ハートの国のアリス(ハトアリ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ハートの国のアリス』とは、QuinRoseから発売された童話『不思議の国のアリス』がモデルの恋愛アドベンチャーゲーム。QuinRoseの看板作品の1つ。不思議な「白ウサギ」によって、ある日、銃弾飛び交う物騒な世界「ハートの国」に連れ去られてしまったアリス。アリスは非現実過ぎるこの出来事を「夢」だと受け入れ、夢から目覚めるまでの間、ここでの暮らしや住人達との交流を楽しむことにする。

共通ルートにて、ハンプティに関連する選択肢を多めに選ぶ事で発生するEND。
ハンプティ&ダンプティがアリスにプレゼントを贈ってからしばらくが経った時間帯、アリスは帽子屋屋敷のメイドの一員として仕事をしている最中に皿を割り指を怪我してしまう。その治療をした帰り道、ハンプティ&ダンプティに遭遇。彼女の指が傷ついている事を知った2人は、アリスの怪我を見る為に自分達の部屋へ連れていく。
アリスの怪我に慌てるハンプティ&ダンプティ。そこまで彼らが自分の事を心配すると思っていなかったアリスは驚いて「心配しているのか」と2人に訊ねる。すると2人は「アリスの事が好きなのだから当たり前だ」と返す。そこでアリスは、彼らが本当に自分の事を愛してくれているのだと知る。実はこの時アリスは、2人の好意を受け入れたものの、どこか飄々とした雰囲気のある2人の為、彼らの言う好意が本当に恋だの愛だのというものであるのかわからずにいたのである。しかしそんなアリスに反してダンプティはこれが「恋だと自覚していた」と告げる。ハンプティの方は自分の感情が恋だと気づいてはいなかったが、ダンプティの言葉によりその事実に気づく。しかし「恋人は1人につき1人であるべきだ」と考えていたハンプティ&ダンプティは、どちらかがアリスの恋人になるかで揉め始める。急展開に戸惑うアリスだったが、その時ハンプティがアリスに「自分の恋人になるべきだ」とキスをする。その強引さに驚くアリスとダンプティ。だがダンプティの方は、ナルシストで変人発言の多いハンプティが大好きで、そんな彼をさらに面白くさせてくれる節があるアリスの事を思うと、ハンプティと彼女が恋人になった方が良いと考える。そこでアリスの恋人になる事は諦め、2人の恋が自分好みになるように彼らの協力者になると決意する。予想外の事態にさらに驚くアリスだったが、結局2人の強引さに押しくるめられる形でハンプティと恋人になるのだった。

ダンプティ 今はこのままEND

アリスに自分の恋人になるよう迫るダンプティ。

共通ルートにて、ダンプティに関連する選択肢を多めに選ぶ事で発生するEND。ストーリーの大まかな展開としては「ハンプティ 今はこのままEND」とそう変わりはない。変化が出るのは後半のハンプティ&ダンプティが揉めだすシーンからとなっている。
どちらがアリスの恋人になるかで揉めるハンプティ&ダンプティ。すると埒が明かないと思ったのか、ダンプティがアリスに強引に口づけをする。「自分を選べ」というダンプティに驚くアリス。ハンプティの方も「抜け駆けだ!」と憤慨する。だがどちらかを選べと言われたら、比較的発言がまともな傾向のあるダンプティの方がいいと思ったアリスは、ダンプティを恋人に選ぶ。選ばれなかった事にショックを受けるハンプティ。そんなハンプティにダンプティは「別にハンプティを仲間外れにするつもりはない」と告げる。曰く、アリスの恋人として、彼女との行動の主導権は自分(ダンプティ)にあるが、あくまでも主導権があるだけでそれがハンプティを仲間外れにする理由にはならないとのこと。「アリスを好きならハンプティも傍にいればいい」というダンプティにハンプティは気を良くするが、常識的な「恋人」の形とかけ離れていく事を察したアリスはそれを拒もうとする。しかし、結局は2人に強引に押しくるめられてしまい、アリスはダンプティとのおかしな関係も含めてハンプティと恋人になってしまうのだった。

