ワイルドアームズ(WA)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ワイルドアームズ(WILD ARMS)』とはメディア・ビジョンが開発したPlayStation用のゲーム作品。1996年12月20日にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)より発売。略称は「WA」。ジャンルはロールプレイングゲーム(RPG)。荒廃した大地が広がる惑星「ファルガイア」を舞台に、荒野を冒険する「渡り鳥」と呼ばれる3人の主人公達と、異世界からの侵略者「魔族」との戦いの物語を描いた作品で、壮大な世界観と個性溢れるキャラクター、深く練り込まれたストーリーが魅力となっている。

『ワイルドアームズ』の概要

『ワイルドアームズ(WILD ARMS)』は、1996年12月20日にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)より発売されたPlayStation用のゲームソフト。通称「口笛と荒野のRPG」と呼ばれる『ワイルドアームズ』シリーズの第一作目でナンバリングとしての略称は「1st」。トータルデザイン&シナリオは金子彰史、音楽はなるけみちこが担当。
SFとファンタジーに、従来のRPGではあまり見られなかった荒野と西部劇の要素を融合させた世界観と、当時の最先端表現だったポリゴン描写が売りとなっていた。本作は同じくSCEよりリリースされた『アークザラッド2』、『ポポロクロイス物語』と並ぶ「SCE三大RPG」の1つとして発表されていた。

西部劇要素を前面に出しながらも王道的に描かれたシナリオや、テキストの濃さや独特なセリフ回しで濃密に描写されたキャラクター達、世界観や雰囲気に合わせた音楽などが高く評価され、多くのユーザー達から支持を集めた。
本作は、アウトフィールド、町やダンジョンなどのインフィールド、コマンド入力式のターン性バトルからなるスタンダードなRPGとなっているが、各キャラクターが持つグッズを使った謎解きや仕掛けの多彩さ、キャラクターのパラメータを調整できる装備品など、本作ならではの特徴的な要素も多い。

また、本編に登場するボスより遥かに強い隠しボスとのバトルや、ゲーム内ではそれと無く触れられているものの、明確には描写されない多くの裏設定など、ストーリー以外でも様々な面で楽しめる要素があるのも魅力となっている。

物語の舞台となるのは、万物を司る巨大な意志体「守護獣(ガーディアン)」によって支えられた惑星「ファルガイア」。かつては自然豊かな環境で、高度なテクノロジーが存在していたが、異世界からの侵略者「魔族」との戦いが原因で守護獣が衰退し、ファルガイアは荒廃化してしまう。大地は徐々に荒野化していき、テクノロジーもほとんど失われた時代に物語は展開していく。

かつて存在した数々の国は滅び町は分断され、荒野には「魔獣(モンスター)」が生息するようになったことで、多くの人々は自分の町や村を出ることなく生活を送っているが、そんな危険な荒野をあえて旅する冒険者達が存在しており、人は彼らを「渡り鳥」と呼んだ。

自分の居場所を求めて旅をする天涯孤独の少年ロディ。復讐のため世界のどこかに存在する「絶対たる力」を求めて旅をする渡り鳥ザック。守護獣と交信する巫女の素質を持ち、高貴な立場故の孤独感を胸に抱く公女セシリア。偶然出会った3人が、現代に蘇り再びファルガイアを侵略するために行動を始めた魔族の襲撃を受けたことで、ファルガイアの命運を巡る物語が始まる。

『ワイルドアームズ』のあらすじ・ストーリー

プロローグ

ひとり旅の少年:ロディ編

魔獣から村人達を守ったが、禁断の兵器と呼ばれる「ARM」を振るったことで村人達から恐れられるロディ(真ん中の青髪の少年)。

大地から緑が失われ、ゆっくりとだが確実に荒廃化が進む惑星「ファルガイア」。そんなファルガイアの荒野を旅する「渡り鳥」と呼ばれる冒険者の1人である心優しき少年「ロディ・ラグナイト」は、「サーフ村」という村に滞在し、村人達の仕事を手伝っていた。その仕事ぶりから村人や村長から気に入られていたロディだが、彼に懐いていた村の子供「トニー」が、危険な「魔獣(モンスター)」が生息する洞窟「ベリーケイブ」に入っていったという知らせを受ける。

