バタフライ・エフェクト（映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『バタフライ・エフェクト』の概要

『バタフライ・エフェクト』とは2004年にアメリカで公開されたサスペンスラブストーリー映画。カオス理論の一つ、バタフライ効果をテーマにした斬新なアイディアとこれまでにない切ないラブストーリーが大ヒットし、初登場全米No.1と5週連続トップ10入りを記録。監督・脚本はエリック・ブレスとJ・マッキー・グルーバーが担当。緻密な作風のコンビ監督として近年注目されている。主役のエヴァンを演じたアシュトン・カッチャーは、2003年にはピープル誌の選出する「世界で最も美しい50人」2003年度版男性部門の第1位に輝いている。ケイリー役のエイミー・スマートはTVドラマ『フェリシティの青春』で準レギュラーとして出演し、人気を集めている。

アメリカの田舎町で、父親に問題を抱えた者同士、幼いエヴァンとケイリーはお互いに支え合って生きてきた。しかし思い付きから悪戯をしたことが大きな事件に発展し、運命の歯車が狂い始める。事件をきっかけに別々の人生を歩んでいた二人だったが、ある日エヴァンは自分には過去に戻る能力があることに気付く。そしてケイリーが悲劇的な人生を送っていることを知り、彼女を救うために運命に抗うことを決意する。エヴァンはケイリーのため何度も何度も過去に戻る。しかしエヴァンが起こした小さな出来事がその後のケイリーの人生にまた大きな悲劇をもたらしてしまう。意を決したエヴァンは、ケイリーが幸せな人生を送るためにある悲しい決断をする。

『バタフライ・エフェクト』のあらすじ・ストーリー

記憶を失くす少年

アメリカのブライアヴィルという町で、7才のエヴァン少年は父が精神を病んで入院しているため、母アンドレアと二人で暮らしていた。
ある日、アンドレアは学校の先生に呼び出される。学校で、エヴァンがナイフで人を殺すシーンを描いたからだった。しかも、その時のことをエヴァンは覚えていないというのだ。

父親の病気が遺伝しているのではと悩んだ母は、父親が入院している病院にエヴァンを診てもらう。ドクターからは、原因は父親が不在であることのストレスかもしれないと告げられる。そして経過観察のため日記を書くことを勧められる。

ある日、朝食を食べながら日記を書いていたエヴァン。しかし突然包丁を持ち出し、キッチンで仁王立ちしていた。母が恐る恐る声をかけると、覚えていないとエヴァンは不思議そうな顔で答えるのだった。

アンドレアは仕事の間は、近所に住むジョージにエヴァンを預けていた。ジョージにはトミーとケイリーという子供がおり、エヴァンと一緒に遊ばせていた。しかしジョージは子供達を裸にし、ポルノビデオを撮っていたのだ。そこでもエヴァンは記憶を失くしてしまう。

記憶喪失が続くことを心配したアンドレアは、エヴァンを父ジェイソンに会わせる。父と面会したエヴァンは最初は穏やかに会話していたが、ハッと気が付くと父に馬乗りにされ、首を絞められていた。ここでもエヴァンは記憶を失くしていた。暴れ散らすジェイソンを、警備員がこん棒で殴る。ジェイソンは重傷を負い、そのまま帰らぬ人となってしまうのだった。

運命の爆弾事件

それから6年後。幼馴染のエヴァン、ケイリー、トミー、レニーはケイリーの自宅の地下室でたむろしていた。
そこでトミーは、父ジョージが隠し持っていた爆弾を見つける。トミーはレニーに近所の住宅の郵便箱に爆弾を仕掛ける悪戯を命令する。嫌がるレニーにトミーは無理やりやらせるのだった。
しかし次の瞬間、4人は森でパニック状態に陥っていた。エヴァンの記憶が飛んでしまい、爆弾がどうなったかまるで覚えていなかったのだ。レニーはショック状態で救急車に運ばれていった。

エヴァンは結局何があったのか思い出せないままであったが、ある日ケイリーとトミーの3人で映画を見に行くことになった。そこでエヴァンはトミーに郵便箱がどうなったか尋ねると、「二度と口にするな」と脅されてしまう。

映画の最中、ケイリーは映画の残虐なシーンに耐えかねて途中で席を立ってしまう。エヴァンが追いかけていくと、ケイリーは今回の騒ぎに腹を立てた父に暴力を振るわれたことを告白する。落ち込むケイリーを励まし、二人は初めてのキスをする。

