おんなのこきらい(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『おんなのこきらい』とは、MOOSIC LAB 2014に出品され、準グランプリ、観客賞、最優秀女優賞、男優賞を受賞するなど高い評価を受けた映画である。2015年には、SPOTTED PRODUCTIONS配給により劇場公開された。監督は加藤綾佳、主演は森川葵が務めた。
女の子の価値は可愛いことがすべてと信じるOL・キリコが、自分になかなかなびかない男性・幸太と出会ったことで、価値観が変化していく様子が描かれている。ポップなのに毒気を含んだ女心の描き方が見どころである。

『おんなのこきらい』の概要

『おんなのこきらい』とは、音楽×映画の実験室「MOOSIC LAB 2014」に出品された映画である。準グランプリ、観客賞、最優秀女優賞、男優賞を受賞するなど高い評価を受け、SPOTTED PRODUCTIONS配給により、2015年2月14日に劇場公開された。上映のたびにリピーターが増えていき、最終的にはディレクターズ・カット版に再編集が施され、インディーズ映画ながら単独一般公開されるという快挙を成し遂げた。
監督は加藤綾佳、主演は森川葵が務め、主題歌と劇中歌は3人組エレクトロポップユニット「ふぇのたす」が担当している。
女の子の価値は可愛いことがすべてと信じるOL・和泉キリコ(いずみ きりこ)が、自分になかなかなびかない男性・高山幸太(たかやま こうた)と出会ったことで、価値観が変化していく様子が描かれている。ポップなのに毒気を含んだ女心の描き方が見どころである。

『おんなのこきらい』のあらすじ・ストーリー

可愛さに固執するキリコと高山幸太の出会い

会社の先輩も自分よりブスだと見下している和泉キリコ(左)

和泉キリコ(いずみ きりこ)は、デザイン会社に勤務する23歳のOL。可愛い見た目と仕草に加え、媚を売る態度で異性を手玉に取り、多くの男性を手中に収めてきた。しかし華やかな外見の裏では、チョコレート、アイスクリーム、マカロンなどの可愛い食べ物を大量に食べては吐き出すという過食嘔吐を患っていた。キリコは同性からは嫌われており、特に会社の先輩であるまゆみにはあからさまに嫌味を言われていた。しかし、可愛いことが価値観のすべてであるキリコは、まゆみのこともブスだと下に見ていたため、まったく意に介していなかった。
ある日キリコは、会社の先輩である田辺(たなべ)から、2人きりで飲みに行こうと誘われる。その誘いを断ったキリコが向かったのは、ユウトが経営するバーだった。ユウトとは長い間、友達以上恋人未満の煮え切らない関係を続けていたが、キリコはユウトと正式に付き合いたいと考えていたのだ。久々に来店したキリコに、ユウトは新しいアルバイトとしてさやかを紹介する。これまで勤務してきたアルバイトのケンジの就職が決まったため、代わりに入るスタッフなのだという。さやかは、彼女はいないと語っていたユウトとキリコの関係が気になると言って詮索しようとする。そんなさやかに対し、キリコは自分が彼女のようなものだと答えるのだった。
別の日、キリコはまゆみのアシスタントとして、アクセサリー作家・高山幸太(たかやま こうた)の店に同行する。グッズ制作のための企画書をもとに提案を進めるキリコとまゆみだが、「僕のトーンと違う」と幸太は難色を示す。そんな幸太に対して、キリコは「私は可愛いと思う」と上目遣いで媚を売る。結局幸太がキリコになびくことはなく、後日修正案を提出することにして、まゆみとキリコは店を後にした。
ユウトに呼び出されたキリコは、ユウトの自宅へ向かい、いつものように一夜を共にする。翌朝、ユウトの家を立ち去る際、キリコは寝ぼけているユウトに好きだと囁いた。

