ワイルドアームズ(WA)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ワイルドアームズ(WILD ARMS)』とはメディア・ビジョンが開発したPlayStation用のゲーム作品。1996年12月20日にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)より発売。略称は「WA」。ジャンルはロールプレイングゲーム(RPG)。荒廃した大地が広がる惑星「ファルガイア」を舞台に、荒野を冒険する「渡り鳥」と呼ばれる3人の主人公達と、異世界からの侵略者「魔族」との戦いの物語を描いた作品で、壮大な世界観と個性溢れるキャラクター、深く練り込まれたストーリーが魅力となっている。

最後の封印の神像まで壊されてしまい、マザー復活を阻止できなかったが、ファルガイアを守るため涙のかけらを取り戻し、マザーを討伐することを新たに決意した一行は、魔族の居城フォトスフィアを目指して再び旅立つのだった。

その頃、フォトスフィアでは「ナイトクォーターズ」と呼ばれる4人の魔族の幹部、ジークフリード、ベルセルク、アルハザード、レディ・ハーケンが集まっており、彼らの目の前で遂に魔族の盟主マザーが復活を遂げる。復活したマザーはファルガイアを破壊するために行動するよう命令をするが、ナイトクォーターズのリーダー格であるジークフリードは、自分達の故郷であった「魔星ヒアデス」の代わりとなるファルガイアを第二の故郷として支配するために行動していたのではないのかと問いただす。しかしマザーは、「あの頃はお前達が生まれたばっかりだったから知らないのも無理はないが、ヒアデスを滅ぼしたのも自分である」と語る。自分達の故郷を滅ぼしたのがマザーであることを知ったジークフリードは「では、ファルガイアを滅ぼした後は我らはどうなるのか」と更に問うが、「いずれはお前達も自分が喰らってやる、母である自分がお前たちの命を喰うというこれ以上の幸せはあるまい」とマザーはあっさり告げたのだった。

マザー討伐を目指して

一行はフォトスフィアがある北の大陸「アークティカ」の地へ向かうことができる船を探すために、「船の墓場ヤード」という町へ辿り着く。船を待つ間、一行は町に住む「ダン」という男から、自分が渡り鳥だった頃に妻と挑んだ遺跡から、妻の形見を見つけてほしいという依頼を引き受ける。どうにか見つけることができた形見のブレスレットをダンへ届けると、ダンは「あの頃の自分は『勇気』と『無謀』を取り違えていた」「本当に守りたいもののために、今の自分を超えるために振るう力こそ『勇気』と言えるのではないか」と語る。彼の言葉に何か思うところがあったのか、ザックの心の中に今まで気付かなかった「勇気」の側面が刻み込まれていた。

依頼を完了した後、ヤードの波止場に交易船が来たとの知らせを聞き、向かってみるとそこにはスィートキャンディー号が到着しており、一行はバーソロミューと再会を果たす。話を聞いてみると、商売の途中で港に立ち寄ったところ、幽霊船の騒ぎに巻き込まれてしまって困っており、幽霊船を退治してほしいとのこと。バーソロミューからの依頼を受け、幽霊船の魔物を退治した一行は、バーソロミューからのお礼により、彼の船を自由に使わせてもらうようになった。こうして内海を自由に行き来できるようになった一行は、旅の道中、裕福な人々が住む町「タウン・ロゼッタ」に立ち寄る。

住民の話を聞くと、タウン・ロゼッタの町長が病で倒れてしまい、その原因は何十年も町外れの小屋に住んでいるエルゥの少女「マリエル」の呪いによるものだという。町外れの小屋を訪ねると、一行はマリエルと会う。マリエルがファルガイアに残った最後のエルゥであること、ファルガイアの大地に償いをするために花を咲かせようとしているという話を彼女から聞いていると、町の子供達がマリエルの畑を荒らしにやってくる。マリエルを庇い子供達を追い払うと、彼女から「町長の病気が『仙草アルニム』という薬草を使えば簡単に治ると知っていたが、近づけば酷いことをされるんじゃないかと思いずっと黙っていた」ことを告げられる。話を聞いた一行は、マリエルと一緒に薬草が咲いている「聖森の塚」に向かう。薬草を見つけると、後ろからつけてきた町の子供達が現れる。塚の花を荒らそうとする子供達にマリエルは抵抗すると、子供達の1人がマリエルを突き飛ばしてしまう。それを見たロディは突き飛ばした子供を叩く。
「町長の息子であるオレを殴りやがったな」と喚く子供だったが、「マリエルはお前の親父のために薬草を摘みに来たんだ」と告げるザックとセシリアに悪態をつきながら去っていった。「今まで優しくされたことがなかったからどうしていいのか分からない」と言うマリエルにロディは咲いていた薬草を手渡す。それを受け取ったマリエルは、ロディ達とともに町長のもとへ行き薬草を手渡した。「そのエルゥが自分に呪いをかけたとの噂があるのに、病気を治すための薬草を持ってきたことを信じろというのか」と戸惑う町長に「この子がどんな思いで薬草を採ってきたかを聞いてみるといいわ」と話すセシリア。町長の家を出ると、マリエルは「自分も変われる気がする」と言い残し、1人で小屋へと帰っていった。

マリエルと別れ、町を出発しようとしていたところ、以前ケイジングタワーで出会ったジェーンとマクダレンと再会し、儲け話があると話しかけられる。どうやらここ最近、1000年前の大戦に使われた伝説の魔剣「ガーディアンブレード」が、内海の小島に建つ古代遺跡「ヴォルカノントラップ」で封印されているとの噂が流れ始めたとのこと。何故今頃そんな噂が流れ始めたのかは気になるが、ガーディアンブレードには興味は無く、遺跡の奥にあるお宝が目当てのため、一緒に手を組まないか相談に来たと語るジェーン。一行はその依頼を受け、ジェーン達とともにヴォルカノントラップへと向かった。