村人達に代わってトニーを探すために洞窟に入ることにしたロディ。洞窟を進み、ようやくトニーを見つけたロディは、洞窟に入った理由をトニーに聞く。彼の父親は大きな怪我を負っており、その怪我を治すために洞窟の奥にある薬草「ホーリーベリー」を取りに来たとのこと。事情を聞いたロディは、トニーに協力することを決める。洞窟の最奥まで進んだロディは、そこでホーリーベリーを手に入れ、トニーを連れて入口まで戻り始める。しかし突如地震が発生し、洞窟のみならず周辺でも大きな揺れが起きていた。

驚きつつも2人は洞窟の入口まで戻ると、そこには2人を心配した村人達が集まっていた。ロディのおかげでトニーが無事に帰ってこれたと村人達が褒め称えていた時、洞窟の奥から巨大な魔獣「ロッティングビースト」が現れる。
この魔獣は過去にサーフ村周辺を恐怖に陥れた存在で、ホーリーベリーによって洞窟の奥に封印されていたのだが、そのホーリーベリーを採ってきたことで封印が解かれてしまったのだ。ロディ達を襲った地震はこの封印が解かれた時の余波で発生したものである。

村人達を守るために、ロディは「ARM」と呼ばれる武器を使い魔獣と戦い、辛くも勝利を収める。ロディが魔獣を倒したことに喜ぶトニーだったが、他の村人達はそれまでの態度から一変し、ロディに対して恐れを抱き始めていた。
彼が使ったARMとは、禁じられた力として伝承に残されており、ARMを意のままに操るロディの姿は、サーフ村のような小さな村に住む人々にとって、災いをもたらす存在に見えてしまっていたのだ。
口々にロディを責め立てる村人達を村長は落ち着かせ一旦は村に帰ったが、村長を含めた村人達は既に恩人であるはずのロディのことを危険な存在としか認識しておらず、彼を村から追い出すような形で出て行かせたのだった。

トレジャーハンター:ザック編

「絶対たる力」を求めてファルガイア中を旅する渡り鳥ザック。

遺跡発掘専門のトレジャーハンターである渡り鳥「ザック・ヴァン・ブレイス」は、自称知性派の亜精霊カゼネズミの「ハンペン」とともに、「記憶の遺跡」と呼ばれるダンジョンを訪れていた。
ザックの目的は、世界のどこかに存在すると言われる「絶対たる力」であり、その手がかりを求めて仕入れた情報をもとに遺跡に辿り着いたが、ハンペンによれば記憶の遺跡は有名な場所で、目ぼしいものは既に先客に荒らされて枯れた遺跡と化しているとのこと。それでも「絶対たる力」の手がかりぐらいはあるのではないかと、遺跡を探索することにしたザックは遺跡の中にある数多くのトラップをかいくぐり先へ進む。

遺跡内に生息する魔獣を「早撃ち」という居合い抜きに似た剣術を駆使して討伐して行き、ハンペンの協力を得ながら罠を突破して遺跡の奥まで進んだザックは、偶然にも立体映像機が設置された部屋に辿り着いた。
装置を起動してみると、そこには「エルゥ」と呼ばれる亜人種が映し出されていた。

ハンペン曰く、エルゥははるか昔にファルガイアに存在していた長寿種族で、魔法を応用した技術に優れていたとのこと。するとザックの脳内に映像に映し出されたエルゥが語り始めた。「リリティアを求めることなかれ。リリティアの凍れる吐息。凍てつく掌。全ては破壊のみに振るわれる力。棺に収めしリリティアを求めることなかれ。『光ある地』に封じられしリリティアを求めることなかれ。それは滅びを導く鼓動にして絶対たる破壊の力…」と告げると映像は途切れた。

「絶対たる破壊の力」という言葉に惹かれたザックは、「光ある地」がどこにあるのかをハンペンに尋ねる。ハンペンによれば、「アーデルハイド」という国が古い言葉で「光」を意味しており、何か関係があるかもしれないとのこと。アーデルハイドが記憶の遺跡からそう遠くない場所にあると知ったザックは、「リリティア」を求めて遺跡を後にするのだった。