ハンプティ&ダンプティ 今はこのままEND

「ハンプティ&ダンプティ 今はこのままEND」のタイトルコール。

ハンプティとダンプティ、どちらかの「今はこのままEND」を見た後に発生するEND。共通ルートである「卵の夢」に現れる選択肢で、2人に対し否定的な選択肢を一度も選ばなかった場合に限り見る事ができる。
ある昼の時間帯、アリスは2人に頼まれて自分が持っている小瓶を見せる。アリスが元の世界に帰る唯一の手がかりである小瓶。それを見た2人はアリスに「やっぱりこれを自分達が割る事はできないのだと理解した」「自分達はあくまでもアリスの殻を割って、解放する存在なのだ」と述べる。2人の言葉の意味がわからないアリス。そこで彼女は2人に、「実は小瓶の中身を増やすべきか減らすべきかわからずにいる」と告げる。小瓶の中身はハートの国の住人達と交流する事で増える。ナイトメア曰く、それが小瓶いっぱいになったその時、アリスに元の世界に帰れる機会がやってくるのだという。だがハートの国に愛着が湧き留まると決めていたアリスは、これ以上、小瓶の中身を増やすべきかで迷っていた。さらにその事を一度、ハンプティ&ダンプティにも問い詰められており、それがきっかけとなりアリスの小瓶に対する葛藤は深まっていた。
すると「わからない」と言うアリスに、ハンプティ&ダンプティが返してきた言葉は「そのままでいい」というものだった。「そうやって不安定に悩み続ける存在だから、アリスはこの世界にやってきたのだ」というハンプティ&ダンプティ。やはりその言葉の意味はアリスにはわからなかったが、深く問い詰める事に何か嫌な予感がした彼女はその言葉の意味を2人に訊ねなかった。代わりに彼らと居る今を楽しむ為、「もっと楽しい話をしよう」と2人に提案。アリスの提案に乗ったハンプティ&ダンプティと共に、次の休みにはどこへ遊びに行くかという話題で盛り上がるのだった。

ハンプティ&ダンプティ 卵とキングEND

「卵の夢」で見ていた空間に人型のハンプティ&ダンプティと共に居るアリス。

共通ルートにてハンプティ&ダンプティの好感度をMAXにしないように選択肢を調整しつつ、「卵の夢」の第2話で現れる選択肢にて2人の意見に否定的な選択肢を、第4話に現れる選択肢で肯定的な選択肢を選ぶ事で発生するEND。ある時間帯、帽子屋屋敷のメンバーとお茶会をする事になったアリス。しかしお茶会メンバーである筈のハンプティ&ダンプティがいつまで経ってもやってこない。そこでアリスは、ブラッドに頼まれる形で2人を迎えに行く。彼らの持ち場である門に行けば、2人は雑談に花を咲かせていた。アリスが来た事でお茶会の事を思い出した彼らは、アリスと共にお茶会の会場へ向かう。だがその時、周囲の景色が一変。いつの間にかアリスはどこかの大木の上に居る状態となっていた。驚くアリスと異なり、平然としているハンプティ&ダンプティ。彼らはアリスに大木の上にあった卵の入った巣を見せる。するとまた、周囲の景色が一変。アリスが「卵の夢」でよく見る、王座に続く「王の間」になる。そこでアリスはハンプティ&ダンプティが、あの卵達と同一人物である事を2人の口から聞かされる。曰く「卵と自分達は同一人物だが、内側と外側で役割が違う」とのこと。「卵の夢」から出た2人は帽子屋屋敷の門番だが、「卵の夢」の中に居る間は、アリスを「王」にして彼女の「殻」を破り、その中にあるものを孵らせる役割を担っているのだという。
その話を聞いたアリスは、2人が自分に好意を寄せていると言ったのは自分を「王」にさせる為の手段だったのではないかと考える。だが2人はそれを否定。「アリスの事はアリスとして確かに好きであり、その上で『王』にもなってほしいのだ」と返す。彼らがちゃんと自分の事を好いていると知り、安堵するアリス。そんな彼女をハンプティ&ダンプティは連れ、王座を目指し始める。だが結局、そこでは王座に辿り着く事ができず、気が付いた時にはアリスは大木の上に戻っていた。ハンプティ&ダンプティは「アリスを『王』にはしたいけど、それは今すぐにという事じゃない」「ゆっくりでもかまわない。むしろその方が面白い。今はこのままを楽しもう」とアリスに告げる。そんな彼らの言葉に、アリスは王になるかどうかはさておき、ひとまずはこれまで通り大事な人達と共に居る日々を過ごそうと心に決める。そうして当初の予定通り、ハンプティ&ダンプティと共にお茶会の会場へと向かうのだった。