ユウトとさやかの急接近に怯えるキリコ

後日、キリコは幸太から連絡を受ける。幸太の会社にペンケースを忘れてきてしまっていたのだ。キリコは前回の提案の修正案を持って幸太の自宅を訪れるが、幸太は今回もキリコの企画書に納得せず、「これじゃあ可愛いっていうより可哀想」と感想を述べる。幸太にとってキリコの企画書は、可愛さばかりが押し出され、素材一つ一つの個性が生かされていないように感じたからだった。そして、男に媚を売れば何もかも自分の思い通りに事が運ぶと考えている様子のキリコに、「そういうの疲れるでしょ」と言い放つ。
幸太の家を後にしたキリコは、その帰り道で、ユウトとさやかが親しげに会話している場面に遭遇する。ユウトがさやかの頭を撫でているところを見て、キリコは2人の関係がただの同僚同士ではないことを察する。キリコは、「私あんたのこと嫌い。大っ嫌い」とさやかを睨みつけるが、さやかはただヘラヘラと笑うばかりだった。
会社では、まゆみがメインで進めている案件にも関わらず、キリコが無断で幸太に修正案を提案していたことを知り、まゆみが激怒していた。しかし、「媚を売ればいいと思ってるこのビッチが」と暴言を吐くまゆみに対して、キリコが動じることはなかった。何を言われても態度を変えないキリコに呆れ果てたまゆみは、これ以上キリコに関わることはやめようと考えるようになった。
その夜、キリコは再度修正案を持って幸太の自宅に押しかける。そこで幸太は、自分とキリコが同じ専門学校出身であることを打ち明ける。在学中、キリコは幸太のことを知らなかったが、「学校一可愛いが性格は超悪い」と噂になっていたキリコのことを、幸太は一方的に知っていたのだった。幸太は、キリコの男性に媚を売るキャラクターが実は作られたものであることを見抜いており、「素の方がいい」とキリコに伝える。幸太の前では自分を取り繕わなくてもいいのだと気が楽になったキリコは、次第に幸太との距離を縮めていった。
ある日の就業前、キリコは後輩の茜(あかね)とゴミ捨てに行った。そこで茜は、自分が田辺と付き合っていること、そしてそれを黙っていてほしいとキリコに打ち明ける。キリコは二人の関係を前から察していたが、誰にも言うつもりはなかった。それを聞いた茜は安心し、まゆみたちからの嫌味にも屈しないキリコの心の強さに憧れていると伝える。キリコは茜からランチの誘いを受けるが、その答えを保留にした。
その夜、キリコは久しぶりにユウトに呼び出され、ユウトの自宅を訪ねた。しかしユウトはどことなくよそよそしく、連絡をくれなかった理由を聞いても、「忙しかったから」としか答えない。キリコが甘えてもユウトは思うような反応を返してくれず、キリコは「世界中の皆に嫌われてもユウトが好き」と告げるのだった。
その数日後、キリコはケンジから相談を受ける。ケンジの相談はさやかの異性関係についてであった。さやかは「ユウトと付き合っている」と言いながらも、ケンジを含む多数の男性と関係を持っているというのだ。キリコはユウトとさやかの関係が思っていた以上に深まっていることを知り、衝撃を受ける。

キリコとさやかの対峙

ユウトとさやかが肉体関係を持っていると知って放心状態のキリコは、フラフラと幸太の店を訪れていた。打ち合わせの内容も頭に入らず、茫然自失となっているキリコを、幸太は心配する。ついには店の隅にしゃがみ込んでしまったキリコに対し、幸太は「お腹痛い?吐きそう?」と言いながら黒糖の飴を差し出す。幸太の突拍子もない行動に、キリコは心が落ち着いていくのを感じる。そして、自分の本性を知っている幸太がなぜこれほど自分に優しくしてくれるのか不思議に思う。そんなキリコに対し幸太は「見繕っているキリコより素のキリコの方がいいんじゃないかなぁ」「本当の自分見せて、なくなるもんなんてないんじゃないかな」と言うのだった。
幸太の言葉に勇気をもらったキリコは、もらった飴を口に含み、その足でユウトのバーに向かった。カウンターまでドリンクを運んできたさやかは、何気ない様子でキリコと雑談を始めようとする。単刀直入に、ユウトとの関係についての質問を切り出すキリコだったが、さやかは怯む様子がない。「ユウトは優しいからキリコを拒めないだけだ」と悪びれた様子もなく語るさやかに我慢がならず、キリコはさやかにドリンクをぶっかける。そこでついにユウトが仲裁に入るが、ゆうとが庇ったのはさやかの方だった。キリコは「わたしのほうがずっとずっと好きだし、わたしのほうがずっとずっと可愛いもん!」と言い募るが、ユウトは冷たく「そういうとこだよ。」と吐き捨てた。さらに、さやかからは「オバケみたい」と言われてしまう。
打ちひしがれたキリコは、散らかり放題の自宅に戻って家中のものを食べ尽くし、さらに翌日は会社を無断欠勤してしまう。公園のベンチに寝そべり、ぼんやりしていたキリコのもとに、田辺が現れる。心配して探しに来たのだという田辺に連れられて、キリコはラブホテルに向かう。キリコと関係を持ったことで有頂天となった田辺は「付き合おうよ、俺ら」と交際を申し込んできたが、キリコは「茜ちゃんのこと好き?」と切り返した。「なんでそこで茜ちゃんがでてくるの?」とシラを切ろうとする田辺に対し、キリコは「嘘つき」と吐き捨ててホテルを出ていった。
自宅に戻ってシャワーを浴びたキリコは、鏡を覗き込む。そこには、抜け殻のような表情の可愛くないキリコが映っていた。キリコは涙を流しながら、自身のロングヘアにはさみを入れる。