修道院の少女:セシリア編

夢の中で守護獣の声を聞く少女セシリア。

代々アーデルハイド公国の公女が学び舎とする「クラン修道院」で紋章魔法を学ぶ生活を送っていたアーデルハイドの公女セシリアは、ある日不思議な夢を見る。その夢で聞こえた声は、セシリアを「守護獣の巫女」と呼び、「我を解き放て…我が力は、魔獣と共に本の中に…」と告げて消えていく。その後、友人から叩き起こされ目を覚ましたセシリアは、授業中に居眠りをしていたことを思い出した。

その日はセシリアが17歳の誕生日を迎えた日であり、近いうちにアーデルハイドに帰ることになっていたが、皆に挨拶は済ませたのかと友人に聞かれたセシリアは、まだしてなかったことを思い出し挨拶に回ることにした。途中、散らかった本の片付けを手伝うことになったセシリアは時間を少しだけ戻せる魔法の時計「かいちゅうどけい」を使って本を片付ける。しかし一冊だけ片付いていない本を見つけ、その本に触れた途端、本から夢の中で聞いた声と同じ声が響き、「封印図書館」という言葉を告げた。

封印図書館という言葉が気になったセシリアは、修道女の「シスター・マリー」を訪ねる。彼女によれば、古来より禁断とされた魔道書を数多く封印してきた秘密の図書館が封印図書館であり、それが修道院のどこに隠されているのかを教えることはできないとのこと。その声の主は恐らく「守護獣」であり、守護獣の巫女として導かれたセシリア自身の手で封印図書館への扉を探すことが、守護獣の巫女として乗り越えるべき試練なのだと、シスター・マリーから助言を受けたセシリアは、封印図書館へ行くための扉を探すことにする。

修道院のあちこちを調べていくと、封印図書館へ行く扉はアーデルハイドの王家に代々伝わる秘宝で、セシリアの母の形見でもある「涙のかけら」が鍵となることを知る。
「涙のかけら」で扉を開き、封印図書館へ足を踏み入れたセシリアは、その奥で「ネルガルの書」という魔道書に封印された水の守護獣「シトゥルダーク」と出会う。そのシトゥルダークこそ、セシリアが夢で聞いた声の主であり、ネルガルの書から実体化した魔獣を倒したセシリアはシトゥルダークの封印を解く。するとシトゥルダークから、ファルガイアに再び危機が訪れようとしていること、すべては死せる「リリティア」から動き出そうとしていることを告げられる。

シトゥルダークの力が込められた小さな石板「パワープレート」を手に入れたセシリアは、リリティアというのが何を意味するのかと疑問を抱き封印図書館を後にする。再びクラン修道院に戻るとシスター・マリーが待っていた。彼女から、古来よりアーデルハイドの血を引く女性は世界を支える守護獣と心を交わす巫女であり、そのために大きな運命のもと、辛く苦しい日々を過ごさなければならないこと、これから先背負う運命を分かち合える仲間を見つけるよう助言を受けたセシリアは、守護獣の導きに従うため、修道院を後にし故郷アーデルハイドに帰国するのだった。

3人の出会いと魔族襲撃

ロディ、ザック、セシリアの3人はそれぞれアーデルハイドの城下町に到着した。すると城下町で怪我人を担ぎながらその場で叫ぶ2人の男性を目撃する。どうやら「リリティアの棺」という遺跡の壁が、先日発生した地震の影響で崩れてしまい、魔獣が出現するようになったとのこと。ロディはその地震がベリーケイブで行った自分の行動が原因で発生したものだと思い、ザックとセシリアはリリティアという言葉に興味を持ち、それぞれリリティアの棺に向かい、遺跡を発掘している責任者であり、ARMを研究するアームマイスターの「エマ博士」のもとを訪れる。魔獣の出現に頭を悩ませていたエマは、訪れたロディ達に戦闘経験の無い作業員の代わりに魔獣の退治を依頼する。

