白き鋼鉄のX THE OUT OF GUNVOLT(イクス)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『白き鋼鉄のX THE OUT OF GUNVOLT(イクス)』とは、2019年9月にNintendo Switch・PlayStation 4用ソフトとして、インティ・クリエイツから発売されたアクションゲーム。キャッチコピーは「2DアクションのX(極限)を、見せてやる」。本作は異能を宿した新人類を統括する巨大組織「スメラギ」が支配する世界の中で、主人公の科学者の少年・アキュラが同じ人間の仲間であるコハクたちと共にスメラギに立ち向かう物語を描いている。

『鎖環(ギブス)』で登場したアシモフとの戦闘シーン。ここで隠しボスとして登場したアシモフは、本作と初代『ガンヴォルト』以上と言っていいほどの圧倒的なパワーでプレイヤーたちを捩じ伏せにかかってくる。

アシモフは『ガンヴォルト』シリーズの3作目『蒼き雷霆 ガンヴォルト 鎖環(ギブス)』でも隠しボスとして登場する。彼と戦う場所は本作の最終決戦の舞台となった地下基地最深部に酷似した部屋で、血を彷彿とさせる毒々しい赤色に染まって見えるのが特徴となっている。そしてガンヴォルトと、『鎖環』の主人公であるきりんの前に登場したこのアシモフも、本作でも見せた狂気に満ちた思想と冷酷さは変わっていない。その一方で、拘束して電撃でダメージを与える鎖や広範囲にも及ぶ電撃の嵐といった凶悪な技を駆使してくるという、初代『ガンヴォルト』及び本作とは比べ物にならないと言っていいほどの強さを見せつけてくる。

ゲームの先鋭さを追求した一方で高まった難易度

ほんの僅かでも判断を間違えると、画面の通りにボス戦に辿り着かなくてもリタイアになってしまう可能性が高い。そこまでゲームとしての先鋭さを追求したあまりに本作は初心者には序盤ですら厳しい難易度に仕上がっている。

本作では『爪』と同じくブリッツダッシュでステージを高速で駆け抜け、敵を連続で薙ぎ倒していく爽快感を味わえる他にも、ステージの構成が簡潔になったりブリッツダッシュの操作性も向上するなど、『爪』よりもスピード感を活かしたプレイングが楽しめるようになった。しかし一方で時代の経過ゆえか、本作ではその操作性の向上も含めたゲーム内容の先鋭化が図られており、カゲロウ発動の際の燃費の悪化、ヒーリングの廃止に伴って『爪』と比べて被弾リスクが大きくなるなど、スピードアクションの追求によって難易度が高まっている。
そしてヒーリングが廃止されたことでHPの回復手段はレベルアップか、ステージ各所に設置されているリトライマーカーを通過した時のみとなり、もっとも回復に必要になるであろうボス戦ではHPを能動的に回復する手段がない。その弱点をカバーする為にカゲロウがあるようなものだが、中盤以降はブレイドやデマーゼルをはじめとしたカゲロウを無効化してくる攻撃を使う敵が増えてくるため、いやでも回復手段の少なさを意識することになる。

初心者でも経験者でも苦戦を強いられる本作のボス戦

インテルス(画面中央)とのボス戦の画面。画面の通りの重力波で動きを止めると同時にダメージを与えてきたり、さらに攻撃力と攻撃範囲に優れたカッターで攻撃するなど全体的に隙がなく、序盤攻略における鬼門と言っても過言ではない強敵として君臨している。

本作のボスは、カゲロウを無効化するブレイドと、同じくカゲロウを無効化するラスボスのデマーゼルも含めて全体的に強敵揃いである。『爪』では回復手段のヒーリングがある他にも、プレイヤーキャラの片割れであるガンヴォルトとの兼ね合いもあるからか、地上移動を駆使することでボスの攻撃を回避してやり過ごすことができた。しかし一転して本作のボスは地上一帯を薙ぎ払ったり、画面全体を埋め尽くすような攻撃が多く、ブリッツダッシュなどの空中移動を駆使しなければ耐え凌ぐことができない局面が増えた。
特に序盤に登場するボスのひとりであるインテルスは、範囲と威力に優れたカッター攻撃や動きを止めてダメージも与えてくる重力波など隙の少なさや攻撃の複雑さ、さらにはカゲロウを貫通してくる必殺技を使ってくるなど本作屈指の強敵として挙がりやすい。こうした点からインテルスは序盤に登場するボスでありながらも、初心者はもとより『爪』経験者ですら苦戦は必至となっている。

