Paul Weller(ポール・ウェラー)とは【徹底解説まとめ】

Paul Weller(ポール・ウェラー)とは、イギリス・ロック界のビッグネームである。パンクブームを追い風に1977年、ザ・ジャムのフロントマンとしてデビュー。その後、80年代にはザ・スタイル・カウンシルを結成し、渋谷系と言われる日本のアーティスト達にも大きな影響を与えた。90年代にソロに転向。音楽的多様性を活かしたサウンド作りと、反骨精神あふれる歌詞を特徴とし、常に労働者階級のヒーローであり続けている。オアシスのメンバーを筆頭に多くのミュージシャン達が憧れる。UKロック界のカリスマである。

2015年以降

ポール・ウェラー2018年来日公演@六本木 EXシアター

2015年、ソロ12作目のアルバム『サターンズ・パターン』をリリース。6月9日から10月9日にかけて、アメリカ西海岸でプロモーションツアーを行った。

2018年9月14日、14枚目のソロアルバム『True Meaning』をリリース、同じ年ロンドンの名門ロイヤル フェスティバル ホールでのライブを行う。この模様は翌2019年に発表されたオーディオ&ビデオアルバム、『Other Aspects、Live at the Royal Festival Hall』に収録された。

2020年7月3日、15枚目のソロ アルバム 『On Sunset』をリリース、UKアルバムチャート初登場1位を獲得した。これによりポール・ウェラーは、1980年代のザ・ジャムアルバム『Gift』(1982 年) 、ザ・スタイル・カウンシルアルバム『Our Favorite Shop』(1985年)、1990年代のソロアルバム『Stanley Road』(1995)、2000年代の『Illumination』(2002)、『22 Dreams』(2008)、2010年代の『Sonik Kicks』(2012)、そして2020年代の『On Sunset』(2020)と、50年間の各年代でUKナンバー1アルバムをリリースするという偉業を達成した。

2021年5月14日、16枚目のソロ アルバム『Fat Pop(Volume 1)』をリリース。UKチャートの1位を獲得した。『Fat Pop』発売翌日の5月15日、ロンドン、バービカンセンターでBBC交響楽団と共演しライブ配信された。この模様は『An Orchestrated Songbook』として2021年12月にリリースされた。

2022年10月28日、レア音源アルバム『Will Of The People』が発売された。

Paul Weller(ポール・ウェラー)のプロフィール・人物像

ポール・ウェラーは1958年5月25日、イギリスのサリー州ウォーキングに生まれた。後にポール・ウェラーのマネージャーとなる父親・ジョンはタクシーの運転手と建築業者として働き、母親は非常勤の清掃員として勤めに出るなど、典型的な労働者階級の家庭だった。

1963年にメイベリー・カウンティ・ファースト・スクールに入学、その頃からポールはビートルズに目覚め、スクラップ帳を何冊も作るほどの熱中ぶりであったという。ポールの興味はザ・フーとスモール・フェイセス、さらにはモータウンやスタックスレーベルなどの黒人音楽にも広がっていった。11歳になり、シアウォーター郡の中等学校に進学する頃にはギターを手にし、作曲にもチャレンジしていた。ポールの中で音楽が人生の大半を占めるようになっていた。

1972年にステータスクオのライブを観て感化されたポールは、同じ年に親友のスティーブ・ブルックスとデイブ・ウォーラー とザ・ジャムを結成する。マネージャーを務めるポールの父親は、地元の労働者達のクラブを中心にザ・ジャムを売り込んでいった。その後ドラムのリック・バックラーが参加し、デイブ・ウォーラーとブルース・フォクストンが入れ替わり、4ピース・バンドとなったザ・ジャムは地元の評判を築き始め、ビートルズのカバーやポール、ブルックスが書いたオリジナルを演奏した。1974年後半、ザ・フーの「マイ・ジェネレーション」を聴いたことにより、ポールは1960年代のモッズ・カルチャーに興味を持つようになった。ポールはランブレッタのスクーターに乗り始め、髪型はスモール・フェイセスのスティーブ・マリオットのようにスタイリングし、ステージではモヘアのスーツを着るようになり、ビートルズやザ・フーも愛用したリッケンバッカーのギターを弾き始めた。後の1991年のインタビューでは、「死ぬまでずっとモッズであり続ける」と宣言した。スティーブ・ブルックスは1976年にバンドを去り、スリー・ピースのバンドとなったザ・ジャムはロンドンで本格的にライヴ活動を開始する。

