九龍妖魔學園紀(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『九龍妖魔學園紀』とは、株式会社アトラスより発売された「學園ジュブナイル伝奇」と銘打たれたゲームソフトおよびそれをもとに展開するゲームシリーズやグッズの事である。制作自体は、株式会社シャウトデザインワークスが担当しており、同社の代表作『東京魔人學園伝奇シリーズ』にて使用されている独自のシステム・感情入力システムを用いたアドベンチャーゲームとなっている。宝探し屋である主人公・葉佩九龍(はばき くろう)が、新宿にある学園「天香学園」(かみよしがくえん)に眠る秘宝を探すストーリーとなっている。

『九龍妖魔學園紀』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

取手鎌治「君の進む先に僕が道を作ってあげるよ」

『九龍妖魔學園紀』の戦闘画面。画面下のアイコンが連れて行る仲間のもので、戦闘中や探索中に喋りかけてくれる場合がある。

『九龍妖魔學園紀』では、本編外に戦闘中でしか聞けないセリフが複数存在する。その1つが「君の進む先に僕が道を作ってあげるよ。」というセリフである。これは、初期の方で条件さえクリアすれば仲間にできるキャラクター・取手鎌治のボイスだ。彼を連れて遺跡を探索したり敵と戦闘したりする事で聞けるセリフとなっている。本作では、もともとは敵であった者達が九龍との会話や戦闘を通して最終的に仲間になる場合が多く、鎌治はそうした流れで仲間になる1番最初のキャラクターだ。かつて敵として主人公の前に立ちはだかっていた相手が、今は仲間として主人公の行く先を切り開こうとする姿勢を見せる様は、プレイヤーからすれば胸が熱くなる嬉しいセリフだといえる。ジュブナイル学園ものと銘打ってるだけある、キャラクター同士の友情・絆といったものを感じられる名セリフであり、名演出だ。

八千穂明日香「この三ヶ月、毎日がドキドキの連続だった。こんな体験、しようと思ったって、でいないよッ。キミと知り合えて、本当によかった」

最終決戦前の自由時間にて聞ける八千穂のセリフ。自由に天香学園内を歩ける最後のフリータイムでは、これまで出会ってきた仲間達全員と会話をする事が可能となっている。その際に八千穂に話しかけると、「この三ヶ月、毎日がドキドキの連続だった。こんな体験、しようと思ったって、でいないよッ。キミと知り合えて、本当によかった」といったセリフを聞く事ができる。特段ひねりのないストレートな言葉で述べられる内容は、無邪気で陽気な八千穂というキャラクターらしいラストのセリフだといえる。また物語序盤から仲間であった彼女から出会ったことへの感謝を伝えられることで、これまでのプレイに対する感慨深さが感じられる作りとなっている。本作を楽しんで遊ぶ事ができたプレイヤーであればあるほど、「それはこちらのセリフ」と言いたくなる言葉だといえる。八千穂らしさを感じるセリフであると同時に、これまでのプレイの日々を思い出して胸が熱くなる名セリフだ。

皆守甲太郎「だから、お前も忘れるな。俺が、ここでお前と共に在った事を」

『九龍妖魔學園紀』では、好感度の1番高いキャラクターとクリスマスを過ごせるイベントが存在する。「だから、お前も忘れるな。俺が、ここでお前と共に在った事を」という皆守のセリフは、彼とクリスマスを過ごす際に聞く事ができるセリフとなっている。
一見すると、これまでの九龍と過ごしてきた日々を思い返すようなセリフと取れるが、皆守の正体が生徒会副会長であると知った後で聞くとまた意味が異なって聞こえるセリフとなる。このセリフを述べた時点で、皆守は九龍には己の正体を告げていない。だが、思い出を振り返るにしてはやけに重たい空気をまとっているように感じられるセリフである事から、この言葉を目にしたプレイヤーの多くが感動しつつも何かそれだけではない不安を覚えた。実際この後に皆守は、遺跡を守る生徒会としての最後の責任を果たす為に、最終決戦後の崩れゆくダンジョンの中に阿門と残ろうとする。九龍が遺跡の秘密を暴いた後に、ダンジョンがこうなる事は最初から決まっていたようなものなので、このセリフを述べた時点で皆守は生徒会としての覚悟を決めていた事になる。また、遺跡が崩れそうになった際に小夜子と真夕子の力によって九龍達が救出されるシーンで終わる本編が、遺跡に残る事を選んだ阿門と皆守も救ってくれたのかは不明な終わり方となっており、見方によっては、皆守を助けられずに終わった印象を覚えてしまう展開となっている。そのため、これまで共に過ごした日々を忘れるなと懇願するような皆守のこのセリフは、多くのプレイヤーの心にトラウマを植え付けた名フラグ・名シーンとなった。

