夕凪の街 桜の国(こうの史代)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『夕凪の街 桜の国』とは、こうの史代により2004年に発表された漫画作品。「夕凪の街」「桜の国(一)」「桜の国(二)」の3部作である。
また、映画化、ノベライズ化、テレビドラマ化など、数々のメディアミックスが展開されている。
原爆によって苦しめられながらも、幸せを感じながらたくましく生きてきた戦後の人々の暮らしに焦点が当てられており「悲惨な戦争の物語」にとどまらない優しく温かい雰囲気が魅力である。

東京へ戻るバスの中で、七波は再び東子と合流する。1人で原爆資料館を訪れていた東子は、衝撃的な展示を見て一時は気分が悪くなるも「広島に来てよかった、今度は両親と一緒に来る」と七波に語る。広島を実際に訪れたことで、凪生の家族が被爆したという過去に向き合う決心がついたのだった。
隣の席で眠る東子に、七波は「母と祖母の死が原爆のせいかどうかは誰も教えてくれなかった。それなのに自分たち姉弟は、被爆2世だという理由でいつ死んでもおかしくない人間と決めつけられているんだろうか」と問いかける。そしてそれは、七波自身が桜並木の街でのすべての思い出を忘れたいものと決めつけていたことと同じなのではないかと気が付く。
東京に戻った七波は、東子を送るついでに17年ぶりに桜並木の街を訪れる。バスの中から呼び出しておいた凪生は、姉の隣にいる東子を見て戸惑いつつも、改めて相手に向き合うことを決意する。そんな2人の様子を見た七波は、2人の明るい未来を確信する。咲き誇る桜並木の中に、幸せそうに寄り添う両親の姿が見えた気がした七波は、「自分は確かにこの2人を親として生まれることを決めたのだ」と明るい気持ちで考える。
帰り道、七波は旭に詰め寄られる。旭は七波に尾行されていることに気がついていたのだ。旭は原爆症で死んだ姉・皆実の50回忌に際して、生前の話を聞いてまわっていたのだと明かす。旭は「七波は皆実に似ている」とした上で「だからこそ七波は幸せにならないといけない」と語り、自分の合コンの仲間を紹介しようかと茶化す。

『夕凪の街 桜の国』の登場人物・キャラクター

「夕凪の街」の登場人物・キャラクター

平野皆実(ひらの みなみ)

「夕凪の街」の主人公で平野家の次女。1945年8月6日、13歳の時に広島市で被爆する。その際に左腕と左のこめかみに火傷を負うが、原爆症を発症することもなくその後10年生き延びる。普段は明るく振る舞っているが、原爆直後の広島で生き延びるため「多くの人々を見殺しにしてしまった」という罪悪感が拭えないでいる。
母・フジミと2人で原爆スラムで暮らし、伯母に自身の学費を返済することと水戸に疎開したままの弟・旭に会いにいくことを目標に倹約生活を行う。
同じ会社「大空建研」に勤める打越から求愛を受けるも、その直後に原爆症を発症してしまう。被爆してから10年後の1955年夏に23歳の若さで亡くなる。

平野フジミ(ひらの ふじみ)

皆実と旭の母。皆実と2人で暮らしながら、洋服の仕立て・修理業を営んでいる。皆実の同僚の古田幸子(ふるた さちこ)にワンピースの型紙を作ってあげたこともある。
1945年に広島市内で被爆しており、被爆直後は火傷で顔が膨れ上がったことでその後1ヶ月の間は目を開けることができなかった。そのため、広島市の当時の惨状を目にすることはなかった。

石川旭(いしかわ あさひ)

皆実の弟。原爆投下のおよそ1ヶ月前に水戸の石川家に疎開していたため、平野家で唯一原爆から免れた。終戦から5年後の1950年、広島から迎えに来た皆実とフジミと一緒に帰るのを拒み、石川家の養子となることになった。
皆実が最期を迎える際には水戸から広島を訪れており、その時には視力を失っていた皆実も弟の声を聞くことができた。

打越豊(うちこし ゆたか)

皆実と同じ会社「大空建研」で働く会社員。皆実からは「広島カープと力道山にしか興味がない」と思われている。皆実に惹かれるようになりハンカチを贈るも、原爆のトラウマから「自分は幸せになっていけない」と考える皆実に一度は拒絶される。叔母が原爆によって亡くなっており、原爆の記憶で苦しむ皆実に寄り添い、最終的に親しい仲となる。しかしその直後に皆実は原爆症で倒れ、そのまま帰らぬ人となる。臨終の際には打越も立ち会った。

古田幸子(ふるた さちこ)

