タクシー運転手 約束は海を越えて(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『タクシー運転手 約束は海を越えて』とは、1980年の光州事件時の実話を基にした、韓国発の社会派映画である。楽観的で明るい性格のマンソプ(ソン・ガンホ)はタクシードライバーをしながら、男手一つで娘を育て奮闘していた。ある日、同僚からの高額なお客の依頼を聞きつけ、生計に困っていた彼は、この機会を逃すまいと同僚からそのお客を奪取した。しかし、そのお客とは、ドイツ人記者、ピーター(トーマス・クレッチマン)であった。この二人の出会いが韓国の運命を大きく変えることとなる。
早速東京に戻り、世界に韓国での情勢を伝えたピーター。韓国で起こっている、軍の無差別発砲や、軍事国家の残忍さを世に伝え、ジェシクやファン、光州の人々の願いは果たされた。
数日後、再び韓国へ行き、知人にマンソプを探してもらっていたが、当然見つかるはずもなかった。
そして、時は流れ2003年12月。
光州事件を世界に報道し、民主化に貢献したとして、ピーターが韓国にて授賞式に招待される。受賞の際のスピーチにてピーターは、マンソプへの感謝を述べた。
彼は言う「親愛なる友人、有難う。本当に感謝している。再会を心から願っている。」
マンソプは、タクシードライバーを続けていた。ふとたまたま新聞を目にするとそこにはピーターの姿が。「お互い年をとったな。でも、感謝するのは俺の方だよ。ありがとう。」そう言って、車を走らせた。かつて、ピーターが残してくれた、家族写真とネックレスがタクシーのバックミラーに飾られ、揺れていた。
2015年11月、ピーターは、マンソプとの再会を果たすことなく息を引き取った。
『タクシー運転手 約束は海を越えて』の登場人物・キャラクター
キム・マンソプ(演:ソン・ガンホ)
ソン・ガンホ演じるマンソプは、貧しいながらもタクシードライバー業で男手一つで娘ウンジョンを育てている。自分と娘のことと儲け話以外は興味なしで、あっけらかんとしている性格。基本的には、明るく、楽観的な性格であるので貧しくともウンジョンと楽しく暮らしている。おおよそのモデルは、キム・サボクという人物である。サボクは、実在した人物であり、光州事件があった当時、ドイツ人ジャーナリストであるユルゲン・ヒンツペーターを光州まで連れて行った人物とされている。
演:ソン・ガンホ
生年月日:1967年1月17日
出身:韓国/慶尚南道金海市
韓国を代表する俳優。代表作は1999年『シュリ』、2007年『シークレット・サンシャイン』、2009年『渇き』、2010年『義兄弟 SECRET REUNION』、2013年『弁護人』、2017年『タクシー運転手 約束は海を越えて』、2018年『麻薬王』、2019年『パラサイト 半地下の家族』。
ピーター(演:トーマス・クレッチマン)
トーマス・クレッチマンの演じるピーターは、ドイツの第1公共放送ARD-NDRの日本特派員として東京からやって来た。韓国の内情を知り、韓国政治体制を疑問視。宣教師と偽り入国し、その内情を暴こうとジャーナリスト魂で光州にやって来た。職業柄、無茶をすることもあり、危険な目に遭うこともしばしば。優しく慈悲深い面もある人物。韓国の民主化に一役買った人物。モデルは、ドイツ人ジャーナリストであるユルゲン・ヒンツペーター。彼は、マンソプのモデルであるサボクを探したが、再会を果たせず、この世を去った。
演:トーマス・クレッチマン
生年月日:1962年9月8日
出身:ドイツ/ザクセン=アンハルト州
ドイツを代表する名優。代表作、1993年『スターリングラード』、2000年『U-571』(、2004年『戦場のピアニスト』(02)、『ヒトラー ~最期の12日間~』、2004年『Uボート 最後の決断』(04)、 2008年『ワルキューレ』、2015年『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』、2020年『アーニャは、きっと来る』
ク・ジェシク(演:リュ・ジュンヨル)
リュ・ジュンヨル演じる、ジェシクは光州に住む、学生のデモ隊の青年。英語が話せるため、ピーターと行動を共にする。社交的で明るく活発。大学では歌謡祭に出るのが夢。韓国に民主化を取り戻すべく行動し、ピーターに韓国の惨状を伝えるために何度もピーターらを助ける。
演:リュ・ジュンヨル
生年月日:1986年9月25日
出身:韓国/京畿道水原市