1977年、イギリスではパンクムーブメントが吹き荒れ、それに便乗するようにザ・ジャムはシングル「イン・ザ ・シティ」でデビューする。モッズスーツに身を包んだスタイリッシュなファッション。エッジの効いた攻撃的なサウンドの中にもビートルズやザ・フーといった偉大なバンドのエッセンスを散りばめ、反骨心溢れる歌詞で痛烈な体勢批判をぶちまけた。パンクブームはあっという間に終焉を迎え、セックス・ピストルズ等のパンクバンドが勢いを失っていくなか、ザ・ジャムはポール・ウェラーのカリスマ性とモッズサウンドで若者たちを熱狂させ、他のパンクバンドとは一線を画すかたちでワーキングクラスのヒーローであり続けた。しかしポールは自らの音楽性の追求がもはやザ・ジャムでは表現し切れなくなってきたことに限界を感じ始め、結局、人気絶頂の中、1982年にザ・ジャムは突然解散してしまう。より幅広い音楽を求め、ポールはミック・タルボットとザ・スタイル・カウンシルを結成した。

ザ・ジャムとは打って変わってリラックスしたお洒落な音楽に、ザ・ジャム時代からのファンは裏切りととらえたが、そのお洒落な音楽は80年代のネオアコブームの一端をも担い、特に渋谷系と言われる日本のアーティスト達に多大な影響を与えた。1985年発表の「アワ・フェバリット・ショップ(Our Favourite Shop)」では、ついにアルバム・チャートの全英ナンバー1を獲得、ザ・ジャム時代以上の人気を獲得し、ポール自身も、これ以上のものは作れないのではというほどの満足の出来となった。しかしスタイル・カウンシルは更なる音楽を追求することにより徐々に迷走を始め、後半では、ハウスミュージックにまで傾倒するようになった。ステージでは短パンに膝小僧を出したポールが、ギターではなく常にマイクを握りながらくねくね踊る姿に、スタイル・カウンシル時代からのファンからも困惑される様になっていった。結局レーベルからも見放され、スタイル・カウンシルは失意のうちに自然解散していく。

全てを失ったポールは、ここに来て初めてソロとして3度目のデビューをするが、ポール自身も手探りで不安を持った再スタートだった。しかし、久しぶりにギターを携え戻ってきた姿に、往年のポール・ウェラーファンが反応した。ザ・ジャム時代のエッジの効いたサウンドや、スタイル・カウンシル時代のお洒落で華やかななサウンドを削ぎ落とし、自分の好きな音楽をやる姿に手ごたえを感じ、ポールは自信を取り戻していった。更に1990年代初頭に吹き荒れたプリットポップムーブメントがポールを後押しすることになる。この頃台頭し、イギリスを席巻していたオアシス、ブラー、パルプなどの若手のバンド達がこぞってポール・ウェラーを自らの師と仰いだのである。パンク期にデビューした同期たちは第一線から姿を消して久しいが、ポール・ウェラーだけが若い世代のアーティスト達と肩を並べて音楽シーンのフロントラインに立ち続けている。

ザ・ジャム、ザ ・スタイルカウンシルとキャリアを亘ってきたポールだが、気づけばソロとしての活動は20年以上に亘り、キャリアの中で最も長くなった。ソロ転向後はキャッチーさや売れ線とはかけ離れているが、いぶし銀のような噛めば噛むほど味のでるその深い味わいに満ち溢れている。泥臭さの中にもイギリス人独特のクールさが下味として効いていて、一度好きになったファンの心を掴んで離さない。まさにイギリスロック界のレジェンド、UKロック界のアイコンである。

Paul Weller(ポール・ウェラー)のディスコグラフィー

アルバム

Paul Weller

01. Uh-Huh Oh Yeh
02. I Didn't Mean To Hurt You
03. Bull Rush
04. Round & Round
05. Remember How We Started
06. Above The Clouds
07. Clues
08. Into Tomorrow
09. Amongst Butterflies
10. The Strange Museum
11. Bitterness Rising
12. Kosmos

