Chic(シック)の徹底解説まとめ

Chic(シック)とは、1977年にデビューしたアメリカのディスコ・ファンクバンドである。中心メンバーはナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズ。『おしゃれフリーク」』や『グッド・タイムス」』等のビルボードNo.1を発表し、1970年代後半のディスコ・ブームを牽引した。80年代はナイルとバーナードはプロデューサーとして活躍。マドンナやデヴィッド・ボウイ、ダイアナ・ロスなどのアーティストを大ヒットさせた。現在もナイル・ロジャースを中心に活動するダンスミュージック界のレジェンドである。

01. Dance, Dance, Dance (Yowsah, Yowsah, Yowsah)
02. Sao Paulo
03. You Can Get By
04. Everybody Dance
05. Est-Ce Que C'est Chic
06. Falling In Love With You
07. Strike Up The Band

先行シングル「Dance, Dance, Dance (Yowsah, Yowsah, Yowsah)」のディスコヒットを受けて、1977年に発表されたシックのデビュー・アルバム。
黒人ファンクやソウルにヨーロピアン・テイストを導入し、「おしゃれ」なテイストを際立たせたデビュー作。ブルージーなインストゥルメンタル「Sao Paulo」を始め、単なるディスコだけでは終わらないジャズ的要素が散りばめられ、黒人ファンクに特有の泥臭さや暑苦しさのようなものは徹底的に排除された。過剰にアレンジすることなくあくまでもシンプルに、そしてそこに切れ味鋭く切れ込んでいくナイルのカッティングギターに、バーナードのうねるベース、トニーのシャープなドラムワークが洗練されたグルーブを生み出している。

C'est CHIC(エレガント・シック)

01. Chic Cheer
02. Le Freak
03. Savoir Faire
04. Happy Man
05. I Want Your Love
06. At Last I Am Free
07. Sometimes You Win
08. (Funny) Bone

全米NO.1ヒット『おしゃれフリーク』を収録した1978年発表のシックの2ndアルバム。
C'est CHICとはフランス語で「格好いいね」とか「スタイリッシュだね」というような意味。
2ndアルバムにしてシックのコンセプトは既に完成の域に達した。アルバム自体もバンド史上最大のヒットとなった。『Le Freak おしゃれフリーク』で全面に押し出されたナイル・ロジャースのパキパキのカットギターは、その後40年以上経った現在でも全く変わっていない。単独でメロディーをブリブリと奏でるバーナード・エドワーズのベーススタイルも当時は珍しく、またタイトでシャープなドラミングながら間の中にもグルーブを生み出すトニー・トンプソンのドラム。ブラックミュージックに一石を投じ、80年代ポップスにも大きく影響を与えたクリエイター達のアイディアが満載された作品。

Risque(危険な関係)

01. Good Times
02. A Warm Summer Night
03. My Feet Keep Dancing
04. My Forbidden Lover
05. Can't Stand to Love You
06. Will You Cry (When You Hear This Song)
07. What About Me

全米NO.1ヒット『Good Times グッド・タイムス』を収録した1979年発表の3rdアルバム。
前作よりも更に洗練され、お洒落さが増したアルバム。ビルボード全米ナンバーワンになったタイトル曲『グッド・タイムズ』のベースメロディーは、Queenの全米No.1ヒット『Another one bites the dust』に盗用され、更にラップ初のレコードといわれるSugarhill Gangの『Rappers Delight』ではそっくりそのままサンプリングされて訴訟問題にもなりかけた。
後にアイズレー・ブラザーズがリメイクするスロウ・ジャムな2曲目「A Warm Summer Night」はスペイン語の同じフレーズを延々と6分間も繰り返すエレガントでおしゃれなナンバー。タップダンスの音色が間奏を彩るダンサンブルな3曲目、ファンキーなベースラインにストリングスが美しい4曲目、どれをとってと美しくエレガントなアルバムである。
アルバムは全米5位、R&Bチャートで2位を記録し、100万部以上の販売でRIAAからプラチナ認定を受けた。シックサウンドが最高に洗練された傑作。
これ以降、シックはよりポップでファンキーさが強調され、3rdで披露したエレガントさは失っていくが、この頃の絶好調ぶりは、シスター・スレッジ『We Are Family』(79年)やダイアナ・ロス『Diana』(80年)へと受け継がれていく。

Real People(リアル・ピープル)

01. Open Up
02. Real People
03. I Loved You More
04. I Got Protection
05. Rebels Are We
06. Chip Off the Old Block
07. 26
08. You Can't Do It Alone

