リストランテ・パラディーゾ(GENTE〜リストランテの人々〜)のネタバレ解説・考察まとめ

『リストランテ・パラディーゾ(GENTE〜リストランテの人々〜)』とは、『マンガ・エロティクス・エフ』(太田出版)で連載されていたオノ・ナツメによる、老紳士たちが織り成すハートフル漫画である。幼くして両親が離婚し祖父母に預けられたニコレッタは、母親の再婚相手を一目見るためローマにあるリストランテにやってきた。そこで働き始めたニコレッタは、従業員全員が老眼鏡着用必須のリストランテであることを知ったのである。数々の人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、老眼鏡紳士たちによるおもてなし漫画だ。

『リストランテ・パラディーゾ(GENTE〜リストランテの人々〜)』の概要

『リストランテ・パラディーゾ(GENTE〜リストランテの人々〜)』とは、『マンガ・エロティクス・エフ』(太田出版)で連載されていたオノ・ナツメによる、老紳士たちが織り成すハートフル漫画である。『リストランテ・パラディーゾ』は2005年から2006年まで連載されており、単行本は全1巻のみだ。また、番外編の『GENTE〜リストランテの人々〜』も同誌にて連載されており、単行本は全3巻となっている。2009年からアニメも放送していたことがあり、『リストランテ・パラディーゾ』と『GENTE〜リストランテの人々〜』のストーリーを織り交ぜたような構成になっていた。後日談としてドラマCDも発売されており、多岐にわたるメディアミックス展開をみせているのだ。

オノ・ナツメが描く作品は時代劇やハードボイルド、ボーイズラブと幅広くキャラクターも個性的だ。オノ・ナツメ自身が眼鏡好きを公言しており、老眼鏡の壮年男性を描くことが多く見られる。『リストランテ・パラディーゾ(GENTE〜リストランテの人々〜)』は、オノ・ナツメの理想が詰まっている作品と言える。気弱眼鏡や陽気眼鏡など、たくさんの老眼鏡紳士が登場するからだ。オノ・ナツメが描く魅力的なキャラクターは数多くいるが、今作に登場する老眼鏡紳士たちは色気あり、眼鏡あり、個性ありのリストランテ従業員だ。そんな彼らにおもてなしされ、至福の時間を味わえるハートフルストーリーとなっている。

幼くして両親が離婚し祖父母に預けられたニコレッタは、母親の再婚相手を一目見るためローマにある小さなリストランテ「カゼッタ・デッロルソ」にやってきた。そこで見習いとして働き始めたニコレッタは、従業員全員が老眼鏡着用必須のリストランテであることを知ったのである。『ACCA13区監察課』や『ハヴ・ア・グレイト・サンデー』など、数々の人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、老眼鏡紳士たちによるおもてなし漫画だ。

『リストランテ・パラディーゾ(GENTE〜リストランテの人々〜)』のあらすじ・ストーリー

『リストランテ・パラディーゾ』

出会い

21歳のニコレッタは、イタリア・ローマにある小さなリストランテ「カゼッタ・デッロルソ」にやってきた。
予約しなければ入れないほど人気の店だが、ニコレッタは「店のオーナーに用事がある」と言って待たせてもらうことにした。

しばらくして、オーナーのロレンツォが一人の女性を伴って店に入ってきた。その女性オルガは、ニコレッタの姿を見て驚いた。オルガは、ニコレッタの母だったのだ。
しかも、ロレンツォと再婚するためにニコレッタを祖父母に預け、成人するまで一度も会っていなかった。

ニコレッタと母オルガは、2人きりで外に出て話をする。ロレンツォが「子持ちの女性とは結婚しない」と言っていたため、ニコレッタは「自分が娘であることをバラすためにローマまで来た」と言う。
ちゃんと二人で話し合うことを条件に、ニコレッタとオルガはロレンツォに促されて店内に入った。

「友人の娘のニコレッタ」とオルガに紹介されたニコレッタはむっとするが、眼鏡をかけ前菜を持ってきた老紳士クラウディオに目がいった。
カメリエーレ(ホール担当)長だという彼の物腰柔らかな雰囲気に、紳士だと思わずにはいられない。しかし、ふと周りを見るとニコレッタと同じように、クラウディオに釘付けの女性が何人もいた。
ロレンツォから「紳士好きが押しかけてくる店」だと聞かされたのである。

翌朝、母オルガから「用事が出来て、会って話せなくなった」と電話を受けたニコレッタ。当面のアパートは手配してくれるようだ。
ここに住むなら働く必要があると考えながら外を歩いていると、クラウディオと遭遇する。彼は店に行かなければいけない為、「まかないでよければ、食事をしよう」と提案してくれた。

