つらつらわらじ(備前熊田家参勤絵巻)のネタバレ解説・考察まとめ

『つらつらわらじ』とは『月刊モーニングtwo』(講談社)で連載されていたオノ・ナツメによる時代劇漫画である。時は寛政、備前岡山藩主の熊田治隆は参勤交代のために江戸に向かうことになった。そして、隠居して江戸で暮らす計画を立てているため、江戸までの旅を楽しもうと考えていたのだ。しかし、江戸までの道のりは波乱の連続だった。『ACCA13区監察課』や『レディ&オールドマン』など人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、2年に1度の参勤交代エンターテインメントだ。

左の馬が、百楽

大坂の豪商、鵬池善左衛門から熊田治隆に贈られた馬。治隆の命令には従うが、ほかの者の言うことは聞かず自由奔放で気性が荒い性格をしている。川を渡る際、家老の熊田和泉が乗っていたが暴れだし、中間の久作が口取り(馬を誘導したり落ち着かせる役割)となっている。贈られた当初は名前はなかったが、治隆が「百を楽しむ」ことから、「百楽」と名前を付けた。

一条関白(いちじょうかんぱく)

一条家当主で関白の位にある人物。母親は天城熊田家の養子なため、熊田和泉とは従兄弟にあたる。

幸吉(こうきち)

もともとは備前岡山城下で店を営んでいた人物。しかし、自らが作った大きな翼で城下を翔け、騒ぎを起こした罪で所払いになり駿府に移り住んでいた。治隆の目の前で空を翔る約束をしており、出立する直前に密かに作っていた翼で飛ぶことに成功した。

『つらつらわらじ』の用語

備前熊田家

備前岡山31万5千石を領す外様大名で、家紋は備前蜂。代々質素倹約政策を受け継いできたが、5代目熊田治隆は反対の姿勢を示している。

天城熊田家

岡山藩の家老の家元。もともとは熊田家の嫡流だったが、小牧長久手の戦いで当主だった熊田信輝が長男とともに戦死したため、次男である輝隆が当主になった。和泉はこの長男の家系だが、治隆は次男の家系である。もともとは筆頭家老の家系。

熊田家六家老

岡山藩の家老職につく6つの家。藩主一門である熊田家と日木家、戸倉家、行木家の6つの家から構成されている。この中で、天城熊田家が最も家格が高い。

参勤交代

参勤交代とは、江戸時代において各藩の主である大名などを交替で江戸に出仕させる制度。大名家が2年ごとに江戸に参覲し、1年経ったら自分の領地へ引き上げる交代を行う制度である。一年おきに江戸と自分の領地を行き来しなければならず、江戸を離れる場合でも正室と世継ぎは江戸に常住しなければならなかったため、治隆の息子や妻は江戸にいる。

御庭番

御庭番とは、江戸時代の第8代将軍・徳川吉宗が設けた幕府の役職で、将軍から直接の命令を受けて秘密裏に諜報活動を行った組織のこと。身分を隠して情勢を視察したり、隠密に得た情報を将軍に報告する役割を担っていた。久作は、熊田家参勤行列に身分を偽り紛れ込んでいた。

『つらつらわらじ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

熊田治隆「よい肝じゃ。なかなか太うなってまいったのう」

「居眠りとはのう、こやつめ。よい肝じゃ。なかなか太うなってまいったのう」長旅で疲れていたのか、堂々と居眠りをしている熊田和泉に対して熊田治隆が放ったセリフ。以前は治隆の前で気を張っていた和泉が旅を通じて人間的にも、家老的にも成長している過程を表しているセリフだ。殿の前で居眠りをしているにもかかわらず、咎めもなくというのは治隆の懐の深さがうかがえる。

熊田治隆「隙間がない」

「越中守様をどういう人物をお考えで」と熊田和泉に聞かれたとき、熊田治隆は「隙間がない。窮屈そうである」と言った。「隙」でなはく「隙間」と言ったのは、襖も箪笥もわずかな隙間が必要なのに、越中守にはそのような隙間はなく窮屈そうに見えると考えたからだ。隙間なく風通しが悪くては空気は淀み、息苦しくなる。そのような環境では自分の首を絞めるだけだという、的確な意見を述べている。家臣たちを振り回している自由奔放な性格からは想像できないほど、惹かれる要素を含んでいるセリフだ。

行木長門「和泉殿にとって必ずや糧となりましょう」

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