ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』とは、ベストセラー小説「パイの物語」を実写化した冒険映画。神を愛し命を信じた少年に起こった唯一無二のサバイバル・アドベンチャー。新天地を求めて航海中だった少年とその家族は嵐に見舞われ不運にも船は沈没。1人生き残った少年はトラと救命ボートに乗っていた。227日間にも及んだ漂流生活をどのように生き抜いたのか。圧巻の映像美と実話を元にした奇跡の連続に心奪われる名作。第85回アカデミー賞最多4部門受賞のほかゴールデン・グローブ賞にも輝いた。
奇跡の生還。流れ着いた大陸でついに迎えたリチャード・パーカーとの別れ
漂流227日目、ついに流れ着いたメキシコの海岸に倒れこむパイ。朦朧とする意識の中頭上を飛び越えジャングルに向かって歩き出したリチャード・パーカーの足取りもふらついていた。骨と筋だけになったリチャード・パーカーの後ろ姿に、これまでの過酷な日々と奇跡の数々を想い、パイはリチャード・パーカーとの美しい別れを期待していた。ところがリチャード・パーカーは振り向くことなく、ジャングルの直前で一度立ち止まりはしたものの、そのまま行ってしまった。
当時を振り返って成人したパイは涙を浮かべながらリチャード・パーカーはじめ、恋人だったアーナンディや家族との別れを思い返した。「命あるもの、いつかは別れの時が来る。悲しいのは何の言葉も、別れを言えないことだ。」とパイの物語の結末を聞いていた小説家に静かに語った。
「本当の物語」語られたもう一つのストーリー
海岸で救助されたパイのもとに、しばらくして日本から保険調査員が訪れた。リチャード・パーカーのことや命の島の話など全てを語ったパイだったが信じてもらえず、「誰もが信じる本当の話をしてくれ。」と言われてしまう。するとパイが語り出したのは驚くべきストーリーだった。救命ボートに乗っていたのは動物ではなく船のコック、仏教徒の青年、パイの母、そしてパイの4人だったというのだ。仏教徒の少年は足を負傷していたため、コックは脚を切り落とさなければ命が助からないとパイと母親を説得した。悩んだ末に彼を助けるためにと、仏教徒の青年の身体を押さえコックに脚を切断させる手助けをしたが、残念なことに青年は助からなかった。しかし切断した脚をエサに魚を釣り始めたコックを見て、最初から助からないと分かっていただろうと2人は野蛮なコックを責める。コックは気にも留めず、さらに生き延びるために仏教徒を食べてしまう。そして母親とコックは言い争いになった。母親は危険を感じパイにイカダへ移るよう命じコックに立ち向かったが、コックは母親を刺殺しパイの目の前でサメの群がる海に投げ捨ててしまった。激昂したパイはコックを殺害した。
ここまでの話を聞いていたカナダ人の小説家は「つまりシマウマは仏教徒の青年でハイエナがコック、オランウータンが母親で、リチャード・パーカーはパイ自身だったということになる。」とパイ本人に確認すると、「君はどちらの物語を信じる。いずれにせよすでに君の物だ。」と物語を彼に託したのだった。
当時保険調査員が残した調査報告書には「トラと共に漂流し奇跡の生還を遂げた」と記してあった。
パイ自身は結婚し妻と2人の子供と中慎ましく生活していることを知り「物語はハッピーエンドだ」と小説家は語ったのだった。
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の登場人物・キャラクター
パテル一家
パイ・パテル(演:ゴータム・ベルール/アーユッシュ・タンドン/スラージ・シャルマ/イルファーン・カーン)
奇跡の体験をしたインド人の青年。彼の父親が経営していた動物園の動物たちと一緒に、新天地を求めてカナダに移住する予定だったが、航海中に海難事故に遭い船は沈没。家族を失う。運よくライフボートに乗ることができたパイは、オランウータンとシマウマ、ハイエナ、そしてリチャード・パーカーと名付けられたトラと共に漂流するのだが、数々の試練と残酷な現実が待っていた。奇跡体験を経て16歳の少年パイが人間では唯一の生存者となった。
サントッシュ・パテル/パイの父(演:アディル・フセイン)
日本語吹替:木下浩之
インドのポンディシェリで動物園を営む実業家。子供の頃小児麻痺に苦しみ神に祈りを捧げたが結局神ではなく西洋医学に救われた経験から、イスラム教徒でありながらもより科学を信じ自身の決断が道を切り開くと考えている。複数の宗教に興味を持つパイに、「同時にすべての神を信じるのは、何も信じないのと同じだからだ。」と叱責するなど厳格な父親だった。
ジータ・パテル/パイの母(演:タッブー)
日本語吹替:山像かおり