数日連続で「カゼッタ・デッロルソ」にやってきたニコレッタは、店で一番人気があるのは誰なのか気になっていた。ニコレッタは、店の従業員であるクラウディオ、ルチアーノ、ヴィート、ジジ、フリオ、テオたちとまかないを食べていた。愛妻家のシェフであるフリオは「無口なルチアーノがいいんじゃないか」と言うが、そんなルチアーノは「ムードメーカーのヴィートがいい」と言うのだ。ニコレッタが「クラウディオはどうなの?」とルチアーノたちに聞く。「クラウディオも人気はあるが真面目で好奇心を駆り立てない」と最年少シェフのテオが答えた。さらにクラウディオは、左手薬指にはめた指輪をニコレッタに見せたのである。

恋する気持ち

後日、いつものように「カゼッタ・デッロルソ」に来ていたニコレッタは、帰り際雨が降っているのに気が付いた。
その横にいたクラウディオが「タクシーを呼ぼうか」と提案するが、ニコレッタは「走れば大丈夫」と告げる。すると、横からルチアーノがずいっと傘を差し出してきたのである。
「ニコレッタのためではなく、クラウディオに貸したのだ」と憎まれ口を叩きながら、その場を去っていくのであった。

二人で傘に入りながら、ニコレッタはクラウディオに「奥さんはどんな人?」と尋ねた。すると、クラウディオは「妻とは離婚しており、お客から交際を求められないように指輪をはめている」のだと言った。
今まで既婚者だと思っていたクラウディオに妻がいないことを知ったニコレッタは、クラウディオに対する壁がなくなったと思い、クラウディオをアパートに誘う。

こんな歳の離れた紳士に恋をするなんてはじめて、と思いながらニコレッタはクラウディオに座るように促した。すると突然、ニコレッタはクラウディオを押し倒したのである。
好きという気持ちはあるが本気なのか分からないため、物は試しにとニコレッタは押し倒したのだ。しかし、タイミング悪く母オルガがやってきたのであった。
ニコレッタは、クラウディオへの気持ちが本気であることをオルガに告げ、あるお願いをする。

翌日、ニコレッタは「カゼッタ・デッロルソ」の厨房で見習いとして働くことになった。
オルガへのお願いとは店で働くことで、お願いを聞いてくれたらロレンツォに娘であることをバラすのを考えてあげるというものだった。
厨房から出ないことが条件だが、ニコレッタはこれを機に料理を覚え自立しようと考えているようだ。

ニコレッタはクラウディオと同じ店で働けることを嬉しく思っていたが、その夜クラウディオの別れた妻ガブリエッラが店に来ることを知った。働き終わったニコレッタは、ガブリエッラとクラウディオが店の外で指輪について話しているのを聞いてしまう。ガブリエッラはニコレッタに気づきその場を去っていくが、クラウディオはどこか寂しげな様子だった。

翌日、ニコレッタは厨房で落ち込んでいた。
そんな様子を見ていたルチアーノは、クラウディオに「期待させないように過度に優しくするのはやめとけ」と厳しい言葉をかける。

別の日、従業員がまかないを食べている中、ニコレッタは一人ハーブ取りをしていた。クラウディオは、ニコレッタに「まかないができている」と声をかけた。そして、一緒にハーブ取りを手伝い始めた。

母オルガについて考えていたニコレッタは、二人で話をするうちに、オルガが母であると言ってしまう。「秘密にしてほしい」とクラウディオに告げ、充実した生活を送っているオルガを困らせたくて、田舎から出てきたことなどを話した。

母と娘

それからしばらくして、ガブリエッラが店にやってきた。複雑な表情をしているクラウディオを見て、ニコレッタはモヤモヤしていた。

いつものように従業員全員でまかないを食べていると、クラウディオの指輪の話になる。「忘れられないわけではないが、外さない」と言うクラウディオ。だが、ふいに指輪を外そうとした為ニコレッタは「簡単にそんなことしちゃ駄目よ」と、まかないのパスタをかけてしまった。

翌日、ニコレッタはオルガとガブリエッラがカフェで一緒にいるところに声をかけた。二人とも弁護士で同じ事務所で働いているため、こうしてよくお茶しているのだ。
ニコレッタは、ガブリエッラに「クラウディオの気持ちを分かっているはず。それなのに店に頻繁に顔を出すのはひどい」と告げた。
ガブリエッラはその帰り、クラウディオに電話をかけた。「しばらく、お店に行くのをやめようと思って。あの子いい子ね」とクラウディオに告げた。

母オルガの誕生日パーティーを「カゼッタ・デッロルソ」で行い、料理も好評だった。
シェフのテオは「ニコレッタが作ったケーキを、自分で出したらどうだ」と提案する。しかし、ニコレッタは「オーナーのロレンツォのほうがいい」と言ってその場を去っていく。ロレンツォが、ケーキをオルガに差し出した。