3人はそれぞれの目的もあり意気投合し、一時的にパーティを組んで、遺跡の奥へ進んでいった。
魔獣を討伐しながら最奥に辿り着いた3人は、そこで「ゴーレム」と呼ばれる1000年前の大戦で魔族と戦うために使用された巨大な人型兵器を見つける。そのゴーレムの名は「リリティア」。リリティアの棺と呼ばれた遺跡は、その名の通り、リリティアというゴーレムが封印された遺跡だったのだ。「絶対たる力」を求めていたザックは、力の正体がゴーレムであることを知り、自分では扱うことができるはずが無いと落胆する。一先ず遺跡を引き返した一行は、エマのもとへ報告をしに行く。報告を聞いたエマは喜び、リリティアの発掘作業に取り掛かり始める。彼女によれば、翌日アーデルハイドで「古代文明博覧会」が開催され、発掘したリリティアを展示する予定とのこと。依頼の報酬は翌日払うとエマに言われ、報酬の受け取りと博覧会が終わるまで一行はアーデルハイドに滞在することになった。ロディとザックは宿に泊まることにしたが、セシリアは実家がアーデルハイドのお城であるため、「戻らなくてはならない」と言い、その場で別れた。

翌日、アーデルハイドで開催された古代文明博覧会では、発掘されたARMやゴーレムが展示され、会場内は大勢の客で賑わっていた。会場にいたエマから報酬を受け取ったロディ達は展示物を巡っていたところ、会場で子供とはぐれた母親から「迷子の息子を探してほしい」と頼まれる。子供は赤い風船を持っていると聞き、それを目印に子供を見つけたロディ達は、母親のもとに連れて行こうとすると、子供が持っていた赤い風船を手放してしまう。

空に飛んでいく風船を何気なく目で追っていると、突然晴天だったアーデルハイドの上空を雷雲が覆い始める。町や会場にいた人々も空を見上げたその時、空が割れるという信じ難い光景が広がっていた。
次の瞬間、ひび割れた上空から光の剣が人々や大地に降り注ぎ、町や会場は一瞬にして炎の海に包まれた。更に上空から大量の魔物が現れ、人々を襲い始めていた。突然の事態に驚愕しつつも、ロディ達は魔物を倒しながら町を走り回っていると、アーデルハイド城の前でセシリアが魔物に囲まれ襲われていた。魔物を倒し、セシリアと合流したロディ達は、まだ町にいる生存者達を救うために再び町を走り回る。ほとんどの人は既に息絶えてしまっていたが、何とか残っていた生存者を救出し、全員で城へ逃げ込んだ。しばらくすると町に魔族と呼ばれる「ベルセルク」が魔物を率いて現れる。ベルセルクは城に逃げた人間に対して「涙のかけらを渡さなければ城ごと吹き飛ばす」と脅迫をする。涙のかけらの持ち主であるセシリアは、城にいる住民の安全と引き換えに涙のかけらを渡すことを決意する。しかしセシリアの父であるアーデルハイドの国王は、渡してはならないと反対する。国王によると涙のかけらは王家に伝わるただの秘宝ではなく、ファルガイア全土に関わる秘法を行使する「鍵」といえるもので、決して魔族の手に渡してはならないとのこと。それでも住民の命にはかえられないと渡そうとするセシリアに対し、国王はしばらく自室で大人しくしてるよう言い聞かせる。

しかしこれ以上の犠牲を増やしたくないと考えるセシリアは、ロディ達に協力してもらい、城を抜け出すことを決める。城下町へと通じる秘密の抜け道を使い城を抜け出した3人は、ベルセルクと対峙する。涙のかけらを渡せば城や住民にはこれ以上手を出さないと言うベルセルクに、セシリアは涙のかけらを渡す。目的を果たし満足したベルセルクは約束通りそのまま撤収しようとしたが、ザックは「自分の要件はまだ終わっていない」とベルセルクを呼び止める。
ザックはベルセルクの正体が1000年前にファルガイアの侵略を企み、現代に蘇った魔族であることを見抜き、「復讐だッ、そのために俺は今日まで生きてきた」と言い、ベルセルクに挑みかかる。1人で戦うのは危険だとロディとセシリアも加勢するが、ベルセルクの圧倒的な力の前に返り討ちにされてしまう。「復讐でも何でもいいから俺様を楽しませるくらい強くなってみろ」と嘲笑い姿を消すベルセルク。更に、博覧会に展示されていた3体のゴーレムが、配下である魔族達の手によって奪われてしまうのだった。

