ふたがしら(漫画・ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ふたがしら』とは、『月刊IKKI』(小学館刊)また増刊『ヒバナ』(小学館刊)で連載されていた時代劇漫画、およびそれを原作とした連続テレビドラマである。時は江戸時代。盗賊「赤目一味」の頭目だった辰五郎が死去。その際に、手下である弁蔵と宗次二人に一味のことを託したことからすべては始まった。『ACCA13区監察課』や『レディ&オールドマン』数々の人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、巧妙な駆け引きと巧みな騙しあいが織りなす時代劇盗賊エンターテインメントだ。

『ふたがしら』の概要

『ふたがしら』とはオノ・ナツメが『月刊IKKI』(小学館刊)また増刊『ヒバナ』(小学館刊)で連載していた漫画、およびそれを原作とした連続テレビドラマである。2011年7月号から『月刊IKKI』が休刊するまでの2014年11月号、さらに2015年に創刊した『ビッグコミックスピリッツ』増刊『ヒバナ』にて2016年9月号まで連載された。なお単行本は7巻で完結となっている。今まで『ACCA13区監察課』や『レディ&オールドマン』など、ハードボイルドなテイストの作品が多かったが、今回は痛快な騙しあいがクセになる「江戸活劇」だ。主人公の弁蔵と宗次の掛け合いが絶妙で、今まで多くの魅力的なキャラクターを生み出してきたオノ・ナツメ作品の中でも屈指のコンビといえる。

作品の舞台は江戸時代。盗賊「赤目一味」の頭目、辰五郎の死に立ち会った弁蔵と宗次。辰五郎は死の間際、二人に「一味のこと、まかせた」と言い残してその生涯を終えた。しかし多くの手下が見つめる中、跡目に選ばれたのは辰五郎の弟分、甚三郎だった。これに対して納得のいかない弁蔵と宗次は一味を離れ「でっかいことをやる」ために、旅立つ決意をするのであった。これはオノ・ナツメが描く時代劇盗賊エンターテインメントだ。

『ふたがしら』のあらすじ・ストーリー

宗次と弁蔵

盗賊「赤目一味」の頭目であった辰五郎(たつごろう)の「後を頼む」という最期の言葉を聞いていた手下の弁蔵(べんぞう)と宗次(そうじ)は、辰五郎の弟分・甚三郎が新しい顔役になったことが納得いかず、二人でその場を去っていった。
まずは知り合いのいる大阪へ向かうことにした二人だが、「先立つものが必要だ」という結論に達し、以前弁蔵が金の世話をした亀吉に会いに平塚へ行く。
しかし亀吉の行方は一向につかめず、さらに弁蔵は一文無しに近い程に金がない状態だった。宿賃を持っていた宗次を残して一人亀吉探しに出た弁蔵は、「高麗寺」付近で噂になっている賭場があることを思い出す。
すると弁蔵は不意に二人の男に声を掛けられ、そのうちの一人が亀吉であることに気が付いた。しかし亀吉は小銭数枚を弁蔵の足元に投げて、小ばかにしたような態度でその場を去っていく。弁蔵はその小銭をすべて旅籠の主人に差し出し「なんでもやるからこき使ってくれ」と申し出ると、人の好さそうな主人は「将棋の相手になってくれればいい」とだけ言ったのだった。

一方宗次は亀吉がいる賭場へ一人赴くと、弁蔵がたかられた分の金をきっちりと回収する。旅籠で合流した二人は主人から賭場の黒い噂話を聞くと、賭場に侵入することを決意した。
かくして賭場の悪行に決起した民衆が押しかける中、二人はきっちり仕事をこなし、弁蔵が取り上げられた分の回収に成功したのである。
翌日、取り返した分以上にまだ大量に寺に余っている金をどうしようか二人が思案していると、旅籠屋の主人が現れる。主人は喜兵衛(きへえ)という名で、表向きは「叶屋」の主人、裏では盗賊たちに金品の隠し場所を提供していた。宗次と弁蔵は両名一致で金を預けることに同意するのだった。

三人の盗賊

金を預けた二人が西に向かって歩いていると、道中で役人が血を流し倒れている場面に遭遇する。役人は襲われた隙に連行していた罪人を奪われたと説明し、二人に何かを手渡すと息絶えた。
すると宗次は侍、弁蔵は侍の召使の中間(ちゅうげん)に変装し、急ぎ江戸へと戻る。道中一部の隙も見せない宗次に対して、酒を飲んではあばれトラブルを引き起して捕まる弁蔵。そんな弁蔵をいとも簡単に助け出した挙句金まで盗んで行く宗次の様子を、陰で見ていた三人の男たちがいた。
彼らは役人を襲った犯人で、弁蔵と宗次の前に現れると「役人から預かったであろうふみを渡せ」と凄んでくる。しかし実際二人が預かったのは役人が江戸で待つ妻に渡すために買った簪だったのだ。翌日約束通り簪を届けた二人に対し、三人組は「手下にしてほしい」と頼んでくる。しかし「半端物を預かるつもりはない」と突っぱねた。翌日町へ出ていた二人は、かつて自分たちが所属していた「赤目」によって死傷者が出る強盗騒ぎが起きていたことを知る。宗次と弁蔵は出来るだけ早く西へと向かうことを決意したのであった。