ハンプティ&ダンプティ 間違いの時間END

ハンプティ&ダンプティの登場に代わり姿を消したディー&ダム。「間違いの時間END」にて、姿だけ登場する。

共通ルートにてハンプティ&ダンプティの好感度をMAXにしないように選択肢を調整しつつ、「卵の夢」の第2話と第4話に現れる選択肢で、2人に対して否定的な選択肢を選ぶと発生するEND。アリスがお茶会に来ないハンプティ&ダンプティを呼びに行くまでの物語展開は、「間違いの時間END」と変わりない。
ハンプティ&ダンプティと共にお茶会へ向かおうとするアリス。しかし次の瞬間、周囲の景色が一変し、帽子屋屋敷のものではない門がアリスの目の前に現れる。それは、アリスが最初に見た「卵の夢」に出てきた門だった。しかし驚くアリスに対し、ハンプティ&ダンプティは驚いた様子もなく先に進んでいく。アリスも慌てて彼らの後を追おうとしたが、その時、後ろから誰かに呼びかけられた気がして振り返る。そこには白いモヤの中に佇むディー&ダムの姿があった。ディー&ダムの事を覚えていないアリスは、彼らが何者なのか不思議に思うが、同時に彼らの呼びかけに反応しなくてはいけないような気もする。しかしその時、ハンプティ&ダンプティがアリスを呼ぶ。「何をしているのか」「早くお茶会に行こう」とアリスを呼ぶ彼らの声に応えながら、アリスは2人のもとへ向かう。そんな彼女の姿をディー&ダムは寂しそうに見つめる。アリスもそれに気づき、彼らの事が気になる。ハンプティ&ダンプティの方へ向かう事が正しい選択だったのかと迷うも、彼らを大事な存在として見ていたアリスは「たとえ間違いであったとしてもそれでもいい」と結論つけるのだった。

時計塔

ユリウス 記念写真END

「嵐」によって長髪から短髪に変わったユリウスと共に出けているアリス。

滞在先に時計塔を選び、なおかつユリウスを選択した場合に発生するルート。
ナイトメアから「嵐」について教えられたアリスは、時計塔の主であり自身の恋人であるユリウスに詳しい話を聞きに行く。アリスは彼から、「嵐」がやってきている期間中は、ハートの国の住人が皆、どこかしら「狂わされる」事を教えられる。自身にとって理解の範疇外の事が起こると知ったアリスは不安になる。そこで不安を拭う為、ユリウスに今まではどんな事が起こったのかと訊ねる。だがユリウス曰く、嵐中に起こった「狂い」による変化は自分自身では理解する事ができないのだという。時計塔にはユリウスとアリス以外の住人はいない為、第三者から情報を得る事もできず、アリスは詳しい話を聞けずに終わってしまう。
後日、アリスとユリウスの元にハートの城の騎士であり、ユリウスの友人であるエースがやってくる。エースは2人にカメラを送る。そうしてアリスの方に、「嵐」期間中のユリウスの変化を撮ってほしいと頼む。写真嫌いかつエースに嵐の変化を見られたくなかったユリウスはそれを嫌がるが、カメラ自体は好意で送ってきているというエースと、その言葉に嘘はないと思うというアリスの言葉に押され、カメラだけは受け取る事になる。しかし後日、街中を歩いていたアリスが、エースが送ってきたカメラと同じ機種が高額で売られていたのを目にしてしまう。好意とはいえ、簡単に受け取れるものではない額だった事から、アリスはエースにカメラについて改めて話をしようと彼のもとへ向かう。しかしその先でアリスは、エースから「ユリウスが変わってしまったらどうするのか」という問を投げかけられる事になり、「嵐」によるユリウスの変化について自分が思った以上に不安に思っていると気づく。
日に日に増していくアリスの中の不安。さらにそれを助長させるかのような出来事が発生する。時計塔よりも先に「嵐」がやってきた他領に遊びに行った際、その先の住人から「時計塔から追い出された」と勘違いされてしまったアリス。アリスはそれを否定するが、住人達の方は「でもユリウスなら、自分の変化を見られるのが嫌でアリスを追い出す可能性があるのではないか」とアリスに問い詰める。彼らの言葉で、その可能性がある事に気づいたアリスは「嵐」当日、ユリウスの傍に居るべきなのかどうかで悩み始める。後日、エースに相談をしてみるが、エースからは「追い出されたらハートの城に来ればいい」と言われてしまい、結局アリスが思うような答えは得られなかった。

