巨獣特捜ジャスピオン(特撮テレビ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

巨獣特捜ジャスピオンとは、1985年に放映された東映製作の特撮ヒーロー番組で、宇宙刑事ギャバンより始まる「メタルヒーローシリーズ」の第4作目である。銀河の野生児・ジャスピオンが超惑星戦闘母艦ダイレオンを駆り、宇宙の魔王・サタンゴースが操る巨獣、更には無法者のエイリアンらと宇宙を股にかけた戦いを繰り広げる。等身大ヒーローと巨獣の戦い等、野心的な試みが数多くなされた作品である。

名作回紹介

第1話「巨大怪獣の惑星」

古代銀河バイブルの預言通り、宇宙の魔王・サタンゴースが姿を現した。このままではサタンゴースの魔力で暴れ出した巨獣の為に、全銀河が滅んでしまう。予言者エジンは、惑星エジンで暮らす野生児・ジャスピオンにサタンゴースを倒す使命を与え、ここにジャスピオンの冒険の旅が始まる。最初の目的地は惑星・ビージー星。そこでは巨獣ハネダ―、マリゴスが住んでいたが、サタンゴースの魔力により凶暴化、暴れてしまう。ジャスピオンはメタルテックスーツを装着し、戦闘巨人ダイレオンを駆って凶暴な2大巨獣を見事撃破し、次の目的地へ旅立つのだった。

最初から最後までハイテンポなアクションと重厚な特撮スペクタクルの見せ場が満載となった一編。ダイレオン対巨獣の巨大戦もさることながら、等身大のジャスピオン対巨獣という従来の特撮作品ではあまり見られなかった映像も特徴的である。また、「スターウォーズ」を意識した、様々な星の人間が混在する異星人酒場の空気感も、本作ならではの特徴が出ていて面白い。

第23話「魔の手があやつる世紀の巨獣ショー」

元猛獣使いの矢田は、山奥で密かに巨獣シシオーンを育て、芸を仕込んでいた。巨獣探査の為、矢田に接触したジャスピオンは、シシオーンの存在を知るや、シシオーンを表に出さないようにと矢田に忠告する。しかし、シシオーンを凶暴化させようと企むマッドギャランは、再び名声を得たいという矢田の欲望につけ込み、巨獣ショーのテレビ放映という「エサ」を用意する。偽の巨獣反応でジャスピオンらをかく乱した隙に、まんまとシシオーンを表に出したマッドギャランらは、サタンゴースの魔力によりシシオーンを凶暴化させてしまう。矢田の事を思い、思うように手が出せずに苦戦するダイレオンだが、戦いの末、止む無くシシオーンをコズミック・クラッシュで葬るのであった。

巨獣も悪い奴ばかりではない、という本作の方針を示す一編。シシオーンに家族同然の愛情を注ぐ一方、自身のかつての夢であった猛獣使いへの復帰のため葛藤する矢田の姿が印象に残る。銀河宇宙の平和の為とはいえ、最後にシシオーンを倒さざるを得なかったジャスピオンの葛藤もまた、胸を打つものである。

第45話「俺はサタンゴースの息子だ」/第46話「手をつなぐ全銀河の人類たち」

強大な魔力によって東京を巨大なジャングルに変えてしまった大サタンゴースとマッドギャランは、日本を巨獣帝国に変える夢を実現すべく、邪魔なジャスピオンを倒す決意を改めて固める。一方ジャスピオンは、遂に5人目の「光に打たれし子供」・美加を発見する。そんな彼の前に姿を見せるマッドギャラン。遂に、ジャスピオンとマッドギャランの雌雄を決する一騎打ちが始まった。熾烈な死闘の末、渾身のコズミック・ハーレーがマッドギャランに炸裂する。致命傷を負ったマッドギャランは、最後の意地でサタンゴースと同じ姿となり、なおもジャスピオンに迫る。「俺もサタンゴースとなり、やがて大サタンゴースとなる!無敵の王者にぃ!!」だが致命傷を負っていたマッドギャランはその場に崩れ落ち、ついに果てる。子を失い怒る大サタンゴースと、ダイレオンの最後の戦いが今、幕を開けるのであった。
大サタンゴースとダイレオンの最後の戦い。しかし、「光に打たれし赤子」を見つけなければ勝機はない。一旦撤退し、赤子の捜索を行うジャスピオン達。エジンはその間足止めを行うべく、全生命力をかけて大サタンゴースと戦うが、健闘むなしく倒されてしまう。未だ赤子は見つからない。それでも何とかなるはずだと、光に打たれし子供たちは黄金の鳥を呼ぶ。黄金の鳥は黄金の剣に姿を変え、ダイレオンが剣を振るうが、なお大サタンゴースには通じなかった。万策尽きたと思われたその時、地中からまばゆい光に包まれた赤子が姿を見せる。赤子の力で大サタンゴースの動きが止まる。その隙に、最後の大技・ダイレオンコズミックハーレーが炸裂し、大サタンゴースはついに最期を迎えた。ジャングルになった東京も元の姿に戻り、全銀河に平和が戻った。ジャスピオンは光に打たれし赤子を「ターザン」と名付け引き取る。そして、一同はダイレオンに乗り、エジンの星へ帰っていくのだった。

