・ローク主演でと譲らなかった。
ミッキー・ロークは、80年代イケメン俳優として大ブレイクしたが、90年代にプロボクサーへと転身した。その後ボクシングを引退し、整形して俳優にカムバックしたが鳴かず飛ばずの状態であった。まさに劇中のランディそのものである。
ミッキー・ロークの出演料は、最低額で映画の出演料としては少額ではあった。ミッキー・ロークは、「ダーレンの映画でなきゃ出演はしなかった」とインタビューで答えた。
ダーレンはミッキー・ロークに対し、言う通りやればギャラを支払うと言い、時間厳守、夜遊び禁止、自分に対して不遜な態度をとらない事を約束させた。
配給先
配給元を見つけられるかどうかさえわからないまま、わずかな製作費で映画を作り、ベネチアに持っていった。そこで成功を収めて、金獅子賞を獲った。当時40年の歴史で、アメリカ映画の受賞ははたったの3本目だったという。だがその時点ではまだ配給元がなかった。それからトロントへ持っていき、フォックス・サーチライト(Fox Searchlight)という配給元を見つけた。それでキャンペーンにもっと資金を投入できるようになったという。
『レスラー』の主題歌・挿入歌
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目次 - Contents
- 『レスラー』の概要
- 『レスラー』のあらすじ・ストーリー
- 年老いたレスラー
- ドクターストップ
- 父親の顔
- 再びリングに
- 『レスラー』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- ランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン(演:ミッキー・ローク)
- 友人
- キャシディ(演:マリサ・トメイ)
- 家族
- ステファニー・ラムジンスキー(演:エヴァン・レイチェル・ウッド)
- 管理人
- レニー(演:マーク・マーゴリス)
- 職場の上司
- ウェイン(演:トッド・バリー)
- プロモーター
- ニック(演:ウェス・スティーヴンス)
- プロレス仲間
- ジ・アヤトッラー(演:アーネスト・ミラー)
- ロン・キリングス(演:ロン・キリングス)
- ネクロ・ブッチャー(演:ネクロ・ブッチャー)
- 『レスラー』の用語
- ラップダンス
- ガンズ・アンド・ローゼズ
- ラム・ジャム
- 『レスラー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ランディ「よく聞け、彼女は百倍もセクシーなんだよ、お前の青臭い花嫁よりな」
- ランディ「俺にとって痛いのは外の現実の方だ。もう誰も居ない。あそこが俺の居場所だ、行くよ」
- 娘ステファニーと和解するシーン
- 『レスラー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 監督ダーレン・アロノフスキーが出した条件
- 配給先
- 『レスラー』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:ブルース・スプリングスティーン 「The Wrestler」