元植物学者。大学を卒業するも身分の低い男と結婚したと両親に勘当された。
幼いパイたちを厳しくも優しく育て、絵本を通じて神々についてパイに教えを説いた最初の人物。ジータ自身はヒンドゥー教徒でベジタリアンであることから息子たちも同様にベジタリアンとして育てる。
ラヴィ・パテル/パイの兄(演:アヤン・カー/モハマド・アッバス・カリーリ/ヴィビシュ・シヴァクマール)
パイの2つ上の兄。複数の宗教に興味を持つパイをからかう。
父の経営する動物園内でトラのリチャード・パーカーの檻に近づいた際には、パイの後ろに隠れて逃げ出すなど臆病な一面を見せる。
パイの関係者
アーナンディ/パイの恋人(演:シュラヴァンティ・サイナット)
日本語吹替:真壁かずみ
大学のダンス教室でリズムパートの代役を頼まれた際に出会った女学生。アーナンディのダンスの振り付けが1人だけ違ったことが印象に残り、不思議に思ったパイが付き纏ったことがきっかけでパイとアーナンディは次第に惹かれ合う仲になった。パイの一家が動物園を手放しカナダへ移住することになったため、張り裂けそうな思いを胸に2人は離ればなれになる。
ママジ/パイの父親の親友(演:エリー・アルーフ)
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目次 - Contents
- 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の概要
- 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のあらすじ・ストーリー
- 「神の話を聞きたい」とカナダ人小説家がパイの元を訪れる
- ピシンがパイになった日
- 心のまま様々な神に祈りを捧げるパイ
- リチャード・パーカーとの出会い。トラの瞳に魂を見るも残酷な教訓を学ぶことに
- カナダへの移住が決まり動物達と共に貨物船へ
- 貨物船が沈没。予想だにしなかった遭難生活の始まり
- 救命ボートで遭難生活のはじまり。リチャード・パーカーと2人で過ごす奇跡の毎日
- トラと共存する小型ボートでの日々
- 保存食も底をつき極限状態の中再び嵐に見舞われる
- 命の危機にあるとき現れた命の島
- 奇跡の生還。流れ着いた大陸でついに迎えたリチャード・パーカーとの別れ
- 「本当の物語」語られたもう一つのストーリー
- 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の登場人物・キャラクター
- パテル一家
- パイ・パテル(演:ゴータム・ベルール/アーユッシュ・タンドン/スラージ・シャルマ/イルファーン・カーン)
- サントッシュ・パテル/パイの父(演:アディル・フセイン)
- ジータ・パテル/パイの母(演:タッブー)
- ラヴィ・パテル/パイの兄(演:アヤン・カー/モハマド・アッバス・カリーリ/ヴィビシュ・シヴァクマール)
- パイの関係者
- アーナンディ/パイの恋人(演:シュラヴァンティ・サイナット)
- ママジ/パイの父親の親友(演:エリー・アルーフ)
- カナダ人小説家(演:レイフ・スポール)
- 貨物船「ツィムツーム号」の船員
- 貨物船コック(演:ジェラール・ドパルデュー)
- 仏教徒の船員(演:王柏傑)
- その他
- 教会司祭(演:アンドレア・ディ・ステファノ)
- 保険調査員/上司(演:ジェームズ・サイトウ)
- 保険調査員/部下(演:ジュン・ナイトウ)
- 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の用語
- リチャード・パーカー
- ポンディシェリ
- 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 小型ボートの上で繰り広げられる残酷な現実
- 美しい映像に注目。リチャード・パーカーと2人迎えた凪の朝
- 幻想的に光揺らめく海の奥深くに家族や恋人、森羅万象を見る
- 嵐が過ぎ去り、力なく横たわるリチャード・パーカーとパイ
- 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- パイ=リチャード・パーカー
- リチャード・パーカーという名前の由来
- 劇中のトラの86%はCG
- 主なロケ地は台湾とインド
- 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:マイケル・ダナ「Pi's Lullaby (from Life of Pi)/パイズ・ララバイ(「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」より)」