かくりよの宿飯(やどめし)のネタバレ解説・考察まとめ

『かくりよの宿飯』とは、富士見L文庫より刊行された友麻碧のキャラクター小説。イラスト担当したのはLaruha。2018年には2シーズンに渡ってアニメ化された。アニメの制作はGONZO、監督は奥田佳子が務めた。
あやかしを見ることの出来る女子大生の津場木葵がかくりよにある老舗宿「天神屋」の大旦那を名乗る鬼神に連れ去られたことをきっかけに、料理の腕を活かして小料理屋を切り盛りしていく。料理を通してあやかしとの仲を深めていく様子が見どころとなっている。

『かくりよの宿飯』の概要

2018年4月から始まった春アニメ『かくりよの宿飯』。
アニメーション制作はGONZO。監督は奥田佳子が務めている。
友麻碧によるキャラクター小説が原作になっている。
祖父譲りのあやかし達が見える能力を備えた女子大学生の葵が、あやかしである鬼神(きじん)に連れ去られ「かくりよ」(*)での生活を余儀なくされることとなり、また祖父の残した思わぬ借金を背負うことにもなる。
借金のかたに鬼神のあやかしとの婚姻を迫られることになるのだが、これを拒絶して1億円もの借金を返していく約束をしてしまう。
そして祖父から教わった料理の腕を活かして「かくりよ」で小料理屋を開くことになる。しかし、天神屋には葵に好意的な従業員もいるがそうでない者もいる。こうして葵は天神屋のあやかし達と関りながら、「かくりよ」での初めての仕事に翻弄されていくことになる。

*:「かくりよ」とは、永久に変わらない神の領域。死後の世界でもあり、黄泉(よみ)の国もそこにあるとされている。ここではあやかし達の住む世界を表す。詳しくは用語を参照

『かくりよの宿飯』のあらすじ・ストーリー

あやかしの宿「天神屋」

亡くなってしまった祖父、津場木史郎(つばきしろう)から受け継いだあやかしを見る能力を活かして、あやかし達とふれあいながら楽しい大学生活を謳歌していた津場木 葵(つばき あおい)はある朝、通学途中の神社前で今まで会ったことのない鬼の面を被ったあやかしと遭遇する。そして祖父が行き来していたという「かくりよ」の世界に連れ去られてしまう。
葵を連れ去るあやかしは「ようこそかくりよへ、僕の花嫁」と言った。見たことのあるようなあやかしに抱かれて、葵はどこへ向かうともしれずに漂い、やがて目を覚ますと目の前に鬼の面を被ったあやかしがいた。葵が連れてこられたのはかくりよ、つまりはあやかしの住む世界のあやかしの宿「天神屋」(てんじんや)であった。葵の祖父はかつてこの天神屋で豪遊をし、借金のかたに嫁として、天神屋の大旦那である鬼のあやかしに葵を差し出す約束をしていたという。

祖父の残した借金は1億円もあったが、見も知らぬ鬼の嫁になどなりたくない葵は働いて返すと宣言した。その後、葵は若旦那の銀次から「食事処を開かないか」と持ち掛けられる。葵は「自分には無理だ」と消極的だった、しかし天神屋で天狗たちが「料理をつまらない」といって騒ぎを起こしたことをきっかけに、天狗の長老・松葉に料理を提供。そこで美味しい料理をふるまったこと、葵が史郎の孫娘だったことから気に入られ、天狗の宝のうちわをプレゼントされる。天狗の長老に背中を押されたことで、葵は借金を返すためにも小料理屋を開くことを決意。大旦那に頼み込んで店を開く許可を得た。