自らの決意を示すため、断髪するセシリア(右)。

敗北感に打ちのめされながら城に戻った3人は、住民を避難する際に怪我を負ったことで瀕死の状態となっている国王に涙のかけらを渡してしまったことを謝りながら報告する。「済んだことだ、何も咎めまい。だが奴らはきっと涙のかけらを恐ろしい目的のために用いるに違いない」と言う国王に対して、セシリアは「全ては私の責任です。涙のかけらは必ず取り戻します」と告げる。彼女の言葉に驚く国王と国務大臣のヨハンに「アーデルハイドの再建には城に残ったお金と騎士団が必要不可欠。だけど自分には心強い仲間がいるから、彼らの力を借りればきっと涙のかけらを取り戻せる」と言うセシリア。そしてセシリアはロディとザックに力を貸してほしいと依頼をする。

ロディは快く承諾し、ザックも「魔族を追うことに関してはこっちから願い出たい」と言うが、「姫さんはついてこなくていい、こっから先は王族の道楽じゃないんだ」と同行することを拒絶する。ザックは過去の出来事が原因で王族を信頼しておらず、最初からセシリアの正体が王族だと知っていたらパーティを組むことも無かったと語る。そして城の人間の態度から察しはついていたものの、未だにセシリア自身の口から身分を明かさないことに怒りを感じていたのだ。「自分が王族であることを明かすと誰もがよそよそしくなるのが寂しくなってしまうため、明かすことができなかった」と謝るセシリア。それでもファルガイアを守りたい気持ちに偽りはなく、どうすれば分かってもらえるのかをザックに問うが、ザックは自分の意見を曲げようとしない。するとセシリアはザックに剣を貸してもらうようお願いをする。どういうつもりか知らないがと言いつつザックは剣を貸した時、セシリアは自身の長い髪をその剣で切って見せた。髪が短くなったセシリアは、剣を返しながら「今までの私はあなたの剣が断ち切ってくれました。もう一度お願いします。あなたの力を貸してください」とザックに依頼し、彼女の強い決意に根負けしたザックはようやく依頼を承諾する。
その一部始終を見届けた国王は、「強くなれ、セシリア。自分の大切なものを守れるくらいに…」と言い残し息を引き取る。そして、生き残った人々によって、国王をはじめとする多くの町の犠牲者を弔うための葬儀が行われるのだった。

封印の神像を巡る旅

1週間後、ロディ達は涙のかけらを取り戻す旅に出るために、ヨハン大臣から「ガーディアン神殿」という神殿でガーディアンの助力を得るべきとの助言を得る。ガーディアン神殿が存在する地方へ向かうため、一行は「マウンテンパス」という洞窟を抜け、神殿の近くにある水と緑に恵まれた町「ミラーマ」に辿り着く。町で酒場のマスターが神殿に詳しいとの情報を得て、さっそく酒場へ向かうが、マスターの仕事が一段落するまで、食事をしながら待つことになる。そこでセシリアが焼きそば5人前に加えておかわり数杯分をペロリと平らげるほどの大食いっぷりを発揮するなど、意外な一面を見せる中、仕事が一段落ついたマスターから神殿の話を聞くことに。マスターの父が神殿に仕えていた神官だったこと、神官だけが入ることが許された秘密の部屋が隠されていること、その部屋に入るための暗号を聞き、最後に「しんかんのあかし」というメダルを受け取った一行は、ガーディアン神殿へ向かった。

ガーディアン神殿の仕掛けを解きつつ、奥へと進んだ一行は巨大な鏡が設置された部屋に辿り着く。そこでセシリアはシトゥルダークの声に導かれて鏡の中に入って行った。急いで後を追うロディとザックだったが、気が付くと3人はそれぞれ違う場所に離れ離れになっていた。

