北極百貨店のコンシェルジュさん(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『北極百貨店のコンシェルジュさん』とは、2017年3月号から2018年12月号まで『ビッグコミック増刊号』(小学館)で連載された西村ツチカによるファンタジー漫画。単行本は全2巻。舞台は訪れる客が全て動物という北極百貨店。そこで新人コンシェルジュの秋乃(あきの)が、お客様の要望に答えようと先輩やお客様の力を借り奔走する。独特で美しい世界観と繰り広げられる人間模様が話題になり、2022年に第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した。2023年にはアニメーション映画が制作される。

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『北極百貨店のコンシェルジュさん』の概要

『北極百貨店のコンシェルジュさん』とは、2017年3月号から2018年12月号まで『ビッグコミック増刊号』(小学館)で連載されたファンタジー漫画(単行本全2巻)。および、それを原作としたアニメーション映画である。作者・西村ツチカの独特で不思議な世界観と美しい描写。そして、そこで繰り広げられる人間ドラマが話題を呼び、2022年第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した。
舞台は、訪れる客がすべて動物という不思議な百貨店・北極百貨店。主人公の新人コンシェルジュの秋乃(あきの)が、ひと癖もふた癖もある客たちからの難題に向き合い、悩みに寄り添いながら解決に奔走する。先輩コンシェルジュや、ときにはその場に居合わせた客の力を借りて要望に応えていくなかで、秋乃は人に寄り添うことの大切さを学んでゆく。
作中にはワライフクロウなど絶滅種の動物が登場する。彼らはV・I・A(ベリー・インポータント・アニマル)と呼ばれ、大切にもてなされる。西村ツチカは、連載開始にあたり絶滅動物を描きたいと語った通り、作中には彼らが絶滅に至った背景の短い解説が添えられストーリーにも反映されている。
2023年10月20日に公開されたアニメーション映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』は、ハイキュー!!シリーズや『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』などの名作を世に送り出してきたProduction I.Gが映像化。監督は、本作が劇場版アニメの監督デビューとなるアニメーター・板津匡覧、脚本は大島里美。同年に開催されたプチョン国際アニメーション映画祭にて、最も観客からの着目が高かった作品に贈られる、韓国漫画アニメーション学会長賞を受賞する。この他、第26回ファンタジア国際映画祭Axis部門長編アニメ部門観客賞銀賞。スコットランド・ラブズ・アニメーション2023 審査員賞では、全会一致で選定された。

『北極百貨店のコンシェルジュさん』のあらすじ・ストーリー

北極百貨店の新人コンシェルジュ・秋乃

主人公・秋乃(あきの)がコンシェルジュとして働き始めたのは、お客様のすべてが動物という不思議な百貨店・北極百貨店。そこには見慣れない絶滅種のお客様も訪れ大切にもてなされている。
憧れの職について気合が入る秋乃だが、失敗が続き先輩コンシェルジュに注意を受けたり、神出鬼没なフロアマネージャー・東堂(とうどう)に叱責されたりと前途多難。笑顔が大切と心に念じて売り場に出たはずなのに徐々に笑顔を失ってゆく秋乃。そんな時、ペンギンのお客様を踏んづけてしまう。平謝りする秋乃にペンギンのお客様は、笑顔を無くした秋乃を嘆き立ち去る。

クライアントの接待で来店していたフェレットが秋乃に声をかける。接待の相手はシロフクロウの社長夫妻。絶滅種にあたる特別なお客様、V・I・A(ベリー・インポータント・アニマル)だ。秋乃は社長夫人が迷いながら購入を見送った品を贈ることをフェレットに提案する。その心遣いが夫妻に喜ばれフェレットの接待は成功し、今後も北極百貨店を利用したいと感謝される。その後もウミベミンクの親子、ニホンオオカミのカップル、カリブモンクアザラシなど、さまざまなV・I・A客の要望に、先輩たちの支えや東堂の助言を受けながら応える日々が続く。
休暇中の先輩コンシェルジュの森(もり)の代わりに応援に来たOBコンシェルジュの玉木と出会う。秋乃は、彼が長年お客様と培ってきた信頼関係を活かしてお客様からの要望を解決する姿を目の当たりにする。秋乃はその姿に憧れ、いつか自分も玉木のようにお客様の心に寄り添えるコンシェルジュになりたいと思うのだった。