皆実と同じ会社「大空建研」で働く女性社員。職場から見える「フタバ洋装店」のショーウィンドウに飾られたワンピースに憧れ、皆実、フジミの協力のもと自作した。皆実が原爆症で倒れてからは、職場の仲間と共に何度か見舞いに訪れていた。

平野天満(ひらの てんま)

皆実と旭の父。原爆投下時は職場におり、翌日亡くなった。皆実とフジミの話によると、禿げていた。

平野霞(ひらの かすみ)

皆実の2歳年上の姉。原爆投下の翌日に皆実とフジミの元に帰ってくる。しかしその2ヶ月後に原爆症を発症して紫のしみだらけになり、突然殴りかかったり叫んだりしながら亡くなった。

平野翠(ひらの みどり)

皆実の1歳年下の妹。被爆後に家に戻って来ず、皆実と霞が街中を探したが、10年経っても戻ってこないままである。

「桜の国」の登場人物・キャラクター

石川七波(いしかわ ななみ)

9bullet92
9bullet92
@9bullet92

Related Articles関連記事

この世界の片隅に(漫画・アニメ・ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

この世界の片隅に(漫画・アニメ・ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『この世界の片隅に』は、こうの史代の漫画作品、及びそれを原作として制作されたドラマ、アニメ映画のことである。漫画作品は双葉社の『漫画アクション』にて2007年から2009年にわたり連載された。 ドラマは2011年に日本テレビ系列にて放送され、映画は2016年の11月より全国公開。

Read Article

この世界の片隅にの料理・食事・食べ物・お菓子・飲み物まとめ

この世界の片隅にの料理・食事・食べ物・お菓子・飲み物まとめ

『この世界の片隅に』はこうの史代原作の漫画である。2007年から漫画雑誌『漫画アクション』で連載され、2008年には単行本も発売。テレビドラマやアニメ映画などメディアミックス作品も多数展開されている。広島から軍港の町・呉に嫁いだ浦野すず/北條すずが、第二次世界大戦のまっただ中でささやかな日常をしなやかに生きる姿を描く。すずの手料理には詳細なレシピが描かれているものもあり、当時の食生活をうかがい知ることができる。

Read Article

『この世界の片隅に』のネタバレ・考察まとめ!物語で重要な役目を果たしていた座敷童の正体も解説

『この世界の片隅に』のネタバレ・考察まとめ!物語で重要な役目を果たしていた座敷童の正体も解説

本記事ではこうの史代によって執筆された漫画、およびその漫画を基にして制作された片渕須直監督作品『この世界の片隅に』に関するネタバレ解説・考察をまとめて紹介している。作中には座敷童をはじめとして多くの妖怪が登場しており、妖怪たちが非常に大きな役割を果たしているのだ。記事中ではこの座敷童の正体や、原作と映画の相違点などについても詳しく掲載した。

Read Article

『この世界の片隅に』の監督・片渕須直とスタジオジブリの深い関係!実は『魔女の宅急便』を撮るはずだった!?

『この世界の片隅に』の監督・片渕須直とスタジオジブリの深い関係!実は『魔女の宅急便』を撮るはずだった!?

本記事では太平洋戦争を題材にして作られた映画『この世界の片隅に』の監督・片渕須直と、スタジオジブリとの間にある深い関係性についてまとめて紹介している。片渕は元々ジブリ映画『魔女の宅急便』で監督を務める予定だったが、スポンサーとの関係で宮崎駿監督の補佐役に回ったという過去があるのだ。記事中では『この世界の片隅に』の制作秘話やこだわった点、作品の評判なども併せて紹介している。

Read Article

【この世界の片隅に】涙腺崩壊必至!泣けていないあなたに贈る珠玉のアニメ特集【君の名は。】

【この世界の片隅に】涙腺崩壊必至!泣けていないあなたに贈る珠玉のアニメ特集【君の名は。】

最近泣いたことはありますか?泣くのは恥ずかしいことだと思っている方も多いですが、決してそんなことはありません。泣きたいときに思いっきり泣くほうが、むしろスッキリしますよ。この記事では、涙腺崩壊すること間違いなしな名作アニメをまとめました。人前で泣けないというあなたも、自宅でなら何を気にすることもないですから、たまには思いっきり声を上げて泣いてみませんか。

Read Article

『この世界の片隅に』が各映画賞を次々受賞!評判まとめ

『この世界の片隅に』が各映画賞を次々受賞!評判まとめ

本記事では原作こうの史代、監督片渕須直による映画『この世界の片隅に』の評判についてまとめて紹介している。戦時中の広島を舞台にして作られており、繊細な柔らかいタッチの画風が魅力の作品。「第38回ヨコハマ映画祭」の第一位に選ばれたり、「第71回毎日映画コンクール」で3つの賞を受賞するなど非常に高い評価を受けている。

Read Article

目次 - Contents