魔族の盟主マザー復活の危機を3人に伝える守護獣達(画像の奥にいる3体)。

3人はそれぞれ1人で奥へ進むことになり、最深部の部屋に辿り着いたが、そこでは1人ひとり異なる出来事が起こっていた。ロディは、サーフ村にいた少年トニーが魔獣に襲われているところに出くわす。咄嗟に魔獣を倒したロディだったが、それを見たトニーはロディに対して「まるで魔獣みたいで怖い」と言う。気が付くとロディの周りをサーフ村の住民が囲んでおり、「お前の居場所はどこにも無い」「よそ者のお前は誰からも受け入れられない」「お前が振るうARMの力はまるで魔族の力だ」など口々にロディを責め立てる。そして視界に入った部屋にある鏡を覗くとそこに映る自分の姿は魔獣と化していたのだった。

ザックが辿り着いた部屋には、剣が突き刺さっていた。手に取ってみると、それは強大な力を秘めた魔剣だった。ザックはこの魔剣こそ自分が求めていた「絶対たる力」だと確信し、復讐をやり遂げることができると喜ぶが、突然手にした魔剣が炎に包まれ消滅してしまう。更に周囲が暗闇に包まれ、一体何が起こったのかと驚くザックの周囲に、自分がよく知る人物達の影が現れる。影達はザックに対して「お前は逃げ出した男、勇気のない男」「お前は仲間を見捨てて逃げた」など口々に責め立てる。ザックは彼らの言葉の意味を理解しているが、自分が本当にやるべきことから目を背けて復讐のための力を求めることに囚われていたのだ。「力を手に入れるまで待ってほしい」と言うザックには一切反応せず消えていく影達。それを見たザックは「待ってくれッ!また、俺ひとり残るのかッ!?」と叫ぶのだった。

他の2人と同様、セシリアも最深部まで進んでいたが、気が付くと周囲の光景がアーデルハイドの城内に変わっていた。驚いているセシリアの前に、ヨハン大臣や城の兵士、国王が姿を現していく。彼らはセシリアに「姫様はアーデルハイドの公女としてのみ価値のあるお方」「城内の人間が誰もあなたを名前で呼ばないことに気づいているでしょう」「自分が愛されていないことは分かっているだろう」などと責め立てる。精神的に追い詰められるセシリアの背後に、髪を切る前のセシリアが現れる。もうひとりのセシリアは「公女としての使命は建前で、あなたは誰かに愛してもらうために危険な旅を申し出た」「旅に出たのも髪を切ったのも、全ては自分のため。あなたは偽善者だわ」「あなた自身も誰も愛していない」と指摘する。「自分のしていることは間違っているのか」とセシリアは耳を塞ぎこんでしまうのだった。

自分達の心の内にあるトラウマを見せられ、打ちのめされた3人は気が付くと同じ部屋に合流しており、彼らの前には3体の守護獣が姿を現していた。「シトゥルダークが巫女と認めた人間と巫女に導かれた戦士が、こんなに弱い心の持ち主なのか」「このような者にファルガイアを託すつもりなのか」と守護獣達はロディ達に落胆していた。守護獣達は3人に幻覚を見せて心の強さを試していたのだった。そして「今の自分達や人間では魔族と戦うにはあまりにも無力だが、今はこの人間達に託すしかないのだ」との結論に達した守護獣達は、ロディ達に魔族が涙のかけらを使って、魔族の盟主「マザー」を復活させようとしていることを教える。そして自分達の残された力をロディ達に託し、魔族の居城「フォトスフィア」へ直接転送させようとしたが、その気配を察知した魔族「ジークフリード」の一撃により失敗に終わる。ならば、マザーの復活だけでも阻止しなければと考えた守護獣達は、マザー復活の阻止をロディ達に託し、一行を封印の地の近くにある集落「バスカー集落」へ転送させるのだった。

マザーの封印に関する情報を求めて、一行はバスカー集落の酋長のもとを訪ねる。酋長はロディ達が訪れることを夢見にて分かっていたらしく、マザーの心臓が3つの神像に封印されていること、魔族の狙いが集落の近くに存在する「霊峰ゼノム山」に祀られた3つの神像のうちの1つを破壊することであることを教える。ゼノム山へ向かった一行は、封印の神像が立つ頂上を目指して登り始める。頂上まで登りきると、そこに以前アーデルハイドで対峙したベルセルクが現れた。一行の目の前で封印の神像を破壊したベルセルクは、配下の魔獣を呼び出し姿を消す。何とか魔獣を撃退するが、神像の1つを破壊されてしまったことでマザーの復活が現実のものとなりつつあることを実感したロディ達は、残りの神像を守ることを改めて決意するのだった。

