零~刺青の聲~(Fatal Frame III)のネタバレ解説・考察まとめ

『零~刺青の聲~』とは、「零」シリーズの第3作目で、2005年にテクモよりプレイステーション2用ソフトとして発売された和風ホラーゲームである。
徐々に眠りから覚めなくなっていくという呪いを解く為に、除霊能力を持つカメラ「射影機」を使って、夢の中の幽霊屋敷と現実世界を行き来しながら謎を解いていくという内容になっている。
シリーズ1作目、2作目の主人公達も登場し、彼女達のその後の様子が知れるところも見どころだ。

『零~刺青の聲~』の概要

『零~刺青の聲~』とは、2005年にテクモ(現コーエーテクモ)からプレイステーション2用ソフトとして発売された和風ホラーゲームである。
シリーズ化されている零の第三作目であり、プレイステーション2用ソフトとして開発された最後の作品になっている。前作同様、敵として襲い掛かってくる怨霊を撃退するには「射影機」と呼ばれるカメラに写す必要があり、恐怖の対象としてグロテスクに作られた怨霊達にあえて視線を向けてくてはいけないという特殊なゲームシステム等は引き継がれている。また、民俗学的な視点で作られた儀式を手記や研究書などから解いていく、という基本的な流れも前作を踏襲しつつも、夢の中で撮った写真を現実世界で現像することで謎解きを進めたり、射影機では抵抗出来ない強力な怨霊を隠れてやり過ごすキャラクター等、新しいシステムも多い。

物語は、恋人を亡くした主人公がその恋人の姿を追って夢の中にある幽霊屋敷に迷い込んでいくという物であり、霊現象に襲われる危険な「夢」と安心な「現実」というメリハリがついた設定になっている。しかし、ストーリーを進行する内に夢の中でのみ起こっていた恐怖が徐々に現実世界に浸食してきてしまう、という零シリーズでは新たな恐怖の形を見出した作品であり「浸蝕する恐怖」というキャッチコピーが付けられた。
また、今作では『零~zero~』の主人公雛咲深紅や、『零~紅い蝶~』の主人公天倉澪なども登場し、元主人公の二人のその後の様子を垣間見ることも出来る。

『零~刺青の聲~』のあらすじ・ストーリー

プロローグ

黒澤怜は自身が起こしてしまった交通事故の所為で、隣の座席にいた婚約者の「麻生優雨」を失くしてしまったばかりだった。
そんな怜の仕事はフリーカメラマンであり、住み込みでアシスタントをしている雛咲深紅(『零~zero~』の主人公)と共に幽霊屋敷と噂をされていた廃墟へ写真を撮りに来ていた。霊が現れず少し残念そうにしていた怜だったが、深紅が一人で機材の片づけを行っている間に再び写真を撮ると、そこに亡くなったはずの優雨が写り込む。怜が思わず彼を追いかけると、ただの廃墟であった建物は突然雪の降る日本家屋へと姿を変えてしまうのだった。

怜がその屋敷を彷徨っていると、再び恋人であった優雨の姿を見つける。しかし、彼を追いかけた怜は突如現れた体中に刺青が刻まれた女性に捕まってしまい、気が付いた時には巫女服を着た子供達に体を拘束されている状態だった。子供達は杭を怜の手足に当てると、槌を振り上げ怜の体を地面へと打ち付けようとしだす。そして、子供達の槌が振り下ろされようとした瞬間、怜は元居た廃墟へと戻って来ていたのだった。

撮影を終え自宅に帰って来た怜は、現像した写真の中に優雨が写っているのを確認する。
その晩、眠りに就いた怜は酷くうなされ、そして夢の中で再び雪の降る屋敷へと訪れるのだった。

一ノ刻「徴~シルシ~」

幽霊屋敷で見た雪の降る屋敷に再び来てしまった怜は、幽霊が現れる中、優雨と再び会いたいが為に屋敷の奥へと進んでいく。そこで、怜は霊を封印することの出来る特殊なカメラ「射影機」を発見するのだった。
射影機を手に入れた怜が襲い掛かってくる怨霊を撃退しながら先へ進むと、自分以外にも生きた女性が屋敷の中に居るのを発見する。その女性は「生き残りたくて生き残ったんじゃない」と一人で呟きながら震えており、怜は彼女を心配し声を掛けるものの、女性は突然怜の真後ろを見つめて酷く怯えだしてしまう。怜が振り返ったそこには、幽霊屋敷でも見た全身に刺青を入れた女性が居たのだった。
怜は追いかけてくる刺青の女から逃げるものの、女が伸ばした手が肩に触れてしまう。