小料理屋「夕がお」開店

葵は人間の娘ということから、天神屋のあやかしたちから良く思われていなかったが、料理を通して彼らの心を解きほぐしていく。しかし小料理屋「夕がお」の開店が翌日に控えた日の夜、葵は濃い紫の頭巾を被り、目が異様に黄色く光る大男に斬りつけられてしまう。そんな彼女を助けたのは天神屋にてお庭番を務めるカマイタチのサスケだった。サスケの護衛もあって、無事に開店にこぎつけた「夕がお」であったが、天狗の一行をもてなした後はぱったりと客足が遠のいてしまった。
客が途絶えて1週間がたった時、天神屋の会計を担う白夜(びゃくや)から呼び出される。白夜から「このまま客が来ないと夕がおにはもう後がない」と告げられた葵と銀次は、今月中に何とかしようと話し合う。そこに「天神屋に泊まっている作家の客のために弁当を作って欲しい」という依頼が舞い込んだ。葵が弁当を作ると作家が気に入り、夕がおの紹介記事が新聞に掲載された。そのおかげで夕がおは急に繁盛し始めた。

妖王家夫妻の結婚記念日

妖王家の結婚記念日のメニューを考えていた葵は、ラムネを仕入れに行った帰り道、子猫のあやかしと戯れる白夜の姿をみた。厳格な白夜の別の一面を見た葵は、白夜に夕がおで朝食を振る舞う。そして妖王家夫妻のことを尋ね、メニュー作りの参考にする。食材を探して東の地を銀次と訪れた葵は何者かに連れ去られてしまう。
東の地で連れ去られた葵は大旦那によって救いだされた。だが、一日を無駄にして、妖王家夫妻の結婚記念日の洋食メニューが間に合わないと思った葵に、銀次は普段通りの料理を提案する。特別ではないが、いつもの心のこもった葵の料理に、夫妻は喜び結婚記念日の料理は満足のいくものとなった。

静奈と時彦

七夕を迎えた夕がおは、客で賑わっていた。店を無事に終えた葵は、夕がおで出していた七夕そうめん膳を大旦那と一緒に食べた。また、かねてから板前長に招待を受けていた天神屋での会食は、楽しい一時となり、会食後にうつしよへ仕事で旅立つ大旦那を、葵は従業員と共に見送った。そんな時、下足番の千秋が「大変です」と慌てて葵と銀次のもとへ駆けて来た。天神屋のライバルともいえる折尾屋から番頭の葉鳥と湯守の時彦が天神屋にやって来たのだ。時彦は天神屋で湯守をしている静奈を折尾屋に連れ戻そうと詰め寄るが、静奈は拒絶する。葵は、拒絶しながらも時彦を思いやる静奈を見るに忍びなく、静奈と時彦の好きなトマトの料理を2人で作る機会を作り、やがて二人の心を和解させていった。

折尾屋

天神屋にやって来た折尾屋の船には、旦那頭の乱丸達だけではなく、黄金童子も一緒に乗っていた。黄金童子に頭を下げる大旦那を見た葵は、夕がおに来た座敷童子の少女である黄金童子が、折尾屋の大女将であり、天神屋の創設者でもあると聞き驚く。銀次が折尾屋に戻るのを納得出来ない葵は、折尾屋に逆らい、黄金童子の神隠しの術によって、折尾屋へと連れ去られることとなる。
折尾屋に攫われた葵は、地下の座敷牢に入れられる。葵と一緒に攫われたチビの機転により、牢を脱出することが出来たが、乱丸と秀吉からは変わらず、手荒な扱いを受ける。イベントのために折尾屋に泊まっていた松葉と再会することが出来た葵は、松葉の朝食を作ることになった。
松葉の食事を毎日1回作ることになった葵は、食材のことや、癒えぬ足の痛みに悩んでいた。そんな折、葵は魚屋に変装して折尾屋にやって来た、大旦那と再会する。大旦那に食材の調達や、足の手当てをしてもらった葵は、松葉の食事を無事作ることが出来た。そして、折尾屋の板前の鶴童子たちとの出会いを通じて、新しく雨女の淀子の食事を依頼されることとなる。葵はもんじゃ焼きを、淀子自身に焼いてもらおうと考えた。淀子は面倒だと渋っていたが、葵が試しに焼いたものを食べ、あまりのおいしさに自分でもんじゃ焼きを焼き始めた。