ちなみに一部のボスは弱点のEXウェポンを使うことで行動をキャンセルすることができるが、その数は多くなく、さらに普通に攻略しているとその手のボスへの弱点のEXウェポンを持たないまま戦うことになるパターンに陥りがちである。こうしたことから本作は慣れれば手応えを感じて楽しむことができるが、その慣れまでもが険しく長い道のりとなった大変なゲームになったと言っても過言ではない。さらに前項の回復手段のなさと被弾リスクの拡大などのデメリットと合わせて初心者に鞭打つものとなっており、初心者にはハードルが高いゲームとなってしまった印象は否めない。
しかし、ステージ構成とボスの攻撃や行動パターンともに理不尽な部分が多いわけではなく、トライアンドエラーを繰り返すことで初心者でも十分に打開策を見出せるレベルには仕上がっている。その根拠のひとつとして本作には『爪』と同じく残機やゲームオーバーの仕様がなく、決して初心者を完全に無視した設計ではない。

ライブノベル廃止における賛否両論

『ガンヴォルト』シリーズでは画面のようにボス戦前の会話と、ボス戦中の会話であるライブノベルでプレイヤーたちを盛り上げたが、本作のボス戦では直前の会話しかなくなっている。

概要にも記載した通り、本作では『ガンヴォルト』シリーズにおける最大の特徴で醍醐味であるライブノベルが廃止され、会話シーンはステージ開始時やボスとの対峙などに限定された。このため、『ガンヴォルト』シリーズに比べると「ボスの印象が弱くなった」「戦闘中のやり取りがなくなったことで面白みがなくなった」という意見が出ている。しかし一方でライブノベルには「メッセージウィンドウが邪魔」「会話を聞いているとゲームに集中できない」「全ての会話を聞こうとすると意図的にゲーム進行を遅める必要がある」などの意見が出ていたため、ライブノベルを廃止したことでアクションに集中しやすくなった側面も存在する。

『ガンヴォルト』シリーズと比べて人間らしくなったアキュラ

ストーリー中盤で、姉のことを思い出して気落ちするコハクを励ますアキュラ。初代『ガンヴォルト』のストーリーから100年以上が経過したこともあるが、本作では無愛想な感じこそ否めないもののこの通りの気遣いができるほど人間的な優しさを持つようになった。

キャラクター紹介にも記載した通り、『ガンヴォルト』シリーズでのアキュラは父の教えを盲信するあまりエゴまみれでクセの強いキャラクター性としてファンの間でも有名になっていた。しかし本作では寡黙だが、正義感が強いヒーロー然としたキャラクターが強調されており、『ガンヴォルト』シリーズで悪目立ちしていた能力者への糾弾や差別発言は皆無と言ってもよくなった。これはアキュラというキャラクターの存在や立場が、本作における彼の設定と時間軸によって『ガンヴォルト』シリーズではまるっきり異なるものとなったことが大きく影響しているとファンの多くが推測している。

キャラクターたちの名前の元ネタは映画

主人公のアキュラも含めた本作の登場人物の名前は、本作の製作発表におけるインティ・クリエイツ公式の生放送ラジオのトークで映画のタイトルがモチーフであることが明かされた。そしてモチーフとなっている映画は以下の通りとなる。

アキュラ(白き鋼鉄のX):『遊星からの物体X』

主人公のアキュラの二つ名である「白き鋼鉄のX」は、1982年に製作・公開されたSFホラー映画『遊星からの物体X』からきている。そして同じ題名の最後に入っているXは、アルファベットの第24字としての表記の他にも未知の人間や事物を示すのに用いられている。

ブレイド:『ブレードランナー』

ブレイドの名前の元ネタは、1982年に製作・公開されたSF映画の金字塔として有名な『ブレードランナー』からきている。さらにこの映画の原作にフィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が存在し、こちらもブレイドの名前の元ネタとなっている。

リベリオ:『リベリオン』

リベリオの名前の元ネタは、2002年に公開された近未来SFガンアクション映画『リベリオン』からきている。ちなみにこの映画は日本でのビデオ・DVDの宣伝コピーが「マトリックスを超えた!」ということで知られている。

インテルス:『インターステラー』

インテルスの名前の元ネタは、2014年に製作・公開されたSF映画『インターステラー』からきている。ちなみに英語版における彼女の名称が「Stella(ステラ)」となっており、こちらもこのSF映画を元ネタとしているとされている。

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