ブラッド・イン ブラッド・アウト(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ブラッド・イン ブラッド・アウト』とは、1993年に公開されたアメリカ合衆国の映画。タイトルの意味は、「血により入り血により出る」。監督は『愛と青春の旅立ち』で知られるテイラー・ハックフォード、音楽は『ロッキー』シリーズを手がけたビル・コンティが担当した。舞台は、イーストロサンゼルスのメキシコ系アメリカ人居住区。ミクロ、パコ、クルスの3人の青年が織りなす兄弟愛を描いている。

『ブラッド・イン ブラッド・アウト』の概要

『ブラッド・イン ブラッド・アウト』とは、1993年に公開されたアメリカ合衆国の映画である。配給はブエナビスタで、原作は人気ミステリー作家ロス・トーマスが手がけた。製作総指揮・脚本ジミー・サンティアゴ・バカ、製作総指揮ストラットン・レオポルド。製作・監督テイラー・ハックフォード 製作ジェリー・ガーシュイン、脚本ジェレミー・アイアコーン、フロイド・マトラックス。撮影ディーン・セムラー。フランコ・ゼッフィレッリ監督が審査委員長を務めた第6回東京国際映画祭で最優秀監督賞に輝いた。タイトルの意味は、メキシカン・マフィアの掟である「血により入り血により出る」という意味だ。属するためには殺人や流血をさせ、脱退しようとすれば殺される。特に日本では知名度が高いとは言い難い作品だが、兄弟愛をテーマにした物語は一部の熱狂的なファンを惹きつけてやまない。

1972年、イーストロサンゼルスにメキシコ系アメリカ人が多く住む街があった。そこに白人の父とメキシコ系の母を持つ青年ミクロがやって来る。彼の両親は別居をしており、ミクロは父親とともにラスベガスに住んでいたが仕事中の喧嘩がきっかけで父を殴り、母を頼ってロサンゼルスに赴いたのであった。従兄弟であるパコと画家を目指すクルスはミクロを温かく迎える。パコは「ヴァトス」という組のストリートギャングをまとめるリーダーでもあり、ミクロはその一員となった。ある時、対立しているストリートギャング集団「プントス」との縄張り争いでクルスは車椅子生活を余儀なくされる状態になり、またミクロとパコはミクロの撃った拳銃がきっかけで逮捕されてしまう。義兄弟の契りを交わした3人それぞれの壮絶な人生が始まるのだった。

『ブラッド・イン ブラッド・アウト』のあらすじ・ストーリー

1972年イーストロサンゼルス

白人の父とメキシコ系の母を持つ青年ミクロは保護観察を受けている最中で、6日後の6月28日に18歳の誕生日と保護観察終了を迎える。ラスベガスで父親と暮らしていた彼は、木材にペンキを塗る作業中、父親から「トラックが到着するから連中を急がせろ」と命令されるも自分で言えばいいと歯向かい殴られる。頭に来たミクロは父親を殴り返し、父親の家を出ることを決意した。イーストロサンゼルスのメキシコ系が多く住む街に暮らしている母を訪ねたミクロ。しかし母が忙しいことから叔母であるドロレスの家で生活をすることになった。そこには従兄弟でありストリートギャングのリーダーをしているパコと、絵の才能に恵まれたクルスも住んでおり、彼らから熱烈な歓迎を受ける。ある日、パコがまとめる「ヴァトス」というストリートギャングの縄張りに、「プントス」というストリートギャング集団数名が壁に落書きをしにやって来る。近くで様子を見ているミクロ、パコ、クルスの3人だったが、パコが「ヴァトスに入りたいならプントスの奴らをとっちめろ」とミクロを煽り、あまりにも危険だと諌めるクルスをよそにミクロが彼らの車の窓を割る。彼らが追いかけて来たところをパコとクルスがドラム缶を道路に投げ込み「プントス」を撃退するのだった。それまでは、ミクロが「ヴァトス」に入りたいと言っても見た目が白人だからと相手にしなかったパコだが、「プントス」撃退の際のミクロの度胸を目の当たりにし、ようやく仲間として認めた。「ヴァトス」の印である左手の刺青をその日のうちに掘るのであった。一方クルスは絵画の才能が認められ、ロサンゼルス市学生芸術賞を受賞する。授賞式当日に開催されたパーティーでクルスは視線を送ってくる女性に声をかけ2人きりになろうと車の中に誘い、車内で2人に雰囲気が出て来たころに「プントス」のメンバー数名が奇襲をかけてきた。急な事態になす術なく、クルスは暴力を受けた後、左手の「ヴァトス」の印である刺青をナイフで削り取られる。クルスは足と背骨の骨折に加え内臓までも損傷し車椅子生活を余儀なくされてしまった。それに怒ったパコ率いる「ヴァトス」らメンバーは、その翌日「プントス」を襲撃する。街を見渡せる見晴らしの良い丘にいた「プントス」十数名にミクロ1人が乗り込んできたかのように見せかけ、「ヴァトス」のメンバー数名は気付かれないよう相手を囲み一気に攻め込む。大敗を喫した「プントス」とそのリーダーであるスパイダーに、パコがとどめを刺そうと銃を向けたが、殺しはまずいとミクロが止めその銃を自らの腰にしまう。そして「ヴァトス」一行が車に乗り込もうとした時、ミクロによって一命を取り留めた「プントス」のリーダー・スパイダーが銃を発砲しミクロの腰に直撃する。ミクロは咄嗟にパコが持っていた銃で反撃しスパイダーは絶命するのだった。なんとか車に乗り込んだ「ヴァトス」一行だったが、「プントス」のリーダーを殺したことや撃たれているにも関わらず「病院は嫌だ!」と暴れるミクロを抑えたりなどと、車内は半ばパニック状態に陥る。そんな中スピード違反や方向の違う道を走るなどの無茶な運転に目をつけられ車で警察に追われる始末。全速力の運転とUターンを繰り返して警察を巻き、警察のいる方向に向かって罵倒を浴びせることに夢中になった彼らは道端の老人と子供に気付かず危うく轢きそうになる。すんでのことで回避したものの他の車と追突し車は動かなくなった。大慌てで逃げ出す一同だったが手負のミクロは動けない。それに気付いたパコはミクロを迎えに行った途中で警察に追いつかれ、ミクロとパコは拘束されるのだった。