遺跡に入り奥に進んでいくと、大量の宝が置かれた宝物庫を見つける。目的の場所に着いたジェーンと一旦二手に別れ、一行はガーディアンブレードを探して更に遺跡の探索を続ける。すると、行き止まりとなっている部屋を見つけるが、突然壁を壊して以前戦った魔族ゼットが現れる。再び対峙するが、今回も勝利を収めると、捨て台詞を残してゼットは立ち去って行った。その後最深部へ進むと、そこにはベルセルクが待ち受けていた。実はガーディアンブレードの情報は、ロディ達をおびき出すために流した罠であり、本物のガーディアンブレードは1000年前の大戦時に消滅していたのだ。ベルセルクは遺跡に設置されたエネルギー増幅装置を利用して自身を強化し、ロディ達を完全に倒そうとするが、突然増幅装置が本来とは正反対の挙動を起こし、ベルセルクからエネルギーを吸収し始める。実はエネルギー増幅装置は、お宝があった部屋に設置されていたのだが、偶然ジェーンが怪しいという理由で壊していたのだ。本来の力が発揮できず、弱体化してしまうベルセルクだったが、ナイトクォーターズの1人として、残った力でロディ達に戦いを挑む。しかし弱体化の影響は大きく、激闘の末、ベルセルクは敗北し、その場から姿を消した。何とか逃げ出すことができたベルセルクは、謎の魔族によって殺されていた。その魔族はベルセルクを倒した人間であるロディ達に「自分と同じ高みに登ってくるがいい」と呟き去っていった。ベルセルクを倒してジェーンと合流するロディ達だったが、増幅装置を破壊したことが原因となり遺跡が崩壊し始める。入口に向かって走っている途中、ジェーンが揺れによって転んでしまう。転んだ拍子にお宝を落としてしまった彼女は慌てて拾い集めていると、頭上から瓦礫が落下してくる。それを見たロディは咄嗟にジェーンを庇い、彼女を救出する。助けられた代わりにお宝が瓦礫に潰されたことで文句を言うジェーンだったが、「あの状況ではお嬢様が潰されてた」と言うマクダレンの言葉で冷静になり、改めて助けてくれたロディにお礼の言葉を呟いたのだった。

一方、ベルセルクが倒されたことを知ったナイトクォーターズが、ベルセルクが抜けた穴をどうにかしようと考えていたところ、マザーは「新たなメンバーを呼び寄せている」と言い1人の魔族を呼ぶ。それはヴォルカノントラップでベルセルクを殺した「ブーメラン」という魔族だった。彼は「同族殺し」「処刑人」など、数々の二つ名を持ち、ジークフリードからは騎士に相応しくないと嫌われていたが、マザーは既にブーメランをナイトクォーターズの新たな一員にすることを決めており、ジークフリードの頼みは聞き入れなかった。マザーの決定には逆らうことができないジークフリードは、仕方なく命令に従った。そしてマザーより守護獣に導かれし人間の始末を命じられたブーメランは、早速行動を開始するのだった。

セシリアの呼びかけに反応し、遺跡で眠っていたゴーレム「アースガルズ」が目覚める。

ジェーン達と別れ、再びアークティカの地を目指して旅を続ける一行は、内海のある島にある「巨人のゆりかご」というダンジョンを探索していた。最深部に辿り着くと、そこには一体のゴーレムが眠っていた。そのゴーレムを何とか自分達の力にできないかと考えるザックに対し、セシリアは「再び戦いのために目覚めさせるのか」と反論するが、ザックは「剣は敵を斬るため、槍は敵を突くためにある」「優しさはこの世界にとって貴重なものだが、こんな世界だから半端な優しさは甘さになりかねない」と語った。どちらにしろ今のままでは何もできないと判断した一行は、アーデルハイドからエマ博士を連れてくることに。エマ博士を呼んで調査を進めた結果、ゴーレムは「アースガルズ」という古代語で「神々の砦」を意味する名前であること、アースガルズは停止しているだけで生きており起動することはできる状態だということ、色々試したがアースガルズを起動する方法は分からないということを知る。引き続き調査を進めることにした一行は、巨人のゆりかごで一晩過ごすことにする。

皆が寝静まった頃、セシリアはアースガルズに自身の生い立ちや境遇を話し始めた。「皆は私を必要としてくれているが、それは『公女』としての自分であって、私自身は誰からも愛されてないの」と語るセシリアは、公女として必要とされている自分と、兵器として必要とされているアースガルズを重ねていたのだ。するとセシリアの言葉に反応したのか、アースガルズが目覚めようとする。しかしこのままではまた兵器として扱われると考えたセシリアは「このまま眠っていてほしい」とアースガルズの目覚めを止めようとするが、「私の声だけでなく…小さく息吹く生命の声も聞こえるのなら、戦火の向こうに悲しむ人々が見えるのなら、その時は…あなたの意志で目覚めて…」と言うと、一度は再び眠りにつこうとしたアースガルズが、完全に起動し、自らの意志で歩き始めたのだ。エマ博士やロディ達も目を覚まし、突然起動したアースガルズに驚いていたが、同時に強力な戦力を手に入れたことに喜んだ一行は、アースガルズに乗り目的の地、アークティカへ辿り着いたのだった。

雪で覆われたアークティカにて魔族の本拠地フォトスフィアを発見するが、フォトスフィアの周囲には「ソルデリーター」というバリアが展開されていたため、乗り込むことができなかった。やむを得ず一行は、雪の大地を抜けた先にある村「コートセイム」へ足を踏み入れた。その村に住むARMマイスターの「ニコラ」のもとを訪ねると、彼から自分はかつて6人の仲間とともに「ゼペット・ラグナイト」という人物に古代機械の研究を教わっていたことを知る。その話を聞いたロディは、ゼペットが自分の祖父であり今は亡くなっていること、ザックやセシリアと出会う前の過去にゼペットとともに旅をしていた頃の話を語る。その時、彼らのもとにジェーンが現れる。実はコートセイムは彼女の故郷でもあり、何とニコラはジェーンの父親であったのだ。ジェーンがカラミティー・ジェーンという渡り鳥として活動していることを知らないニコラは、ロディ達と知り合いなのかと尋ねるが、慌てて誤魔化したジェーンはその場を立ち去った。ジェーンが去った後、ニコラは村から南東の場所に「風の海のエピタフ」というかつて師ゼペットと6人の仲間達と飛空機械の研究をしていた塔のことを教える。