しかし悩んでいる内にも、時計塔に「嵐」が到来するタイミングが近づいてくる。アリスは改めて1人で考えようと、時計塔の外に出る。するとその先でエースと遭遇する。悩んでいるアリスを見たエースは、彼女を無理やりハートの城へ連れ帰る。慌てたアリスは、隙を見てハートの城から逃げ出す。すると今度はその先で、アリス奪還の為、ハートの城に侵入してきたユリウスと鉢合う。その時点で既に時計塔領地に「嵐」が来たあとだったらしく、ユリウスは長かった髪が短くなり、根暗だった筈の性格が直情的なものに変わっていた。ユリウスの変化に驚くアリスだが、直情的となったユリウスの行動力のおかげでハートの城からの脱出に成功する。帰宅後、アリスはユリウスに怒られる羽目になるが、直情的になっただけでそれ以外の部分は元のユリウスと何も変わらない事に気づく。その瞬間、アリスの中の不安が昇華され、ユリウスの変化を受け入れられるようになる。
後日、アリスはユリウスを連れ立って時計塔領地で行われているアートのイベントに出向く。そこで気に入った作品を見つけたアリスは、作家から「旦那様と一緒に写真をお撮りしましょうか」と問われる。ユリウスを「旦那」として見られた事に驚くと同時に、ユリウスと一緒に写真を撮りたいと考える。だが直情的になっても写真が嫌いな事に変わりないユリウスは、「本当は愛すべき伴侶であるアリスの願いはなんでも叶えたい」と悔しがりながらそれを断る。
だが後日、「嵐」が去った後のピクニックにて、ユリウスが「1枚だけならいい」とアリスに自らカメラを差し出す。彼が自分の為にカメラを差し出してくれた事が嬉しかったアリスは、彼と一緒に写真を撮る。後日、撮った写真をユリウスと共に使用しているベッドの枕側の壁に貼る。その翌日、朝起きた際に、目を覚ましたユリウスと共に目に飛び込んできた写真を目にしたアリスは、大事な人と過ごせている日々の幸せを改めて噛みしめるのであった。

ユリウス 夫婦END

自分達の部屋に飾った花を共に眺めるアリスとユリウス。

ユリウスルートにて発生する選択肢で、一部の選択肢を「記念写真END」と異なるものを選んだ際にのみ発生するEND。「嵐」到来後、アリスがユリウスと共に出かけるところまでは、ストーリー展開は「記念写真END」と同じ。その後日から、展開が異なるようになる。
「嵐」が去り、再びいつも通りの生活に戻ったアリスとユリウス。ある日、アリスがユリウスの仕事の手伝いをしていると、彼からとある時計の修理が終わった報告をされる。それは、過去アリスが対応した男性客から受け取った時計だった。自分の妻の時計だというその男性客は、愛しい相手を失ったショックから取り乱しており、アリスに「早く修理をしてほしい」と頼み込んでいた。アリスは彼に同情するも、男性客の態度が余ると思ったユリウスは2人の間に割り込む。そうして「他にも修理を待つ時計があるからその順番を変える事は無理だ」と告げる。しかしその代わりにと、男性客に「時計の修理が終わったら見せる」と約束をする。それを聞いた男性客は我に返り、2人のもとを去っていった。
時計の修理が終わったところで男性客の妻が蘇るわけではない。それなのに修理を早くと願っていた男性客に、ユリウスは「愚かだ」とこぼす。だが、ユリウスが時計の修理の際に悲しそうな顔をする事を知っていたアリスは、それが彼の本心ではないと直ぐに気づく。そこでアリスは、改めて自分が今いるハートの国のイかれ具合を思い返す。時計を直せば、別人ではある者の何度も生き返れるこの世界。だからこそ「命は替えがきくもの」という認識が、この世界には存在する。そんな価値観の世界で、死を悲しめる程の大事な相手と出会えるという事は、ある種の奇跡であり幸せであり喜びなのだとアリスは考える。そうして自分にもそんな存在がいる事を改めて認識したアリスは、ユリウスの傍で、彼の伴侶として生きる日々の奇跡・幸せを噛みしめるのであった。

その他のEND

ナイトメア 片腕の温もりEND

アリスと風を感じる為に、アリスと共に夢の中でハンググライダーをするナイトメア。

「嵐」への質問をしに行く相手にナイトメアを選ぶ事で発生するルート。滞在先はどの場所を選んでも構わない。
ナイトメアに嵐の到来について教えられたアリスは、目覚めた次の時間帯で、自身の滞在先の住人に「嵐」の到来を改めて告げられる。しかし住人達の説明のみでは嵐というものをいまいち理解できなかった事から、彼女は自身の恋人であるナイトメアに再び話を聞く為、眠りにつく。するとナイトメアの方も彼女が自分に会いに夢にやってきた事に気づき、アリスを出迎える。嵐に関する説明をアリスから求められたナイトメアは、「嵐」の到来によってこの世界の住人達がどこかしか「狂わされる」事を彼女に教える。しかし狂わされるのは、あくまでも「嵐」が到来するハートの国に限る事で、ハートの国とは別の国(『ハトアリ』シリーズ2作目の舞台・クローバーの国のこと)に住んでいるナイトメアは嵐の影響を受けないのだという。自分の大事な人が狂わされないと知り、安堵するアリス。しかしそれは、2人が別々の場所に住み、夢を通してでしか会えないという現実を浮き彫りにする現象だともいえた。