再びバスカー集落に戻った一行が酋長のもとを訪ねる。酋長も神像が破壊されたことを感じていたとのことで、残り2つの神像が「セント・セントール」と「港町ティムニー」という町にそれぞれ置かれていること、生命エネルギーを転移し、遠く離れた地に一瞬で移動できる装置「エルゥのほこら」を使用するべきとの助言を得る。エルゥのほこらの反応炉を灯すために必要な「キシュムの炎」を酋長から受け取った一行は、エルゥのほこらを使い次なる目的地、セント・セントールへと向かった。

セント・セントールに着くと、その町が結界によって魔獣の侵入から守られていること、町の中央に封印の神像が設置されていることを知る。しかし町の保安官から、近頃セント・セントールでは神隠しが起こっており、神隠しにあった人間は全員「ケイジングタワー」というある恐ろしい魔獣を封じている塔の付近で見つかるという話を聞く。神隠しの真相を解き明かしたい保安官は、一行に事件の調査を依頼する。依頼を引き受けた一行は、保安官から塔に入るための鍵を受け取り、調査へと向かった。

ケイジングタワーの調査を行っていると、そこには魔族「アルハザード」が待ち構えていた。目の前に現れたアルハザードに激しい敵意を向けるザックだったが、気にせずアルハザードは塔の仕掛けを作動させてロディ達の周囲に結界を張り、一行を閉じ込める。「セント・セントールに設置された神像は破壊させてもらいます。町ではちょっとした実験もかねているのでそれまであなた方はここで大人しくしてもらいます」と言いながら、アルハザードは塔に封じられていた魔獣を解き放ち、ロディ達にけしかける。

結界に閉じ込められたロディ達を救出する女渡り鳥のジェーン(真ん中の金髪の少女)。

魔獣を撃退し、急いで町に戻ろうとするロディ達。内側から結界を破壊することができないでいると、そこへ「カラミティー・ジェーン」と呼ばれる渡り鳥の少女「ジェーン・マックスウェル」と彼女の執事である「マクダレン・ハーツ」が現れる。
ジェーンは塔に封じられていた魔獣を倒し、その賞金を狙っていたのだ。しかしロディ達が先に魔獣を倒したことと、結界に閉じ込められている状況を知ったジェーンは、心の中で文句を言いつつも2000ギャラ(「ギャラ」はファルガイアにおける通貨)を払えば出してあげると交換条件を提示し、ロディ達は渋々承諾する。するとジェーンは、結界を張っていた仕掛けを小型の銃の形をしたARMを使い破壊する。
彼女もまたARMの使い手であり、驚くロディ達に自分の名前と地元では姉の次に美人と評判であることを話すと、助けた報酬の代金を受け取り去っていった。

セント・セントールに戻った一行は、町の結界が破壊され、住民が誰ひとりとして居ない代わりに魔獣で溢れかえった町の惨状を目の当たりにする。既に封印の神像は破壊されてしまっており、2つ目の封印を守れなかった一行は、セント・セントールで発生した現象に疑問を抱きつつ、最後の封印の神像がある港町ティムニーを目指して、新たなエルゥのほこらへと向かった。

港町ティムニーに辿り着いた一行は、町の酒場で頭を抱えている「スィートキャンディー号」の船長「バーソロミュー」を見かける。話を聞くと、彼は別の船の船長でライバル関係となっている「ドレック」に見栄を張って「自分はモテて困っている」と嘘を言ってしまい、そこから恋人もいないのに「婚約者がいて今度結婚式を挙げる」と話をややこしくしたところ、船乗りの間で婚約の証となっている「水晶の花」を取ってくることになったという。何でも水晶の花は北にある遺跡「壊死の迷宮」に咲いているとのことで、バーソロミューは幽霊が多く出現するという噂がある遺跡から水晶の花を取ってこれるわけがないと悩んでおり、「最近ツイてないのは変な神像を手に入れてからだ」と口にする。バーソロミューが言った神像が封印の神像だと確信し、彼に代わって水晶の花を取ってくれば神像に近づくチャンスがあると感じたロディ達は、水晶の花を取りに行くことに。