塔へ向かい探索をおこなっていると、「ワルプルギスの夜」という飛空機械の研究について記された本を見つける。すると一行の前に守護獣「ルシエド」が姿を現す。彼に案内された先にはブーメランが待ち構えていた。そしてルシエドはブーメランの傍につき、一行に敵意を向けていた。本来ファルガイアを守護する存在であるはずのルシエドが敵であるはずの魔族の味方をしていることに驚きを隠せないセシリア。ルシエドは「欲望」を司る守護獣であり、ブーメランが持つ強い欲望に惹かれて魔族側についていたのだ。これまで出会った魔族と何かが違うことを感じた一行は、ブーメランとルシエドと対峙する。抜群のコンビネーションを発揮する2体に圧倒されるもどうにか退けることに成功すると、「俺を倒すには万に一つの可能性にかけるしかない」と言い残しブーメランは去っていった。彼が去った場所には「ルーンドライヴ」と呼ばれるエネルギー増幅装置が置かれており、それを回収した一行はコートセイムへ帰った。

コートセイムへ戻り、ルーンドライヴをニコラに見せた一行は、彼が主催するパーティーに参加することになる。村の子供達も集まり美味しい食べ物を食べたりしながら安らぐ時間を過ごしている最中、ロディはジェーンから「話があるから皆が寝静まったら抜け出してほしい」と誘われる。
約束通り、ジェーンに会いに行ったロディは、彼女からカラミティー・ジェーンはコートセイムの孤児院を経営するために賞金稼ぎになったことや、かつては裕福だったがニコラが孤児院を経営してからお金が一気に無くなり、気がついたら今の生活を送るようになっていたことを語る。そんな自分をカッコ悪いと言うジェーンの言葉に首を横に振るロディ。ジェーンはロディにありがとうと言った後、何のためにファルガイアを守る旅をしているのかを問う。
続けて彼女は「何でもいいから世界を守るためだなんて優しいことは言わないで、誰のためでもないことに優しさを向けられるなんて、そんなのイヤだよ」「約束してよロディ…ファルガイアを守るのは、ファルガイアが大好きだからって」と言う。ロディがジェーンの言葉を黙って聞いていると、2人の前に突然アルハザードが現れ、村の人間の命と引き換えに、ニコラが持つルーンドライヴを3時間以内に渡すよう要求し再び姿を消した。
ロディとジェーンは急いで村の人間を全員起こした後、状況を説明する。ニコラが持つルーンドライヴは、南の森に隠された「結界のほこら」に安置しており、そこではモンスターの侵入を防ぐバリアが張られているのだ。村の人間を守るため、ニコラは住民を連れて結界のほこらに避難することを決め、ロディ達はアルハザードを迎え撃つため村に残ることにした。ところが約束の時間を過ぎても、アルハザードが村に現れることは無く、嫌な予感を感じた一行は結界のほこらへと向かった。

安全なはずのほこらでは、既に結界が破られており魔獣や魔物が暴れまわっていた。ほこら内を調査していたロディ達は、ほこら内にいた犬が魔獣化する光景を目の当たりにする。その魔獣を討伐したロディ達はジェーンやとマクダレンと協力し、散り散りになった村の人間達から話を聞いていると、ハンペンは魔獣達がどうやってほこらに侵入することができたかに気づく。以前、セント・セントールという町でも今回のほこらの時と同じく、結界を張っていたにもかかわらず魔獣に侵入される事件が起きていた。その結界はハンペンのような亜精霊にも反応し、初めてロディ達が町を訪れた時にも作動していたが、ハンペンはザックの身体に密着することで町の中に入ることができていた。そしてそれは、人の反応に紛れ込めば魔獣や魔物は、結界の中に侵入することができるということを意味していた。
つまり、結界のほこらに出現した魔獣や魔物は、人と一緒にほこらに入ってきたのだが、犬が魔獣化するところを見たことで、ハンペンはほこら内にいる魔獣や魔物は、村の人間が姿を変えたのだと確信した。すると何処からかアルハザードの声が響き始める。アルハザードはハンペンの推測に感心すると、魔獣達を魔法で種子化したものを人間の体内に埋め込んでいたことを語る。種の状態では魔獣達の反応は非常に弱くなり、人間の身体に隠してしまえば、結界は反応しなくなり簡単に侵入することができる。そしてアルハザードが命令を送るだけで種は発芽し、人間を体内から食い破って魔獣や魔物の姿に変えさせて、結界を内側から破壊したのだ。
かつてアルハザードが語っていたセント・セントールでの実験はこのことであり、さらにアルハザードは、「魔族の身体の構造は物質は異なるが人間に近く、魔族は『生きている鉄の塊』で、異なる世界、異なる人間であるため、結界は通じない」とも告げた。
全てを語り終えたアルハザードはルーンドライヴを奪うべく襲い掛かってきた。どうにか撃退したロディ達は、一度コートセイムに戻る。ニコラは守り抜いたルーンドライヴをアースガルズに組み込む。本来の出力を取り戻したアースガルズは、「対消滅バリア」というバリアエネルギーを相殺する力を得る。これにより魔族の居城であるフォトスフィアのバリアを消滅させることに成功した一行は、ついにフォトスフィアに乗り込むのだった。

フォトスフィアを進んでいると、一行の前に青いローブを着た怪人が現れ、涙のかけらのもとへ案内すると言ってくる。彼はフォトスフィアの浮上準備が進められていること、自分の目的がロディ達と同じくマザーを討つことであること語り、共通の目的がある間は敵対するつもりが無いと言う。怪人の言葉を疑いながらも案内に従って進むと、そこには彼が言った通り、涙のかけらがあった。セシリアはついに涙のかけらを取り戻すことに成功するのだった。すると一行の前に再び怪人が現れ、「涙のかけらによってフォトスフィアは動力を得ている、同時に膨大なエネルギーを喰らうマザーも涙のかけらによって生命を維持しているのだ…その動力源を失った今の状態ならマザーの力も大きく低下している」と告げる。そして「自分にできるのはここまでだ」と告げた後、怪人は姿を消して去っていった。