夢でしか会えない現状に少しばかり寂しさを感じていたアリスは、「嵐」を機に改めて自分達の恋人としての普通じゃない距離感を前に、このままでいいのかと焦るようになる。ナイトメアも同じ心境なのか、少しでもハートの国にいるアリスと同じものを感じたいと夢の中で「風を感じられる」乗り物にアリスと乗ったり、草原を散歩したりと工夫をこらすようになる。だがどんなに工夫を凝らそうとも、何も変わらない現実に2人の焦燥感は日に日に深まっていく。そうこうしている内に「嵐」がハートの国に到来。時間をあけて、各領土順々にやってくる「嵐」。だがいつもの嵐と異なり、今回の嵐は各領土事に様々な狂った気象現象も発生させていく。予想外の自体に誰もが驚く中、アリスの滞在先の住人はこの現象の原因がアリスにあるかもしれないと気づく。曰く、アリスは本来ならこの世界にいる筈のない「余所者」で、「本来ならありえない存在」という「狂い」がキーとなって狂った「嵐」をさらに狂わせたのではないかという。後日、アリスはその事をナイトメアに話す。するとナイトメアも「その考えはあながち間違っていないかもしれない」と、その話に同意する。同時に、今までと異なる「狂い」が発生しているなら、それに乗じて自分が現実世界のアリスに会いに行けるかもしれない、という考えに至る。思ってもみなかった可能性に驚くアリス。本当にできるのかと疑う反面、本当に会えるのなら会いたいと願っていた事も事実であり、彼女は「嵐」の気配が自身の滞在先に近づく度に期待を膨らませていくようになる。

そうしてついに訪れた「嵐」到来の日。アリスの滞在先でも気象と住人の「狂い」が発生するが、そこにナイトメアが現れる事はなかった。だが「嵐」の到来からしばらくが経った時、ナイトメアが彼女の滞在先を訪問する。驚くアリスに、ナイトメアは「ドアを自室へ繋げてある」と言って彼女を自分が住む国へ連れていく。戸惑いながらもナイトメアの部屋へ足を踏み入れたアリスは、本当に現実世界で彼と出会えた事を実感し喜ぶ。
その後、一度はハートの国に戻るものの、嵐期間中はいつでもナイトメアが居る国へ行けるらしく、アリスは彼と共にショッピングデートをしたりと、楽しい時間を過ごす。だがその途中で、アリスは今見ている光景がナイトメアが精巧に作り上げた夢である事に気づく。それをナイトメアに告げると、ナイトメアは嵐の期間いっぱいはアリスに夢を見せてあげるつもりだったとネタばらしをする。そんなナイトメアの言葉に、アリスは自分が思った以上に彼に大事にされていた事実に、自分の気持ちを伝える為に彼にキスを送る。後日、ハートの国に訪れていた嵐が去る。それを知ったナイトメアは、自分とアリスの「嵐(の期間)」も終わりにする為、儀式のようなものとして、かつて彼女と風を感じる為に乗った飛行船に乗る。そうして夢を通して「嵐」期間中にアリスが見てきたハートの国の気象現象を眺めながら、ナイトメアとアリスは嵐の終わりを実感するのだった。
それからしばらくが経ったある日、アリスはナイトメアにマフラーを贈る。それは、彼女がナイトメアとの夢の中で時折過ごす「家」で作った、アリスの手作りのマフラーだった。前々からナイトメアの為にマフラーを編んでいた事をアリスから告げられていたナイトメアは、完成したそれを受け取り喜ぶ。そうして「今度はこれをつけられる場所(夢)へ行こう」とアリスと約束する。後日、宣言通りの場所へアリスと共に向かったナイトメア。夢の中は、本当ならば寒さも熱さも感じない筈だが、アリスからのマフラーを嬉々としてつけるナイトメアの姿にアリスも嬉しくなる。そうして彼の片腕に抱きつきながら、ナイトメアが作ってくれた夢を満喫するのだった。

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