それを見た瞬間、オルガは「このケーキ、私の娘ニコレッタからのプレゼント!」と大きな声で言ってしまう。そして、娘がいたことや嘘をついていたことを謝るオルガだったが、「知ってた」とロレンツォが一言呟いた。
笑顔が似ていたから、最初から気づいていたようだ。

しばらくして、クラウディオはガブリエッラをカフェに呼び出し、指輪を外してテーブルに置いた。「長くかかってすまない。また店に来てくれ」とガブリエッラに伝え、クラウディオは去っていった。

その帰り、クラウディオは買い物をしているニコレッタに遭遇した。ニコレッタは、荷物を持ってくれるというクラウディオの左手薬指に指輪がないことに気が付いた。
そして「用事がなければ、美味しいものを作るから」とクラウディオを家に誘うのであった。

『GENTE〜リストランテの人々〜』

老眼鏡紳士は妻のために

貧血で倒れた弁護士のオルガは、再婚相手の男性ロレンツォに付き添われながら、一日入院することになった。
「退院したら、いつも通っているバールへ行きたい」というオルガの頼みを聞き、翌日義兄のジジを伴って、行くことになった。
しかし、オルガが会うのを楽しみにしている老眼鏡の紳士は、もう店に立っていないというのだ。

残念そうなオルガの様子を見たロレンツォは、今度ローマに開く店のホール担当に、初老で紳士で老眼鏡をかけた人を採用しようと考えていた。

ロレンツォは、例のバールで働いていたバリスタのルチアーノに連絡をとり「働いてほしい」と提案した。
しかし「孫との時間を過ごしたい」とルチアーノは、断ってしまう。そして、郊外のリストランテに務めている、クラウディオという初老の男性を紹介してくれた。

後日クラウディオとルチアーノは、お互いに説得される形で、ロレンツォの店のカメリエーレとして働くことになった。
ロレンツォは、クラウディオとルチアーノに承諾をもらえなかった時の為に、「50歳以上の老眼の方」と書いた張り紙で従業員を募集していた。求職中で、かつてはホテルのフロントで働いていた男性ヴィートを採用した。
ロレンツォは最年長のマルツィオ、シェフのヴァンナとダリオを、クラウディオたちに紹介した。

最初の客は、オーナー夫人のオルガ。オルガは、好きなワイン、それに合う料理であり感動した。
また目の保養にもなるが、なによりロレンツォが自分のことを思って従業員をそろえてくれたことに感無量だった。

「シェフの顔を見たい」というオルガの言葉に、リストランテ唯一の若者ダリオは「老眼になってから出直してきます」と言って、2か月で辞めてしまった。

無口で優しいルチアーノ

ルチアーノがいつものように店で働いていると、孫のフランチェスコ(通称フランチ)を連れた、娘のマルゲリータがやってきた。マルゲリータの夫は留守がちで「フランチが、ルチアーノに会いたがっていたため来た」というのだ。
帰り際、マルゲリータは「通っているヴァイオリンの演奏会があるから来てほしい」とルチアーノに告げる。

元ヴァイオリン奏者で、未亡人のサヴィーナという女性は、ルチアーノ目当てに店に通っている。
ルチアーノが一人でいると、サヴィーナが声をかけてきた。「自分が指導しているグループの子たちがヴァイオリンの演奏会に出るから」とチケットを渡してきた。ルチアーノは、演奏会を観た後、フランチを抱っこしてマルゲリータを待っていた。

サヴィーナは、ルチアーノがどんな素敵なご婦人と来ているのか不安になっていたが、孫だと知って安堵する。そしてライバルがいないことが分かったサヴィーナは、ルチアーノにキスしようとする。だが、丁度マルゲリータがやってきたのだった。

おせっかいなヴィート

カメリエーレのヴィートは、ジムに通っている。
ヴィートは、いつもは別の時間帯に来ている女性がいることに、珍しさを感じる。その女性が、あまりにも必死でトレーニングしていたため、声をかけた。
女性は「強い女にならなきゃと思って」と答え、女性は通っている空手教室へ向かうのであった。

トレーニング後、二人はカフェに来ていた。
建築学を専攻している大学生のマリーナは、プレイボーイとして有名なヴィートのことを知っていた。ヴィートは、そのおせっかいな性格のせいか、マリーナにあれこれ質問して呆れられた。

マリーナは姉のところで世話になっているらしく、強くならなければいけない理由は、そこにあるというのだ。
ヴィートはマリーナの買い物に付き合い、自宅へ招かれた。ヴィートはマリーナの姉と挨拶を交わすが、顔にガーゼを貼っており、旦那に暴力を受けていることに気が付いた。

