【ちびまる子ちゃん】永沢くんに夢中？美しきクラスメート・城ヶ崎さんの秘密

重要文化財 古伊賀水指 銘「破れ袋」

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破格の歴史ギャグ漫画『へうげもの』でおなじみの武将茶人・古田織部が実際に感銘を受けたとされる偶然の産物。 広く一般に好まれる整った物とは大きく異なる、焦げて破れてひしゃげたグロテスクな姿をしており、本来の水を蓄えておくための「道具」として機能するかどうかも怪しい代物だが、好奇心旺盛な織部は、これにたぐいまれな面白味と自然味を見いだし、「今後二度と出ないであろう」と絶賛したのだとか。

※上の画像はあくまで物語の中の一場面（念の為）。
作中では利休に続く曲者として、清く正しく麗しい幕府の裏で“笑福の世”を実現させるべく暗躍する姿が描かれる。

この城ヶ崎さんという人物は、あろうことか永沢特有の「ヘンな感じ」に愛嬌を見いだし、生来備わった清潔美麗かつ荘厳な「甲」の様式にはない一風変わった「おかしみ」に何とかして染まりたがっている。

その奇妙きわまる趣を熱望する彼女の恋心は、もしかしたら、すでに完成し落ち着いた茶室に新たな風情を求め、胸くすぐる「乙」な器を欲した織部とほとんど同じ流れを汲んでいたりするのかもしれない。

しかし当の永沢君は
そっぽを向いて強がるばかり。

人生イージーモードだろうに、中学生になって「汚されたい」という理由から永沢に惚れて進学校行ける学力なのに永沢と同じ商業高校受けて結果永沢は落ちるという…

ムダのない黒（エイリアン）を至上とした利休と、
ムラのある奇(The Thing)を貴重にした織部。

彼女の絶対的な価値観は、へうげた未知の物体によって崩壊し、あらかじめ設けられた神聖な玉座から一転、永沢ともども予測不可能な紆余曲折を経ることとなった。

しかも、肝心の波長が一向に合わない。
なんと悲しくやりきれない幕切れだろうか。

その姿はまるで、どこぞの悪徳セールスマンに付け込まれ、どん底に突き落とされた被害者のようでもある。

さくらももこワールド随一のパーフェクトヒロインにして、
稀代の珍品「永沢君」を追い求める業深き“数寄者”城ヶ崎さん。

どこまでも諦めが悪く、そして、いつまでも報われないのだった。

しかし、ちょっと待ってほしい。

実は、「ちびまる子ちゃん ‐大野君と杉山君‐」という単行本のおまけエピソードに意外な話が収録されている。

そのタイトルは、『20年後の同窓会』

この話では「ちびまる子ちゃん」の人物たちの将来の姿が描かれており、そこに出てくる大人の永沢は「タマネギおじさんの店」という、こぢんまりとした飲食店を営業しているらしい。

作者曰く「火事のときに色々面倒を見てくれた親戚がおり、開業資金もその人から借りたに違いない」とのこと。

しかし、経営状況はあまり芳しくないようで、おまけにお見合いを破談にされて落ち込んだりと、自分のことを理解し補ってくれる存在に心底飢えている状態。

“「何のお店を開こうかしら、あははっ、姫子のおっちょこちょい」”

なんという運命のイタズラ……
彼女の『永沢君』における不憫な言動は、こんな重要な場面へと繋がっていくのだった。

これは単にすれ違いの悲喜劇を嘲笑うだけのものなのか。
だが少し考えてみると、「ほんのわずかな可能性くらいは残してやらんでもない」という、作者なりのささやかな救済措置にもとれるのではないだろうか？（希望的観測）

どうせなら、前向きな彼女らしくポジティブに捉えていきたいところ。

そう、いかにタマネギが傷んで腐ろうとも、彼女にとってはナイスミドル。
さながら、女神の鬼皇（おにおん）…。

品があるとはいえない男、永沢君。
城ヶ崎さんの恋が実る日は来るのか…？