おんなのこきらい(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『おんなのこきらい』とは、MOOSIC LAB 2014に出品され、準グランプリ、観客賞、最優秀女優賞、男優賞を受賞するなど高い評価を受けた映画である。2015年には、SPOTTED PRODUCTIONS配給により劇場公開された。監督は加藤綾佳、主演は森川葵が務めた。
女の子の価値は可愛いことがすべてと信じるOL・キリコが、自分になかなかなびかない男性・幸太と出会ったことで、価値観が変化していく様子が描かれている。ポップなのに毒気を含んだ女心の描き方が見どころである。

幸太がいつも持ち歩いているお菓子。キリコがつらい思いをしている時は決まって幸太がこの飴を差し出してくれる。
黒糖の飴は、キリコが過食しているお菓子とは異なり、見た目が可愛いお菓子とは言えない。これは見た目の良し悪しを気にするキリコと、見た目以上に内面を重視する幸太の違いを示唆しており、のちに登場する幸太の彼女・ユリエがキリコとは正反対のタイプの女性であることを暗示している。

『おんなのこきらい』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

高山幸太「本当の自分見せて、なくなるもんなんてないんじゃないかな」

たびたびキリコと自宅で会うようになり、キリコに対して優しく振る舞う高山幸太

素の自分を見せず、取り繕って振る舞わないといけないと考えているキリコに対して、幸太がかけたセリフ。
ユウトとさやかの関係を知って動転しているキリコに対し、幸太は黒糖の飴をくれたりと優しく振る舞う。「どうして素の私を知っているのに優しくしてくれるのか」と尋ねるキリコに対し、幸太は「取り繕わなくていい」「本当の自分見せて、なくなるもんなんてないんじゃないかな」と言う。しかし、可愛い女の子を演じ続けてきたキリコにとって、「本当の自分を見せる(可愛さを捨てる)」ということは、「すべてを失う」ということにも等しいものだった。幸太は慰めの気持ちからこの言葉を口にしているが、「可愛さをとったら何も残らない」「可愛いだけが取り柄」を自覚しているキリコにとっては、酷とも取れるセリフである。

失恋したキリコが自身の髪の毛を切り落とす

鏡に映る「可愛くない自分」に呆然とするキリコ

ユウトに振られたキリコが、自暴自棄になって田辺と体の関係を持った後、鏡に映る自分の姿に絶望して髪の毛を切るシーン。髪を切った直後に幸太が駆けつけてくれ、「オバケ」のようになった自分のことを受け入れてくれたことで、キリコはフリルやミニスカートなどの可愛い服の代わりにジーンズなどのカジュアルな服を身につけるようになり、少しずつ素の自分を出せるようになっていく。キリコが可愛さの呪縛から解き放たれていくきっかけとなる、象徴的なシーンである。

和泉キリコ「私のこと好きになってよ」

幸太に彼女がいたことを知ったキリコが、幸太への想いを告白した時のセリフ。キリコは自分の素の姿を知りながらも優しくしてくれる幸太に好かれ、ユウトに振られてからは女の子らしい服装やロングヘアを捨て去り、ありのままの姿で振る舞えるようになっていた。しかし幸太の彼女のユリエは、着飾ったりしなくても自然体のままで魅力的な女性であり、キリコは「自分が男だったとしても、自分みたいな女よりもユリエみたいな人の方を大事にしたい」と打ちひしがれる。「もっと一緒にいたい。私のこと好きになってよ」というセリフからは、自分は面倒な女でありユリエのようにはなれないことも自覚しながらも、それでも幸太に捨てられたくないというキリコの悲壮な思いが伝わってくる。

『おんなのこきらい』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

主演の森川葵のキャスティングは監督の一目惚れ

監督の加藤綾佳は、主演の和泉キリコ役について、「企画書にはひたすら『可愛い子』と書いていたが主人公はなかなか決まらなかった」と、キャスティングが難航したと語っている。そんな中で森川葵の写真を見かけ、「『この子可愛い!』と一目惚れでオファーした」と明かした。熱烈なオファーを受けた森川は、「私より可愛い子なんかいっぱいいるから私でいいのかな」と困惑しながらも「監督に惚れられたのでやるしかない」と映画への出演を決意した。
森川の演技について、ネットでは「この人のキリコでなければこの物語は成り立たない。鮮烈で痛々しいほどの演技」「切羽詰まった背中の演技は見事のひとこと。脆弱な存在感が見事に伝わってくる」と称賛の声が上がっている。

映画の着想はふぇのたすの楽曲『女の子入門』

本作は、音楽と映画の祭典「MOOSIC LAB 2014」のために製作されており、楽曲をもとに監督が脚本を書くという異例の制作過程を経て完成した作品であった。物語のもととなったのは、ふぇのたすの楽曲「女の子入門」であり、同曲は映画の主題歌にも起用された。

2016年にはスピンオフ作品『あのこの話をすこしだけ』が公開

『おんなのこきらい』のスピンオフ作品である『あのこの話をすこしだけ』が、MOOSIC LAB 2016 特別招待プログラムとして製作・上映された。監督は前作から引き続き加藤綾佳が、音楽は前作の主題歌・挿入歌を担当したふぇのたす・みこの新ユニット「SHE IS SUMMER」が担当した(みこの名義はMICOに変更された)。ヒロインには、モデルの越智ゆらのが起用された。
物語の主人公は、『おんなのこきらい』に登場する高山幸太の弟で、声が出ない少女との恋が前作とは異なるピュアで爽やかな雰囲気で描かれている。

『おんなのこきらい』の主題歌・挿入歌

主題歌:ふぇのたす『女の子入門』

本作の主題歌で、映画の原案ともなっている楽曲。作詞作曲編曲は、ふぇのたすのリーダーでギーターとシンセサイザーを担当するヤマモトショウが手がけている(作詞作曲における名義は山本奨)。「きらきらのあの子電気切ったら暗い」「ふわふわのあの子の恋愛重い」「きめきめのあの子の想定あまい」という歌詞は、そのままキリコのことを歌っているようである。

挿入歌:ふぇのたす『かわいいだけじゃダメみたい』

本作の挿入歌で、作詞作曲編曲は、ふぇのたすのリーダーでギーターとシンセサイザーを担当するヤマモトショウが手がけている(作詞作曲における名義は山本奨)。サビの歌詞には「そうあなたは世界一可愛い可愛い、でもそれじゃ世界変わらない変わらない」とあり、この映画の主題をよく表した歌詞となっている。

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