マダム・イン・ニューヨーク(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『マダム・イン・ニューヨーク』とは2012年のインドのコメディ映画。英語の苦手なインド人主婦が姪の結婚式を手伝うため単身渡米し、内緒で現地の英会話学校に通うことに。英語を通して普通の主婦だった自分に誇りと自信を取り戻していく。ガウリ・シンデー監督作品。主演のシュリデヴィは1970年代から1990年代にかけて活躍した、インド映画界の人気女優。1997年に結婚・休業し、本作が15年ぶりの復帰作となる。ダンスやアクションで知られるボリウッド映画とは一線を画す温かなドラマ。インドでも大ヒットを記録した。

『マダム・イン・ニューヨーク』の概要

『マダム・イン・ニューヨーク』とは、2012年に製作されたインドのコメディ映画。2012年9月に開催された第37回トロント国際映画祭で初上映された。ダンスやアクションで知られるボリウッド映画(インドのムンバイで製作される映画のこと)とは一線を画す温かなドラマになっており、インドでも大ヒットを記録した。インド人主婦が姪の結婚式を手伝うため単身ニューヨークへ渡り、苦手な英語を克服するため家族に内緒で英会話学校に通うことに。英語を学びながら誇りと自信を取り戻していく姿が描かれている。アメリカの映画評論サイト『Rotten Tomatoes(ラトウゥン トメイトウ)』によると、評論5件の内の4件がこの映画を高く評価しており、3,000件を超える一般観客からの支持率は拾に8割を超えているという。

ガウリ・シンデー監督作品。
主演にインドの人気女優シュリデヴィ。シュリデヴィは1970年代から1990年代にかけて活躍した、インド映画界の人気女優。4歳でデビユーし、300本以上の映画に出演。1997年に結婚し、女優業を休業。本作が15年ぶりの復帰作となる。

自分の価値を認めてもらえない専業主婦が一念発起し、英語が苦手というコンプレックスを克服して誇りと自信を取り戻していく姿を描いたインド製ドラマ。専業主婦のシャシは、2人の子どもと忙しいビジネスマンの夫サティシュのために尽くしてきたが、事あるごとに家族の中で自分だけ英語ができないことを夫や子どもたちにからかわれ、傷ついていた。ニューヨークに暮らす姉から姪の結婚式の手伝いを頼まれ、渡米したシャシは、「4週間で英語が話せる」という英会話学校の広告を見つけ、姉にも内緒で英会話学校に通うことを決める。仲間とともに英語を学ぶうちに、シャシは次第に自信を取り戻していく。

『マダム・イン・ニューヨーク』のあらすじ・ストーリー

インドのごく普通の主婦シャシ

シャシは、2人の子供サプナ、サガルとビジネスマンの夫・サティシュのために尽くす、インドのごく普通の主婦。料理上手なシャシは、お菓子”ラドゥ”を贈答用として販売する程の腕の持ち主だった。そんなシャシの悩みは、家族の中で自分だけ英語が出来ないこと。ある日娘サプナの学校で先生と面談があり、仕事で忙しいサティシュに代わってシャシが出席した。シャシは英語が苦手なのでインドの公用語にあたるヒンディー語で話してほしいと先生にお願いをし、無事に面談は終了したが、英語の成績が優秀なサプナに恥をかかせてしまった。帰り道シャシは「ママは先生を不安にさせた」とサプナにひどく怒られてしまう。サティシュには対等に見てもらえず、サプナにも馬鹿にされる始末。度々サティシュやサプナにからかわれ、傷つき、ぶつけようのない不満を持ち続けていた。

ニューヨークへ出発

ある日シャシは、ニューヨークに暮らす姉のマヌから姪ミーラの結婚式の手伝いを頼まれ、一足先に一人でニューヨークへ行くことに。なんとか飛行機に乗り込んだが、飲み物の頼み方すら分からない。そんな中シャシの隣に親切なインド人男性が座り、困っているシャシに飲み物の頼み方を教えてくれた。その後はニューヨークまで映画を一緒に見て過ごす。空港に到着後、インド人男性はシャシに「何事も初めては1度だけ。その1度は特別な体験だ。だから楽しんで。」と伝え、別れた。