刺青の女から逃げ切り屋敷を飛び出した怜は、自宅のベッドの上で意識を取り戻す。その時、刺青の女に触れられた箇所から痛みと共に刺青のような痣が広がっていくのを見てしまうが、気が付いた時には肩に広がったはずの痣は消えているのだった。
怜は深紅から、優雨の仕事仲間であり未だ優雨が亡くなったこと知らない「天倉螢」から優雨宛ての手紙を受け取る。
螢の手紙の内容は、死者に呼ばれて夢の中の屋敷を進むと徐々に眠りから覚めないようになっていき、最後には煤のような黒い染みを残して失踪してしまうという「眠りの家」と呼ばれる都市伝説に関することだった。そして、怜は螢の姪(『零~紅い蝶~』の主人公天倉澪)もその都市伝説と似た病気を患っていることや、都市伝説に関係のあると思われるカメラ「射影機」が優雨の元に届いているということを知る。
夢の中で射影機を見つけた覚えがあった怜は優雨の部屋で射影機を探し出すと、その中に入っていた撮影済みのフィルムを自宅の現像室で現像することにする。すると、どういう訳かその射影機の中に入っていた写真は、怜が夢の中の射影機で撮影した写真と同じ物なのであった。怜は、屋敷で唯一の生きていた女性が映り込んだ写真を深紅に渡して、その女性についての調査を依頼する。

その晩、眠りに就いた怜は再び雪の降る屋敷「眠りの家」に訪れる。屋敷の唯一の生者である女性を追いかけた怜は女性の名前が「滝川吉乃」ということを知り、そして女性からもし目覚めたら自分を起こして欲しいと頼まれる。

目覚めた怜は、徐々に背中の痣が広くなっていくのを感じる。
眠りの家に居た女性の写真について調べていた深紅から電話を受けた怜は、彼女が確かに滝川という人物であることと、少し前に起きた飛行機事故の唯一の生存者で現在は一日の殆どの時間を眠ってしまう状態で入院中だということを知る。
怜は滝川が入院しているという病院を訪れると、彼女の体に自身の体に現れた痣のような刺青がどんどんと広がって行き、そしてベッドに黒い染みだけを残して姿を消すのを見てしまう。

夢の中で再度眠りの家に訪れた怜は、現実世界で姿を消してしまった滝川を探すと、そこで怨霊と化してしまった滝川に襲われ目を覚ます。

怜は、病院で預かったという滝川の日記を深紅から渡される。そこには、飛行機事故によって大切な人を失ったこと、眠ると雪の降る屋敷に居てそこで亡くなった人達に会えるような気がしていること、そして徐々に痣が広がり眠りから覚めなくなっていったことなど、現在の怜とも符合する内容が書かれていた。そして、それこそが「眠りの家」と呼ばれる都市伝説の症状なのであった。

二ノ刻「狭間ノ家~ハザマノイエ~」

怜は、昨晩怜が滝川に襲われた眠りの家の部屋で目覚める。
怜は、眠りの家の中で資料になりそうなものを射影機に収めて行く。そして、優雨を追いかける為に必要だった屋敷の奥へ進む為の鍵を手に入れ進むと、そこに探し続けていた優雨の姿を見つけるのだった。しかし、彼を追いかけようとした瞬間、怜は目を覚まし現実世界へと戻ってきてしまう。

怜が目を覚ますと深紅から連絡が入り、滝川に関する資料をまとめて置いたと言われる。
深紅の資料によると、悪夢を見るようになり次第に眠る時間が伸びて行った後に失踪してしまう、という滝川と同様の症状が「眠りの家」という都市伝説として医療関係者の間で噂になっているようだった。
怜は深紅に昨晩夢の中で撮った眠りの家の写真を現像して渡すと、再び調査を依頼する。

三ノ刻「鎮メ唄~シズメウタ~」

眠りに就いた怜は、子守唄が聞こえる眠りの家で目が覚める。
怜はその子守唄の聞こえてくる場所を探し辿り着くと、そこで巫女装束を着た少女の霊に襲われてしまう。射影機を使って少女の霊を撃退することには成功したものの、怜は子守唄が聞こえる中で意識を失い、眠りの家の夢から醒めてしまうのだった。

怜が現実世界に戻ってくると、そこには夢の中で聞こえて来た子守唄を歌う深紅の姿があった。その歌をどこで知ったのかと聞く怜に、深紅は夢の中で聞こえてきたのだと言う。
そして、怜は深紅も眠りの家に訪れるようになってしまったのではないかと予感するのだった。