1973年「スパイダー殺し」のその後

ミクロはスパイダーを殺したためサンクエンティン州立刑務所に収監される。容姿端麗の白人で新入りのミクロは多くの囚人から「女」として狙われる。食堂内を歩いていた時早くもゲイの囚人に絡まれたところをポパイに助けられる。ポパイはミクロと同郷で、外にいた頃は「ヴァトス」に所属していた。そうしてミクロはポパイに刑務所内を案内してもらい、囚人たちは大きく分けて白人系の「アーリア軍団」、黒人系の「黒ゲリラ隊」、メキシコ系の「ラ・オンダ」と人種ごとに派閥に属していると教わった。同郷のよしみで親切にしてもらっていると思っていたミクロだったが、部屋に入ろうとした隙にナイフで脅されポパイに襲われる。なんとか対抗するが力で押されそうになった時、「ラ・オンダ」のリーダーモンタナに助けられる。メキシコにアイデンティティを持つチカーノとして認められたいミクロは、彼の一派である「ラ・オンダ」に入りたいと申し出た。またしても見た目が白人であることから相手にされずにいたが、ミクロの熱意に押されたモンタナはチカーノである証明ができたら仲間に加えると承諾した。そのチカーノである証明とは血によって入り血によって出る、すなわち「ブラッド・イン ブラッド・アウト」血による証明だった。そうしてミクロは「ラ・オンダ」協力のもと所内の賭博を牛耳る白人ビッグ・アル殺害を計画するのであった。ミクロは白人の容姿を利用して食堂で働くアルと共に働き、体の関係をチラつかせて気を持たせる。決行の日、仲間がそばにいた囚人を火傷させ騒ぎを起こし、それに紛れてそっと貯蔵庫に入ったターゲットに近づく。刃物を持って近づこうと思った瞬間、看守とアル、たくさんの札束とメモを目にする。メモは帳簿だった。見られた二人は慌てて彼に詰め寄るが、こいつは信用できるとアルに言われた看守は促され急いで外に出る。アルが一人になった所に体の関係を迫り油断させて急所を刺し、アルを殺すミクロ。血のついたエプロンを着替え、凶器と集めた札束と一緒に天井裏に隠し、出るタイミングを伺う。外側からしか開かなかった金網から先程の看守が入ってきたのをそっと閉じ切らないように先程の帳簿を挟み、先ほどの看守が貯蔵庫に入ったタイミングで金網を通り脱出に成功。看守が死体を発見し、ミクロの仕業と分かったがメモを取られているので追及できず。ミクロはそうして存在を証明し、「ラ・オンダ」に入ることを許される。ミクロはアルを殺したことでアーリア軍団から命を狙われるようになるが、「ラ・オンダ」は力をつけ賭博を仕切るようになり、ミクロも一目置かれるようになる。
一方クルスは足が不自由になり、背中の痛みは消えないものの絵は高値で売れるようになり、画廊で個展を開くまでになる。しかし、昔の仲間がやってきてドラッグの為の金の無心をするのでオーナーから前借りをする日々。アトリエでも仲間と共に薬に溺れているが弟には知られたくないと隠している。しかしある日、薬で朦朧としている隙に幼い弟が好奇心から自分で注射してしまい死んでしまう。弟のお葬式、クルスは父に許しを乞うがもう息子じゃないと怒りをぶつけられる。パコは海兵隊員を経てストリートギャングのリーダーであった頃とは大きく変わり、刑事として薬の売人の囮捜査をしている。