フォトスフィア最深部にて、ロディ達と対峙する魔族の盟主マザー。

フォトスフィアの最深部に辿り着いた一行は、魔族の盟主マザーと対峙する。激しい戦いの末、ついにマザーを倒すことに成功するが、戦いが始まる前に浮上していたフォトスフィアが、マザーの制御を失ったことで海面に墜落してしまう。水没を始めたフォトスフィアから脱出する術が無く、窮地に陥っていると、ジェーン、マクダレン、バーソロミューの3人が現れる。ロディ達の危機を感じた3人は、スイートキャンディ号で救出に来てくれたのだ。内海に沈むフォトスフィアから脱出した一行は、涙のかけらを取り戻し、マザーを討伐したことでようやく戦いが終わったのだと思い始める。

しかしそんな彼らの前に、アルハザード、レディ・ハーケン、ブーメラン、そしてフォトスフィアで出会った青いローブを着た怪人の正体であるジークフリードが現れる。ジークフリードは「ファルガイアをいただき、守護獣を殲滅する」と一行に向けて宣戦布告をしてきたのだった。

動き出したナイトクォーターズ

ナイトクォーターズによる宣戦布告から数日後、アーデルハイド城ではエマ博士がロディやジェーン達を集め魔族に対抗するために自警団を結成することを宣言する。自警団はロディ、ザック、セシリアの3人で編成した第一部隊、バーソロミューとスイートキャンディ号による海上移動のバックアップ、ジェーン、マクダレンの2人は遊撃兼情報収集を目的とした第二独立部隊、エマ博士と彼女の助手達による後方支援と役割が決められ、それぞれ行動を開始することになった。

ロディ一行は、タウンロゼッタ付近の内海と外海を繋ぐ海峡に大きな渦潮が存在しており、そこが「海の守護獣ルカーディア」が住む宮殿への入口となっているという情報を得る。早速渦潮へ向かうと、セシリアが持つ涙のかけらが輝きを放ち、一行を海の底に存在する宮殿「深海の竜宮」へと導いた。宮殿で待っていたルカーディアに会い、「エルゥのほこら」によって星の命が辛うじて保たれていること、世界中に張り巡らされた命のネットワーク「レイライン」というファルガイアの血管ともいえる地脈が存在するという話を聞いていると、一行の前にレディ・ハーケンが現れた。高い実力を持つ彼女に苦戦を強いるが、ハーケンは突如身体の自由が効かなくなったと言い、勝負を預けて去っていった。残されたルカーディアの力を得ると同時に、海峡の渦潮が消えたことで外海へと移動することができるようになった一行だが、ザックは以前から感じていた自分と同じ早撃ちの技を使うハーケンへの疑問をより強めるのだった。

一行はバスカー集落の里長から生きる者の心を司る上位の守護獣である「貴種守護獣(ガーディアンロード)」の情報を得て、3体の貴種守護獣が眠るという「堕ちた聖域」へと向かうと、そこでブーメランとルシエドの2体と再び戦うことになる。どうにか2体を退けた後、貴種守護獣との接触を試みるが、人々の心から「愛」「勇気」そして「希望」が失われてしまった今のファルガイアでは、心を司る3体の貴種守護獣は力を発揮することができず、その意志だけが石像と化していた。

その後、絶海の孤島にある魔族の拠点「デモンズラボ」にて、アルハザードがファルガイア中から多くの人間を攫い、非人道的な実験を繰り返しているとの情報を得る。デモンズラボに乗り込み最奥へ進むと、そこには「ダークネスティア」と呼ばれる黒い結晶と、それを守るためにレディ・ハーケンが待ち構えていた。お互いの太刀筋に見覚えがあると感じるザックとハーケンは、再び刃を交える。戦いの末、ハーケンは敗北し「ザックの力を見届けさせてもらった」と告げる。直後、ハーケンは人間の女性の姿となって倒れだす。その姿を見て激しく動揺するザックの前に、アルハザードが姿を現しハーケンとダークネスティアをどこかへ消してしまう。「ダークネスティアもハーケンもまだ引き渡すわけにはいきません。なんでしたら追いかけてきなさい、あなた方の努力というものがいかに無駄であるかをお教えしましょう」と言い残し、アルハザードもまた姿を消した。ザックは「俺の復讐は何のため…何に対する復讐だったんだッ!?あいつの剣技…何でもっと早く気付かなかったんだ…」と自分を責め始めていた。姿を変えたハーケンは、彼がよく知る女性だったのだ。しばらくしてようやく落ち着いたザックは仲間達に「時が来たら、全て自分の口から話す」と誓い、改めて魔族達を追い始めるのだった。

デモンズラボから出ると、突如アーデルハイドを襲った空の亀裂が上空に出現し、一行はジークフリードの策略によって「ゲートジェネレイター」と呼ばれる空間を超越するための装置へ引きずり込まれてしまう。ジェネレイター内で幾度となく現れるゼットの妨害を突破すると、最奥で待ち構えていたジークフリードのもとへ辿り着く。ジークフリードとの戦いが始まり、激闘の末ロディ達はジークフリードを追い詰める。自分と互角に渡り合うロディ達に驚愕するジークフリードは、傍にいたゼットにジェネレイターの出力をフルドライブさせることを命じる。そんなことをしてしまうと疑似ブラックホールが発生し、次元の狭間に飛ばされてしまうため自分達も危険な状況となることを危惧するゼットだったが、「私は必ず生き残る、何故なら私はこの世界を支配する王だからこんなところで死ぬはずが無い」とジークフリードは構わずゼットに命令を続ける。そうするしかないと判断したゼットは命令通りジェネレイターを操作し始める。それを止めようとするロディだったが、ジークフリードが放ったワイヤーによって動きを封じられてしまう。ロディを援護しようとするザックとセシリアは、操作を終えたゼットに妨害されていた。するとジェネレイターは暴走を始め疑似ブラックホールが発生する。「もはや逃れる術は無い、私と共に次元の狭間の旅行を楽しもうじゃないか」と笑うジークフリードだったが、次元の狭間に飲み込まれる寸前、ロディは動きを封じるワイヤーの拘束から逃れるため、自身の左腕を斬り落とし、ジークフリードはそのまま次元の狭間へ飲み込まれていった。倒れるロディのもとに駆け寄ったザックとセシリアだが、ブラックホールは次第に大きくなりその場に居た全員も飲み込んでしまう。
その時、セシリアが持つ涙のかけらが輝きを放ち、気が付くとアーデルハイド付近に転移されていた。「皆で一緒に帰るんだ」と願いアーデルハイドの姿を心の中で強く思い描いたことで空間がその近くに繋がり、助かることができたのだと言うセシリア。
ザックとセシリアは立ち上がり、腕を失って苦しむロディのもとへ駆け寄るが、ロディの怪我を見た瞬間、2人は驚愕の表情を浮かべる。ロディの腕の切り口から見えたのは、金属と水銀の血であり、ロディは魔族と同じく機械の身体であった。その事実に動揺するセシリアにザックは「こんな時だからこそ俺たちがこいつを支えてやるんだ」と言う。落ち着きを取り戻したセシリアは、機械に詳しいエマ博士なら頼れると考え、ザックと共にロディを連れてアーデルハイドへ向かうのだった。