その現場を見て逆上したトミーがエヴァンに掴み掛かろうとした時、居合わせた客に足を引っかけられ転倒してしまう。激怒したトミーはその客を徹底的に殴り倒してしまうのだった。
同じ頃、ニュースで爆弾事件のことを知ったアンドレアは引っ越すことを決意する。

飼い犬・クロケットの惨殺

爆弾事件からしばらく経って、救急車で運ばれたレニーが退院することになった。エヴァンとケイリーはレニーを訪ね、森を散歩しながら3人は久しぶりに話をしていた。すると、トミーがエヴァンの飼い犬のクロケットを麻袋に入れ、オイルをかけているところに出くわす。止めようと駆け寄ったエヴァンとケイリーをトミーは角材で滅多打ちにする。ケイリーは大きな傷を負い、気を失ってしまう。

トミーがクロケットに火を着けようとした瞬間、エヴァンはまた記憶がなくなってしまう。気が付くとクロケットは無残に焼け焦げ、ケイリーとレニーは泣きながら途方に暮れていた。

そしてエヴァンの引っ越しの日が来る。エヴァンはノートに「君を迎えに来る」と書き、乗り込んだトラックの窓越しにケイリーに見せるのだった。

自分の能力に気付くエヴァン

それから7年が経ち、エヴァンは州立大学に通い、成績良好で記憶に関する研究に取り組んでいた。また親友でルームメイト・サンパーとも気が合い、充実した学生生活を送っていた。
ある日、バーに繰り出したエヴァンは、寮に女の子をお持ち帰りする。女の子が偶然日記を見つけると、エヴァンは目についたページを読み始める。それは犬のクロケットがトミーに殺されてしまった日の文章だったが、読んでいるうちに急に日記の文字や目の前にいる女の子が揺れ動き出す。そして、一瞬光に吸い込まれたかと思うと、なぜかエヴァンはクロケットが殺された場面にいる。

トミーもエヴァンもケイリーもレニーも13歳の時のままで、ちょうどエヴァンが記憶をなくしていた場面であった。レニーは必死にクロケットが入れられた袋のロープをほどこうとした。しかしトミーに恫喝され、固まってしまう。
トミーはエヴァンに「おれの妹に手を出すな」と脅して、袋に火をつけた瞬間、エヴァンは寮で目を覚ます。

あまりの衝撃的な出来事に、車を飛ばし、幼い頃暮らしたブライアヴィルへ向かう。そこでレニーを訪ねると、彼は引きこもりの生活をしていた。エヴァンはクロケットが焼き殺された時のことを聞くと、レニーは「ロープが切れなかった」と呟く。エヴァンは自分の見た悪夢が現実であると気付くのだった。

日記の文章を読むと、その過去に戻れるかもしれないと思ったエヴァンは、爆発事件の日の日記を読むことにした。案の定、日記の文字が動き出し、次の瞬間過去に戻っていた。レニーが爆弾を近所の住宅の郵便箱に入れた後で、ちょうどエヴァンが記憶を失くしていた場面だった。すると赤ちゃんを連れた住人が帰宅し、郵便箱にむかっていったのだ。そして赤ちゃんが郵便箱に手をかけた瞬間、大爆発。その瞬間エヴァンはまた現代に戻っていた。

エヴァンは衝撃的な真実にショックを受けたが、自分の過去に戻れる能力は父親と関係しているかもしれないと思い、母に探りを入れてみることにする。やはり父はエヴァンと同じく記憶を失くすことがあり、「失った記憶を取り戻す方法を見つけた」と言っていたと母は打ち明けた。父も自分と同じ能力があったのだとエヴァンは気付く。

ある日、エヴァンは思い切ってケイリーを訪ねる。ケイリーはブライアヴィルでウェイトレスをしていた。仕事が終わるのを待って、エヴァンはケイリーに話しかけた。ケイリーは「私が好きならなぜ連絡くれなかったの？」と泣きながら訴える。エヴァンは何も言えず立ち去るケイリーをただ見送った。そして次の日、トミーから電話でケイリーが自殺したことを知らされる。

2度目の人生

自分が過去に戻ればケイリーの心の傷を消すことが出来るかもしれないと思ったエヴァンは、ビデオ撮影の日の日記を読み始める。すると文字がガタガタと揺れ、気が付くと撮影の日の幼い自分に戻っていた。

