ハッピー・デス・デイ(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ハッピー・デス・デイ』とは、2017年に公開された新感覚のホラー映画。
主人公はわがままで自己中心的な女子大生ツリー。彼女は自身の誕生日に謎の仮面の人物に命を奪われる。しかし殺されたはずのツリーが目を覚ますと、なぜか殺された誕生日の朝に戻っていた。彼女は自分が殺される誕生日を何度も繰り返す中で、このタイムループ地獄から抜け出すために殺人犯の正体を暴き、自分が生き残る道を目指して突っ走っていく。"殺されること”を何度も繰り返すことで高まる恐怖とスリルを最大限に味わえる映画である。

『ハッピー・デス・デイ』の概要

『ハッピー・デス・デイ』とは、2017年に公開された新感覚のホラー映画である。
監督は『パラノーマル・アクティビティ2』続編シリーズ作品や『ザ・スイッチ』を手掛けたクリストファー・ランドン、脚本は1990年代のマーベルコミックスやDCコミックスで数々の作品を生み出したコミックブックライター兼スクリーンライターであるスコット・ロブデル。
また製作プロデュースは低予算・高品質の映画製作モデルを開拓したジェイソン・ブラムと、彼自身の製作会社であるブラムハウス・プロダクションズ(Blumhouse Productions)が請け負った。ジェイソン・ブラムは『パラノーマル・アクティビティ』を手掛けた他、『ゲット・アウト』『スプリット』『ハロウィン』などのホラー・サスペンス作品を数々ヒットさせている。

本作の原題は『Happy Death Day』 、本編は約96分の内容である。
制作費が1000万円以下なら低予算扱いされるアメリカ映画業界の中で、『ハッピー・デス・デイ』の制作予算はたったの480万ドル。
2000年以降に制作されたホラー映画人気作の『エスター』『CABIN』『死霊館』の制作予算は軒並み2000万ドル近いことから、本作がいかに低予算映画なのかが分かる。
『ハッピー・デス・デイ』はユニバーサルピクチャーズによって配給され、2017年10月13日にアメリカ合衆国にて公開された。
本作の公開日が”13日の金曜日“というホラー映画ファンには堪らない日付であったため、公開前からヒットする可能性を噂されていた。その結果、公開初週末には週末興行収入ランキング初登場1位を達成し、その後世界全体で1億2550万ドルもの興行収入を得た。
本作はその後2018年1月2日にデジタルHDで公開され、2018年1月16日にDVDとBlu-Rayで発売された。

この映画の最大のポイントとなるのは"タイムループ"である。
主人公のわがままで自己中心的な女子大生テレサ・ツリー・ゲルブマン(通称ツリー)が、自身の誕生日に謎の仮面の人物に命を奪われる。しかし殺されたはずのツリーは目を覚まし、殺された誕生日の朝を再び迎えた。その後も彼女は自分が殺される誕生日を何度も繰り返す。ツリーは殺人犯の正体を暴かなければこのタイムループ地獄から抜け出せないと気付き、自分が生き残る明日を手にするため殺人犯と真っ向から戦うことを決める。

本作はホラー作品で恐怖を感じるであろう"殺されること”を何度も繰り返す。犯人が分からない恐怖の一日を何度も繰り返し体験することで、より高まっていくスリルと恐怖を味わうことができる。またキャラクターの台詞、色使いや背景、挿入歌などでコミカルや笑い要素を含ませることで、スリルとユーモアを兼ね備えた作品となっている。

『ハッピー・デス・デイ』のあらすじ・ストーリー

繰り返す一日の始まり

イケてる女子大生テレサ・ツリー・ゲルブマン(通称ツリー)は、高飛車で自己中心的な女の子だ。
彼女は大学寮のソロリティ"カッパ"に属しており、大学のイケてる女子たちとだけつるみ、それ以外の人を軽んじている。
ツリーとのデートでその気になっているティム・バウアーに「あなたとのデートは最悪でお粗末だった」と馬鹿にしたり。寮のルームメイト、ロリ・シュペングラーが手作りのカップケーキでツリーの誕生日を祝ってくれるが「糖質が多すぎて無理」とケーキをゴミ箱に捨てたり。大学に講義に来ている医師グレゴリー・バトラーと不倫したり、誕生日の夕食を約束している彼女の父親からの着信を無視したり。
ツリーは男女関係なく、いつだって他人に対し思いやりのない行動を取っていた。

