つらつらわらじ(備前熊田家参勤絵巻)のネタバレ解説・考察まとめ

『つらつらわらじ』とは『月刊モーニングtwo』(講談社)で連載されていたオノ・ナツメによる時代劇漫画である。時は寛政、備前岡山藩主の熊田治隆は参勤交代のために江戸に向かうことになった。そして、隠居して江戸で暮らす計画を立てているため、江戸までの旅を楽しもうと考えていたのだ。しかし、江戸までの道のりは波乱の連続だった。『ACCA13区監察課』や『レディ&オールドマン』など人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、2年に1度の参勤交代エンターテインメントだ。

参府の旅に出る前に行木長門が熊田治隆に言ったセリフ。もともと、息子の元八郎を同行させる気でいた治隆に、「どうか和泉を、殿のお側にいてこそ学べることがございます。それは和泉にとって必ずや糧となりましょう」と和泉を連れていくように進言。治隆の側で多くを学び、治隆の側に少しでも長くいられるようにと和泉が成長する機会を与えた。このことは治隆しか知らず、旅の途中で和泉にも明かしているが、感情が表に出ない長門なりの気遣いともとれるセリフだ。

熊田和泉「己が情けのうて悔しゅうございます」

治隆を乗せた籠が谷底に落ち、治隆のもとに駆け寄ったときの熊田和泉のセリフ。これより前に、自分を推薦したのが長門だと知った和泉。家老首座を奪われ長門のことを良く思っていなかった和泉だったが、「長門殿は私を気遣ってくれていた。己が情けのうて悔しゅうございます」と後悔が表れている。籠が谷底に落ち、追いかけている時に「まだ多くのものを殿と共に見たいのだ」と考えていた和泉の成長がわかるセリフだ。

熊田和泉「槍は武家の命ぞ」

和泉を助けた久作に対して、和泉が言ったセリフ。川の深いところを馬に乗り渡っていた和泉。バランスを崩し馬の百楽に振り落とされそうになったところを久作が助けたのだ。しかし、久作が武士の命である槍を放り出したのを見て「槍は武士の命ぞ。その槍を放るとは何事か」と久作を叱責した。隠密として行列に紛れ込んでいた久作が咄嗟にとったこの行動が、馬の口取り役に命じられたり、治隆に菓子談義をすることになったりと、後々の展開に影響を及ぼしている。この作品の一つの転機ともいえる場面だ。

熊田治隆「野営いたす」

岡崎に到着したときに治隆が放ったセリフ。岡崎に到着した熊田参勤行列だったが、同じく伊勢神宮代参使として岡崎中根本陣に来ていた宮野家が治隆たちが泊まるはずだった宿に入った。別の宿を探すことも可能だったのだが、急に宿に押しかけては宿にとっても迷惑がかかるから、とそうしなかった。そして、治隆自身が「野営いたす」と決意しその場で陣幕を張り野営することになったのである。一介の殿様なら無理を言ってでも宿に入りそうなものだが、治隆の懐の広さ、臨機応変さがにじみ出ている場面だ。

『つらつらわらじ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

登場人物たちのモデル

『つらつらわらじ』には、たくさんのキャラクターが登場する。その人物たちの多くには、モデルとなった人物が存在しているのだ。例えば、主人公の熊田治隆は、備前岡山藩5代藩主であった池田治政(いけだ はるまさ)をモデルにしていると言われている。また、大坂の豪商である鵬池善左衛門は、江戸時代の代表的豪商の一つである摂津国大坂の両替商・鴻池家の鴻池善右衛門(こうのいけ ぜんえもん)がモデルになっていると言われている。このようにモデルとなった歴史上の人物が多くいるため、史実と照らし合わせながら楽しむことができるのだ。

電子書籍『つらつらわらじ/特別編』

『つらつらわらじ』には、電子書籍のみで配信されている『つらつらわらじ/特別編』がある。第四家老の日木元八郎と治隆の話で、日木がまだ新米家老だったころを描いている。治隆が最後の参勤の旅に出る2年前のエピソードが収録されているのだ。

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