国内のテレビドラマなどでも活躍する次世代のスター。代表作、2015年『ソーシャルフォビア』、2016年『ロボット、音』、2016年『島。消えた人々』2016年、『グローリーデー』、2017年『沈黙』
ファン・テスル(演:ユ・ヘジン)
ユ・ヘジン演じるテスルは、光州のタクシードライバー。妻と子の三人家族。光州の病院ではマンソプに怒ったが、マンソプのタクシーが故障していると、見に来てくれたり、その上自宅に招くといった人情深く、さっぱりとした性格。韓国の民主化のために、マンソプ達に協力する。
演:ユ・ヘジン
生年月日:1970年1月4日
出身:韓国/忠清北道淸州市
アニメーションの声優としても活躍する韓国のベテラン俳優。代表作、2001年『MUSA -武士-』、2005年『王の男』、2010年『黒く濁る村』、2014年『パイレーツ』、2015年『ベテラン』、2017年『コンフィデンシャル/共助』、2018年『完璧な他人』
キム・ウンジョン(演:ユ・ウンミ)
ユ・ウンミが演じるウンジョンは、マンソプの愛娘。11歳。父を気遣い、いじわるされても、寂しくても、それを出さずに強くいる心優しい少女。
演:ユ・ウンミ
生年月日:2004年3月9日
三才から芸能活動を行う。映画「王の涙」や人気韓国ドラマ「私はチャン・ボリ!」に出演。幼いころから頭角を現す子役として人気。韓国版「クリミナルマインド」にも出演し、今後の活躍が注目されている女優の一人。
『タクシー運転手 約束は海を越えて』の用語
光州事件
1980年5月、光州市で戒厳令解除を求めて始まった大規模な学生・市民の反政府・民主化要求行動を、戒厳軍が武力で鎮圧し、多数の死傷者を出した事件。
韓国軍の実力者、全斗煥(チョン・ドファン)が非常戒厳令を韓国全土に宣布。同日に、民主化を推進していた金大中(キム・デジュン)ら与野党を逮捕を機に、全羅道の道都であった光州で起きた学生、市民による反政府運動。金大中らの逮捕で、全斗煥は民主化を止めようと画策した。ちなみに、逮捕された議員は全羅道出身で占められていた。
この反政府運動を、鎮圧すべく軍を投入。5月27日、約2万5000人の実戦部隊を突入させて市内を制圧した。事件の犠牲者は公式発表では官民あわせて死者191人、重軽傷者852人とされているが、死者や行方不明者で2000人を超えたとの説もある。
また、5月17日から10日間、光州市内の電話が通じなくなり、メディアも情報統制されたため、光州市内で何が起きていたのかの真相は、長く明らかになることはなかった。
戒厳令
自然災害や有事の際、治安を維持するために立法、司法、行政の一部を軍部に委ねること。国や一地域を管理する。具体的には、戒厳令が敷かれた地域は、電話が出来なかったり、夜間外出禁止であったり、立ち入り禁止区域であったりする。
私服軍人
便衣兵のこと。または便衣隊ともいう。
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目次 - Contents
- 『タクシー運転手~約束は海を越えて~』の概要
- 『タクシー運転手 約束は海を越えて』のあらすじ・ストーリー
- マンソプとピーターの出会い
- デモの中心地光州へ
- ジェシクとの出会い
- ファンとの再会
- 約束
- 別れ
- 別の世界
- 悲劇をカメラに
- ソウルへ
- 犠牲と希望
- 親愛なる君へ
- 『タクシー運転手 約束は海を越えて』の登場人物・キャラクター
- キム・マンソプ(演:ソン・ガンホ)
- ピーター(演:トーマス・クレッチマン)
- ク・ジェシク(演:リュ・ジュンヨル)
- ファン・テスル(演:ユ・ヘジン)
- キム・ウンジョン(演:ユ・ウンミ)
- 『タクシー運転手 約束は海を越えて』の用語
- 光州事件
- 戒厳令
- 私服軍人
- 『タクシー運転手 約束は海を越えて』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ピーター「必ず守る」
- ファン「心配するな」
- ピーターから預かった報酬をマンソプに渡すシーン
- 『タクシー運転手 約束は海を越えて』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- マンソプは虚構の人物
- ヒンツペーター氏は死後サボク氏と再会を果たした
- 映画での後半のソウルに向かう検問のシーンはオリジナル
- 『タクシー運転手 約束は海を越えて』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:チョー・ヨンピル『おかっぱ頭』