そんなツリーは毎晩パーティーに繰り出し青春を謳歌していた。
誕生日の朝、彼女は昨夜のパーティーで泥酔した最悪の気分のまま起き上がると、知らないベッドの上で寝ていた。そこは同じ大学のクラスメイトであるカーター・デイヴィスの部屋だった。カーターは泥酔したツリーを自分の部屋で介抱してくれたらしいが、ツリーは彼の真面目でイケてない見た目を見下し、感謝の言葉もなく部屋を出る。
その後ツリーは、カッパのリーダー格であるダニエル・ボーズマンに誘われたパーティー会場へ向かった。
暗がりの道中、彼女はトンネルの中に1つのオルゴールが置かれていることに気づく。ぽつんと佇むそのオルゴールはハッピーバースデーのメロディを奏でており、ツリーは自分の誕生日を知る誰かのサプライズだと勘違いする。しかししばらく待っても誰も現れず、あたりは静寂に包まれている。
ツリーは不安になりながらも不気味なトンネルの中をそっと進んでいくと、突如彼女の背後に仮面をつけた謎の黒尽くめの人物が現れる。その人物がつけているのはベビーマスク、ツリーの大学のマスコットのマスクだった。
ツリーの暴言にも反応せずじっと佇む相手に、ツリーの中で恐怖が湧き上がる。そしてその場を去ろうと背中を向け歩き出したツリーに、仮面の人物はナイフを取り出し襲いかかった。悲鳴を上げ逃げるツリーだが無情にも追いつかれ、ナイフで刺殺されてしまった。

意識を失っていたツリーがハッと目を覚ますと、そこはカーターの部屋のベットだった。日付はツリーの誕生日だ。彼女は見覚えのある光景に首を傾げながらも、部屋を後にしダニエルに誘われたパーティー会場へ向かう。しかしその道中で出会う人、会話、光景など、すべてが一度体験したような気がしてならなかった。
ただの既視感かと不審がりながらも、ツリーはトンネルの中で見たことのあるオルゴールを発見する。そしてこの後自分が仮面の人物に殺された記憶が蘇る。ツリーは恐怖から走ってその場から逃げると、今度は無事パーティー会場へたどり着くことができた。
パーティー中すっかり安心しているツリーだが、会場の屋内で突如後ろから例の仮面の人物に襲われ、ナイフで刺されて再び殺されてしまった。

ツリーが目を覚ますとまたカーターの部屋のベットに横たわっていた。このベッドも部屋も光景も前回とまったく同じだと気づき、ツリーは自分が同じ一日をループしていることを悟る。
恐怖に駆られた彼女は息を切らして自分の寮の部屋に逃げ込み、今度はパーティーに行かず部屋にこもることにした。窓には板を打ち付け、ドアの前に棚を移動させ、バリケードを貼って誰も入ってこれないようにしたのだ。しかしまたツリーの背後に仮面の人物が現れ、またナイフで刺されて殺されてしまった。

ループから抜け出す計画

ツリーは3度も殺された恐怖からついにカーターに助けを求める。彼に今までのあらましを話すと、カーターはツリーの話を馬鹿にせず「今日を繰り返すのには何か理由があるはずだ」と言う。
今日はツリーの誕生日だ。彼はツリーの誕生日だと知っている人、彼女を恨んでいる人リストを作ろうと助言するも、数が多すぎてなかなか絞り込めない。ツリーは周りに対しひどい態度をとっていたので、殺す動機がある人がたくさん思い浮かぶのだ。諦めかけたツリー、しかしカーターは「君には無限の命がある。犯人を見つける無限の可能性もある」と彼女を励ます。そこでツリーはループを抜け出すために殺人犯を突き止めるための計画を立て、生き残るためにチャレンジすることにした。

ツリーはまず自分を恨んでいそうな人たちを調査することにした。
まず自分が手ひどく振ったティムは、彼が実はゲイだったため容疑者から外す。次に不倫相手グレゴリーの妻であるステファニーは、怪しい素振りがなかったためパス。次にツリーに男子をとられたとお冠だったダニエルだが、彼女が自分と一緒に殺されたため容疑者から外す。
ツリーは調査をするたびに殺人犯から殺されるが、犯人探しを諦めなかった。しかし思いつく限りの人を調べたが、結局犯人を探し出せなかった。