第45話ではジャスピオンとマッドギャランの最後の死闘が迫力のアクションで描かれる。しかも一部のアクションは、電飾入りのアップ撮影用スーツ(アクション用スーツより見た目は良いが、重い分アクションが非常にし辛い)で行われているのだから驚きである。
そして最終回、大サタンゴースは息子・マッドギャランの、ジャスピオンは育ての親エジンの、それぞれの弔い合戦という構図が見事で、最終決戦を盛り上げる。また、なんといっても大サタンゴースを倒す最後のカギ「光に打たれし赤子」が最後の最後に登場し、それまでのジャスピオンのピンチを一気に吹き飛ばすという展開は、ヒーロー作品の王道といえる。そんな王道展開で、物語は堂々終焉を迎えたのだ。

本作の見どころ

大胆で派手な特撮の数々

熾烈で華麗なダイレオンのアクション

着ぐるみロボらしからぬ、空中回転まで飛び交う派手なアクション。本作の見どころの一つといえよう。

本作最大のハイライトといえば、巨獣と戦闘巨人・ダイレオンの戦闘シーンである。前作までの宇宙刑事シリーズより多額の予算がかけられた本作は、その分特撮に大変力が入っている。ダイレオン対巨獣の戦いもその一つであり、特に「吊り」を多用したダイレオンのアクションは今なお語り継がれるものとなっている。飛び蹴りや飛行シーンだけでなく、空中回転で敵の攻撃をかわしたり、果ては敵を抱えたまま回転してバックドロップを決めるなど、これまでの特撮の着ぐるみロボでは考えられないほどの身軽さを見せ、視聴者を熱狂させた。本作のノウハウは、スーパー戦隊シリーズ等に逆輸入され、アクションの向上に一役買う事となる。

ビデオ合成を積極活用した斬新な合成

迫りくる巨大隕石にパンチ一発で破壊。漫画的な演出が気持ちいい。

本作の特撮シーンは、多くの場面で「宇宙刑事ギャバン」より始まる宇宙刑事シリーズの撮影で定番となった、東通ecgシステムによるビデオ合成が行われている。上図に示すような、迫りくる岩石をパンチで破壊するシーンなど、ビデオ合成の使用箇所は宇宙刑事シリーズ以上に多くみられる。ビデオ合成により斬新なシーンの数々が生まれたが、一方でビデオ合成は「VTRでの撮影→フィルムに落とし込む」という工程を経るため画質が悪くなるという欠点があり、「本作の合成シーンがやや粗い」という批判の元となっている。

進化したアクションシーン

宇宙刑事シリーズより始まるメタルヒーローシリーズの売りの一つは、JAC(ジャパン・アクション・クラブ)による派手なアクションシーンである。本作は宇宙刑事シリーズを経て更にアクションに磨きがかけられており、映画のような幅広い画面をふんだんに生かした銃撃戦、スピーディーな剣劇、また吊りや合成を多用した空中戦など、そのバリエーションは多岐にわたる。特に若干の路線変更を経た後半は、等身大のアクションシーンに力が入れられており、視聴者を飽きさせない工夫がなされている。

『巨獣特捜ジャスピオン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

南米で絶大な人気を誇るヒーロー・ジャスピオン

日本での人気は今一つに終わった本作であるが、ブラジルでの人気は非常に高く、ウルトラマンや仮面ライダー以上の国民的人気を誇っている。
海外サッカー専門誌『週刊footballista』(ソルメディア)2007年1月10日発売号 (No.011)によると、ブラジルで凄いことをした日系人は「ジャスピオン」と呼ばれて賞賛されるそうで、サッカーで日系人選手が好プレーを行うと「よかったぞ!ジャスピオン」という声援があがるという。
特に30代前後の知名度は非常に高く、当時TVを見ていた者ならば知らない者はいないと言われる程の高い知名度で、度々再放送がされている。理由の一つとして、本作はブラジルに初めて輸入された、カラーの日本産TVヒーロー作品であったため、ブラジル人の印象に残ったものと考えられる。
リオオリンピック閉会式において日本文化が紹介された際にも、ブラジル人による「日本ならばジャスピオンはないのか?」というtwitterでの反応が多くみられたところからも、本作の強い人気が伺える。

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