ヴィートがマリーナの部屋で、マリーナと話していると、旦那が帰ってきた。喧嘩しているようだが、大きな音がしてマリーナとヴィートは部屋を出た。
どうやら旦那は出て行ったらしく、アパートの下にあるバールに行ったと聞き、ヴィートはバールへ向かったのである。しばらくして、旦那がアパートに戻ってきた。

ヴィートに説得され、姉と話し合うことにしたようで、姉は仕事を辞め旦那の国へ行くことになった。

別れに乾杯

開店1周年ということもあって、オルガや従業員たちによる集まりが開催されていた。
リストランテ最年長のマルツィオは、先週くらいから腰を悪くしていた。マルツィオは、祝いの席のため戸惑いながらも、店を辞めようと思っていることをロレンツォに告げた。

「歳のせいで立ち仕事が腰に来る」と、つぶやくマルツィオに、フランチが一緒に食べようとドルチェを持ってきた。そして、全員でマルツィオと「カゼッタ・デッロルソ」に乾杯した。

クラウディオとフリオ

クラウディオは、ここ数日食欲がなく、あまり食べていなかった。
そんな様子を見かねて、シェフのフリオが消化によいスープを作ってくれた。ヴァンナが辞めた後に入ってきたフリオだったが、少しずつ慣れてきているようだ。

シェフのテオ曰く、クラウディオは以前からフリオのことを知っているようだ。だが、フリオには心当たりがなかった。

かつて一流のホテルで新人カメリエーレとして働いていたクラウディオは、頼りない性格だった。
ある日、雑用を押し付けられて、まかないを食べ損ねたクラウディオはフラフラだった。廊下に座り込んでいると、ホテルのメインシェフであるフリオが、パスタを作ってくれた。

自分よりも若いのにしっかりしていて、人望もあるフリオに、クラウディオは感心していた。同時にカメリエーレを辞めようとも思っていた。
クラウディオがパスタの皿を持って立ち尽くしていると、アンジェラという女性が声をかけてきた。

自分とフリオを比べて落ち込んでいると、女性は「料理人とカメリエーレは違うわよ。あなたに向いている場所を選んだら」とアドバイスをくれた。
後から知ったことだが、アンジェラはホテルの令嬢で、フリオは彼女と婚約していたのだ。

フリオの妻アンジェラが「カゼッタ・デッロルソ」に来たとき、クラウディオと久々の再会であった。「婚約してた頃にホテルで働いていた人」とアンジェラは覚えていたのだ。

ヴァンナとテオ

シェフの、ヴァンナとテオは揉めていた。
やる気のないテオの態度に、ヴァンナが愛想を尽かしたのだ。

後日、急な来客で帰りが遅くなったヴァンナは、テオのバイクで自宅に送り届けてもらうことになった。
到着し、ヴァンナの故郷から届いた食材をテオにいくつか持ち帰ってもらうため、自宅に上がるように提案した。

ヴァンナは、テオが以前二つ星の店で修行していたことを話題に出した。
テオの父親も料理人だったらしく、テオが作る料理にはいつもケチをつけていた。一流の料理人になり父親を見返したかったが、その前に亡くなってしまった。
修行していた頃、シェフの真似事をして、父親に一品作ったことがあった。絶対に美味しいという自覚があったが、父親はなにも言わずに席を立ってしまった。しかし、皿に残ったソースで「前よりはマシ」とメッセージが書かれていた。

ある日、テオはロレンツォから「ヴァンナが店を辞める」と聞かされた。「カゼッタ・デッロルソ」の1周年記念パーティーのときに、ヴァンナはロレンツォに相談していたのだ。他の店に引き抜かれたことを聞いて、テオは「そんないい加減なやつだったか」とヴァンナに詰め寄っていく。そのままテオとヴァンナは、喧嘩別れをしてしまった。

ヴィートから聞いた話では、ヴァンナの娘夫婦がアメリカで本格的なイタリア料理店を開きたいと考えており、娘から「手を貸してほしい」と頼まれたのだ。
テオはそれを聞いて、次のシェフが来るまで、ヴァンナが書き残したレシピで料理を作るのであった。

ある日、テオが作った料理を食べたお客から「会いたい」と指名された。しかし「手が離せないから断ってくれ」と言い、厨房から出ることはなかった。
「皿に料理が残っていなければそれでいい」と言うテオだったが、クラウディオが下げてきた皿を見て驚いた。かつての父親のように、皿に残ったソースで「ブオニーノ」と書いていたからだ。
「ブオニーノ」は「ブオーノ(美味しい)」の一歩手前のニュアンスで、それを見てテオは気が付いたのだ。テオが急いで女性の後を追うと、そこにはヴァンナがおり、テオは抱きしめた。

喧嘩と女性たち

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