殺されては目を覚ます一日を繰り返し続け、ツリーはついに倒れてしまう。
病院へ搬送されたツリーは、絶対安静だと告げるグレゴリーの言葉を無視し病室から逃げ出す。グレゴリーの車の鍵を拝借し部屋を出ると、仮面の人物が現れグレゴリーを刺し殺してしまった。ツリーは駐車場まで必死に走り、車に乗り込み病院から脱出した。
仮面の人物から逃げ切れたことに大喜びのツリーだが、スピードを出しすぎていたことにより警察に捕まってしまう。しかしツリーは捕まって刑務所に行くほうが安全だと考え、警官に嘘を言ってわざと逮捕される。
パトカーに乗って一安心するツリー、しかし警官が後ろから来た車に轢き殺されてしまう。車を運転していたのは仮面の人物だった。仮面の人物はパトカーのガソリンを溢れさせ、蝋燭で引火させパトカーを爆発、またツリーを殺したのだった。

ツリーの覚悟

またカーターの部屋で起きたツリーはどうやっても殺人犯から逃げられないと自暴自棄になる。しかしカーターはまた混乱するツリーを受け止め、話を聞くため二人は地元のレストランに場所を移した。
そこでツリーはカーターに自分の気持ちの変化を話す。同じ日を何度も繰り返して生きてたら、自分がどんなにひどい振る舞いをした愚かな人間か分かってきたのだ。「自分は良い人間じゃない、殺されて当然かも」と落ち込むツリーに、カーターは「今からでも変われるチャンスだ」とはげます。

そんな中、レストランのテレビがとあるニュースが放送された。ツリーがよくグレゴリーに会いに行く病院、そこに殺人容疑で指名手配されている容疑者ジョン・トゥームズが搬送されたというのだ。彼はツリーと同じような外見のブロンドヘアーの若い女性を6人殺害したという。
そこでツリーは繰り返した過去の中から、最初グレゴリーに会いに病院に行った時に病室の前に警備員が立っていたことを思い出す。普段は警備員が監視するような病人はいないはず、ツリーが病院に行ったときジョン・トゥームズが病室にいたのだ。ツリーは自分を殺しているのは病室を抜け出したジョン・トゥームズではないかと考えつく。
ツリーは急いで病院に向かう。これからツリーを殺すのであればジョン・トゥームズは病室を抜け出すはずだからだ。
病院に着いたツリーは受付スタッフに急いで通報をお願いし、自分は備え付けの非常用の斧を片手に彼の病室へ向かう。ツリーが病室前に着くとすでに警備員が殺されており、警備員のピストルを奪ったジョン・トゥームズが例のベビーマスクの仮面を付けて待ち構えていた。勢いよく襲いかかってきたジョン・ルーブスにツリーが必死で抵抗していると、彼女を追いかけてきたカーターが身代わりとなって殺されてしまう。
今日をリセットしないとカーターは死んだまま、彼が生きている未来にはならないと気づいたツリー。ジョンから逃げながらも病院近くの塔の上へ登り、鐘のロープで首を吊って自殺した。

またカーターの部屋で飛び起きたツリーは、カーターの無事を確認して胸をなでおろした。そして初めて誰かのために犠牲になる未来を選んだことで、なんだか自分が変われたように感じていた。
ツリーはその後周りの人への態度も変えてみた。無視せず、人のために動き、別け隔てなく友好的に接して励ます。パーティーの誘いも断り、今まで冷たく当たっていたロリにも謝罪し、グレゴリーとの浮気も止めた。そしてずっと着信を無視していた父親との食事に向かった。
ツリーの母親は3年前に亡くなっていた。彼女はそのことが今でもひどく悲しく、誕生日に父親に会うと家族三人で楽しく過ごしたバースデーを思い出してしまうため彼を避けていたのだ。ツリーは父親の元に駆け寄り、待たせたことを謝罪し、そしてなぜ自分が今までこんな冷たい態度をとっていたのか初めて本音を話した。本音を伝え心から謝罪する娘にデイヴィスは優しく手を握り、二人で一緒にツリーと母親の誕生日を祝ったのだった。