空港にマヌと姪のラーダが迎えに来てくれ、シャシはマンハッタンを観光した。その夜マヌの自宅にて家族で食事をしたが、英語が分からないのと旅の疲れで先に部屋へ戻ってしまう。家族が恋しくなったシャシはサティシュに電話を掛け、子供たちの様子を伺う。しかし「エレベーターに乗るから」と言われ、すぐに電話を切られてしまった。

1軒のカフェ

次の日シャシは公園を散策し、1軒のカフェを見つけた。店員に注文を聞かれるが、上手く答えられない。やっとの思いで注文を終えお金を払ったが、他のお客さんとぶつかってしまい、コーヒーをこぼしてしまう。パニックになったシャシは商品を受け取らず、店から出た。シャシが打ちひしがれていると、後ろに並んでいたフランス人男性ローランがコーヒーを持ってきてくれた。ローランは片言の英語で「あの店良くない。店員感じ悪い。」とシャシを励まし、去っていった。

新たな一歩

そんななかシャシの目に飛び込んできたのは、「4週間で英語が話せる」という英会話学校の広告だった。勇気を出して英会話学校に電話を掛け、4週間クラスの授業料は400ドルと決して安くはない金額であることがわかった。悩みに悩んだ結果、家族はもちろん、ニューヨークのマヌたちにも内緒でシャシは学校に通う決意をする。学校には世界中から集まった英語が話せない生徒たちがおり、その中にはシャシをカフェで助けてくれたローランもいた。

仲間との交流

仲間と交流を深めながら順調に英語を学んでいくシャシ。自分の英語にも少しずつ自信が持てるようになってきた。そんななかシャシに特別親切にしてくれたのは、ローランだった。授業終わりにローランは「一緒にコーヒーを飲もう」と誘ったが、家族が帰ってくる前に家に帰らなければいけないシャシは度々断っていた。だがお互い片言の英語で会話をしていくうちに、心の距離が徐々に縮まっていく。ある日「女性の料理はただの家事・義務」と言うシャシに対して、ローランは「料理は愛だ。愛を込めて作るからおいしい。皆を幸せにする、アーティストだ。」と返し、シャシはそれが嬉しくて微笑んだ。

失われた自信

ある日ラーダが「彼イタリア人?」とシャシに尋ねた。シャシは驚きを隠せなかった。どうやら街中で一緒に歩いているのを偶然見かけたらしい。シャシは誰にも言わないでとラーダに頼み、英会話学校に通っていることを打ち明けた。ラーダはとても喜んでくれ、シャシはラーダをクラスメイトに紹介した。その後も英会話学校の仲間とともに充実した日々を送るシャシ。ある日の学校帰りにクラスメイトと映画を観に行った。その帰りにサプナから電話があり、英語の本が見当たらないと感情的にシャシを罵った。シャシはサプナの勉学の妨げにならないよう、事前に隠しておいたのだ。シャシは「戸棚の中に隠しておいた。大丈夫、誰も読んでない。」と伝えた。そうするとサプナは「読めないじゃん、英語だもん!」とシャシに反論した。シャシは英語が苦手な自分を否定されたように感じ、深く傷つき、落ち込んだ。そんなシャシの様子に気づいたローランは寄り添いヒンドゥー語で胸の内を明かすシャシの言葉に静かに耳を傾けた。

突然の告白

その後もシャシは英語の勉強を重ね、カフェで注文が出来るようになったり、ニュースも少しずつ聞き取れるようになっていく。失われてた自信がまた少しずつ回復した矢先、ゲイの担任デヴィッド先生のゴシップネタでクラスメイトが盛り上がっていた。それを見たシャシは「人はみな違う。あなたから見て変でも、彼から見たらあなたこそ変。でも心の痛みは誰でも同じ。」と注意する。クラスメイトは反省し、シャシの考え方に納得した。