再び届いていた螢からの手紙によって、怜は深紅の兄「雛咲真冬」が神隠しにあって行方不明になっていることや、螢の姪である澪が既に一日の殆どを眠るまでに眠りの家の都市伝説の症状が悪化してしまっていることを知る。そして、同封されていた怜と同じような夢を見るようになった女性の証言が入ったテープを聞く。
テープの女性の証言によると、その女性は母を失っており、その母を追いかける内に屋敷の奥へと進んで行ってしまい戻れなくなっていくのだと語っていた。

四ノ刻「禍夢~マガユメ~」

やはり、怜と同じように深紅も眠りの家へと誘われていた。しかし、深紅の夢の中の様子は怜が見ていたものとは違い、かつて(『零~zero~』にて)深紅が彷徨った幽霊屋敷「氷室邸」に酷似した場所になっており、彼女は因縁染みたその場所に閉じ込められてしまっていた。
深紅は過去の経験の焼き直しの様に、氷室邸を彷徨った時に使用していた射影機を拾ってしまう。深紅は使い慣れた射影機を手に、氷室邸によく似た眠りの家を探索する。
眠りの家の中で再現された氷室邸の最奥にまで辿り付いた深紅は、氷室邸で行われていた縄で巫女の五肢を裂くという「縄裂きの儀式」の儀式場でその縄の巫女の怨霊に襲われてしまう。深紅が縄の巫女を射影機を使って封印すると、眠りの家の出入り口の封印が解けて脱出できるようになった。
しかし、眠りの家から出ようとした深紅の前に、突然子供の巫女の霊が現れる。そして、その子供は屋敷の中に深紅がずっと想い続けている兄の真冬が居るということを伝えてくる。
深紅は、子供の霊に導かれるまま眠りの家のさらに深いところへ向かってしまうのだった。

どういう訳か深紅の夢を見ていた怜は、目覚めるなり深紅の様子を見に行く。すると、深紅は変な夢を見て調子が悪いと言う。そして、彼女から再び螢からの手紙が届いていたことを伝えられる。
螢からの手紙には、螢自身まで姪の澪を追いかけて都市伝説である眠りの家の夢を見るようになったことや、それによって澪を助けられる可能性があるのではないかということが書かれていた。

五ノ刻「神隠シ~カミカクシ~」

澪を助けようと眠りの家の都市伝説について調べる内に、自身も眠りの家へと誘われてしまった天倉螢は、眠りの家の中で澪を見つけ追いかけるものの見失ってしまう。
澪を探す為に眠りの家を歩き回っていた螢は、屋敷内で以前優雨に送ったはずの射影機を発見し、その力を使って屋敷の奥へと進んでいく。そして、姉の繭について何かを呟きながら座敷牢に閉じこもる澪を発見するのだった。

螢の夢を見ていた怜が目覚めると、誰も居ないはずの優雨の部屋からおかしなノイズ音が聞こえてくることに気が付く。気になった怜が螢の部屋へ行くと、音の出どころは押し入れの天上裏だということが分かる。
怜は何が音を出しているのかを確かめる為に天井裏へと登るものの、そこで自宅内だと言うのに現れた怨霊に襲われてしまう。

怨霊に襲われたはずの怜は自分の部屋で目覚める。夢の出来事だったのかと疑問に思いつつも、それを確認する為に押し入れの天井裏へと向かった怜は、そこで霊石ラジオと呼ばれる異界と交信することの出来るラジオを発見するのだった。
その晩、怜は深紅から先日写真を撮りに行った幽霊屋敷について、写真の選定資料としてまとめた資料を渡される。それによると、現在の幽霊屋敷は廃屋として入り口付近しか残っていなかったものの、かつては奇怪な形をした巨大な屋敷だったらしい。また、裏の山は常世と繋がっているという噂もあり、屋敷では死者と逢えるとも言われていたのだった。

六ノ刻「忌ミ柱~イミバシラ~」

怜は、以前子供の巫女の霊と戦った部屋で目覚める。部屋から出た怜は早速優雨の姿を見かけるものの、霊によって封じられた扉の先へと消えてしまう。扉の封印を解こうとした怜は床に血痕が付いているの発見し、その血痕を頼りに扉を封じている霊を探し除霊していく。
その過程で怜は、屋敷で行われていた怖ろしい風習の一部を知る。それは「狭間」と呼ばれるものを封じる為に巫女を使った儀式を行い、儀式後の巫女を宮の中に閉じ込めてしまうことや、その宮の建立に携わった大工達を人柱として虐殺し壁の中に埋めてしまうということ等だった。
それらの恐ろしい風習を知りながらも、扉の封印を解いた怜は優雨を追いかける為にその扉の中へと入ろうとする。しかし、そこに鉈を持った男が現れ、怜は目が覚めてしまうのだった。

七ノ刻「浮獄~フゴク~」

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