父親との夕食後、ツリーは徹底的に準備して再度ジョン・トゥームズと戦うために病院へ向かった。
病院に着くと病室前の警備員がまだ生きていたので、病室から離れさせ彼を助けるため脅してピストルを奪う。そして警備員にはジョン・ルーブスがこれから逃げることを伝え応援を呼ばせた。
ツリーがピストル片手に室内に入るが、ジョン・トゥームズに襲われピストルを落としてしまう。壁に叩きつけられ絶対絶滅のピンチのツリー、しかし次の瞬間あたるが停電して病院一体が真っ暗になった。ツリーはこの瞬間を待っていた。何度も繰り返す1日を過ごすうちに、この時間に周辺一帯が停電することを知っていたのだ。
暗闇の中ツリーはピストルを拾いついにジョン・トゥームズを撃ち殺したのだった。

ループからの脱出

病院から無事生還したツリーは、部屋にカーターを招き殺されない未来が手に入ったことを二人で喜んだ。
そして部屋に残されていたロリの作ったカップケーキを食べながら「明日が来ますように」と願うと、次の瞬間目の前が暗くなり、ツリーは再び誕生日の朝を迎えてしまった。

自分を殺したジョン・ルーブスは倒したはずなのに自分が死んだことで混乱するツリー。
しかしロリが手にしているカップケーキを見て、昨夜自分が死んだのはそのカップケーキを食べたことが原因ではないかと気づく。
ツリーはロリに「カップケーキに毒を入れ自分を殺そうと計画し、今まではカップケーキを食べなかったため別の方法で殺したのではないか。病院にジョン・トゥームズが運ばれてきて殺人犯の身代わりに仕立てようとしたのではないか」と問い詰める。ジョンの拘束を解いたのは病院でアルバイトをしているロリで、ジョンが逃げれば彼好みの外見をしているツリーを殺したのはジョンだと誰もが思い込むからだ。
ツリーが「カップケーキの中身を警察に調べてもらう」と脅すと、突然ロリが豹変し襲いかかってくる。ロリがツリーを殺していた動機はグレゴリーだった。ロリは彼のことが好きで、彼と不倫しているツリーが気に入らなかったのだ。揉み合いになる中、ツリーはロリの口にカップケーキを押し込み、気が動転している彼女を窓から突き落とした。これでやっとツリーを殺していた真犯人がいなくなったのだった。

テレビではニュースでロリの転落死が取り上げられていた。記者たちのインタビューに目立ちたがりのダニエルは嬉々としてロリのことを話しているのを見て、ツリーとカーターは呆れながらも事件が終わったことに安堵していた。
「君の部屋は殺人現場だろ、今日はどこで寝るつもり?」とカーターがツリーを自分の部屋に誘う。ツリーは了承し泊まり、次の日ツリーはループしていた1日と同じようにカーターの部屋で目を覚ます。また同じような光景で起きたツリーだが、無事繰り返していた日の翌日になっていた。安堵したツリーはカーターに感謝し、二人はキスをしたのだった。

『ハッピー・デス・デイ』の登場人物・キャラクター

重要人物

テレサ・ツリー・ゲルブマン(演:ジェシカ・ローテ)

日本語吹替:行成 とあ

主人公。通称ツリー。
殺人鬼に殺される誕生日を何度も繰り返すようになる。
自己中心的な性格だったが、タイムループを経験していくうちに自分の行動を悔い改め見直していく。
日本語吹替え版ではツリーではなくトリーと呼ばれている。

カーター・デイヴィス(演:イズラエル・ブルサード)

日本語吹替:中村 章吾

ツリーと同じ大学に通う、面倒見の良い好青年。酔いつぶれてしまったツリーを自室に泊めてあげた。
ツリーに対していつでも良心的な態度で、彼女が繰り返しているループについて親身になりながら対抗策を考えてくれる。

殺人の容疑者たち

ティム・バウアー(演:カレブ・スピルヤーズ)

ツリーに好意を抱いている男子大学生。
ツリーと一度デートをしたが彼女から見向きもさずこっぴどく振られたため、殺人動機があると疑われた。
しかし実はゲイで、ツリーにそれほど執着がないと分かり容疑者から外れる。

ステファニー・バトラー(演:ローラ・クリフトン)

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