一方、次元の狭間に飲まれたジークフリードは、かつての本拠地であったフォトスフィアのマザーがいた玉座に放り出されていた。忌み嫌っていたマザーの玉座とはいえ、どうにか次元の狭間の亡者にならずに済んだと安堵するジークフリード。だが消耗が激しいのか這いつくばりながら移動しようとしていたその時、誰もいないはずの部屋からジークフリードがよく知る気配と笑い声がした。嫌な予感がし、その場から逃げようとするジークフリードだったが、気が付くと彼の背後に巨大な肉の塊が出現していた。「これはいったい…何の悪夢なんだ…」そう呟くジークフリードを肉の塊は、「カワいい、ジー…ク…こレかラはわラわといっしョ…」と囁きながら巨大な口を開けて覆いつくした。

ロディの正体

エマ博士のもとで治療を受けるロディのもとにはジェーンやバーソロミュー船長達も集まっていた。ところがロディの傷はエマ博士でも手が付けられない状態となっていた。ロディの身体は全てが人間と同じ構造だが、根本的に異なるのがそれらは機械によって造られており、まるで伝承にある魔族の身体構造にそっくりだった。しかしエマ博士は、ロディは魔族ではなく、おそらく1000年前の大戦期に対魔族用の兵器のひとつとして人の手によって造られた太古の遺産なのではないかと推測し、人間では到底不可能なほどARMとの異常なシンクロ率が何よりの証拠であると語るが、同時に何故機械なのに痛みを感じる機能が備わっているのかと疑問も抱く。しかしジェーンは「そんなことはどうでもいいッ!」と叫び、大切なものの力になれないことに無力感を抱いていた。軽率だったと反省するエマ博士に「どういう理屈かは分からないが、ロディの身体には薬草や回復魔法で癒せる。タウン・ロゼッタにいるマリエルの薬草ならあるいは…」と言うザック。それを聞いたエマ博士は「まだ諦めるのは早い」と言い、その場にいた全員にそれぞれの役割を告げ、ザックとセシリアはロディを連れてタウン・ロゼッタへと向かった。

タウン・ロゼッタでロディの姿を見て動揺するマリエルにザックとセシリアはこれまでの経緯を話した。話を聞き終わったマリエルは、ロディの身体を「命ある金属」と呼んだ。それは1000年前にエルゥと人間が犯した罪のひとつであり、金属でありながら生きている魔族を模した肉体。神の領域に踏み込んだ過ちであると。「今のファルガイアでは命ある金属は造れず、ロディの左腕を治すことはできない」「だけど1000年前と同じ世界ならあるいは…」と話すマリエルは、ザック達を聖森の塚へと案内した。

聖森の塚の奥には、1000年前の大戦後にファルガイアを捨てて去っていったエルゥ達が作った異空間を漂う浮島「エルゥ界」へ繋がる転送装置が設置されていた。その装置を起動させるためには、エルゥの想いと命が必要だと言うマリエルは、自分の手を傷つけて装置を起動させた。一行がワープした先はエルゥ界側に存在する聖森の塚だった。出血が酷いマリエルを急いで手当するために塚の出口を目指していると、転送装置の起動を察知して駆けつけたエルゥ達に見つかり、エルゥ界に存在する唯一の村「タージェン村」へ連れて来られる。そこで長老「フルカネルリ」と出会ったザックとセシリアは、ロディの命を救ってほしいと頼むと、フルカネルリは1000年前の大戦でエルゥと人間の魔道士が呪われた技術を編み出し、「ホムンクルス計画」という捕らえた魔族の身体をベースとし生きた金属による人造生体の開発を行ったことを語る。人間に近い姿をし、如何なる環境にも適応するサバイバル能力を確立させる他、自己判断や分析が可能なだけでなく、推論レベルにまで高めた感情を持った人工知能、そして様々なARMとのシンクロを可能とする精神構造を持つ存在、それがホムンクルスだと。
しかし、ホムンクルスは危険な殺戮兵器として暴走してしまったことで全て破壊され、試験体として残っていた1体は地の底に封印されたという。そしてその封印された試験体こそがロディの正体だったのだ。ザックとセシリアはロディは殺戮兵器ではなく、誰よりも優しい心を持った少年だと言う。かつて封印したホムンクルスが純粋な心を持ったことに驚くフルカネルリだったが、既に自分達にはホムンクルスを再び造る技術は無いと告げる。悲観するザックとセシリアのもとにマリエルがフラフラになりながら現れる。彼女は自分の兄「バシム」が造るガーディアンブレードの力ならばロディの腕を治せるかもしれないと告げるが、フルカネルリは反対する。

1000年前の大戦に使われたガーディアンブレードは、制御できない巨大な力で魔族のみならず、ファルガイア全体にダメージを与えて消滅した。そしてガーディアンブレードを造ったバシムは罪人としてタージェン村から隔離された場所で暮らし、マリエルは兄の罪を償うためにたった1人でファルガイアに残ったのだ。もう二度と同じ過ちを繰り返してはならないと考えるフルカネルリにマリエルは強く説得を続け、ようやく許可を得てバシムが住む工房の場所を教えてもらう。