1982年ミクロの仮釈放

ミクロは「ラ・オンダ」に所属していたことで看守から目をつけられ仮釈放が認められなかった。落ち込むミクロにモンタナは、刑務所に長くいるせいで娘の成長を見守れなかったという後悔について話し、何としてでも刑務所から出られるように模範囚を装うというアドバイスをする。それからミクロは刑務所内で高卒認定を受け、1982年ミクロは無事に仮釈放となりイーストロサンゼルスに帰ってくる。笑顔で迎えるクルス。ミクロに薬のことを諌められ、これまで通り絵を描くよう言われるが作風が暗くなりうまくいっていない。刑務所仲間のポパイを頼ってアパートに行くも、彼の部屋がないので一緒に住むように言われる。が、しかしそこは何人もが雑魚寝するような最悪の環境。そしてタイヤ製造の仕事を始めるも従業員が1ヶ月と保たないような過酷な仕事に不満が溜まるミクロ。パコに電話し、クルスの孤独の話をし、自分は容易い悪の道には決して染まらないと伝える。クルスの孤独は才能を麻薬で潰した報いだが、ミクロのことは力になりたいと答えるパコだった。しかし現実は甘くない。仕事の責任者がミクロの残業代で賭博の負けを埋めていることに気づくが、お前が盗んだからとの出まかせを警察に届けると言われ泣く泣く引き下がる。クルスと連れ立って家に帰るとポパイが借金取りと揉めていた。現金輸送車を強奪して借金を精算しようとしているポパイ。借金取りをナイフで脅してミクロは自分が決行すると話をつける。もう我慢の限界だった。パコは大量の薬の売買が行われるという匿名の電話を受ける。半信半疑で仲間と現場に張り込むと現れた強奪犯たちと撃ち合いになる。逃げた犯人一人を追い込むパコ。覆面を取った犯人はなんとミクロだった。もう戻れないと逃げるミクロにパコは逃げると撃つと警告するがミクロは止まろうとしない。過去の楽しかった思い出がよぎるパコだが、やむを得ず発砲したのだった。ミクロが好きな松の木の下で涙するパコ。数々の思い出がよぎり、クルスの元を訪れる。弟の死こと、ミクロへの発砲のことで互いを責め合い言い争いになる。手術を終え、病院で横たわるミクロ。左足を失っている。もう仲間じゃないとパコを責める。お前のためでも信念は曲げられないというパコと相入れず別れるのだった。