卒業も近づいてきた頃1人ずつスピーチをする授業があり、ローランはこのクラスのどこが好きかと問うデヴィッド先生に対し、「教室に来るのはシャシに会うため。彼女はとても美しい。」と告白してしまう。シャシはびっくりして、足早に地下鉄に乗った。ローランはシャシに謝った。シャシは「あんな言葉久しぶりで驚いただけよ。」と告げ、地下鉄を降りた。

母親としての責任感

いよいよ学校卒業まで残り1週間。最終日には最終試験として1人5分間のスピーチをすることになっている。その試験に合格すると英語で意思の疎通ができると証明する修了証書がもらえる。だが試験の日とミーラの結婚式が被っていた。シャシがそれに悩む中、遅れてシャシの家族がニューヨークに到着した。

家族が到着した後も、シャシは家族に内緒で学校に通い続ける。しかし学校に行っている間に幼い息子サガルが怪我をしてしまった。サガルを置いて出かけたことをサティシュに批判され、シャシは母親としての自覚や責任感に欠けていた自分を責め、卒業を目前に学校へ通うことを諦める。それでも学校の仲間たちはシャシと共に卒業しようと授業中にシャシに電話を掛け、授業内容を聞かせたり、様々な方法で協力をした。

叶わぬ夢

最終試験の前日クラスメイトから電話があり、「最終日に会えるのを楽しみにしている」という内容だった。ローランは最後に「気が付いたら君に恋をしていた。だから今すぐ君に会いたいよ。コーヒー1杯だけでも。」と言い、電話を切った。横に居たラーダにシャシも恋をしてるのかと聞かれ、「ラーダ、恋は要らないの。欲しいのは尊重されること。」と告げた。シャシはラーダに最後のお願いとして、試験を受けさせてほしいと願い、ラーダはシャシの願いを受け入れた。

試験は午前中1時間、結婚式は午後から。結婚式の準備は着々と進み、準備の合間を縫ってスピーチの練習もした。結婚式でお客さんをもてなすために作ったラドゥも完成した。しかし客席に運んでいる際にサガルがふざけてシャシを脅かし、びっくりしたシャシはお皿ごとラドゥをひっくり返してしまい作り直すことに。結局最終試験に行けなくなってしまった。

待ちに待った結婚式

いよいよ結婚式が始まり、クラスメイトとデヴィッド先生も来てくれた。ラーダが電話してくれたようだ。シャシは驚きを隠せなかったが、一緒に成長してきた仲間の顔を見ることが出来て嬉しそうに微笑んだ。そしてサティシュに皆を紹介した。

賑やかな結婚式もいよいよ終盤へ。ラーダがシャシにスピーチをお願いしたが、サティシュに「妻は英語が苦手なもので。」と断わられる。それでもシャシは学んだ英語で皆が見守るなか一生懸命スピーチをした。「家族は決して決めつけない。家族は引け目を感じさせない。家族だけよ、あなたの弱みを笑わないのは。家族だけよ、愛と敬意を与えてくれるのは。」と締めくくり、盛大な拍手に包まれた。そしてデヴィッド先生はシャシに試験合格を告げ、卒業証書を渡した。

その後シャシはデヴィッド先生とクラスメイトが座っているテーブルにラドゥを配りに行く。ローランはシャシに「君との出会いは、僕の人生で1番の奇跡だ。本当だよ。」と言った。それに対してシャシは「人は自分のことが嫌いになると、自分の周りも嫌になって新しさを求める。でも自分を愛することを知れば、古い生活も新鮮に見えてくる。ありがとう、自分を愛することを教えてくれて。」と感謝した。

その様子を見ていたサティシュはシャシに「まだ僕を愛しているか?」と尋ねた。シャシは微笑み、「愛していなければラドゥを2つはあげないわ。」と言った。

『マダム・イン・ニューヨーク』の登場人物・キャラクター

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