工房に着いた一行は、バシムにガーディアンブレードを造りロディを治してほしいと頼むが、もう一度かつての過ちを繰り返したくないバシムは反対する。しかしそれでも説得を続ける皆と、マリエルが以前と比べて強くなったと感じたバシムは、再びガーディアンブレードを造りロディの治療を行うことを決意する。ガーディアンブレードを造るためにはエルゥ界に存在する魔獣が封じられた森「フォレストプリズン」に囚われている「生命の守護獣」とファルガイアのどこかに存在する禁書「デ・レ・メタリカ」に封印されている「魔の守護獣」の力を借りる必要があるとのこと。各地を巡り2体の守護獣を力を得ることに成功したザックとセシリアは、バシムのもとへ戻る。2体の守護獣の力を得てバシムは完璧なガーディアンブレードを完成させると、ロディの左腕へガーディアンブレードを移植する手術を行った。手術は半日以上に渡り行われ、移植手術は無事に成功したが、バシムによると目を覚ますかはロディの心の強さ次第であるとのこと。
セシリアはロディが目を覚ますことを祈り、彼の傍で語りかけていた。ある時、セシリアは不思議な夢を見るが、それは自分が見ている夢ではなくロディが見ている夢だと気付く。自分の正体を知り、心を閉ざしたロディが逃げ込んだのは幼い頃に祖父ゼペットと旅をしていた頃の思い出の世界だった。夢の中のゼペットはロディに「お前はいつでもわしのところに逃げ帰ってくればいい」と言うが、セシリアは「皆があなたが帰ってくるのを待っている。ロディはロディなの、他の誰でもない大切な仲間なの」と呼びかける。すると夢の中のゼペットは突如姿を変えセシリアに襲い始める。それはゼペットではなく、心を喰らう夢魔「エリザベート」だった。夢魔を倒したセシリアは、崩壊する夢の世界でロディに「心を強く持ってッ!ロディッ!ロディは孤独じゃない、誰かを大切に思えるあなたは誰からも大切に思われているあなたなのよ」と言う。同時にセシリアはアーデルハイドの公女としてしか見られていないと思っていたが、自分の身勝手な思い込みの壁が周りの人を遠ざけていたことに気付く。「誰かに愛されたいと思うのなら、まずは自分が誰かを愛することから始めないといけない」と本当の愛に気付いたセシリアの想いの叫びが届き、愛の貴種守護獣「ラフティーナ」が覚醒するのだった。

セシリアが眼を覚ますと、ベッドに眠っていたロディの姿が見当たらず、慌てて周囲を見渡すと彼女の近くにロディが立っていた。そのことに気付いて駆けつけたザックやマリエル達も、ロディが目を覚ましたことに喜び、一行はバシムと別れてファルガイアへ帰った。ファルガイアに戻ったマリエルは「罪の償いではなく自分の願いとしてもう一度ファルガイアの大地に花を咲かせたい」と言い、一行と別れてタウン・ロゼッタへと帰るのだった。

ダークネスティア

聖森の塚から出るとジェーンが一行を迎えに来ていた。彼女によると一行がエルゥ界に滞在している間エマ博士が飛空機械を完成させたとのことで、もうすぐ試験飛行が始まるため迎えに来たとのこと。試験飛行のパイロットにはバーソロミュー船長が選ばれたが、まともに操縦する訓練すら受けたことがないことに加えて高空の気流の勢いを超えることができないほど飛空機械の出力が不足していたため、あっけなく墜落してしまう。バーソロミュー船長を病院に送った後、エマ博士は一先ず飛空機械の試作品である「プロトウイング」を完成させ、ロディ一行とジェーン一行の2つの部隊にプロトウイングをパワーアップさせるために必要な「ジェミニサーキット」を手に入れるよう告げる。
エマ博士によるとプロトウイングの出力を増幅させるジェミニサーキットは2つ必要とのことで、ロディ一行は「ジェミニの亡骸」と呼ばれる古代遺跡に行きジェミニサーキットの1つを手に入れる。同じ頃、もう1つのジェミニサーキットを回収したジェーン一行はスイートキャンディ号に乗ってアーデルハイドに帰還していたところ、内海で巨大な怪物の襲撃に遭っていた。ジェーン一行や船員達は無事だったものの、怪物によってスイートキャンディ号は沈没されてしまい、ジェミニサーキットも海に沈んでしまう。プロトウイングの強化は一旦先送りにして海に沈んだジェミニサーキットの捜索のため、ファルガイア中を探し回っていると、内海の漂流物が流れ着く船の墓場ヤードにて、流れ着いていたジェミニサーキットを発見することに成功する。こうして揃った2つのジェミニサーキットと、エマ博士によって呼び出されたニコラを含むかつてのゼペットの教え子達の手によってプロトウイングの完全版、神鳥の翼「ガルウイング」が完成するのだった。