1980年発表のシックの4作目。この年、ナイルとバーナードの2人は他にSister Sledgeの『Love Somebody Today』、Sheila and B Devotion'sの『King of the World』そしてDiana Rossの大ヒットアルバム『Diana』と3枚のシックのスピンオフ的な作品をプロデュースしているが、前年に起きたディスコ排斥運動により、ディスコミュージックは急速に衰退し、シックも作風のシフトを余儀なくされた。
これまでのグルーヴをキープしながらもダンス感は控えめで、2曲目の「Real People」や、しっとりとしたフラメンコギターが鳴く「You Can't Do It Alone」など、前作までのエレガントな夜の雰囲気を継承した曲もあるが、全体的にはファンクネスが強調された。
アルバム最大ヒットの『Rebels Are We』や後期シックの最高傑作ともいわれる「Chip Off the Old Block」等、全般的に明るく弾ける曲が増えた。

Take It Off

01. Stage Fright
02. Burn Hard
03. So Fine
04. Flash Back
05. Telling Lies
06 Your Love Is Cancelled
07. Would You Be My Baby
08. Take It Off
09. Just Out of Reach
10. Baby Doll

1981年発表のシックの5作目。この年ナイルとバーナードは他に、ブロンディのリードシンガーDebbie Harryのソロデビューアルバム『Koo Koo』と Johnny Mathisのアルバム『I Love My Lady』をプロデュースしている。
アルバムからのシングル「Stage Fright」は全米R&Bチャートで35位に入ったものの、シックのシングルとしては初めて全米チャート入りを逃した。アルバム自体も全米124位とセールス的にも及ばなかった。ディスコバンドとして名を馳せた頃のサウンドは完全に影を潜めた。しかしながらナイルのカッティングギターはより強調され、バンドとしてより進化を感じさせる。
1983年のデヴィッド・ボウイの大ヒットアルバム『Let’s Dance』への源流ともいえ、ここでのサウンドの転換は、その後ナイルやバーナードがプロデュースする白人アーティスト達に注入され大きく花ひらくことになる。

Tongue in Chic

01. Hangin
02. I Feel Your Love Comin' On
03. When You Love Someone
04. Chic (Everybody Say)
05. Hey Fool
06. Sharing Love
07. City Lights

1982年発表の6作目。1979年のディスコ排斥運動から生き残ったバンドは、シンセやエレキを駆使して新しいファンクを展開していたが、シックはあくまでも生バンドにこだわったサウンドを展開している。
シングルは「Hangin」がR&Bチャートで48位にとどまった。「Sharing Love」のようなN.Y産ミドルグルーヴをはじめ、全体的にクワイエット・ストーム系のしっとりとした曲が多いが、ラストの「City Lights」はバーナードのベースがギラギラと輝き、それでいてぶれることのない正確なリズムはまさに天才的といえる。ナイル、バーナード、トンプソンのテクニックが冴え渡る好盤であるが、セールス的には全米173位と更に下降を辿る。

Believer

01. Believer
02. You Are Beautiful
03. Take a Closer Look
04. Give Me the Lovin
05. Show Me Your Light
06. You Got Some Love for Me
07. In Love with Music
08. Party Everybody

1983年発表の7枚目。『Give Me the Lovin』が全米R&Bチャートで57 位。同じ年にナイルはファーストソロアルバム『Adventures in the Land of the Good Groove』を発表している。
R&Bシーンではプリンスやシャラマーのようなアーティスト達がシンセを多用し、ロックやニューウェーブのサウンドをクロスオーバーさせながら頭角を表していた時代だった。シックもキーボードやドラムマシーンを多用し、ハイテクなプロダクションシステムを試みたが、注目を集めることはなく、シックはこのアルバムをもってその役目を終えた。
しかしこれまでナイルやバーナードが続けてきた音楽的試行錯誤は、皮肉にもシックの解散を代償として大きく花開く。この年ナイルはデヴィッド・ボウイの新作をプロデュースする機会を得、『Let’s Dance』が全米ナンバーワンに輝き、ここからプロデューサーとしての躍進が始まるのであった。

Chic-ism

01. Chic Mystique
02. Your Love
03. Jusagroove
04. Something You Can Feel
05. One and Only One
06. Doin' That Thing To Me
07. Chicism
08. In It to Win It
09. My Love's For Real
10. Take My Love
11. High
12. M.M.F.T.C.F.
13. Chic Mystique

1992年リリース、9年ぶり8作目。1983年の『Believer』の後、はっきりしないまま活動を停止してしまったシックが90年代に突如復活した。トニー・トンプソンは参加しておらず、元クルセイダーズのソニー・エモリーがドラムを担当している。
オープニングを飾るChic Mystiqueがスマッシュヒットしたが、話題性以上にはヒットしなかった。ディスコミュージックは80年代前半から長い冬の時代を過ごしていたが、80年代後半頃から再びブームに火がついた。クラブを中心にブラックミュージックが再熱しだしていたが、その中心にあったのは、ニュージャックスウィングであり、ヒップホップであった。シックはクラブミュージックからは距離を置くような、明るく軽快なサウンドを展開し、クラブで踊る音楽とは一線を画していた。結果としてクラブシーンの中心に返り咲くことはなく、70年代のように時代をリードするには至らなかった。

It's About Time

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