壊死の迷宮で水晶の花を取ってきた一行は、早速バーソロミューに渡す。喜ぶバーソロミューの前にドレックが現れると、バーソロミューは水晶の花を手に入れたことを自慢するが、「水晶の花を持っていても婚約者がいなければ意味が無い」とドレックに指摘され、またもカっとなってしまったバーソロミューは、ちょうど隣にいたセシリアの腕を掴み、「婚約の相手ならここにいるだろ」と言ってしまう。突然の行動に驚く一行と大笑いするドレック。そしてドレックは「すぐにでも式を挙げよう、明日が結婚式だ」と言い残しその場を去っていった。
またやってしまったと後悔するバーソロミューに困惑しながら「自分達には大事な使命があるから…」と話しかけるセシリアだが、「今こそドレックを欺く偽装結婚式をやるしかないッ!」と立ち上がったバーソロミューは、一行を自分の船であるスィートキャンディー号へ案内した。船に案内された後もバーソロミューを睨むセシリアだったが、神像に近づけるチャンスだと思い仕方なく偽装結婚式の相手役を引き受けることにした。翌日、スィートキャンディー号で始まった結婚式は順調に進み、式が終わりに差し掛かりそうになったその時、緑色の髪とオレンジ色のマフラーが特徴的な魔族「ゼット」が出現する。封印の神像を破壊しに来たと言うゼットに船内は混乱状態となるが、一行によりゼットは見事撃退される。何とか神像を守れたと安心する一行だったが、今度は新たな魔族「レディ・ハーケン」が現れる。先ほどのゼットがおとりだったと理解したザックは、ハーケンに剣を振るうも、一蹴されてしまう。自分と同じ早撃ちの技を使うハーケンに困惑するザックを横目に、ハーケンは神像を一瞬で破壊し姿を消した。

復活を遂げたマザー(中央の巨大な魔族)。

Reichama3n3
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『ワイルドアームズ クロスファイア』とはメディア・ビジョンエンタテインメントが開発したPlayStation Portable用のシミュレーションロールプレイングゲーム。略称は『WAXF』。荒廃した世界「ファルガイア」の「エレシウス王国」を舞台に、建国の騎士団「ブランクイーゼル」が祖国を相手に戦う物語を描く。本作はシリーズ初の携帯ゲーム機専用のソフトとして発売された作品であり、ジャンルは「RPG」から「SRPG」に変更された。また、シリーズで初の非ナンバリングタイトルとなっている。

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ワイルドアームズ ザ フォースデトネイター(WA4)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

ワイルドアームズ ザ フォースデトネイター(WA4)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ワイルドアームズ ザ フォースデトネイター』とはメディア・ビジョンエンタテインメントが開発したPlayStation 2用のロールプレイングゲーム(RPG)。略称は『WA4』。戦争で荒廃化した世界「ファルガイア」を舞台に、戦争を生きた大人と、戦争を知らない子供という構図を軸に、戦うこと、力を振るうことの意味を問う物語を描く。作品構造からシステムまで全てが過去作から一新され、新たなステップへ向かった作品となっている。

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ワイルドアームズ ザ フィフスヴァンガード(WA5)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

ワイルドアームズ ザ フィフスヴァンガード(WA5)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ワイルドアームズ ザ フィフスヴァンガード』とはメディア・ビジョンエンタテインメントが開発したPlayStation 2用のロールプレイングゲーム(RPG)で、略称は『WA5』。かつて高度な文明が存在した世界「ファルガイア」。物語は古代兵器「ゴーレム」を発掘するゴーレムハンターを目指す少年ディーンが、謎の女性アヴリルとの邂逅を果たすところから始まる。本作はシリーズ10周年という節目の年に登場する記念碑的な作品であると同時に、新たな地平を切り開いた作品となっている。

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