ケイリーの父ジョージが子供達を地下室に連れていき、エヴァンとケイリーに猥褻な要求をする。そこでエヴァンは、このままでは娘を自殺に追いやることになるとジョージを怒鳴りつける。そしてケイリーに「二度と私に触らないで」と宣言させると、ジョージは神妙な顔でそれを約束するのだった。

その瞬間、エヴァンは現在に戻り、裸でベッドに横たわっていた。すると頭にフラッシュバックのような映像が浮かび始める。その内容は、引っ越しをしたエヴァンは家出をしたケイリーと一緒に青春時代を送るという走馬灯のようなものだった。

エヴァンが混乱していると、ベッドの中から声を掛けられる。なんとそれはケイリーだった。エヴァンが過去を変えたことで現在が変化し、エヴァンとケイリーは恋人同士で仲良く大学生活を送っていた。最初の人生では勉学に取り組む真面目な学生だったが、今度の人生では派手で不真面目なキャラクターに変わっていた。

それでもエヴァンはケイリーと共に過ごせる幸せに喜びを感じる。その夜、エヴァンがケイリーとロマンティックなディナーをしていると、その間にエヴァンの車が壊されてしまう。少年院に入っていたトミーが釈放され、二人の仲を裂こうと嫌がらせをしてきたのだ。

兄を責めないでと懇願するケイリー。ケイリーによると、父ジョージはケイリーへの虐待はしなくなったが、トミーがその分殴られたというのだ。その帰り道、トミーが暗がりから突然現れる。トミーに金属バットで殴りかかられたエヴァンは、飼い犬のクロケットを殺された恨みで逆にトミーを殴り殺してしまう。

3度目の人生

刑務所に入ることになったエヴァンは所内の悪党グループからいじめを受ける。そして、日記さえも悪党グループに破られ奪われてしまう。辛うじて日記の切れ端を手に入れたエヴァンは、日記を奪い返すために一計を案じる。

同じ檻の信心深いカルロスに「意識を失ったら手と顔を見てくれ」と伝え、エヴァンは日記の切れ端を読み始めた。それは7歳の時に学校で残虐な絵を描いたことを母が心配しているという日記だった。またガタガタと目の前が揺れ始め、一瞬にして自分は小学校で絵を描いている時に戻っていた。

エヴァンは残虐な殺人シーンを描き、自分の両手を文具で傷つけた。そこで現代に戻ると、エヴァンの両手には傷跡が浮かび上がる。それを見たカルロスはエヴァンを神の申し子だと思い、日記を奪う計画に協力してくれることになる。エヴァンとカルロスは隙を狙って悪党グループを襲う。そして、その間にエヴァンは慌てて日記を読んだ。

一瞬にして過去に戻ると、犬のクロケットが殺される前、エヴァンとケイリーとレニーで森を歩いている場面だった。エヴァンはレニーに近くに落ちていた金属の破片を握らせ、「ロープを切れ」と必死に訴える。そしてクロケットを焼き殺そうとしているトミーの元に急いだ。エヴァンはトミーを説得し、トミーはクロケットを逃がす。しかし、レニーが金属の破片でトミーを刺してしまう。

その瞬間、エヴァンは現代に戻り、大学の寮に立ちすくんでいた。突然の頭痛で気絶すると、頭にはまた走馬灯が浮かび始める。今度はトミーのお墓が見え、絶望したケイリーは悪い連中と付き合い始める。

レニーは精神病院のベッドに繋がれたまま空虚な目を天井に向けている、という悲しいストーリーだった。血だらけで痙攣しているエヴァンをサンパーが見つけ、救急車で病院に運ばれる。その後、回復したエヴァンはドクターから病院のIDカードを拝借し、レニーがいる入院棟に侵入する。

エヴァンが話しかけても虚ろな目で天井を見つめるレニー。その場を立ち去ろうとするエヴァンに、レニーは「僕と代われ。お前がここにいるべきなんだ」と泣きながら訴えるのだった。

どうしたら上手く過去を変えられるのか悩んだエヴァンは、父親のことを思い出す。エヴァンは自分の父親と精神病院で面会した日の日記を読むと、目の前にあの日の父親が現れた。そして父親に過去を正しくやり直すにはどうしたらいいか問いかける。