松葉と葉鳥のけんか

ある時、折尾屋から煙が上がる。松葉と葉鳥のけんかが原因だった。2人の間の確執は深く、葵は何とか仲直りしてもらいたいと願っていた。松葉が、妻の笹良が作ったがめ煮を食べ、味が違うと激怒したことを葵は葉鳥から聞いた。葵はがめ煮のあることに気づき、がめ煮を通じて松葉と葉鳥を仲直りさせることを思いつく。がめ煮をきっかけに、2人は無事に仲直りすることができた。

海宝の肴

折尾屋に天狗の秘酒を届けた葵と葉鳥は、帰り道で笛の音を聞く。葉鳥から笛を吹くのは雷獣だと教えられ、関わらぬように忠告を受ける。旧館に戻り、炙りしめさば寿司と梅肉チーズのサラダ巻を作った葵は、ノブナガの導きで、傷ついた銀次をやしろで発見する。葵の手弁当で霊力を回復した銀次だが、乱丸も同じやしろで傷ついた姿で倒れていた。葵の料理で回復した乱丸に、葵は人魚の鱗を取って来るという約束をしてしまう。果物は魔除けになるということを大旦那に聞いた葵は、果物を使った甘味を作り、大旦那と一緒に竜宮城跡地へと向かった。銀次と乱丸を育てたという磯姫に出会った葵は、南の地の守護獣としての銀次と乱丸の役割などを知らされる。そして目的だった人魚の鱗を無事手に入れ、海宝の肴を手掛けるよう磯姫に託される。折尾屋に人魚の鱗を届けた葵は、乱丸に海宝の肴を作ることを申し出た。

声と味覚を奪われた葵

折尾屋の廊下を歩いていた葵は、雷獣と初めて対面する。雷獣の物言いに気持ち悪さを感じた葵は、表に逃げ出す。執拗に追いかけて来る雷獣は、君の料理は私には通用しないと言い、葵は戸惑う。その時、葵は口に飴玉のようなものを入れられてしまう。折尾屋に逃げ帰った葵は乱丸に助けられ、雷獣から逃れることが出来た。旧館で海宝の肴の試食会を開いた葵は、酒をひと口含んだとたん異変を感じ、そのまま倒れてしまった。雷獣のひねくれた策略によって声と味覚を奪われた葵。海宝の肴作りは鶴童子たちが引き受けてくれることになった。しかし雷獣に再び襲われた葵は、あやうく食われそうになった。その時、雷獣の苦手とする白夜が突然現れ、葵は雷獣から逃れることが出来た。白夜が招待した縫ノ陰様と律子様の持つ掛け軸の中に、蓬莱の玉の枝があると教えられた乱丸と葵。2人は蓬莱の玉の枝探索のために、掛け軸の中に旅立つこととなった。
葵の味覚が戻らないことを心配した銀次が、葵と乱丸に付き添い、3人で掛け軸の中への旅が始まった。旅の途中、雨に祟られたり、崖から転落して危うく命を落とす危険な目にも遭った。また、白夜が注意した通り、磯姫様の幻想が現れ、銀次と乱丸が一時錯乱状態になった。しかし3人が力を合わせてこれを乗り越え、遂に蓬莱の玉の枝を手にすることが出来た。

儀式と海坊主

乱丸に海宝の肴作りを申し出た葵は、乱丸から正式に任され、鶴童子たちと協力して作ることになった。雷獣の最後の嫌がらせによって、客で溢れかえった折尾屋は人手が足りず、儀式の執り行ないが危ぶまれた。しかし天神屋の大旦那の案により、天神屋の従業員たちが折尾屋を手伝うことになり、儀式は無事行われることになった。
儀式中、葵が御簾の中に見たものは、涙を浮かべた小さな子供のような海坊主だった。御簾を上げ、海坊主の姿を皆に見えるようにした葵は、海坊主の寂しさを癒してあげることこそが、自分の使命だと感じる。葵たちと一緒に海宝の肴を楽しみ、夜神楽を葵の膝下で観賞した海坊主は、「ありがとう」と感謝の言葉を残して、暗い海の彼方に帰って行った。葵も南の地での役目を終えて、銀次と共に天神屋に帰ることになった。

『かくりよの宿飯』の登場人物・キャラクター

人間

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