『九龍妖魔學園紀』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

『東京魔人學園剣風帖』の主人公で遊べる隠しモードが存在

隠しモードでプレイできる主人公・緋勇龍麻のアニメ版ビジュアル。

『九龍妖魔學園紀』には、九龍とは別の主人公で遊べる隠しモードが存在する。それが、制作元のシャウトデザインワークスの看板ゲーム『東京魔人學園剣風帖』の主人公・緋勇龍麻(ひゆう たつま)で遊べるモードである。『九龍妖魔學園紀』は『東京魔人學園剣風帖』と同世界観の作品である事が公式から明かされており、これはこの設定を生かしたモードとなっている。
この隠しモードでは、龍麻が宝探し屋と勘違いされて学園に派遣されるところから物語がスタートする。その設定に合わせるために、一部の台詞やキャラクターの態度に変化がつけられている。また初期の段階で強い武器を手に入れられる、隠しキャラを仲間にできるなどの特典が存在。九龍でプレイする時とは、異なる遊び方ができる仕様となっている。なお、ストーリー展開そのものに大きな変更はない。

エピソードタイトルの元ネタは実在するジュブナイル小説

各話が開始前に流れる、エピソードタイトルの画面。

『九龍妖魔學園紀』はプロローグ・エピローグを含め、全部で14のエピソードが存在する。その各エピソードタイトルが一部を除いて、実在するジュブナイル小説のタイトルが元ネタである事が明かされている。たとえば1st. Discovery『謎の転校生』は、小説家・眉村卓によるSFジュブナイル小説『なぞの転校生』が元ネタだ。ある中学校にやってきた謎めいた転校生に関わる秘密、彼が巻き起こす事件についてめぐる学園SF小説となっており、そのあらすじは素性を隠して天香学園に転校してきた九龍自身の設定に近しいものを感じる。実際、『九龍妖魔學園紀』は九龍が学園に眠る秘宝を探す為、学園地下にある遺跡、そしてそこに関わる人達の秘密を暴く話となっている。その展開は、捉えようによっては「素性不明の謎めいた転校生が巻き起こす事件」と見る事もできる。學園ジュブナイル伝奇ものならではの、凝ったオマージュセンスが感じられるタイトルの付け方だ。

シナリオブックにのみ存在するエピローグ

『九龍妖魔學園紀』の公式シナリオブック。左が上巻で右が下巻。

初版の発売から約3ヶ月後の2004年12月に、『九龍妖魔學園紀』は上下巻構成のシナリオブックを発売している。12日に上巻、24日に下巻の発売が行われた。ゲーム本編のシナリオは全て載っており、感情入力システムにより存在する分岐シナリオも全て収録されている。分岐箇所をまとめるにあたって、普通のシナリオブック形式では掲載が難しい為、ゲームブックに似た形式で制作がされるなど些か特殊な構成が取られる事となった。
そんなシナリオブックでは追加エピソードとして、ゲームにはなかったエピローグが収録されている。遺跡にまつわる全てが一先ずの落ち着きを見せた後の時間軸の話となっており、九龍が新たな任につく為、作中で仲良くなった仲間達に別れを告げていく話となっている。仲間達との再会を約束して旅立つような終わり方がされており、これからも九龍と仲間達の絆が続く事を感じられる希望あるエピローグだといえる。『九龍妖魔學園紀』をプレイしてきた者の胸に刺さるエピソードとして、シナリオブック購入者からは高く評価されている。

『九龍妖魔學園紀』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):新田高史「Kowloon theme」

『九龍妖魔學園紀』の音楽・BGMを担当している作曲家の新田高史による楽曲。初期からリメイク版、Switch&PS4版全てのソフトにて使用されている。その他、戦闘曲としてもアレンジしたものが使われており、作中で1番よく耳にする楽曲ともなっている。ファンからは「(ゲームの)カウボーイビバップの曲に似ている」といった意見があげられており、実際公式からはオマージュしている事が明かされている。
2005年2月25日に、本作を収録したサウンドトラックがフロンティアワークスより発売。2枚組のアルバムとなっており、本作はDISC1の1曲目に収録された。またその翌年2006年12月22日には、サウンドトラック追加盤『九龍妖魔學園紀 サウンドトラック〜失われた第三のディスク』が発売。こちらは『失われた第三のディスク』という名の3枚めのDISCが追加されただけで、DISC1・2の収録曲は変わらない。「Kowloon theme」もDISC1の1曲目に収録されている。

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