魔族の切り札ダークネスティアがついにその力を発動する。

険しい山に囲まれた場所に魔族の重要拠点「パンデモニウム」があることを知った一行は、ガルウイングで向かう。中に突入するとアルハザードと対面するが、仕掛けられた罠によって、ロディ達3人はバラバラの牢屋に閉じ込められてしまう。しかしザックが閉じ込められた牢屋の壁に僅かな抜け穴があり、ザックと共に牢屋に入れられていたハンペンは、その抜け穴から外に出て3人が閉じ込められている牢屋の鍵を解除することに成功する。合流した3人が先へ進むと、着いた先には以前デモンズラボに設置されていた黒い結晶ダークネスティアが存在しており、その中にはレディ・ハーケンが取り込まれていた。するとどこからかジークフリードとアルハザードの声が響き始める。次元の狭間から生還していたことに驚く一行に対し、ジークフリードは「お前達はそこで指をくわえてみているがいい…ダークネスティアが放つ黒い輝きがファルガイアの各地を引き裂くさまをな」と言う。ダークネスティアは涙のかけらの効果を反転させて負の生命エネルギーを生み出すことができ、その生命エネルギーをエルゥのほこらの転送機能を使ってファルガイア各地に照射する。その結果、守護獣達の力のネットワークであるレイラインは寸断され、ファルガイアは死の大地に変わってしまうのだ。
世界の支配が目的であったはずのジークフリードが、何故かつて彼が嫌ったマザーのように世界を滅ぼそうとしているのかと問いかけるセシリア。その質問にジークフリードが答えずにいると、「レディ・ハーケンも元は人間の女、子を産むことができるのが女の身体ならばそれこそまさに生命力の源…」とアルハザードが言う。負の生命エネルギーを精製するためにハーケンがダークネスティアの触媒にされていたことを聞いたザックは「そんなことさせてたまるかッ!」と止めようとするが、ダークネスティアから負の生命エネルギーが発射されてしまう。
発射された負の生命エネルギーは大気圏外に存在するエルゥのほこらのエネルギーを反射する衛星によってファルガイア全土に降り注ぎ、レイラインを寸断していった。その結果、世界を支えていた守護獣達の力は著しく減退し、各地で天変地異が引き起こされた。ザックは叫びながら何度もダークネスティアに斬りかかる。するとダークネスティアは破壊され、エネルギーの放出も収まった。そして取り込まれていたハーケンは解放されたが、彼女の姿はザックがよく知る人間の姿「エルミナ」という名の女性だった。彼女に近寄ろうとするザックだったが、エルミナは再びハーケンの姿となり「あたしは…あたしは魔族の騎士ッ!レディ・ハーケンだッ!」と言って姿を消した。「守れなかったッ!力だけじゃ、また守れなかったッ!!」と叫ぶとザックはその場で気を失ってしまう。ロディとセシリアはザックを連れて急いでアーデルハイドへ帰還するのだった。

一方、ザックがダークネスティアを破壊したことにより作戦は失敗したと言うアルハザードだったが、ジークフリードにとってはそれも想定内であり、一時的に守護獣の力を減退させたことで、真の狙いである「カ・ディンギル」という魔塔の封印を解くことに成功していた。

ザックとエルミナ

ザックはある夢を見ていた。それはザックがかつて「ギャレット・スタンピード」という名前だった頃の過去の夢であった。ギャレットは今は滅んでしまったアークティカの王国に仕える「フェンリルナイツ」という騎士団の騎士を務めていた。ある日ギャレットは同じフェンリルナイツの仲間であり早撃ちの師匠でもあるエルミナと共に騎士叙勲式を抜け出してアークティカ城の屋上へ来ていたが、そこへ2人を探しに来たフェンリルナイツの騎士団長「ゴルドバード」が現れ叙勲式を抜けだしたことを叱られ始める。エルミナは「ギャレットを誘ったのはあたしです」「城下の町を一望できるこの場所に来ればギャレットにとって大切な何かが見つかるのではと思いまして」と言い、騎士としてはまだ半人前であるギャレットのために連れてきたと語る。それを聞いたゴルドバードは「騎士にとって大切なのは守るべき大切な何かを見つけることだ」「フェンリルナイツの7人が守りの象徴たる騎士の武具になぞらえられているのもそのためだ」と語る。
フェンリルナイツの騎士はそれぞれ騎士の武具になぞらえた通り名を持っており、ゴルドバードは「アーマー(鎧)」と呼ばれ、エルミナは「ソード(剣)」と呼ばれていたが、エルミナ曰く最近では「斬り姫」の方が通りがいいとのこと。ギャレットは新しくフェンリルナイツの一員になった自分は何て呼ばれるのかと聞くと、ゴルドバードは「お前はヴァンブレイス(篭手)だ」と告げる。ギャレットはヴァンブレイスという呼ばれ方に不満を言うが、ゴルドバードに「迎撃の任につくソードは、外敵から身を守るための牙といえよう。ならばお前はソードを操る腕。エルミナを守るヴァンブレイスなのだ。篭手じゃ不服か?」と言われると、ギャレットはヴァンブレイスを気に入り「守ってみせるぜ、大切なもの、皆まとめてなッ!」と宣言するのだった。
それからしばらく経ったある日、アークティカは蘇った魔族の襲撃を受けて一夜にして滅び去った。フェンリルナイツは全滅し、ただ1人生き延びたギャレットは、以降自身を「ザック・ヴァンブレイス」と名乗るようになり、魔族に復讐するために「絶対たる力」を求めるようになるのだった。

目を覚ましたザックは、アーデルハイド城の一室で眠っていたことに気付き、目の前には彼を心配そうに見ていたロディ、セシリア、ハンペンの姿があった。ザックは自分が本当に果たしたかったことを思い出し、皆に自分の本当の名前を告げようとするが、セシリアは「ザック・ヴァン・ブレイス…今は、私たちの仲間よね」と彼の言葉を遮った。彼女が気遣ってくれたことにお礼を言ったザックは、「仲間として皆に頼みを聞いてほしい」と言う。今は廃城となったアークティカ城に「俺を待っている、あいつがいるんだ、これ以上、罪に黒く…血に赤く染めるわけにはいかないんだ」と語る。「初めて、復讐以外にあなたの剣を振るってもらえるのですね」と言うセシリアに「大切な何かを守るための剣、それが俺達の剣だったんだ」と言ったザックは、仲間達と共にアークティカ城へと向かった。

アークティカ城で最後の戦いを始めるザックとレディ・ハーケン。

アークティカ城に着くと、そこにはエルミナとして生きていた頃の記憶を取り戻したレディ・ハーケンが待っていた。ザックはロディとセシリアに「ここは、俺1人で行かせてくれ」と頼み、ハーケンに一騎打ちを挑む。「できることなら、こんな形で再会したくなかった」と言うザックに「あたしの手は地に汚れ既に引き返すことは…できない」と言うハーケン。「俺の胸には今でもあいつが…エルミナがいる…そのエルミナのためにもハーケン、お前はこの俺が…斬るッ!」「あたしの戦いは、何も生み出さない代わりに何も失わせやしない戦いなんだ…たとえ魔に身をやつそうとも、な。来い、ザック…全てを捨てたあの日からお前が掴んできた『力』と共にッ!」とそれぞれの想いを告げ、2人の最後の戦いが始まった。