父親は、神様の真似をするなと必死に説得する。しかし全く耳を貸さないエヴァンに、父親は突然飛び掛かり首を絞めた。父親は過去に戻る行為をやめさせようと必死だったのだ。エヴァンは現実に戻り、ケイリーを探し始める。ケイリーはボロボロのアパートに住み、娼婦に成り下がっていた。ケイリーに今までのことをすべて話したエヴァン。ケイリーは、過去に戻って赤ちゃんを助ければとエヴァンに怒りをぶつける。意を決したエヴァンは爆弾事件の日の日記を読み始める。

4度目の人生

いつものように過去に戻り、ダイナマイトを入れた郵便箱に駆け寄り、帰宅した母親と赤ちゃんにエヴァンは必死に危険を訴える。慌てたトミーが親子に駆け寄って覆いかぶさった瞬間、エヴァンは爆風で吹き飛ばされた。

気が付くと現代に戻り、エヴァンは大学の寮のベッドに横になっていた。そして隣のベッドには元気そうなレニーの姿があった。しかし自分の両腕は下から半分が失くなっていたのだった。
これまでの人生が頭を巡る。爆弾で両手両足を失ったエヴァンは車いす生活の人生となっていた。

エヴァンの面倒を見ていたレニーとケイリーは、そのうちに愛し合い、付き合い始めていた。さらには、トミーも三人と同じ大学に通い、慈悲深い人間になっていた。エヴァンは、ある時ふと状況が違ったらどうだったかをケイリーに問いかける。ケイリーはエヴァンが初恋の人だったことを話すも、今はレニーを愛していると言うのだった。

自分が変えた運命に絶望したエヴァンは、自殺を図ろうとする。しかし訪ねてきたトミーに命を救われる。そしてトミーはいつものことのように病院にエヴァンを連れて行く。そこには母アンドレアが肺がんを患って入院していたのだ。

息子が障害者になり、タバコの量が増えたことが原因のようだった。エヴァンが母に「救ってあげるよ」と告げると、母は「あなたの言動、お父さんに似てきたわ」と苦しそうに呟く。父もまたエヴァンと同じように何度も過去に戻り、不幸な運命を辿ることになったのだった。そしてエヴァンは寮に戻り、また日記を読み始める。

5度目の人生

エヴァンは過去に戻って爆弾そのものを壊してしまえばいいと考えた。そこで7歳の頃、ケイリーの父親ジョージに預かって貰う朝に戻った。エヴァンは爆弾を壊すために、台所で包丁を手にする。しかしそこに母が通りかかり愕然とする所で、現代に戻ってしまう。

次にジョージに撮影をするとして裸にされた日記を読むことにした。過去に戻ると、爆弾を探し出し、火を着ける。しかし爆弾は手を離れ、ケイリーの足元に転がり落ちてしまう。エヴァンが現代に戻ると、ケイリーを殺してしまった罪で精神病院に入院していた。急いで担当のドクターに日記のことを訪ねると、日記など存在しないと告げられる。ドクターは「お父さんそっくりだ」と呟き、父はありもしないアルバムを探していたと告げる。

写真等でも過去に戻れるかもしれないと考えたエヴァンは、昔のホーム・ムービーを母に差し入れてもらう。それはエヴァンとケイリーが最初に出会ったパーティーの映像だった。その場面に戻ったエヴァンは、幼いケイリーの耳元で「近づいたら、お前らみんな殺すぞ」と囁く。恐怖のあまり母親に抱き付くケイリー。そしてエヴァンは寂しそうに別れの言葉を呟くのだった。

現代に戻り頭に流れたストーリーは、トミーとケイリーは両親の離婚後、父親でなく母親に引き取られ、幸せに暮らすというものだった。ふと気が付くとそこは大学の寮で、隣にはレニーの姿があった。レニーとエヴァンは同じ大学に通っていたが、ケイリーとトミーとは接点のない全く別の人生を過ごしていた。そうすることで、エヴァンはケイリーを不幸な運命から救ったのだ。

運命の再会

そして8年後。ニューヨークで医師として活躍していたエヴァンが雑踏の中を歩いていると、ケイリーとすれ違う。美しく成長したケイリーは、怪訝な顔をしてエヴァンの後ろ姿を振り返る。しかしすぐに足早に立ち去ってしまう。
ケイリーへの思いを抱えながらも、二人はこれからも別々の人生を歩んでいくのであった。

『バタフライ・エフェクト』の登場人物・キャラクター

エヴァン（演：アシュトン・カッチャー ）