1983年ミクロの再収監

パコの発砲により義足になったミクロは再び刑務所に収監される。「ラ・オンダ」は薬で金を稼ごうと言うカルロスを仲間から外し、彼に着いて行った者達と分裂し弱体化していた。カルロスはアーリア軍団と手を組み薬で金を稼ぐようになり、勢力を増していった。図書係として働くミクロは監獄の弁護士と呼ばれる男と出会う。彼は知識を駆使して商機を見つけ、カルロスに薬を卸していた。薬を掴むものは刑務所で力をつけると言うミクロと麻薬は人を滅ぼすと言うモンタナは意見が対立し始める。薬の覇権争いが始まる。黒ゲリラ隊とカルロスと組んでいるアーリア軍団。そして「ラ・オンダ」のために密かに時機を窺うミクロ。カルロスが黒ゲリラ隊のリーダーを刺し殺し、その兄弟の酒場を爆破させ攻撃を仕掛けた。黒ゲリラ隊は元々薬漬けのカルロスを捨ててビジネスを奪ったアーリア軍団との抗争となった。このチャンスに攻め込みたいミクロだがモンタナは準備だけしておくのだと諫めるのだった。
一方パコはラ・オンダについて調べを進めている。「ラ・オンダ」について話す代わりに守ってほしいという酒場爆破の実行犯であるカルロスの兄に教会に呼び出されるが、すでに殺されていた。それは事態を収めようとするモンタナの仕業だった。モンタナは黒ゲリラ隊とラオンダの休戦を申し出る。他の刑務所の戦いを収めるため、モンタナが別の刑務所へと移籍し、その間ミクロがリーダーとなった。モンタナは警察と交渉し、抗争を収める代わりに娘と会うと機会を貰っていた。楽しみにしていた娘との面会の直前に隣の監房にいた男に刺し殺される。その男は黒ゲリラ隊のメンバーだったがリーダーは命令を出していないと言う。それを知らせるためにパコはミクロに会う。間違った相手と戦争をしないようにリーダーとして仲間を守り黒ゲリラ隊と話し合うように伝えるパコ。ミクロは黒ゲリラ隊のリーダーと話し合い、半年の休戦を約束するが、お互いに信頼はできておらず、利用することを考えてはいるが、共に死者の日を祝おうとアーリア軍団と戦うことを示唆する。死者の日を迎えた。弟のお墓の前でクルスはパコと継母と父に出会う。クルスは泣きながら謝罪し、家族は和解する。刑務所ではアーリア軍団が次々と襲われる。黒ゲリラ隊は手を組むことを信じていたが準備を進めていたラオンダはすぐに黒ゲリラ隊を襲い始め牙をむく。ラオンダはアーリア軍団、黒ゲリラ隊幹部を殺すことに成功した。パコはミクロと面会する。ミクロはお前が足を撃ってくれたお陰で今の俺がいる、ありがとうと言う。お前のおかげで刑務所に戻り家族を見つけたと。刑務所の中と外で家族として手を組もうと言う。パコはそんなことは受け入れられないと変わってしまったミクロを嘆く。
警察はラオンダを解散させ、それぞれを地元の刑務所に移送することを決定する。嘆く仲間たちにミクロはこれはチャンスだと。各刑務所で支部を作り仲間を増やすよう伝える。パコはクルスに呼び出され、大きな壁画を見せられる。そこにはかつて仲間だったパコとクルス、そしてミクロが描かれている。そこでパコはミクロが刑務所に入り、クルスが薬漬けになってしまったのは全て自分のせいだと涙する。きっかけはそうであっても、自分は薬でやっと生きてこれた。家族がいないミクロも刑務所で家族を作って生きてこれたんだと言う。暴力や危険の中生きてこれたのは家族(仲間)がいたからなんだと。「ヴァトス」はいつまでも繋がっていると抱き合い確かめ合う二人だった。

『ブラッド・イン ブラッド・アウト』の登場人物・キャラクター

ミクロ・ヴェルカ(演:ダミアン・チャパ)

日本語吹替:宮本充
白人の父とメキシコ系の母を持つ青年。映画冒頭の年齢は18歳。メキシコ人のアイデンティティーを持ち、白人の見た目をコンプレックスに思っている。ストリートギャング集団「ヴァトス」のメンバーであり、度胸がありながら冷静に事に当たる能力を持つ。刑務所に入ってからはメキシコ系グループ「ラ・オンダ」に所属し最終的にはリーダーに上り詰める。

パコ・アギラー(演:ベンジャミン・ブラット)

日本語吹替:園岡新太郎
ミクロの従兄弟でクルスの父を義父としている。幼い頃は右アッパーで知られる名ボクサーで、優勝経験があるほどの腕前だという。「ヴァトス」というストリートギャングのリーダーをしていたが、ミクロの「スパイダー殺し」からは一転、海兵隊員を経て麻薬捜査官になり親孝行に努める真っ当な道を歩み始める。薬に溺れるクルスや犯罪に染まったミクロに責任を感じて苦しむ。

クルス・カンデラリア(演:ジェズ・ボレッゴ)

日本語吹替:伊藤栄次
絵の才能に恵まれた青年。「ヴァトス」のメンバーであり、高校生の時にロサンゼルス市の学生芸術賞を受賞する。「プントス」に襲撃され足と背骨を骨折する重傷を負い、車椅子生活を脱した後も背骨の痛みに苦しむ。後遺症に苦しみながらも絵画は描き続け、マネージャーもつき個展を開けるまで成功するが、痛みを抑えるために使用していたモルヒネに溺れる。

モンタナ(演:エンリケ・カスティーロ)

日本語吹替:大塚芳忠
「ラ・オンダ」のリーダー。出版社から話が来て更生についての本を執筆している。メキシコ人の団結を重んじ、組の危機に面した際は目先の利益よりも長い目での勝利を目標に定める思慮深い性格の持ち主。血の気の多い集団を厳しさと穏やかさでまとめあげた。娘が6ヶ月の時に収監されて以来会えずじまいだったため成長した娘に会うことを楽しみにしている。

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