激闘の末、勝利したのはザックだった。エルミナの姿に戻った彼女に駆け寄るザック。その時、エルミナの身体から光が生まれた。それはザックの心が放つ輝きであり不可能も可能とする「絶対たる力」。大切なものを守るために今までの自分を超える力が「勇気」の輝きとなって放っていたのだ。今にも息絶えそうなエルミナに「目を開けてくれッ!」と叫ぶザック。するとエルミナは「この城で散った騎士からお前あての言葉がある、聞いてくれるか?」と言う。ザックが頷くと「どんなに退屈で、つまらない世界でもここは、お前とあたしが出会った世界…だから、守って…」と告げ、エルミナは息絶えた。彼女の最期の言葉を聞いたザックは、過去や復讐に囚われず、大切なものを守るために剣を振るうことが本当の勇気であると知った。ザックの放つ勇気の輝きに応え、勇気の貴種守護獣「ジャスティーン」が覚醒するのだった。

希望の西風

アークティカ城から出ようとした時、セシリアは涙のかけらを通じて守護獣の想いを感じ取る。ダークネスティアの光で一時的に守護獣の力が弱まった影響で、1000年前に海の奥深くに封印された魔塔カ・ディンギルがジークフリードによって復活したのだ。最後の戦いが始まることを知った一行は、カ・ディンギルへ向かう前に最後の貴種守護獣を復活させるためバスカー集落にある「ゼファーの祭壇」へと向かった。そこは「希望の西風」と呼称される希望を司る貴種守護獣「ゼファー」の名前を呼べば応えてくれるという言い伝えがあった。しかし2体の貴種守護獣ラフティーナとジャスティーンの助力を得てもゼファーは応えてくれなかった。現在のファルガイアからは希望が失われており、誰もが未来を諦めていたからだった。ただ1人、ロディだけは諦めようとしなかった。2体の貴種守護獣は、ロディに「造られた心で未来を支えることはできない、明日に吹く風の名を呼ぶことは無理だ」「あなたはこの世界にひとりぼっち、どこにも居場所のない、よそ者」と言うが、ザックとセシリアはロディを励まし続けた。仲間達の励ましを受けて、ロディはゼファーの名前を呼び続ける。そして最後まで諦めないロディの心に応えて、遂に希望の貴種守護獣ゼファーが覚醒するのだった。

最終決戦の地へ

ロディ達を待ち受けるブーメラン(右)とルシエド(左)。

カ・ディンギルへ向かうと、入口にはブーメランとルシエドが待ち構えていた。ブーメランはジークフリードが「新しい月」と呼ばれる宇宙のコロニー「マルドゥーク」を目指しており、カ・ディンギルがそのマルドゥークに通じる亜空間エレベーターであることを伝える。何故それを自分達に教えるのかと言うザックに「マルドゥークは対地攻撃能力を備えた1000年前のコロニーであり、ジークフリードがそれを手にして何をしようとしているのかは考えるまでもない」「そしてそれを知ったお前達は当然マルドゥークへ向かうだろう。だがその前に立ち塞がる者がいたら?…そう、この俺を倒さぬ限り先に進むことはできぬッ!」と語ったブーメラン。ブーメランとルシエドとの3度目の戦いが始まったが、戦いの最中、ジークフリードが放った魔獣の群れがブーメランを含めて一行に襲い掛かってきた。戦いの邪魔をされたブーメランはジークフリードに激怒し、襲い掛かる魔獣の相手を引き受けて一向に先へ進むよう促した。躊躇う一行だったが、「お前達を狩るのはこの俺だッ!そいつを忘れるなッ」と言うブーメランの言葉を聞き、カ・ディンギルの中へ進むのだった。

カ・ディンギルの内部を登っていくと、アルハザードが待っていた。人間の命をおもちゃのように扱うことに悦びを感じるアルハザードは、それを邪魔する一行を倒すために真の姿となって襲い掛かるが、これまでの戦いで強く成長した一行の敵ではなく、敗北すると断末魔を上げて消滅した。

アルハザードを倒した後、塔の最上階にあった亜空間エレベーターを使い、一行はマルドゥークに辿り着いた。マルドゥークの最深部にある中央制御室へ向かうと、そこにはジークフリードが待ち構えていた。マルドゥークに備わる対地攻撃能力を使い、ファルガイアに生きる全ての生命を滅ぼそうと企むジークフリードに一行は最後の戦いを挑む。激闘の末、一行に敗北したジークフリードはその場に倒れた。しかしザックは、ジークフリードの様子が変わったことに気付く。さらにマルドゥークから見えるファルガイアが暗闇に閉ざされていき、ジークフリードの姿が消えると、そこに現れたのはかつて倒されたはずのマザーだった。マザーはジークフリードを体内から食いつくして復活のための糧にしていたが、ジークフリードが倒されたことで、マザーはジークフリードを完全に取り込み「マザーフリード」として復活したのだ。復活したマザーフリードをどうにか倒した一行だったが、ファルガイアは暗闇に包まれたままだった。「自分達の戦いは無駄だったのか」と絶望しかける3人だったが、それでもまだ諦めないと叫ぶと、大切な何かを想う力に涙のかけらが応え強い輝きを放ち始める。すると3人の心に1000年前の力を取り戻した守護獣達の声が響いた。
守護獣達が「全ての守護獣の力をもって、世界を覆う闇を打ち払ってみせる」と告げると、ファルガイアに包まれた闇が祓われた。それは想いが生み出す力であり、「ファルガイア」を司る守護獣である「人間」のみが振るうことを許された不可能を可能とする意志の力「奇跡」であった。今はまだ全ての人間が奇跡を起こすほど強い想いを心の光として宿してはいないが、いつの日か全ての人間の心に光が宿ることを守護獣達は確信していた。
ここから始まったのだと感じたセシリアは、ロディとザックに「みんなが待つファルガイアへ帰りましょう」と言うのだった。

Reichama3n3
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