ホスピタリティの心と北極百貨店の秘密

徐々に仕事に慣れてきた秋乃は、開店前にコンシェルジュは単なるサービス提供者ではなく常にホスピタリティを意識すべき存在だと、毎日心に刻みながら開店を迎える。そして、相変わらず一生懸命にお客様の心を和ませていた。
ある日、レストランで料理を待ちきれずに席を飛び出した子供のクアッガに出会う。秋乃は必死にあやそうとするがうまくいかず、親も周囲に迷惑をかけまいと席を立とうとする。だが、給仕長の機転で子どもに給仕の役割を与えたことで子供のクアッガは満足し落ち着く。秋乃はお客様の気持ちを汲み取れなかったことを反省し、自分の気の緩みからくる至らなさ気づかされる。

一方、東堂は秋乃本人には知らせずに一年目試験を課していた。課題は3つ。まず、お客様同士の揉め事への対応、次に取り扱いのない商品を希望されるお客様への対応。秋乃はいずれも冷静に解決する。最後の試験は、わずかワンコインで娘の誕生日祝いを探すゴクラクインコへの対応だ。高級百貨店の北極百貨店ではワンコインでプレゼントを探すのは難しい依頼だが、偶然に以前秋乃に助けられたバーバリライオンのカップルが来店し協力してくれることになる。信頼関係を結べたお客様と協力して、目の前のお客様の要望に応えた秋乃は3つ目の試験もクリアしその証として北極百貨店のオリジナルスカーフを授与される。実は3つ目の依頼は東堂が用意したものではなく想定外の出来事だった。

秋乃が初日に踏んづけてペンギンと間違えてしまって以来、頻繁に秋乃の目の前に姿を見せていたエルルの正体が明らかになる。彼自身も絶滅種のオオウミガラスで、百貨店の創業者の息子だった。エルルによって北極百貨店の成り立ちが語られる。オオウミガラスは19世紀のパリに百貨店が誕生した時代に人間によって絶滅に追いやられた種だった。北極百貨店は、人間によって失われた絶滅種を最も重要なお客様として祀るために創設された場所だったのだ。
エルルは、コンシェルジュとして成長していく秋乃の姿を見守りながら、歴史が違って北極百貨店が絶滅種を祀る場所でなかったとしても、彼女のようにお客様に寄り添い、心から仕事を楽しむ存在と共に働きたいと思うようになっていた。一方秋乃は、北極百貨店でひと時を過ごしたお客様のその後を知ることは多くないと感じ、サプライズは成功したのかどうかと想いを馳せる。ただお客様が扉の外でも笑顔でいらっしゃいますように秋乃は心から願うのだった。

『北極百貨店のコンシェルジュさん』の登場人物・キャラクター

主人公

秋乃(あきの)

CV:​川井田夏海
北極百貨店の新人コンシェルジュ。
子供の頃からの憧れであるコンシェルジュの職に就いた。素直で一生懸命な秋乃は、フロアーマネージャーの東堂や先輩コンシェルジュ達だけでなく、お客様からもホスピタリティの心を学びながら一人前のコンシェルジュを目指す。

北極百貨店

エルル

CV:大塚剛央
絶滅種のオオウミガラス。北極百貨店の創業者の息子で、子供の頃に北極百貨店のCMに出演していた。
秋乃がコンシェルジュとして成長する姿を見て、彼女となら歴史が違っていたとしても一緒に働きたいと思うほど秋乃に信頼を寄せている。

東堂(とうどう)

CV:飛田展男
北極百貨店・フロアマネージャー。秋乃の直属の上司。
百貨店のお客様やスタッフたちの様子を、常に目を光らせて見ている。そして、意外な場所から秋乃のもとに現れ的確なアドバイスを与える。

森(もり)

CV:潘めぐみ
秋乃の先輩コンシェルジュ。
お客様の事情を汲み必要とあらば、臨機応変にルールを曲げてお客様を対応するようなコンシェルジュである。

岩瀬(いわせ)

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