ザ・スタイル・カウンシル解散後、ポールは「ポール・ウェラー・ムーヴメント」というソロ・プロジェクトを始動、1990年11月にツアーを開始。その後、1991年に自主制作によるシングル「イントゥ・トゥモロウ」発表。そして、1992年4月、本作を日本で先行発売。ポールの長いキャリアにとって意外にも初めてのソロアルバムである。

ザ・スタイル・カウンシル後期の迷いを吹き飛ばすかの如く、まさにポールのやりたいことを素直に実現したアルバム。ザ・ジャム時代のエッジもなく、ザ・スタイル・カウンシル時代の洗練さも削ぎ落とし地味になった印象だが、聴くにつれじわじわと心に沁みてくるアルバム。本国イギリスでは、「Go! Discs」との契約を得て、同年9月に発表。アルバムは全英8位に達し、シングル「UH HUH OH YEH」は全英18位、「アバヴ・ザ・クラウズ」は全英47位に達した。

Wild Wood

01. Sunflower
02. Can You Heal Us (Holy Man)
03. Wild Wood
04. Instrumental (Pt 1)
05. All The Pictures On The Wall
06. Has My Fire Really Gone Out?
07. Country
08. Instrumental Two
09. 5th Season
10. The Weaver
11. Instrumental (Pt 2)
12. Foot Of The Mountain
13. Shadow Of The Sun
14. Holy Man (Reprise)
15. Moon On Your Pyjamas
16. Hung Up

1993年に発表した、ソロ2作目のアルバム。R&B、ジャズ等をベースに自然体で伸び伸びとしたソウルを展開している。
オーシャン・カラー・シーンのサイモン・ファウラーとスティーヴ・クラドックがゲスト参加。「サンフラワー」(全英16位)、「ワイルド・ウッド」(全英14位)、「ザ・ウィーヴァー」(全英18位)、「ハング・アップ」(全英11位)がシングルとしてリリースされた。

Stanley Road

01. The Changingman
02. Porcelain Gods Pt.1
03. I Walk on Gilded Splinters
04. You Do Something to Me
05. Woodcutter's Son
06. Time Passes...
07. Stanley Road
08. Broken Stones
09. Out of the Sinking
10. Pink on White Walls
11. Whirlpools' End
12. Wings of Speed

1995年発表のソロ3作目。驚異的なロング・セールスを記録したポール渾身の一枚、初登場1位。ポール36歳にして興行的にも名声的にも頂点に達した作品。「The changingman」はこのアルバムのキラーチューン。
スティーヴ・ウィンウッドやノエル・ギャラガー等がゲスト参加。ジャケット・デザインは、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』で知られるピート・ブレイクが担当した。ブリットポップ全盛の1995年、10年振り全英1位を獲得した傑作アルバム。

Heavy Soul

01. Heavy Soul (Pt 1)
02. Peacock Suit
03. Up in Suzes' Room
04. Brushed
05. Driving Nowhere
06. I Should Have Been There to Inspire You
07. Heavy Soul (Pt 2)
08. Friday Street
09. Science
10. Golden Sands
11. As You Lean Into the Light
12. Mermaids

1997年に発表したソロ4作目。前作スタンリー・ロードで頂点に達したポール・ウェラーが、その次の作品として発表した。ポール・ウェラーのソロ作品の中でも最もロック色が強く、ポール渾身のシャウトも随所で聴くことができる。第1弾シングル「ピーコック・スーツ」は、ポールのソロ・シングルとしては最高位の全英5位を獲得した。

Heliocentric

01. He's the Keeper
02. Frightened
03. Sweet Pea, My Sweet Pea
04. A Whale's Tale
05. Back in the Fire
06. Dust and Rocks
07. There's No Drinking, After You're Dead
08. With Time & Temperance
09. Picking Up Sticks
10. Love-Less

2000年発表のソロ5作目。ザ・ジャム、ザ・スタイル・カウンシル、そしてソロでも4枚のアルバムを発表し、キャリアの総括としてのベストアルバム『モダン・クラシックス』を発売した後の初のスタジオアルバム。コマーシャルなヒットは無く地味な印象はあるが、より肩の力が抜けリラックスした温かみのある、まさに隠れた名作。多くの楽曲でオーケストラを取り入れている。オーシャン・カラー・シーンからスティーヴ・クラドックとデーモン・ミンケラが全面参加。

Illumination

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