幸太の秘密と新しい一歩を踏み出すキリコ

キリコは無意識のうちに幸太を呼び出していた。キリコの自宅を訪れた幸太は、バッサリと髪を切ったキリコを見て衝撃を受ける。しかし、突然嘔吐し過呼吸気味に泣き続けるキリコを見て、ユウトに振られたのであろうことを察して優しく慰めてくれる。「好きだった時も振られた後も、ずっと頭が働いてなくて、気持ちが宙に浮いていて怖かった」と言うキリコを、幸太は「頑張ったね」と背中をさすり続けてくれた。ボロボロの自分を自覚していたキリコは、「オバケみたいでしょ?私のいまの顔」と自虐するが、幸太は「和泉さんは、可愛いよ」と言ってくれたのだった。
失恋から数日後、キリコは茜を呼び出し、自分と田辺が体の関係を持ったことを暴露する。田辺は不実で軽率な男だというキリコの忠告を、茜は受け入れずに拒絶した。「大っ嫌い。もう私の前に現れないでください」とその場を立ち去ろうとする茜の背中に向かって、キリコは「幸せになってね。私は幸せになるから」と声をかけるのだった。
その足でスーパーに寄り、鍋の材料を買い揃えたキリコは、それらを持って幸太の自宅に押しかける。玄関先でキリコを出迎えた幸太は、チラチラと家の中を気にするそぶりを見せる。その様子が気になったキリコは、話があるからと幸太を押し切って家に上がり込む。そこでは、ユリエと名乗る見知らぬ女性がカレーを作っていった。幸太はユリエに、キリコのことを友人と紹介する。ユリエはキリコが持っていた鍋の材料を見て、「じゃあカレー鍋にしよう」と提案する。
幸太とユリエと3人で鍋を囲むことになったキリコだが、甲斐甲斐しく高山の世話をするユリエの姿を見て、2人のただならない関係を察する。ユリエは無理に着飾ろうとせず自然体で、キャラを演じずとも明るい性格の女性だった。2人と一緒にいることが耐えられず、鍋の途中でキリコは幸太の家を後にする。キリコが幸太に好意を持っていることを察していたユリエは、「いいの?追いかけてあげなくて」と幸太を促すのだった。
キリコは公園に座り込み、泣きじゃくっていた。そこに幸太が現れ、いつかの日と同じように黒糖の飴を差し出す。しかしキリコはその手を振り払い、「本当に好きでもない子に簡単に可愛いなんて言わないでよ」と激昂した。自分が面倒なことは分かっている、けれどユリエのようにはなれないと泣くキリコは、「もっと一緒にいたい。私のこと好きになってよ」と告白するが、幸太はその想いを受け止めることができなかった。「待ってる人がいるから」とキリコの頭を撫でた幸太は、ユリエの待つ家へと帰っていった。
感情をすべて吐き出したキリコは、振られたにも関わらず、どこか清々しさを感じていた。自分は可愛さ以外何も持っておらず、可愛いだけではダメだと言うことに、今更になって気づいたのだった。翌朝、キリコは自転車で家を出た。「可愛いね」と声をかけてきた男性がいたが、笑顔で明るく「はい!」と返事をしただけで、キリコはその場を走り去るのだった。

『おんなのこきらい』の登場人物・キャラクター

主要人物

和泉キリコ(いずみ きりこ/演:森川葵)

自分のことを超可愛いと信じて疑わない、デザイン会社勤務の23歳のOL。見た目と仕草の可愛さから異性には絶大な人気を誇るが、性格は悪く同姓からは目の敵にされている。しかし当の本人は、女の子の価値は可愛さがすべてと思っているため、同性からの悪口は嫉妬と受け止めて少しも意に介さない。
過食嘔吐症を患っており、可愛いスイーツを暴食しては吐き戻すことを繰り返している。部屋は食べ物で散らかっている。
会社の先輩と訪問した仕事先でアクセサリー作家の高山幸太(たかやま こうた)と出会い、他の男性とは違って自分になかなかなびかない彼に惹かれていく。
実は幸太とは専門学校時代の同級生だったが、キリコは幸太のことを知らなかった。

高山幸太(たかやま こうた/演:木口健太)

アクセサリー作家で、キリコと同じ専門学校出身。キリコは幸太を覚えていなかったが、可愛いが性格が悪いことで有名だったキリコのことを、幸太は一方的に覚えていた。
キリコがどれだけ媚を売っても決してなびかず、キリコが準備した企画書を見て、「可愛いっていうか可哀想です」とはねつけた。ムキになったキリコは、それ以来幸太のもとに通うようになる。
キリコがキャラクターを演じて異性に媚びていることを見抜き、素の姿を「そっちの方が好き」と言ってくれる。
落ち込んでいるキリコに黒糖の飴をあげるなど優しく振る舞うが、実は彼女がいて、最後にはキリコを突き放す。

ユウトのバーのスタッフたち

ユウト(演:谷啓吾)

バーの店長で、キリコと友達以上恋人未満の関係を続けている男性。キリコを幾度となく自宅に呼びつけて体の関係を持つが、セックスフレンド止まりで決して彼女にはしようとしない。
新人アルバイトのさやかがバーのメンバーに加入した途端、キリコに隠れてさやかとも体の関係を持つようになる。

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