盗賊団「夜坂」

長旅の末ようやく大阪に辿りつき船を降りようとした途端、弁蔵は船がぐらつき海に落ちてしまう。船頭の謝罪によって旅籠を案内された二人は、偶然目的の盗賊団「夜坂」の頭目鉄次郎、そして鉄次郎の紹介で屋敷に案内され夜坂の隠居と出会った。
二人は隠居に「赤目」を抜けたことを伝え、「赤目以上のでかい組織を率いたい」と訴える。しかし隠居は「話は明日だ」として世話役の芳(よし)を呼び、大阪の町を案内させて三人で飲み明かしたのであった。
翌日一味に入ることを認められた宗次と弁蔵は、芳を慕う「船頭四兄弟」に引き合わされる。そして現頭目である鉄次郎から「手並みを見せてもらう」と試練を与えられたのだった。
二人は町の人々の何気ない話から情報を集め、「角屋」という店に盗みに入る。二年前に盗みに入られたという事を聞いていたため警戒するが、あっさり盗みは成功した。そこで二人は盗みの技術を見ていたのではなく、見つけた獲物の細見を持ち帰ることだ、と気づいた。
こうして当目から認められた二人は、翌日から弁蔵は船頭として、宗次は舟宿の料理人として働くこととなる。さらに二人に情報を与えていた住人達は、みな「夜坂」の一員だった。

壱師の誕生

大阪での生活がしばらく続いたころ、鉄次郎が務めを果たさないことを危惧する芳ともめていることが発覚する。鉄次郎・宗次と一緒に飲んでいた弁蔵は、鉄次郎が「勤めは果たすがまだ先だ」という言葉に何か思うところがあるようだった。
そして突然立ち上がり「俺の故郷を見せてやる」と宗次に宣言すると、急遽里帰りをすることとなる。訳が分からない宗次を連れて久しぶりに実家に帰った弁蔵だったが、父親の剣幕に押されて羽交い絞めにされてしまう。さらに客である宗次まで何故か畑仕事に駆り出されたのだった。
二日ほどの滞在後、宗次は「二度とここへ戻ることはない。別れだけはしっかりしておけよ」と弁蔵に声を掛ける。そして弁蔵は涙を流しながら「達者でなあ!」と家族に別れを告げたのだった。

大阪に戻った二人は、芳が鉄五郎に黙って務めを果たして揉めているという話を聞く。宗次と弁蔵は「一味の為に何とかしたい」と考えて四兄弟を始めとした一味をけしかけ、鉄五郎に務めを果たさせようと尽力する。そしてあっさりと務めを果たした「夜坂」一味は、その日を持って解散したのだった。
その後暫くして、「夜坂」の隠居が生涯の幕を閉じる。そして二人は隠居が葬られた墓の側に咲き誇る曼殊沙華を見て、自分たちの組織「壱師」を立ち上げたのだった。

それぞれの道へ

宗次と弁蔵を慕って組織に加わった元盗賊の三人組や、元「夜坂」のメンバーである芳や四兄弟等を筆頭に、「壱師」はその名を知らぬ者はいないほどに巨大な組織となっていく。
しかし宗次と弁蔵は故郷に残った一人の女「お蔦」の存在がひずみとなって、徐々に心が離れていってしまうのだった。組織の中心になっていた芳も、勤めの途中で命を落としてしまう。
宗次は「ここらがてっぺんだと思わないか?」と弁蔵に問いかける。弁蔵は「二人でてっぺんに座り続けようぜ」と答えた。
二人は「でっかいことをやろう」という務めをただがむしゃらにこなしてきた。しかし宗次はいつしか違う道を進みたいと思うようになったのである。
宗次は「『壱師』は弁蔵に任せる」という言葉を残したきり、二度と戻ってくることはなかった。弁蔵はかつて宗次が「別れだけはしっかりしておけ」と言っていたにもかかわらず、「任せる」の一言だけしかなかったことにショックを隠せなかった。
その後「壱師」を離れた宗次は、辰五郎と想い人だったお蔦、そして病で死ぬまで「壱師」のメンバーを率いていた弁蔵の墓参りを生涯にわたって続けたのだった。

『ふたがしら』の登場人物・キャラクター

主人公

弁蔵

左:弁蔵

ドラマ版:松山ケンイチ
今作『ふたがしら』の主人公の一人で、宗次とともに盗賊一味「赤目」から脱退、でかいことを成し遂げるために旅に出た。勘が鋭く決断力もあるが、宗次とは違い騙されやすく猪突猛進な性格。赤目の下働きのお蔦から思いを寄せられるも気づいていない様子。盗賊一味「夜坂」がいる大坂で宗次と一緒に修行し、盗賊一味「壱師」を作り上げた。その後、宗次とともに壱師の「ふたがしら」となった。「鬼蜘蛛」という二つ名がある。

宗次

右:宗次

ドラマ版:早乙女太一
今作『ふたがしら』のもう一人の主人公で、弁蔵とともに盗賊一味「赤目」から脱退、でかいこと成し遂げるために旅に出た。弁蔵とは違い常に冷静に物事を判断し、さらにその美形な容姿から女性にモテることも多い。慈悲深い性格もあってか「仏」という二つ名がある。舟宿の料理人を任されるほど料理の腕がいい。盗賊一味「夜坂」がいる大坂で弁蔵と一緒に修行し、盗賊一味「壱師」を作り上げた。その後、弁蔵とともに壱師の「ふたがしら」となった。父親が医者だったため医術の心得もある。

盗賊一味「赤目」

辰五郎

ドラマ版:國村隼
宗次と弁蔵がかつて所属していた盗賊一味「赤目」の先代頭目。二人のことは特別目をかけており死ぬ間際には「一味のことは、まかせた」と言葉を残している。

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